~五つ子side~
「後夜祭でも色々催し物やってるんだねー」
「カズヨシもフータローも桜も友達と回るって言ってたから五人で回るよね、どこ行く?」
「じゃあ、せーので...」
「嫌よ。どうせみんなバラバラの所指すのがオチだわ」
「五つ子なのにね」
「五つ子だからよ」
中野姉妹の五つ子である五月以外の四人がベンチに座り、後夜祭に向けて盛り上がっている生徒達の様子を眺めていた。今は和義の手伝いに行っている五月との合流のためにこの場にいるのだ。
三玖が後夜祭を五人で回る場所を確認すると四葉がそれぞれの行きたい場所を指す事を提案するも、どうせ全員がバラバラの所を指すからと二乃は却下した。
二乃が却下をするのも無理はない。今までも何を食べるかなど色々と決める度に意見が合わず大変な目に会ってきたのだから。
五つ子なのになぜ意見が合わないのか四葉が話すと、五つ子だから合わないのだと二乃が話した。
「お待たせしました」
丁度その時、五月が和義の手伝いを終えてこちらに走ってきた。
「和義君には父のお礼をちゃんと言えました。みんなにも改めてお礼を」
「いいよいいいよ。私たち家族の問題でもあったもんね」
五月が姉妹に対してお礼を言おうとしたが、それを一花が立ち上がりながら止めようとした。
「で、でも、あ、あり...あ、ありがとね!」
それでも五月は勇気を振り絞り敬語を外して感謝の言葉を伝えた。今までは和義以外には敬語で話していたが、気分一新という意味で敬語を止めたのだ。
「......なんか違和感しかないわ...」
「そ、そんな!」
そんな五月の行動には姉妹全員違和感しか感じず、ただただにこやかに聞いているのだった。
「あ、三玖には変装までしてもらって...」
「構わない。それにあんなずさんな変装には満足していない」
確かに今回の変装はずさんなものだったのかもしれない。ただヘッドフォンを外し、星のヘアピンを着けただけなのだから。本来であれば、祖父の旅館に泊まる時にするくらい、ウィッグを着けて本当に見た目から見分けがつかない程するものだと三玖はプライドを持っているのだ。恐らく、あの程度の変装であれば和義はもちろん、風太郎でも見分けられるだろう。
「この子はこの子で謎のプライド芽生えてるわ」
「いくら変わったといっても、一般人はあれだけで間違えちゃうんだね」
「中身が変わっても顔は同じだもんね」
「うん」
一花が言うように、たったあれだけの変装でも和義や風太郎などのようにずっと接してこなかった人達にしてみれば全然見分けられないだろう。
四葉が話すように、顔は同じなので最初に見分けるポイントは装飾品になってくるのかもしれない。
それを分かっているからか、三玖も同意した。
「ほらほら、気分入れ替えて後夜祭楽しもう!」
「ええ、どこ行きましょう。やはりせーので...」
「全員の行きたいとこ順番に行くわよ!」
五人が揃ったので改めて後夜祭を楽しむよう提案をした一花の言葉に、五月は先ほど四葉が提案した内容を口にしようとしたが、それを二乃が阻んだ。
全員が希望することをやる。いつものやり方である。
「あ、和義君が後で合流しようと言ってましたよ」
「桜とも後で合流するけど、どっか人がいない所がいいかもしれないわね」
「四葉は私たちのこと気にしないでフータロー君と楽しみなよ」
「う、うん」
「じゃあ、それまでは私たちで楽しも」
三玖の言葉をきっかけに五人はそれぞれの行きたい所を回りながら後夜祭を楽しむのだった。
「あ、なんか音楽聞こえるな」
「たしか、後夜祭中に学生バンドのアンコールライブがあったはずだよ」
「この声俺たちのクラスの浅野じゃねーか?」
「よく分かるね前田は」
僕と風太郎、前田に武田は今休憩所で座って何をする訳でもなくだべっている。
休憩所というのは、風太郎と四葉、それに桜に手伝ってもらった噴水の周りに椅子を並べたところである。他の実行委員の人に聞く限りだと、利用者は結構いたそうである。
「まぁな。浅野といや聞いたか?この学祭中に他のクラスの子と付き合いだしたらしいぜ」
「へー」
前田の言葉に風太郎が興味なさそうに返事をした。
というか、風太郎は浅野が誰なのかも分かってないだろ。
「ははは、モテそうだもんね彼。だけど、入試直前のこの大事な時期に色恋に手を出すのは迂闊と言わざるを得ないね」
「「うっ…」」
恋人がいる身である僕と風太郎には耳が痛い。
「そ、そうなのか…?やっぱ、そう思うよな…」
「何落ち込んでんの前田」
「お、落ち込んでねーよ!お前らみたいな恋人がいる奴らには俺の気持ちなんてわかんねぇーよ!」
僕の声かけに逆ギレをされてしまった。理不尽ではあるが、まあ前田の気持ちは分からんでもないかもしれない。
「まぁ...明日から、またいつもの日常に戻ると思うと落ち込むな...」
「なんでだい?僕は授業をまた受けられることにワクワクしてるよ」
「同じく」
「お前ら異常者にはわかんねーよ」
「大丈夫。前田の気持ち僕は分かってるから」
「直江ぇ~...」
日の出祭が終わり元の勉強の日々がまた始まることに嘆いた前田であったが、同意を求めた相手が悪い。風太郎と武田は勉強の日々がまた始まることに嬉しささえ出していた。僕はまあ勉強すること自体に苦を感じてる訳ではないし、それでも前田みたいにこのお祭りをもっと楽しみたかったという寂しい気持ちも持っている。
「ただ...そうだな...終わっちまう寂しさはあるな」
そんな時、風太郎がボソッと口にした。
「僕的には十分楽しめたけどね。上杉君は違うのかい?」
「微妙だな。基本裏方の手伝いばかりしていたから。最後の学祭で何してんだか」
「四葉のためでしょ。良いところあるじゃん」
「結局のろけかよ」
「ぐっ……」
日の出祭の風太郎は確かに裏方の仕事の手伝いばかりしていた。でもそれは少しでも四葉と過ごすためでもあるからだ。そこにツッコミを入れると前田も乗っかってきて、風太郎は恥ずかしそうにそっぽ向いてしまった。
「ならよー、俺たちとだけでも学祭楽しもうぜ。いつまでもこんなとこに座ってる気か?なんか屋台に食いに行こうぜ?」
「屋台か...そうだな腹減ってるし行くか。ずっと食ってねぇし行けずじまいの店があったんだ。それにこの後はあいつの所に行ってやらないとだからな」
「ちっ…またのろけかよ…」
口角を上げながら話す風太郎。そんな態度に前田は面白くなさそうである。
「なるほどね」
「そういやー、あの姉妹のことなら今日一緒にいるところを見かけたぜ。一花さんもいたから五人勢揃いだったぞ」
「へぇ、前田君。よくあの一瞬で一花さんだとわかったね」
「え!ま、まぁ...お、おかしな話だが...前から一花さんだけはなんとなくわかるんだ」
武田の言葉にどもる前田。そういえば、林間学校の前日に三玖が変装した一花にも違和感を覚えて本人か迫ってたっけ。愛があれば見分けられる、か。やるな前田。
「文句あっかコラ!」
「へーなんでだろうね」
「...さぁな」
「彼氏としては、直江君はどう思ってるんだい?」
「いや、愛の成せる技なんじゃない?」
「やめろー!」
「ふふふ、さすがに彼氏となれば余裕だね」
武田が前田をからかうのに僕も便乗した。風太郎も面白そうな顔をしている。
「上杉君や直江君は当然見分けられるんだろ?」
「「え?」」
「うーん...どうなんだろ?」
「で、できると思う...やったことないが...最初は今以上に戸惑ったな。ただでさえ人の顔を覚えるの得意じゃない。その上あいつら、その利点をフル活用してきやがる。何度騙されたことか...」
困り果てたように風太郎は話しているが良い思い出でもあるのだろう、顔はどこか笑っているようにも見えている。
「あははは、風太郎は苦労してたよねぇ」
「おや、直江君はそうでもなかったのかい?」
「うん、風太郎ほど騙されてなかったかな」
まあ、家出騒動とかで風太郎よりも五つ子と接することも多かったのも一因でもあるだろう。
「なんにせよ。最後まで困った奴らだ」
「よく言うぜ」
「ふと気になったんだけど...君たちは一体彼女たちの誰から見分けられるようになったんだい?」
改めて聞かれると難しい質問である。
最初の五つ子ゲームは髪の長さなんかですぐに全員見分けられたし、その後も違和感で見分けてきたからだ。
「うーん...僕は林間学校の後に同じ髪型にされた時があったけど、その時は全員当てたから誰って答えるのは難しいかな...」
「さすが直江だな。五つ子のうちの四人と付き合うだけはあるぜ」
「それ関係ある?」
「ふむ、では上杉君はどうなんだい?」
「............正直わからん。いつの間にかあいつらのちょっとした仕草だったりで見分けてたのかもな。まあでも四葉は馬鹿正直だったから変装しても分かりやすかったかもな」
「そうか」
風太郎の答えに武田は納得したような顔をした。
「よっしゃ。俺は今から告白しに行く!」
「は?」
「なんでだよ...」
「急にどうしたの前田?」
いきなり前田が告白すると息巻いて立ち上がったので、僕と風太郎と武田は訳が分からず立ち上がっている前田を見上げていた。
「だって今しかないだろ!明日から日常に戻っちまうのなら今しかねー!」
おーー。前田の意気込みに心の中で拍手を送った。
「はぁ…急に何を言い出すんだい。学生の本分は学業にあって...」
「そうだ。学生の本分は学業。それ以外は不要だと信じて生きてきた。だが...それ以外を捨てる必要なんてなかったんだ。勉強も友情も仕事も娯楽も恋愛も、あいつらは常に全力投球だった。凝り固まった俺にそれを教えてくれたのはあいつらだ」
悔しいけど、彼女たちがいなかったら今の風太郎を形成できなかっただろうね。僕だけじゃ無理だった。
「きっと昔のままの俺なら、今この瞬間も和義と二人っきりだったかもな」
「上杉...」
「よし!じゃあ屋台行くか!金持ってねーけど」
「は?金が無ねぇならなんで屋台に行くんだよ」
風太郎の言葉に至極当然の問いを投げかける武田。
「...決まってる。最後までこの祭りを楽しむためだ」
そんな言葉を口にしながら先頭を歩く風太郎。それに僕達三人も続いて後夜祭を楽しむのだった。
「おっ、ここからでもやっぱり後夜祭の声とか聞こえるもんだね」
「ふふっ、それだけ皆さん楽しまれているのではないでしょうか。かく言う
風太郎達と後夜祭を回ってしばらくして前田と武田と別れた。そして、五つ子と桜が揃っているところに僕と風太郎が合流をした。さらにそこから、風太郎と四葉が二人で行動することになったので、今では六人で一つの教室のベランダから後夜祭が行われている方角を眺めていた。
一花の言った通り、後夜祭を楽しんでいる人達の声がここまで聞こえていた。ライブステージもやっていると言っていたし、色々な光で輝いていた。
「フータローと四葉楽しんでるかな?」
「楽しんでんじゃない?上杉がリードしてるところは想像できないけど、四葉がうまいことしてるでしょ」
「確かに。それは想像ができますね」
五月の言葉を皮切りに皆クスクスと笑いだした。
「……それにしてもこんな場所で良かったの?六人で回るくらいなら出来たと思うけど」
「いいのよ。確かに回ることはできるかもだけど、こういうことはできないでしょ?」
そう言いながら隣の二乃が僕の腕に自分の腕を絡めてきた。僕は今、手すりに腕を置いて寄りかかっているような状態なので、僕の二の腕に二乃は自分の腕を絡めている。
「ずるい。私も…」
二乃の行動に対抗するように、反対側の二の腕に三玖が自分の腕を絡めてきた。
確かにこの構図はこういった人目のないところでしか出来ないか。
「むー…今回はお二人にお譲りします」
「あはは…さすがにこればっかりは仕方ないよ」
二つしかない僕の腕が埋まってしまった事に残念そうにしている桜。一花の言う通りでこればかりはどうしようもない。
そんなやり取りを横目に僕は空を見上げてふぅと息を吐いた。
「どうかしたのですか和義君?」
「ん?いや、こんな日常もこれからもずっと続けていけたらなって思ってたとこ。この六人でずっと一緒に…」
僕のちょっとした変化に気づいた五月が気になったのか尋ねてきたので、今の率直な思いを皆に伝えた。
「なに当たり前のこと言ってんのよ」
「うん。私たちはずっと一緒」
「
二乃に三玖、それに桜が僕の言葉を聞いて笑って答えてくれた。当たり前のように答えてくれたのが本当に嬉しかった。
「ありがとう。そんな皆の気持ちに答えるために自分の進路について考えたんだ」
「進路?おじいちゃんの宿で働くんじゃないの?」
「私もそう思ってました」
僕が進路の話を始めたことに一花と五月が驚きの声をあげた。他の三人も同じ考えだったようで驚きの顔をしている。
「もちろん始めはそう考えてたんだ。けど、五人と付き合う事になった時から別の道を考えてたんだ。女優の道を進む一花。料理の勉強をする三玖。教師を夢見る五月。諏訪の家を継ぐであろう桜。そして、多分今でも子どもの頃の夢を追っている二乃」
「…っ!」
僕の話す言葉に反応する二乃。
やっぱり自分の店を持つという夢はまだ持っていたんだ。
「そんな五人と将来も一緒にいるには、て」
「そんな先の事まで考えてくれてたんだ」
「ああ。そして、一つの道を選ぶことにしたんだ。それは……」
嬉しそうに僕の言葉に反応した一花の言葉に答えるように、僕が選んだ進路を皆に伝えるのだった。
今回の投稿も読んでいただきありがとうございます。
今回のお話では、五つ子の後夜祭、和義達男友達の後夜祭、そして和義と彼女達六人での後夜祭を書かせていただきました。といっても、何かしたという訳ではないのですが…しかも、六人の場面が少ないという…すみません。
何はともあれ、このハーレム外伝も残すところ後少しとなっています。和義が五人と一緒にいるために選んだ進路とは?そこら辺はどうぞお待ちください。
では、また次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。