『いよいよ始まります、旭高校「日の出祭」。まずは、我が校が誇る女子生徒ユニットによるオープニングアクトです』
二乃を中心の五人組ユニットによって、ステージ上でアイドルのように歌とダンスが始まった。
その光景を僕と四葉は舞台の袖で見ている。
「二乃かっこいい!」
「二乃……これ、よく引き受けたね…」
二乃の性格からこういうのには参加しないと思ってたけど…
けど、実際歌も上手いし笑顔で出来ているから生徒皆が盛り上がってる。
うん、日の出祭出だし好調だね。
『第29回「日の出祭」、開幕です!』
ステージ上でのセレモニーが終わると同時にアナウンスによってそう宣言され、生徒達のボルテージも一気に上がる。
この高揚感、やっぱりいいなぁ。
「じゃあ私は見回りの準備があるので先に行ってますね」
「ああ。僕も二乃に声をかけてから合流するよ」
「分かりました!では!」
敬礼ポーズで四葉が袖から出ていった。それと入れ替わるように二乃達ユニットのメンバーがステージから袖に入ってきた。
「皆お疲れ!全員分の水を用意しといたから遠慮なく飲んで」
「直江君ありがとう!」
「助かるー」
「ねえねえ!私たちのパフォーマンスどうだった?」
一人ずつ水を渡しているとユニットメンバーの一人から質問された。
「うん、凄く良かったよ!皆、練習の成果が出せたんじゃない」
「直江君のお墨付きがあれば間違いなしだね」
「だね。二乃ちゃんもありがとう、急なお願いを聞いてくれて」
「いいのよ。それに本当は四葉がやる予定だったわけだしね」
水を飲んでいたところに話を振られた二乃は笑って答えた。
それからしばらくして、ユニットメンバー達は着替えのために移動していった。今は僕と二乃だけだ。
「二乃は移動しないの?」
「もう少しだけ一緒にいたかったのよ」
「そっか…改めてパフォーマンス良かったよ。見いっちゃったくらいだし」
「それはみんな?」
上目遣いでそんな事を聞いてきた。なので二乃の頭を撫でてあげながら答える。
「もちろん、二乃が一番可愛かったよ」
「んっ…ふふん♪当然よね」
威張るように言っているが、誉めてもらえたことには満更でもないようである。
「あ、そうだ。二乃にお願いがあってさ、写真を撮らせてくれない?零奈にも見せてあげようかなって。きっと喜ぶと思うんだ」
スマホを見せながら聞いてみたが二乃は迷っているようである。
「う~…まあ、お母さんにならいいか…いい?お母さん以外には見せちゃダメなんだからね?」
「ふっ…分かったよ。じゃあ撮るよ?」
そしてスマホを構えると二乃はポーズをとってくれた。
カシャッ…
うんいい感じに撮れたと思う。
「見せて……へぇ~写真撮るのもうまいわね。綺麗に撮れてるじゃない」
「ああ。じゃあそろそろ四葉に合流して実行委員の仕事に行かないと。現場の事任せることになるけどよろしくね」
「ええ。私も着替えたらすぐに屋台に向かうわ。それじゃあ最後に…ん……」
そこで二乃が目を瞑ってこちらに顔を向けている。
「いや、さすがにここではまずいでしょ」
「大丈夫よ。今なら誰もいないし。ほら早く…!」
まったく困ったお嬢さんだ。
そう考えながら二乃の顔にそっと手を添えて唇を交わした。
「ん……ふふふ、元気出てきた。じゃ、お互いに頑張りましょ!」
キスを終えた後、二乃はすぐに離れて着替えのために行ってしまった。その時の顔はステージでのパフォーマンスよりキラキラしていたのかもしれない。そう思えるほどの良い笑顔だった。
「悪い、遅くなった」
二乃とのキスの後。急いで四葉との集合場所に向かうとすでに四葉は来ていた。
「いえいえ。じゃあこれが直江さんの分のチェックシートです。屋台の安全点検をお任せしてもいいですか?私は校内を回りますので」
「分かった。多分、屋台の方が早く終わりそうだから終わったら四葉を手伝った方がいいかな?」
「いえ。直江さんはその後入り口ゲートでの対応もありますし大丈夫ですよ」
「そっか…じゃあお互いに頑張ろうってことで…」
そこで僕は四葉に向かって拳を向けた。
「え…?」
「ふふっ…風太郎とはよくこうやって拳と拳をぶつけてるんだよ。四葉はもう親友なわけだし、良かったらどうかなって」
コツンッ…
僕の言葉の後に四葉は自身の拳を僕の拳に軽くぶつけた。
「ししし、これ見てて憧れてたんですよねぇ。今日できて嬉しいです!」
「そっか。じゃあ改めて頑張っていこう!」
「おー!」
ぶつけていた拳を離し再度ぶつけた後に僕と四葉はそれぞれの担当エリアに向かうのだった。
僕の担当エリアは四葉から言われたように屋台の安全点検である。食材の鮮度や火を使っている屋台であれば火の回りの確認などをするのが主な仕事だ。
自分のクラスの屋台は最後にして他のクラスから見ていくか。
というわけで、他のクラスから見て回り後は自分のクラスの屋台だけとなったのだが、凄い行列が出来ていた。
「何事!?」
「ん?おー和義!」
焼きそばの屋台に裏から近づいた僕に気づいた風太郎が手を挙げて近づいてきた。
「いやー、マジで忙しさが半端ねぇぞ」
「みたいだね。なにか客引きでもしたの?」
「いや。全員の目当てはあれだ」
風太郎が二乃を指差した。
「レッドの人ですよね!?」
「オープニングのダンスめっちゃ可愛かったです!」
「私ファンになっちゃった」
「どーも……」
その二乃は、色んな人に声をかけられながらも営業スマイルよろしく苦笑いを浮かべながら焼きそばを作っている。
なるほど。お客さんは大抵二乃を目当てにしてるのか。
その流れからか隣のパンケーキの屋台でも三玖が忙しそうにパンケーキを作っている。
「嬉しい悲鳴だね」
「とはいえ、大変なのは確かだ。二乃さんの隣で頑張っている前田君も大変そうだよ」
「そうだね」
いつの間にか近くに来ていた武田の言葉に返事をしながら僕はスマホを手にした。
「……四葉?」
『どうしたんですか直江さん?何かありました?』
「実は僕達のクラスの屋台が予想以上の好評で、ちょっと僕も手伝おうかと思ってるんだよ」
『直江さんが言うのですからよっぽどですね』
「ああ。屋台の安全点検は全部終わらせてるんだけど、その後の仕事に少し遅れそうだから先に伝えとこうと思ってて」
『わかりました。こちらはなんとかしますので、屋台のことお願いします!』
そこで通話を終わらせる。そして風太郎からエプロンを借りて二乃の横で作業している前田に声をかけた。
「前田代わるよ」
「直江!?」
「っ…!和義…」
「ご苦労さん二人とも。二乃、メインは僕で作っていくから、出来たのをどんどん容器に入れていってもらえる?」
「わかったわ!」
「前田は皆と協力して次々に野菜を切っていってくれ!」
「おう!」
「じゃあ始めようか!」
そこからは前田達が切った野菜などを使って僕が焼きそばを作り、作り終わったのをプレートの端にやり、それを二乃が容器に入れていく。そして、それを接客担当が売っていくといった流れ作業を構築していった。
おかげで二乃にも余裕が出来て、二乃に会いに来た生徒達に先程よりも余裕を持って話せていた。
そんな時間がしばらく続いたが、並んでいた列も途切れて、とりあえず落ち着いた時間が出来た。
「はぁぁー…なんとか乗りきったわね…」
「マジで、バイトよりも大変だったかもだぜ…」
「皆お疲れさん!パンケーキの方も落ち着いた?」
二乃と前田を筆頭に疲れきっている焼きそばチームを横目にパンケーキの屋台の方にも確認をとる。
「こっちは焼きそばほど大変じゃなかったし問題ないよ。ね?三玖ちゃん」
「うん…」
パンケーキチームは女子中心ではあったが、そこまで疲れは出ていないようだ。
「それにしても三玖ちゃんのパンケーキ作り上手かったよね。誰に教わったの?」
「えっと……親戚の人…?」
「え?なんで疑問系なの?」
母親のいないのに母親から教わったとは言えないし。かといって、友人の小学生の妹とも言えないからな。微妙な言い方になるのは仕方ないだろう。
「それにしても初日のお昼時点でこの売り上げなら最優秀店舗狙えるんじゃない?」
「だよね?もうここは狙ってくしかないでしょ!」
まだ始まったばかりではあるが、すでに最優秀店舗の話題が出ている。まだまだ元気は残ってるようだ。
「さてと。僕はこの辺で実行委員の仕事で抜けるよ。二乃、前田。大変かもだけどここからもよろしく」
「ええ」「任せとけ!」
「パンケーキの方も頑張ってね」
「うん…!」『はーい!』
クラスメイトの返事を背に次の担当の場所である入り口ゲートに向かうのだった。
「すみません、遅れました」
「ああ、直江君。大丈夫だよ。四葉ちゃんから前もって連絡があったから。クラス大変だったみたいだね」
「ええ。お陰さまでなんとかなりました。代わります」
「じゃあお願いね。次の子は時間通りに来る予定だから」
僕の前を担当してくれた女子が席を立ち入れ替りで僕が席に着いた。
ここは入り口付近に設置しているテントで、在校生以外の人で必要な人にパンフレットを配ったりするところである。配る相手は大抵が保護者の人だったりと大人の人なので人数も少なくそこまで大変ではなかった。
特にトラブルもなく平和な時間が過ぎていきそろそろ交代の時間に差し掛かった頃…
「こんにちは。パンフレット一枚いいですか?」
「はいどうぞ……って、ん?」
ロングストレートに帽子を被り、眼鏡をかけた女性がパンフレットを求めてきた。
なんか昔の二乃に似てるような…
「えっと…もしかして一花?」
一応周りに配慮して本人にだけ聞こえるように聞いてみた。
「あ、やっぱりばれた?」
一花は眼鏡を下にずらしながらいたずらっ子のような顔でいる。
「部屋の中を探してたら昔の二乃の変装用のウィッグが見つかってさぁ。これだったら周りにはばれないと思ったんだ」
「なるほどね。て言うかよく来れたね。仕事は?」
「今日は休みが取れてね。学生なんだから学園祭には参加したいじゃない?それにフータロー君からのお呼びだしもあった訳だし」
一花は気にしないように僕の隣の椅子に座った。そして一つのメールを僕に見せてきた。それは僕にも来ているメールだ。
『せっかくだからいつものメンバーで集まらないか。学園祭初日の15時に三年一組の教室に来てくれ』
「風太郎にしては気が利いてると思うよ」
「ふふふ、だよね。カズヨシ君はまだお仕事かかりそう?」
「もう少しで終わるかな。終わったら二乃と三玖の二人と合流する予定だから一緒に来る?」
「じゃあご相伴にあずかろうかな」
僕の言葉に一花はニコッと笑いながら答えるのだった。
それからしばらくして交代の人が来たのだが、椅子に座っていた一花を見て『誰?』と聞かれたので他校の友人と伝えておいた。同時に来た二乃と三玖はすぐに気づいたようではあるが。
その後は四人で屋台を中心に回る。
「それにしてもなんだってそのウィッグなのよ」
「えー、いい感じだと思ったんだけどなぁ」
「まあ私たち以外には見分けつかないと思うからいいんじゃない…」
姉妹のうち三人が揃えば賑やかなものである。
そんな風に思いながら歩いていると見知った人物と遭遇した。
「あれ?和義さんだ」
「おー、和義は休憩か?」
らいはちゃんと勇也さんの
「こんにちは。勇也さんにらいはちゃん。初日からいらっしゃってたんですね」
「まあな……て、なんだよお
「二乃さんに三玖さん。さっき以来だね」
「らいはちゃん。さっきはお買い上げありがとね。上杉がちょうどいない時で残念だったけど」
「フータローのお父さんも先ほどはありがとうございました」
「おうよ!てか、後一人は誰だ?」
「顔は二乃さんや三玖さんに似てるような…」
一花の正体が分からない勇也さんとらいはちゃんは誰だろうと唸っている。
「ふふふ、らいはちゃん久しぶりだね。一花だよ」
一花はらいはちゃんの顔の近くに自分の顔を持っていき、眼鏡をずらしながら正体を明かした。
「いちっ……」
「しーー…」
一花の名前を口にしそうになったらいはちゃんの口に、一花は自身の指でそれ以上話しては駄目という意味で止めた。
「そっか…」
「なるほどな…」
勇也さんも察したらしく、一花の変装などに納得をしてくれた。
「そうだ。和義、ちょっと…」
そこで勇也さんに手招きされ近づくと肩に腕を回され内緒話の態勢に入った。
「悪いらいは、ちょっと四人で話しててくれないか?」
「いいけど……」
そこで一花と二乃と三玖とらいはちゃんから少し離れた位置まできて勇也さんと話すことにした。
「どうしたんですか?めっちゃ、らいはちゃん怪しんでますよ?」
「無堂の野郎を見なかったか?」
「え!?………あの人ここに来てるんですか?」
驚いてちょっと大きめの声を出してしまったので一花達の方を見るも、こちらを気にせず四人で楽しそうに話している。
「いや、確定要素はないがもしかしたらと思ってな。見回りも兼ねて来てるってわけだ」
「なるほど。であれば、僕はまだ見てないですね。後、あの人は桜にも接近してます」
「桜ってぇと、前に綾先生が言ってた有名人の孫か?」
「そうです。桜は塾の廊下で話しかけられたと言ってました。恐らく、桜のお祖母さんの諏訪楓さんに接近するために。あわよくば、諏訪家に気に入られたかったんだと思いますよ」
まあ、
「あいつの考えそうなことだな」
「桜のクラスの出し物には今から顔を出そうと思ってたので、何かあったら連絡しますよ」
「助かるぜ。こっちも進展あれば連絡する」
そこでお互いに頷き話は終わった。
「
「はいはい。じゃあまたね和義さん。みなさんも」
「ああ」
「ばいばい、らいはちゃん…」
手を振ってくるらいはちゃんに、僕達は振り返した。
「それで?なんの話をしてたのよ?」
やっぱり追及してくるよね。二乃がずいっと聞いてきた。
「う~ん、今は言えないかな…不確定要素が多すぎるし」
「今はってことは、後で教えてくれるの?」
「ああ。時を見てね」
「そっか…ならよしっ!」
「そうね。気にはなるけど、今は学園祭を楽しみましょ」
「うん。この後は桜のクラスに行くんだっけ?」
結局多くの追及がされることはなく、三人はすでに次の予定の話をしている。後で話してくれるという言葉を信じてくれてるのだろう。
「ありがとう皆。大好きだよ」
三人にだけ聞こえるように自分の気持ちをぶつける。
「ふぇ!?」
「あら。カズ君にしては大胆じゃない」
「~~っ……」
驚きの顔の一花ににんまりと笑顔の二乃。恥ずかしがって下を向いてしまった三玖、と反応は三者三様である。
人前でなかったら抱きしめていたかもしれない。それくらい気持ちが昂っているのだ。
「あーあ。ここが人前じゃなかったら熱い抱擁があったかもしれないのに」
「二乃と同じことを今僕も考えてたよ」
「おー、カズヨシ君ってば言うねぇ~」
「………」
「三玖?どうかした?」
「え!?な…なんでもないよ…!」
ぼーっとしていた三玖の肩に手を置きながら聞くとびくっと反応があった。
「どうせ、また妄想の世界に行ってたんでしょ」
「あははは、三玖らしいね。さて、桜ちゃんの教室に行こうか」
そこで再び四人で歩き出したのだった。
いよいよ日の出祭の開幕です。
すでに、和義と風太郎には恋人もいますので、お互いが恋人と楽しむところを書けたらなとは思っています。
まだまだ日の出祭初日。次回以降の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。