五等分の奇跡   作:吉月和玖

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18.写真の女の子

「おはよう...」

 

昨夜は五つ子の質問攻めで遅くまで起きることになってしまい、あまり眠れておらず寝不足だ。

まったく、メール一斉送信で宿題を出すなんて聞いたことがないんだが。しかも、そのせいでこっちにまでしわ寄せされるなんて迷惑な話である。

そんな考えをしながらリビングに入ると、零奈が呆れた顔でこっちを見ていた。

 

「まったく、お休みだからといってこんな時間まで寝ているなんて」

「仕方ないでしょ。昨日は中野姉妹からの勉強の質問攻めがあって、中々寝かせてくれなかったんだから」

「皆さんとはうまくいっているようで何よりですね」

「そうだね」

 

そんな風に答えながら椅子に座った。『すぐに朝食の準備をしますね』と言いながら零奈が朝食の準備をしてくれている。今日は甘えておこうと思い、テーブルに突っ伏した。

 

「行儀が悪いですよ。あ、そうでした。この生徒手帳どうするんですか?風太郎さんのですよね」

 

そう言って、朝食と一緒に風太郎の生徒手帳を持ってきてくれた。

そういえば、昨日二乃に渡されたけどそのままで、風太郎に連絡をするのをすっかり忘れていた。

いや、本当は連絡をしようとしたのだが、如何せん中野姉妹からの質問の嵐ですっかり忘れてしまっていたのだ。

まぁ、今日は休みで家庭教師の日でもあるし、後で持って行ってやればいいだろう。そんな風に考えながら朝食を食べていると、そこに中野姉妹からのメッセージが届いた。

 

『フータロー君ピンチ!』

『変質者が部屋に侵入してきたわ!』

『早くしないとフータローが死刑の判決を受けるかも』

『早く上杉さんを助けてください!』

『朝早くから申し訳ないのですが、あなたの友人がまたやらかしたので引き取りに来ていただけないでしょうか』

「...」

 

ご丁寧に全員、現状の風太郎の写メ付きである。中野家のリビングで正座をさせられている風太郎。まじで何してんだよ、と思いながら朝食を急いで食べることにした。

 

「悪い零奈、すぐに行かなければいけない用事ができた」

 

そう言って、すぐに準備を整えて零奈の『いってらっしゃい』の言葉を背に中野家に向かうのであった。

 

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「で、何で寝ている二乃の部屋に侵入したんだ?中野姉妹には説明済みかもしれないけど、僕にも詳しく教えて欲しいな」

 

先ほどまで正座をさせられており、遂に限界が来たのか足をシビらせてリビングに寝ている風太郎に僕はそう話しかけた。

 

「お、俺はただ生徒手帳を返して欲しくて来ただけだ」

「じゃあ、二乃が起きてくるのを待ってれば良かったでしょ。わざわざ部屋に侵入しなくても」

「中身を見られたくないことばかり頭にあり、そこまで考えが至らなかった...」

「はぁ...ちなみに、風太郎の生徒手帳は僕が二乃から預かってたよ。ほら」

「なぜそれを昨日のうちに言わなかった!」

 

生徒手帳の存在が分かると元気になったのか急に起き上がり僕に詰めてきた。

 

「僕だって昨日の内に教えておこうと思ってたさ。でもね、誰かさんがこの娘達に大量の宿題を今日までに解いとくよう一斉メールを送ったから、僕は徹夜でこの娘達に教えてあげてたの。それで風太郎に教えるのを忘れてたってわけ」

「そんなことが...ちなみに全部できているのか?」

「それはもう。解説まで終わってるよ。だから多分みんな寝不足なんじゃない?」

 

周りを見回すとその通りといった顔をしている。一花に至ってはすでにソファーで寝ているし。

まぁ、風太郎がまだ連絡先を知らない二乃には宿題が届いていなかったみたいだけど、グループ通話に参加できない方が嫌だったのか、しっかりと宿題を終わらせている。

 

「てか、何でそんなに必死になってまで取りに来てたのよ。もしかして、何か人に見られては困るものでも書いてたりしてた?」

「当たらずと雖も遠からずだね」

「「「?」」」

「ははは、ことわざなんだけどね。三玖は分かったみたいだね」

「ぴったり当たっていなくても、それほど見当が外れてはいないって意味」

「お、流石だね!」

 

三玖を褒めてあげると照れて下を向いてしまった。

 

「あの、当たらずとも遠からず、とは違うのでしょうか?」

「お、五月いい質問だね。たまにそういう風に言う人もいるけど、それは間違いで、本当は、当たらずと雖も遠からず、って言うのが正しい言葉なんだよ」

「へぇ~そうなのですね、勉強になります」

 

そう言って五月は納得してくれたのだが、一人納得していない者がいた。

 

「そんなのどうでもいいでしょ!中身は結局何なのよ」

「二乃空気読もうよ」

「うるさいわよ三玖」

「はは、まぁ答えを言ってしまえば、大切な写真を入れていて、失くしたことに焦ってたんだよ」

「おいっ和義!」

「なぁーんだ、拍子抜けね。あ、写真と言えばさ、部屋を片付けてた時にアルバムが出てきて久しぶりに見たんだ。みんなも今から見ない?すぐ取ってくるから」

 

二乃はそう言うと部屋に向かって行ってしまった。

 

「本来であれば、昨日の宿題の内容を解説するつもりだったが、すでに和義が解説しているのであれば、今日は家庭教師なしとしよう。だが、しっかりと復習をしておくんだぞ!」

 

風太郎は風太郎で悪役が吐くような捨て台詞を吐いて帰ってしまった。

どうやら、先ほどの部屋への侵入と写真についての追求を恐れての逃亡のようだ。

 

「家庭教師なくなったね。カズヨシはどうするの?」

「う~ん、せっかくだからアルバムを見ていこうかなって思ってるよ」

「そっか」

 

そんな会話をしていると、アルバムを持って二乃が帰ってきた。

 

「あれ、上杉の奴帰ったの?」

「うん。昨日の宿題の復習をちゃんとやっとけって言ってね」

「ふ~ん、あいつにしてはえらく引き際がいいわね。まぁいっか、ほらみんな見てみて。直江にも特別に見せてあげるわ」

「ありがとね」

 

二乃の機嫌がいいのか、僕もアルバムを見せてもらうことになった。

その時にソファーで今まで寝ていた一花もみんなが騒がしくしていたのかようやく起きてきた。

 

「わぁ~、みんな可愛いね!」

「これいつのだっけ?」

「小学6年生」

「京都の写真ってことは、修学旅行の時の写真だよ」

(ふ~ん、僕と同じで修学旅行は京都だったんだ)

 

そんな風に思いながらアルバムを覗き込んだとき、衝撃的な写真が目に飛び込んだ。

 

(なんで、あの女の子の写真がここに...だって、あの女の子は風太郎の...)

 

先ほど風太郎の生徒手帳に大切な写真が入っていると説明していたが、その写真というのが小学生の頃の風太郎とある女の子が写っている写真なのだ。

しかも、その女の子が今目の前で開かれているアルバムにある写真に写っている。しかも、同じ顔が5つ...

 

「懐かしいね~」

「私達も随分と変わってしまいましたね」

 

そんな風に騒いでいる中野姉妹の横で僕は一人頭をフル回転させていた。

ここに写っている女の子は間違いなく風太郎の思い出の女の子だ。小学生の時に嫌ってほど見せられていたし。てことは、この5人の内誰かがその女の子ってことになる。

先ほどの五月の発言通り、5人の雰囲気が相当変わっていることから、僕も風太郎も気付かなかったんだ。

向こうはどうなんだ?風太郎も風太郎で大分雰囲気が変わっているから気づかない可能性だってある。なんせあの頃の風太郎は、金髪でピアスも開けてて、今の風太郎からは想像もつかない程だ。しかも、そもそも風太郎程思い出として記憶に残していない可能性だってある。

そんな考えが出てきたところで、あることを思い出した。それは、僕が五つ子に対して告白をした時の事だ。

あの時、風太郎がある事を切っ掛けに勉強を僕に教えて欲しいと言ってきたことを話したけど、誰かがそれに若干反応をしていたはずだ。

あの時は、自分のことを話すので必死過ぎて、誰が反応したのかまでは覚えていない。

ということは、向こうは既に風太郎のことに気づいている?しかも、風太郎と同じくこの5年間ずっと思い出として記憶に残していたことになる。

まじかぁ~、あの時の自分を恨むよ。

誰だ、と五つ子をそれぞれ見ていたら、さすがに気づかれてしまった。

 

「カズヨシどうしたの?」

「そうよ、私達のことをまじまじと見て」

「ビックリです!」

「もしかして、改めて私達の可愛さに気づいたのかな?」

「え~!?そうなのですか?」

「いや、こうやって見ると、さっきの五月の言ってたとおり、随分と雰囲気が変わったんだなって思ってね。この写真じゃ、どの娘が誰かさすがに分かんないや」

「たしかに、この頃の私達は、同じ髪型・同じ服装、でしたからね」

「今以上によく間違われていたよね!」

 

そんな会話をしながら、五つ子はまたアルバム鑑賞に戻っていった。

何とか誤魔化せたが、やはり誰かが今時点では分からない。

二乃や五月については、当初から今に至るまで風太郎のことを良く思っていない。だが、それは風太郎が思い出してくれていないからの怒りかもしれない。

三玖についてはどうだろう。正直三玖が一番違うような気がする。歴史トーク仲間である僕の友人ってことで、風太郎のことを知ろうとしている動きがあるからだ。だが、それも今の風太郎のことを知ろうとしているかもしれない。二人が会ったのは、京都での一日のみだからだ。

最初から良く風太郎に話しかけている一花と四葉が最有力候補として挙げられるが、この二人の社交性を考えると、誰にでも最初から今のように話しているように感じる。

そう考えると、どの娘も怪しいと思えるし、違うとも思えてしまう。ただ、何か重要な行動を取っていた娘がいたような気がしてならない。記憶力には自信があったのだが...

とは言え、この事は風太郎には黙っていようと思う。言ったところで、ただただ混乱させてしまうことになるだろうし、向こうから何も言ってこないということは、名乗り出ない理由があるのだろう。

 

そんなモヤモヤな気持ちのまま、今日は過ごすことになるのであった。




生徒手帳の所在場所が違うことで、若干原作と変わってます。
そして、和義にだけではありますが、風太郎の思い出の女の子が五つ子の誰かなのかが判明しました。
結構前半の方なので、ここで判明するのは早すぎると思ったのですが、こっちの方が面白いかなって思いこのようにしました。
果たして、和義はいつ思い出の女の子の正体に気づくのでしょうか。
次回からはいよいよ中間テスト編です。
ここは花火祭り同様原作はかなり長いので、また分けて投稿しようかなって思ってます。
どうぞよろしくお願いいたします。
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