五等分の奇跡   作:吉月和玖

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14.花火大会 前編

今日も少し遅めの朝食を食べてリビングでゆっくりしていると、零奈が話しかけてきた。

 

「兄さん、私は友人のところに行ってきますね」

「おー、友達との付き合いも大事にしないとだもんね。楽しんできな」

「はい!後、今日の夕方から花火大会があるのをご存知ですか?」

「そういえば、あちこちで宣伝してたような…」

「知っているのならいいのです。今日の花火大会は私と行きますから、それまでには用事を済ませといてくださいね」

 

笑顔でそんな事を言ってくる妹。

だが、そんな約束をした覚えが僕にはなかった…

 

「ごめん、そんな約束してたっけ?」

「約束をしなくても、察してくれるのが家族というものです。もしかして駄目でした?」

 

いつもは見せない、少し泣き顔な上目遣いで零奈が僕を見てきた。

こんな顔をされて断れる人がいるだろうか。いや、断じていない!

 

「もちろん、大丈夫だよ。花火大会楽しみだね!」

「はい!さすがは兄さんです。では行ってきますね」

 

いつも以上にご機嫌な妹はそのまま出掛けていった。

何かもう妹の掌の上で転がされているような気がしてならない。

でも妹の願いを叶えるためであれば、問題ないと思ってしまう僕であった。

 

そんな感じで、しばらくボーッとTVを観ていたら、ピンポーンっと玄関のチャイムが鳴った。

風太郎が来たのかなっと思い玄関に出るとそこには意外な人物がいたのだった。

 

「二乃!どうしたの僕の家まで来るなんて」

「こんにちは。渡すものがあるから少しお邪魔するわね」

「それは構わないけど、どうぞ上がって」

 

二乃をリビングまで通して、とりあえずテーブルまで案内し席に座ってもらった。

その間に僕は紅茶でいいかと思いながら、お茶の準備をする。

 

「しかし驚いたな。二乃が家まで来るなんてね。てか、住所教えたっけ?」

 

少し落ち着かないのか、キョロキョロとしている二乃にお茶の準備をしながら話しかけた。

 

「住所についてはパパに聞いたのよ。さっきも言ったけど渡すものがあるのと。ちょっと聞きたいこともあってね。そういえば、親御さんは?」

「ふ~ん、そっか。僕の親は両親共に海外に出張でいないんだよ」

「そうだったのね。だから料理があんなに上手いのね」

「ま、親が居たときから僕が大抵料理してたのもあるけどね。ほいどうぞ。紅茶で良かったかな?」

「ええ、いただくわ」

「砂糖はこっちから取ってもらえればいいから」

 

そう、案内すると凄い勢いで砂糖を入れている。甘党だと聞いたが大丈夫だろうかと心配するほどに。

 

「うん、あんた紅茶を入れるのも上手いわね」

「お褒めにいただけて光栄です」

 

と、大袈裟に礼なんかしてみた。

『何よそれ』と、二乃が笑っている。今日は比較的にご機嫌なようだ。

 

「そんで、まず渡したいものって?」

 

適当なお茶菓子を進めながら二乃に聞いてみた。

 

「ありがと。渡すものはこれよ」

 

鞄の中から、茶封筒を出してこちらに差し出した。

 

「これは?」

「今月分の給料よ。ま、一回分だからたかが知れてるでしょうけどね」

 

そんな言葉を聞きながら、封筒の中身を見た。

中には7500円入っており、これで一人辺り1500だと予想ができた。

 

「でもいいのか?僕が言うのはなんだけど全く勉強してないよ」

「いいんじゃない。ま、あんたはちゃんと五月に勉強教えてたから、全くしてないってことはないでしょ」

「それはそうだけど…」

「つべこべ言わず受け取りなさい!」

「はいはい」

 

ここで色々言ったところで無駄な時間を過ごすことになるだろうと思い、とりあえずお金は預かることにした。

 

「それで?もう一つの聞きたいことって?」

「そっちの方が本命かな。昨日あんたが作った卵焼き、私にも作り方教えなさい!」

「は?」

「『は?』じゃないわよ。あんたが帰った後何度か作ってみたんだけど、あんた程上手く作れなくって。だから、何か作り方に工夫があるのか気になって来たわけ」

 

そんな事で来たのかっていう疑問と、そっかという納得感が出てきた。

 

(そういえば、二乃って料理に関しては妥協しないっぽいしな)

 

少し可笑しくなってきたので、笑うと『何で笑うのよ』っと怒られてしまった。

 

「全然構わないよ。じゃあ今から一緒に作ってみようか」

 

そう言って、キッチンに誘導する。

彼女はもう教えてもらうのが当たり前だったのか、自分のエプロンを用意して来ており、直ぐにそのエプロンを着ていた。

 

「ふ~ん、ここが直江のキッチンか。少し狭いけど、使いやすいように、調味料からなにまで取りやすいところに置いてるわね」

「中野家のキッチンを基準に話されると、どこのキッチンも狭くなるからね」

 

そうツッコミを入れながら準備を進める。

 

「とりあえず、まずは僕が作ってみるから見といてね。あ、どの卵焼きを作ればいいの?」

「昨日作ったの全部よ。安心して、卵は買ってきてるから」

 

そう言って、鞄から大量の卵を出してきた。

てか、マジで断られることはないって思ってたっぽいその行動力に脱帽するしかなかった。

 

僕の料理を見ているときの二乃は、それはもう真剣そのものであった。

メモもしっかりと取っており、本当に料理に関しては妥協しないのだな、と改めて感じるのである。

ここで、勉強もこれくらい真剣にしてほしいと思ったが、今言うのは野暮だなと思い、思うだけに留めた。

僕が一通り作ったのを見せた後、次に二乃が作ったのだが、いきなり僕と同じ味を出せたのだから本当にビックリしたものだ。

 

「まさか、いきなり作れるなんてね。流石、の一言だよ」

 

二人で作った卵焼きを食べながら感想を述べた。

 

「まぁ、私の腕を持ってすればね、と言いたいところでもあるんだけど、あんたの教え方が上手かったのも事実よ。ありがと」

「そう言ってくれると嬉しいよ。こちらこそありがとね」

 

そんな感じで昼下がりの時間を二乃と過ごすのであった。

 

「そういえば、今日の花火大会は中野姉妹も行くの?」

「当然よ!これから帰って準備しなくっちゃ」

 

笑顔で答えてくれる二乃に僕は爆弾を投下した。

 

「そうなんだ。じゃあもちろん宿題は終わってるよね?」

 

その質問に対して二乃は僕から目を反らしていた。

 

「二~乃~?」

「もう!いいじゃない、花火大会が終わってからやれば!」

「いや、絶対しないでしょ。その時は『今日は疲れたからいいや』ってなるやつだから」

「う~~~…」

「はぁ…僕が教えてあげるから今から家に行くよ」

 

その言葉にコクリと、二乃は素直に頷くのであった。

 

ちなみに、宿題をやっていないのは二乃だけではなく、他の姉妹全員がやっていなかったため、急遽姉妹全員での宿題大会になるのであった。

その時、風太郎に連絡すると五月もその場所にいたので、五月は風太郎によって連行された。

 

「宿題終わらせるまで、絶対に花火大会に行かせねーからな!」

 

まさに修羅の如くな風太郎である。

 

「ごめん、風太郎。零奈と約束があるから先に抜けるな。ここ任せてもいいか?」

「全然構わないぞ。待たせるわけにはいかんだろ、早く行け」

 

そんなやり取りが聞こえたのか三玖が聞いてきた。

 

「レイナって誰?」

 

何故か少しご機嫌斜めっぽい。他にも二乃と五月もこちらを睨んでいる。四葉はそれどころではないようで、勉強と格闘中で、一花はニヤニヤと笑っている。

 

「今年小学校に入学したばかりの僕の妹だよ。今日の花火大会に一緒に行く約束をしてたから先に帰らせてもらうね」

「妹さんがいたんですね!では、その妹さんも一緒に直江さんも私達と花火大会に行きましょう!もちろん上杉さんもです!」

 

キリがいいところまでいったのか、四葉からこんな提案が出た。

 

「僕は構わないが、一度妹に確認してもいいか?」

「もちろんです!」

「俺は行かんぞ。ただでさえ今日は自分の勉強ができていないんだ。べんき…」

「お前の妹のらいはちゃんも誘えばいいじゃないか」

 

断る風太郎の言葉に被せて僕が提案した。

 

「らいはちゃんもきっと行きたいだろうな~。でも、風太郎が勉強を優先するばっかりに行けない、可哀想ならいはちゃん!」

「くっ!卑怯だぞ和義!」

「別にいいだろ。零奈がOKすれば、風太郎の家からは僕が連れてくるよ」

「分かった…」

「よし決定!じゃあ先に帰ってるけど、結果は風太郎に電話するから」

 

そう言って、家に向かって走って帰ったのだった。

ちなみに余談であるが、その後の五つ子達はやる気がアップして宿題は直ぐに終わったと風太郎から報告を受けた。

『最初からそうしろ』と、その時の風太郎は嘆いていた。

 

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「ただいま!」

 

玄関には零奈の靴があったので先に帰ってたようだ。

 

「兄さんおかえりなさい。出掛けていたのですね」

「あぁ、家庭教師の生徒が宿題をせずに花火大会に行こうとしてたのが発覚してね。急遽風太郎と宿題を手伝ってたんだよ」

「なるほど、それはご苦労様です」

「それでさ、急で申し訳ないんだけど、今日の花火大会に同行者が増えてもいいかな?風太郎とらいはちゃんとその教え子なんだけど」

「兄さんがいるのであれば別に構いませんよ。それにらいはさんが一緒なのは大賛成です」

「そいつは良かった。じゃあ急いで準備しないとな。零奈は浴衣着ていくの?」

「そうですね。折角ですから」

「了解!それじゃあらいはちゃんの分も用意するか。何故かうちの親がらいはちゃんの分も家に用意してるからね」

「ふふ、うちの親はらいはさんも大好きですからね」

 

そんな話をしながららいはちゃんに浴衣を用意してるから、家に来るように連絡した。

その時のらいはちゃんは大喜びだった。

 

「そういえば、兄さんの生徒さんは男性なのですか?」

「あ、そういえば言ってなかったね。女子だよ」

「へぇ~、そうなのですね。では見極めないといけませんね」

「いや、何をだよ!」

「もちろん、兄さんの生徒として相応しいかどうかです」

 

笑いながら言ってはいるが、その笑顔が怖かったのは記憶に残っている。

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