ブォォォ…
僕は今中野家に向かってバイクを走らせていた。急遽うちに五つ子が泊まることになったので明日の登校に必要な教科書とかを取りに行っているのだ。ここまでして泊まらなくてもいいのに。
「三玖。初めてのバイクかもだけど疲れてない?」
ちょうど赤信号で止まった時に後ろにいる三玖に声をかけた。
「大丈夫。問題ない…」
ぎゅっと僕の腰に抱きついている力を強めて三玖は答えた。
荷物を取りに向かうのはいいのだが、さすがに人様の家を漁るわけにはいかなかったので、一人だけ付いてきてもらった。そして、栄えあるじゃんけん大会で勝ち残った三玖がその一人というわけだ。
ちなみに風太郎は帰宅し、桜は一緒に泊まることになった。桜に関しては家に電話して荷物を持ってきてもらうそうだ。それならその荷物を持ってくる車で皆を送ってもらえればよかったのだが、五人で却下された。その五人というのは四葉以外の女子五人である。まったくこういう時の結束力は高くて今後も苦労しそうである。
そして、中野家のマンションに到着したので駐輪場にバイクを停めて部屋に向かった。
「私が用意してくるからソファーでくつろいでて」
そう言って三玖は二階のそれぞれの部屋に向かってしまった。
特にやることもないので部屋に着いたことをメッセージで送っておいた。
ブー…ブー…
『こっちも桜ちゃんの荷物がさっき届いたよ。それにしても使用人みたいな人から荷物を受け取る桜ちゃんがお嬢様って感じがしたよ』
いや、君たちもお嬢様と言えばお嬢様でしょ。一花のメッセージに心の中でツッコミをいれてしまった。
ブー…ブー…
『夕飯もうすぐ出来ちゃうから早く帰ってきなさいよ』
一花のメッセージの後に二乃からもメッセージが届いた。
今うちでは、二乃と桜に零奈の三人で夕飯を作ってもらっている。この三人で作るとなると早く出来てしまうだろう。
後、この人数なので入れる人は先にお風呂に入るように伝えてある。メッセージが来ているのと、夕飯作成を考えると今は四葉か五月が入っているのだろう。
とりあえず『分かった。なんだったら途中までにしてお風呂回しといて』と返事をしておいた。すると『分かったわよ』と返事が返ってきた。
その後はパソコンからスマホに送っておいた論文を見ながら三玖を待つことにした。すると、鞄を手に三玖が二階から下りてきた。
「お待たせ。ごめんね、ちょっと時間がかかっちゃった」
「いや、四人分だからね。それに自分の以外はどこにあるか分かんないでしょ」
「うん。結構大変だった」
三玖の持っていた鞄を受け取りながら話をする。
「じゃ行こうか。夕飯出来そうだってさ」
そう言って玄関に向かおうとすると三玖に呼び止められた。
「待って…!」
そしてそのまま正面から抱きしめられたのだ。
「三玖?」
「こんな機会を無駄にするなんてもったいないよ…だから……」
そう言うや否や三玖からキスをされた。
「ん……」
「……どうしたのいきなり?」
「……キス……。し、したくて……」
「…………そっか」
僕は三玖がしたいなら……と、もう一度唇を重ねた。
「……ん、ちゅ……れろ、んん……」
さっきよりも強く、三玖を抱きしめて、唇の柔らかさを感じた。
三玖が舌を出してきたので、僕も舌をからめた。
「んはっ……ん、ちゅ……」
三玖とキスをし続けて、何分経過したのかももうわからくなってきた。
キスでとろけきった顔でさらに激しくキスを求めてきて僕の唇を吸ってくる。
「……ぷはっ……三玖、キス好き?」
唇を離してそう聞くと三玖は、とろけきっていた顔をさらにふにゃと蕩けさせて笑った。
『好き』と顔に書いてあるかのような笑顔だった。
「ん……大好き……」
……あぁもう。可愛すぎる。トロンとした表情で僕を見つめてきた。
「ん……カズヨシ、好き……好き」
そのふにゃふにゃの顔は卑怯だ……!またキスがしたくなってきてしまう……! 三玖はそんな僕に気づいてるのか気づいてないのか僕の胸に顔をこすりつけるように甘えてきた。
「……ふふ、好き、大好き」
僕の体に顔を埋めてすりすりとする。その三玖の頭を撫でてると三玖は気持ちよさそうに、僕に体を預けてきた。
「……三玖がこんなに甘えてくるなんて思ってなかった」
僕がそうぽつりと漏らすと、三玖は僕から顔を離し僕を上目遣いで見ながら言った。
その顔がまた可愛い。
「ん。……私もこんなに自分が変になるなんて思わなかった。今までこんな気持ちなんてなかったから。ただ、こうしていたい……こうして、甘えてたいって思う」
そう言ってまた僕の胸に顔をくっつけてくる。そんな三玖が、たまらなく愛おしかった。
とはいえあまり遅くなると二乃と零奈あたりから何か言われそうである。残念ではあるがここまでだ。
「そろそろ行こっか。皆待ってる」
「むー…もうちょっとこうしてたかったけど仕方ない…」
そう言いながら三玖は僕の胸にグリグリと擦り付けている。もう少しこのままでいようかな。
「遅いわよ!」
あれからしばらくして帰ったのだが案の定仁王立ちの二乃と零奈が出迎えてくれた。
「荷物を取って帰ってくるだけでここまで掛からないと思いますが?」
「あはは…ごめん」
「みんなの分を部屋で探してだから時間が掛かるのは仕方ない」
三玖は肝が据わってるね。
「とりあえずご飯にしようか。五月もお腹空いたでしょ?」
ぐぅ~~…
「はっ…!こ、これは違うんです!」
まさかお腹の音で返事をされるとは。
『違うんです~』と弁解している五月を横目に夕飯の準備を手伝うのだった。
今日の配置は先ほど道具を取りに行っている時に決めたそうだ。僕が座るテーブルには、僕の横に桜が。前には四葉がいて、その横に零奈が座っている。残りのメンバーはテレビの前のリビングテーブルに座っている。三玖は僕に付いていったから始めからそちら側だそうだ。
「それよりカズ君とのドライブどうだったのよ?」
「最初はちょっと怖かったけど途中から楽しかった。なによりカズヨシを抱きしめることができるのがいい」
「分かります。和義君を近くに感じられるのが一番いいですよね」
「あれ?五月ちゃんいつの間にカズヨシ君のバイクに乗ってたんだ」
「えっ!?」
「あんたも大概ちゃっかりしてるわよね」
四人はどうやらバイクに乗った時の話で盛り上がっているようだ。
「
「まあ、いずれ機会がくるさ。四葉も風太郎に頼んでみたら?バイクは貸すからさ」
「上杉さんの……」
四葉は風太郎の運転するバイクの後ろに乗るところを想像しているのか、箸を咥えたまま固まっている。
「それにしても、兄さんの考えた噂話には噂話を、の作戦はまあいいのではないですか?風太郎さんはかなり渋ってましたが」
「こればっかりは風太郎の協力は必要不可欠だからね。もちろん四葉もね」
「は、はい!が、頑張ります!」
箸を咥えたままだった四葉が慌てて返事をする。二人にとっては大変かもしれないがここは頑張ってもらおう。
そして全員が寝静まった時間。自分の勉強を終わらせてキッチンに飲み物を飲みに来たら、リビングの電気が点いていた。リビングテーブルでは一人黙々と勉強をしている者がいる。
「五月、まだ勉強してたんだ」
「あ、和義君」
「麦茶飲む?」
「じゃあいただこうかな」
五月に声をかけると勉強を止め振り返って答えてくれた。自分の分と五月の分の麦茶をコップに注ぎテーブルに持っていくと、五月はグッと腕を伸ばしてストレッチをしていた。
僕はそんな五月の近くに座った。
「どう?はかどってる?」
「うん。まあまあかな…」
「ふーん……問五間違えてるよ」
「嘘!?」
五月は僕の指摘に慌てて問題を確認している。指摘された後は冷静に正解へと自力で導き出せたようだ。
「うん正解。よくできました」
「うーん…指摘された後だからなぁ」
苦笑いを浮かべながら僕の注いできた麦茶を飲みだした。
「あ、そうだ。噂が気になってそれどころかじゃなかったんだけど相談したいことがあったんだった」
「相談?」
五月は何かを思い出したように近くの鞄の中身から目当てのものを探しだした。
「あった。これなんだけど…」
鞄から取り出されたのは一枚の紙。何かの広告のようだ。
「特別教室?」
「そう。なんでも有名な講師の方による特別教室が塾で開かれるみたいなの」
「ふーん…無堂仁之介ねぇ」
聞いたこともない名前だし、見たこともないおっさんだな。
「それで…参加しようか迷ってて…それに…」
「それに?」
「……私の考えすぎかもしれないんだけど、この事を下田さんが教えてくれなかったから気になってて」
「え、下田さんが?」
「うん……この事は他の先生に教えてもらったんだ」
「へー…」
おかしいな。下田さんならこんなイベント真っ先に五月に教えると思うんだけど。忘れてたとか?でもなぁ…
「和義君?」
「ああ、ごめんごめん」
「でね。やっぱり自習だけじゃ心許ないから参加しようとは思ってるの。でも贅沢を言えば和義君に勉強を見てもらいたくって」
恥ずかしそうに上目遣いでそう言ってくる五月。それは反則ではないだろうか。可愛すぎる。そんな態度をされたらOKするしかないだろ。
「分かったよ。そんな風に言われれば家庭教師冥利に尽きるよ。後は彼氏として頼ってくれたのが普通に嬉しいかな」
「えへへ…ありがとう」
「この紙は貰ってもいいかな?」
「え?もう参加することもないから別にいいけど。どうしたの?」
笑顔だった五月の顔はたちまち不安そうな顔になってしまった。
「大したことないよ。ちょっと気になっただけだから」
そう伝えながら四折りにしてポケットに入れた。
明日の放課後あたりに下田さんのところに行ってみるか。
そんな風に考えながら麦茶を飲む。
すると、五月は僕の近くまで寄ってくると僕の肩に自分の頭を乗せてきた。その頭を僕は右手で優しく撫でる。すると五月はとても嬉しそうな顔をしていた。
五月のこんな表情を見ていると思わず頬が緩んでしまいそうだ。五月から伝わってくる熱の感覚がとても心地よく感じる。そのまま僕はしばらくの間、五月の頭を優しく撫でていた。
「……あの、和義君……」
「ん? どうした?」
「ううん、何でもない……気にしないで。ただ、こうしていたいだけだから……」
五月にとって甘えられる存在になれていることが嬉しく思う。この心地よさをこれからも感じていきたいと思っていると五月から声をかけられた。
「ねえ?やっぱり今日は一緒に寝れないよね?」
五月は不安そうな表情になりながら、そんなことを聞いてくる。
「ごめんね。今日はそういうのはなしだって皆で決めたから……」
五月のこの表情に僕は弱いのだか、ここは我慢する他無いだろう。
「そうだったよね。ごめんね、私こそ困らせること言って……じゃあ、その代わりに一つだけわがままを聞いてほしいな」
「何?」
「キス…して」
「……分かった」
五月の言葉には驚いたが、僕が頷くと五月と唇を重ねる。すると五月は嬉しそうに笑ってきた。そして僕たちは何度もキスを繰り返した。
「ん……ちゅっ……」
僕たちは何度も唇を交わす。そんな時だ。
「あ…あのね……その……し……」
「し?」
五月が何かを言おうとしているみたいだが、顔を赤くして下を向いてしまった。
し……何だ?
すると、小さな声であるが五月は言葉を口にする。
「舌を使ってもいいかなって…」
「……」
まさか五月の口からそんな言葉が出てくるなんて。驚きで一瞬思考が停止してしまっていた。
「和義君……」
「……ご、ごめん。まさか五月からそん言葉が出るとは思わなくって」
「わ、私だって色々調べてるんだよ。和義君に喜んでもらいたくて…」
「そっか。ありがとね、素直に嬉しいよ。じゃあ……その……いいかな?」
僕は五月に尋ねる。すると五月は顔を赤くしながら黙って頷く。
「五月、好きだよ……」
僕は自分の思いを伝えながら彼女の唇を塞いでいく。
「ちゅっ……」
舌を伸ばして、お互いの舌が触れ合わせると、そのまま絡み合わせる。
「んんっ……ん……ちゅっ……」
お互いの唾液を交換し合うかのように、何度もキスを重ねることで、頭がぼぅとしてくる。
しばらくそんな濃厚なキスを続けた。
「れろ……んっ……ちゅっ」
僕は五月の口から舌を抜き、唇だけを軽く重ねると五月が不満げな表情になっていた。
「和義……君……」
そんな顔をして僕の名を口にしている五月が可愛らしく思えて仕方がなかった。
「ごめん、焦らすつもりは無かったんだ。その……これ以上やると僕も歯止めが効かなくなりそうだから」
そう言って、僕は再び五月のことを強く抱きしめた。
「ううん、良いの」
僕の胸の中でそう呟く五月は満足そうだった。
それからしばらくの間、僕たちは抱き合ったままだったが、五月の方から体を離して僕の顔を見つめてくる。
「ねえ、和義君?」
「どうした?」
僕は五月に尋ねる。
「キスってやっぱりすごいね」
そう言って五月は再び僕に抱きついてくるのであった。
ちょっとやりすぎた感がありますが、三玖と五月のキスシーンを書かせていただきました。
しかし、同日中に別の女子とだなんてハーレムだからこそ出来ることですよね。
さて、次回は噂話には噂話を作戦実行と下田さんの登場を予定しております。
次回投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。