屋台を離れた僕達は昨日設置した休憩所に来ていた。竹林と真田は先ほど買ったパンケーキと焼きそばをそれぞれ食べている。
「うーん、美味しい。見た目も良かったけど味もバッチリだね」
「うん。焼きそばも美味しいよ」
「なら良かった…って、あれは…」
そしてちょうどその時。僕達三人の近くに知った人物達が通りかかった。
「よう和義。休憩か?」
「直江さん!お疲れ様です!」
風太郎と四葉である。
「あー!風太郎じゃない。久しぶりだね」
「えっと…どちら様?」
「ははは、冗談きついよー」
こいつのこの顔は冗談じゃなくて本当に分かってないな。
「……」
「え?本当に?本当に覚えてない?」
「風太郎。小学校の頃お世話になったでしょ」
「!お前…竹林か!?」
「うん。正解」
「え…てことは、お前は真田…?」
「ああ。久しぶりだね上杉君」
「マジかよ…」
二人の事が分かった風太郎は口元に手をやり驚きの顔でいる。
「上杉さんと直江さんのお知り合いの方でしょうか?」
「ああ。僕と風太郎の小学校の同級生だよ」
「なるほど!私は中野四葉と言います」
そこで四葉が自己紹介をした後に頭を下げた。
「本当にそっくりだね。さっき会った人達に五つ子だと聞いた時はビックリしたけど」
「他の姉妹にお会いしたんですね」
「しかも風太郎の彼女でもある」
「え!?本当?」
竹林の驚きの顔に恥ずかしそうに風太郎はそっぽを向き、四葉は頭をかきながら下を向いてしまった。
「そっか。良かった」
「?」
竹林が何か呟いたように聞こえたが当の本人はニコニコしてるから問題ないのだろう。
「本当に驚きの連続だね。ところで直江君。勉強の調子はどうなんだい?」
「まあぼちぼちってところかな。そっちは有名進学校に通ってるから大変でしょ?」
「そんな事ないさ。いい刺激になってる。それでも全国模試一位になれなかったのは悔しかったけどね」
真田は本当に悔しそうに空を見上げながら話している。
「全国模試一位ね…」
「僕は二位だった。一位は君でしょ、直江君?」
「まぁね」
「な、なんだかとんでもない話が私の前で繰り広げられているのですが…」
「ふん…」
全国模試一位と二位の言葉が出て四葉はたじろぎ、風太郎は少し面白くなさそうな顔をしている。
「結局君には勝てないか…」
「十分凄いでしょ。全国で二位なんだから。そうだ四葉。驚いてるところ申し訳ないけど、全国三位も目の前にいるから」
「へ?」
「そこにいる竹林が全国三位だよ」
「えーーー!」
僕の紹介に四葉は驚きの声を上げているが当の竹林はピースしている。
「てことはですよ…」
そう言いながら四葉は僕、真田、竹林、風太郎の順番で指をさしていった。そして、
「全国ベスト4がここいるってことじゃないですかー!」
そんな言葉でまた四葉は叫ぶのだった。
「え、ベスト4って…」
「もしかして風太郎…」
「ふん」
「ああ。風太郎が全国四位だよ」
僕の言葉に竹林と真田は驚きの顔をした。
「ふふん、凄いでしょ」
「なぜお前が威張ってんだ」
ドヤ顔を竹林と真田に見せてあげたら、風太郎にツッコミを入れられた。
「いや~、あの風太郎がここまでの成績を残すなんてと思うと感慨深くってさ」
「なんとなく和義の言ってること分かる気がする」
「お前ら言いたい放題だな」
竹林と二人うんうんと頷きながら気持ちを伝えると風太郎は頭を抱えて呆れてしまった。
「それにしても風太郎やるじゃん」
「.........」
「俺より上の順位の奴に言われても嬉しくないんだが」
「ちなみに今は僕と一緒にここにいる四葉とその姉妹の家庭教師をしてるんだよ。こいつの成長は見てて楽しんだよね」
「恥ずかしいからやめてくれ」
「……それが、進学校への道を選ばなかった理由だったね」
そこで真田が口にした。
「ああ。勉強はどの学校に行っても出来るからね。なら、自分が行きたいと思った道を選ばないと勿体ないじゃん?」
「ふふっ、和義っぽいね」
「私もそう思います」
僕の答えに四葉と竹林が笑顔を向けてきた。
「それに、この道を選んだお陰で大切に想える人達と会うことも出来た」
「それってさっき屋台で会った人達?」
「ああ」
竹林の質問に力強く頷いた。
「じゃあ、進学先も上杉君に合わせたりするのかい?」
「うーん…風太郎には合わせないかな。ちょっと今考えてることがあるし」
「へぇ~、和義がそこまで考えてる進路ってちょっと気になるかも」
「まあ、まだぼんやりとしてるんだけどね」
「そうか...」
竹林の言葉にあははと笑いながら答えるも、小学生と時に進学の事を追及された時と違い真田は納得した顔で頷いた。
そこで真田は立ち上がった。
「君に会えて良かった。心残りがあるとすれば、結局最後まで勉強で勝てなかったことかな」
僕に対してそんな言葉を残して歩みを進めて去っていった。
「ちょっと待ってよー。あ、和義、風太郎。連絡先交換しとこうよ......……よし!また連絡するね」
そう言って竹林も真田を追いかけて行ってしまった。
まったく嵐のようだったな。
二人の背中を見ながら、そう思うのだった。
竹林と真田の二人と別れた後、風太郎と四葉も屋台に助っ人とそれぞれの場所に向かった。
僕は僕で日の出祭の見回りの時間になったので、引き継ぎなどをした後に校内を回ることになった。
見回りと言ってもただ見て回るだけじゃない。迷子がいれば辺りを探しながら設置されている救護センターに連れていき放送部に迷子の放送をお願いしたり、小さな雑務を頼まれたり、困っている事があれば相談に乗ったりと様々である。
かく言う僕も歩き回ればあちこちから声をかけられた。腕に付けている実行委員の腕章がなせる業であろう。
ただこの腕章もあれば助かる事もある。それは一緒に回らないかという女子からの誘いがなくなることだ。さすがに仕事中の者に仕事以外の事で声をかけてくるものは少ないようである。
こうやって見回りをしているが、やはり中野さんや無堂先生を見かけることはなかった。他にも手は打っているが中々難しいようだ。
そんな感じで見回りの時間も終わり引き継ぎが終わった頃、桜からメッセージが届いていた。
『そろそろお時間が空いた頃かと思いご連絡しました。よろしければ今からお会いできませんか?場所は……』
桜から指定された場所周辺には人がおらず、遠くからの喧騒は聞こえてくるがここだけ祭から切り離されているかと思えてしまうほど静かだった。
そしてある教室の扉を開いた。
「桜、来たよ」
「あ、和義さん。お待ちしておりました」
その教室では笑顔の桜に迎えられた。
「こちらにどうぞ。クラスから少しだけ和菓子を持ってきたのでよかったらどうぞ」
案内された席に座ると机の上にいくつかの和菓子が並べられた。ちょうど小腹も空いていたのでありがたい。
「じゃあさっそく。いただきます」
「どうぞ。お茶もご用意しておりますので」
そう言いながらもペットボトルのお茶も差し出された。なんだか至れり尽くせりである。
「ありがとね、ここまでしてもらって。桜も食べなよ」
「はい」
僕の勧めがあってから桜は机の上の和菓子を手に取った。
「それにしても、よくこんな場所知ってたね」
「友人である小林さんに教えていただきました。小林さんはこういった情報を多く持っていますので」
「へぇ~、二人いた内のセミロングの
「その印象で間違いありませんよ。ただ…噂話とかそういったものが好きなようでして」
「なるほどね。まあでもそのおかげでこうやって桜と二人でいられるんだ。小林さんには感謝しないとね」
「ここに来る前に頑張ってと激励されました」
ふふふ、と桜は思い出し笑いをした。
桜の友人である小林さんと川瀬さんの二人は、まだ僕と桜が付き合っている事を知らない。普通の付き合いだったら話しても良いだろうが、何せ五人の女子と付き合っているという異様な状況なのだから話そうにも話せないといった状況である。
前田や武田といった信用ある者であれば話しても良いが…まあいずれ伝えても良いかもしれないな。
そんな訳で小林さんは僕と桜をくっつけようと躍起になっているということだ。
「それでどう?日の出祭は楽しんでる?」
「はい!出し物の衣装には最初若干抵抗がありましたが、今では楽しませていただいてます。他のクラスの出し物も小林さんと川瀬さんと一緒に回ることも出来ましたので、充実した時間を過ごせております」
「そっか…良かった」
「和義さんは、逆にお忙しそうであまり楽しまれてないのではないですか?」
心配そうにこちらを見ながら桜は聞いてきた。
「まあ、実行委員の仕事があるとねぇ。それでも初日は八人で集まることも出来たし、ちょこちょこ一花に二乃、三玖に桜と回れたしね。今日もさっき会った竹林と真田の二人と回ったりで意外に楽しませてもらってるよ」
「それなら良かったです。あ、そういえばお婆様が明日、こちらに来られるそうですよ。先程連絡を頂きました」
「そっか…」
お茶を飲みながら答えた。とうとう楓さんも動くようだ。
「……お婆様が来られるのは、例の無堂先生の件でしょうか?」
「なんで?」
「いえ。昨日和義さんからあの方に会わないよう気をつけるように言われましたし。
どうやら無堂先生への警戒が雰囲気に出ていたようだ。
「うーん…まあ楓さん目当てで桜に接触してくるっていうのがあんまり気に入らなかったからね。ちょっと表情に出ちゃってたのかも。それに、そんな人がこの日の出祭に来てるんだ。楓さんに相談はするよ」
「そう…ですよね」
僕の言葉に下を向きながら桜は答えた。もしかしたら無堂先生と会った時の事を思い出しているのかもしれない。
「まあ、桜の件だけでもないんだけどね」
「え…?」
「本人達がいないから詳しくは話せないけど、あの無堂先生って五つ子とも深い因縁みたいなのがあるんだよ」
「そ…そうだったのですね」
「だから、桜には悪いけどこっちの方がメインと言えばメインかな。こっちの事情も楓さん知ってるから」
「悪いだなんてそんな…心配していただけてるだけでも嬉しく思いますよ」
にっこりと桜は答えてくれた。
「あ…あの…話は全然変わるのですが、折角二人っきりになったのでもっとくっついても良いでしょうか?」
嬉しく思うと言った後、急にもじもじと恥ずかしそうにそんな言葉を伝えてきた。
「別に構わないよ。椅子をそっちに寄せればいいかな?」
「いえ。椅子はそのままで。後、なるべく深く座ってもらえると助かります」
「?」
よく分からないが、とりあえず桜に言われた通り椅子に深めに座った。
「では……」
そう意気込んだ桜はおもむろに立ち上がると、僕と向かい合わせになるように近づいてきた。
「し…失礼します」
「え?」
近づいてきた桜はそのまま僕の膝の上に座ったのだ。
「え、えっと桜?これは一体…」
「か…川瀬さんにお借りした漫画にこういったシーンがありまして…その…ずっと憧れていたと言いますか…駄目だったでしょうか?」
顔が至近距離の状態で上目遣いでそんな事言われれば断れない。まあ断るつもりはなかったんだけど。
「全然。桜がしたいのであればなるべく叶えてあげたいから、遠慮なく言って良いんだよ」
桜の頭を優しく撫でながら自身の気持ちを伝えた。
「ふふっ、和義さんならそう言って頂けると思っておりました。じゃあもう一つ今したいことは分かりますか?」
コツンと額をくっつけてきた桜に言われた僕はそのまま彼女の唇にキスをした。
「ん……」
「……これで良かったかな?」
「ふふっ、正解です。でもまだ足りません」
そう言った桜が今度は自ら僕にキスしてきた。
「ん……ちゅ……」
お互いの唇をついばむようなキスを何度か繰り返していたら、桜から提案があった。
「あの…川瀬さんの漫画であった事をしてみたいのですが良いでしょうか?」
「別に良いけど、このままで問題ない?」
「はい。キスには変わりありませんから……では…」
すると先程と同じようにキスをしてきたのだが、なんと彼女の方から舌で僕の唇を舐めてきたのだ。
「んっ……はぁっ、もっと……」
唇を合わせたまま喋るものだから、彼女の吐息が僕の口の中に入ってくる。
今度は僕からゆっくりと舌を入れていった。最初こそ驚いていたようだったが彼女はすぐに受け入れてくれた。むしろ積極的に絡ませてくれるほどだ。
「んぅっ……ちゅっ……んんぅっ……」
長い時間お互いの唾液を交換し合った後ようやくお互いの顔を離した。
「はぁ……はぁ……」
息遣いをしている間も桜の目はトロンとしているようである。
「和義さん……すきぃ……」
すると先程までずっと僕の首に絡ませていた腕に力を込めて近づいてきた。しかも今度は首筋にキスをしてきたのだ。
「ちゅっ……れろっ……ちゅぅ……」
ヤバい!さすがにこれ以上は理性が飛びそう。学校でこれ以上はまずいでしょ。てか桜、何かスイッチが入っちゃったとか?雰囲気が変わりすぎてるんだけど。
なおも僕の首筋にキスをしてくる桜の肩に手を置き、首筋から桜の顔を離した。
「ひゃっ…」
「はぁ……とりあえず落ち着こうか桜。これ以上はさすがにまずいから」
「…………はっ!す、すみません!
ようやく正気に戻った桜は自身の行動に恥ずかしくなったのか顔を両手で覆ってしまった。
「う~~…こんなはしたない女で申し訳ありません。どうか嫌わないでください」
尚も顔を両手で覆っている桜の声は涙声が混じっているように思える。そんな彼女を抱きしめて安心させるように背中をポンポンと撫でてあげた。
「大丈夫だよ。こんなことで嫌ったりしないから。その……男としては嬉しかったし…」
「え?」
「場所が本当に二人っきりだったらお手付きになってたかも…」
「~~…!そ…その…わ、
「ふっ、そういった話はまた今度ね」
「はい…」
ようやく桜も落ち着いたようなので、体を離し軽く唇にキスをした。その後もこのままがいいと言う桜の要望もあり、しばらく二人で抱きしめあったのだった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回はオリジナルキャラでもある桜を中心に書かせていただきました。一応桜もハーレムの一員なので、桜のイチャイチャパートをという思いでのお話です。
五つ子で四葉が最初に出ただけという珍しいパターンですね。
次回からは五つ子がしっかりと出演しますのでご安心を。
では、次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。