19.涙
「ふわぁ~...」
中間試験も近いってことで昨夜は徹夜をしてしまった。
休日とはいえ昼まで寝ているとまた零奈の小言を聞くことになってしまう。
そんな思いでリビングに向かうと以外な人間が居た。
「おはよう。あんた何時まで寝てんのよ」
「おはようございます。二乃さんのおっしゃる通りです。休日でももう少し早く起きるべきです」
「おはようさん、二人共。中間試験に向けて徹夜で勉強してたからさぁ。てか、何で二乃がいるの?」
「別にいいでしょ。暇だったから、また料理研究をしようと思っただけ。あんたがいれば色々なアイデアが浮かぶと思ったのよ」
「暇って...流石は二乃さんですねぇ。中間試験は眼中にないと」
「うっ...」
「何を言っているのですか、学生の本分は勉強です。それなのに試験が眼中にないなどありえませんよ。ね、二乃さん」
零奈は笑顔で二乃に話しかけた。
(あぁ~あの笑顔には勝てないんだよね)
「も、もちろんよ。暇って言うのは言葉のあやであって、ただの気分転換だわ。後であなたのお兄さんに教えてもらおうと思ってたのよ」
苦笑いをしながらそんなことを言う二乃、ご愁傷様。
「はぁ~、まぁいいわ。朝食食べるでしょ。すぐに用意するわよ」
「兄さん。二乃さんの料理は美味しいですよ。ビックリしました」
「零奈もご馳走になったんだ。ありがとね、二乃」
「別にどうってことないわ」
そう言いながら、テキパキと朝食の準備を開始した。まるで自分の家でもあるかのような動きである。
準備された朝食は結構手の込んだものであった。もちろん味も申し分なしである。
「ごちそうさま!流石だね二乃、美味しかったよ」
「お粗末さま。あんたに褒められるといい気分だわ」
そんな会話をしながらも、二乃は食べ終わった食器を片付けようとしている。
「二乃、片付けくらい僕がするよ」
「いいわよ。あんたは、徹夜で疲れてるんでしょ。休んでなさいよ」
そんなやり取りを見ていた零奈はニコニコしていた。
「どうした?随分ご機嫌だな」
「ふふ、お二人のやり取りが初々しい新婚夫婦のようでしたので。仲良くされているようで安心しました」
「しっ......何を言ってるのよレイナちゃん」
顔は笑顔だけどこめかみをピクピクさせている二乃。今は零奈の前だから我慢しているっぽいけど、これは後で何言われるか分からないな。
「じゃあ、二乃の片付けも終わったことだし、始めましょうか」
「始めるって何をよ?」
「さっき自分で言ってたじゃん。勉強教えて欲しいんでしょ?」
「あぁ、そんなことも言ってたわね...」
零奈の前で発言をしてしまったので逃げることもできず、観念して勉強を始めてくれた。零奈も勉強の準備を始めているので僕達の近くで自分の勉強をするのだろう。
「レイナちゃんも勉強するんだ。小さいのに偉いね。ってあれ、小学1年生ってこんな問題解いてたっけ?」
「なわけないでしょ。それはもう小学生の高学年の問題だよ。うちの妹は僕なんか足元にも及ばない程の天才かもね」
「兄さんにそこまで言ってもらえると今まで頑張ったかいがあります」
零奈は僕に褒められたのが嬉しかったのかニコニコしている。
そんな感じで3人で勉強を続けて少し経った頃である。
二乃はもう限界といった顔をしている。
「よしっ、ちょっと休憩をしようか」
その合図で二乃はテーブルに突っ伏してしまった。
「お疲れさん!」
「う~ん、もう無理...」
「二乃さん、お茶です。どうぞ」
「ありがとね、レイナちゃん」
そう言って、零奈が用意した紅茶を飲む。
「わぁ、美味しいわレイナちゃん!紅茶を淹れるの上手いのね」
「いえ、まだまだ兄さんの味にはほど遠いです」
そうは言っているが、零奈の淹れる紅茶は十分美味しいんだけどね。
料理も随分と上手くなってきているし、何もかも僕より上を行きそうだ。
「そういえば、やっぱり二乃は英語が一番得意科目みたいだね。伸び代があるよ」
「そう?」
「うん。そうだ、そんな二乃にあげたいのがあるんだった。ちょっと待ってて」
そう言いながら僕は自分の部屋に向かった。ある本を取りに。
「はいこれ」
「なにこれ?全然書いていることが読めないんだけど...」
ある本を手渡された二乃は僕に聞き返してきた。まぁそりゃそうだわ。
だが、ページを捲っていくうちに二乃の表情が変わってきた。
「これってもしかして...」
「うん。それは現地のフランス料理の本。二乃なら興味あるかなって思ってね。僕はもう読み終わったから、良かったらあげるよ」
「いやいや、興味はあるけど読めなきゃ意味ないでしょ!私、英語すら読めないのよ」
「大丈夫だよ、フランス語と英語は似たようなもんだし。英語を勉強すればすぐに読めるようになるさ」
「そうは言ってもね...」
そう返す二乃ではあるが、やはり中身が気になるようだ。
「最初の方は僕も読めるように手伝うからさ、少し頑張ってみない?」
「...うん」
素直な二乃を見るのもたまにはいいもんだな。
そんな感じで、今日は急遽二乃の家庭教師の日になるのであった。
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そして翌週末の教室にて、遂に中間試験が一週間後に始まることが担任教師から発表された。
「遂に来たね、カズヨシ」
「そうだね、ここが家庭教師としての力の見せ所かな」
「うん、カズヨシとフータローのこと期待してる」
「おう!頑張るよ」
そんなやり取りを行っていると、五月が教科書を持って教室に入ってきた。
「どうしたの、五月?」
「あ、あの。分からないところがあったので直江君に聞こうかと...」
「別にいいけど、風太郎に聞けばいいのに」
「あんなノーデリカシーな人に教わりたくありません!」
どうやら、休憩時間に自習をしていたところに風太郎に声をかけられたそうだ。
最初は自分から勉強をすることを褒めてくれたそうだが、最後に馬鹿だから成績が伸びないと言われたそうだ。
馬鹿はお前だと心の中で風太郎に言ってやった。
「じゃあ、あんまり時間もないし、要点だけ教えておくね」
「はい!ありがとうございます」
そして、その日の放課後、中間試験も近いことから図書室で勉強会を行うことになった。
そこには、何故か頬を赤くしている風太郎の姿があった。
「どうしたの、風太郎?その頬の痣は?」
「大丈夫、フータロー君?」
「さっき二乃を勉強会に誘ったのだが、何故か頬を叩かれた」
「ちなみに、風太郎は何て言って誘ったの?」
「ん?祭りの日に一度付き合ってくれただろ、と。何ならお前の家でもいい、とも言ったな。最後に、お前の知らないことを教えてやる、と言ったらそこで叩かれた。何故だ?」
「ちなみにフータロー君。そこには二乃以外にもちろん人はいなかったんだよね」
「ん?そういえば二乃の友達らしき女子生徒が2人いたな。それが何か関係があるのか?」
「「はぁ~~~~~」」
僕と一花は盛大にため息をつくしかなかった。
「上杉さん!直江さん!問題です。今日の私はいつもとどこが違うでしょうか?」
そう言って四葉が一回転している。
「お前らはもうすぐ何があるかもちろん知っているよな?」
「無視!!」
「風太郎、さすがに無視は良くないんじゃない...ちなみに、いつもとリボンの柄が違うかな?」
「正解です!流石は直江さんですね。ちょっと上杉さんには難しかったかもしれませんね。今は、チェックがトレンドだと教えてもらいましたので、チェック柄にしてみました!」
そう言う四葉のリボンをガシッと捕まえると風太郎は、
「よかったな。お前の答案用紙もチェックが流行中だ」
「わ~~~~~、最先端~~~~~」
「あははは」
「いや一花、笑えないからね」
「まったく、四葉はまだやる気があるだけマシだ。このままでは、とてもじゃないが、中間試験を乗り越えられないぞ。中間試験は、国数社理英の5科目だ。試験まで1週間徹底的に対策していくからな!」
「「え~~~~~」」
一花と四葉が悲痛な声を上げている。
この学校は色々と変わっているところがあるが、試験もその一つだ。
普通であれば、国語は現代文・古文・漢文といったように分かれているのだが、この学校はこれを一つに纏めて試験に出してくる。
その分試験が短い日程で終わるので、こちらとしては楽ではあるのだが。
「お、三玖は苦手な英語の勉強してるんだ。偉いじゃないか!」
「...うん」
「何!?三玖、熱でもあるんじゃないか?勉強なんかいいから少し休んだほうがいいぞ」
(おい!)
「平気。少し頑張ろうと思っただけ」
「よーし!みんな頑張ろう!」
そんな感じでいい傾向の中勉強会が進んだ。
「っと、悪い!今日はこの後夕飯の買い物に行かないとだから先帰るわ。風太郎、後は任せた」
「了解だ」
「あ、あと、さっき五月から聞いたよ。また余計なこと言ったんだって?もうこれ以上拗らせないでよ」
「ぜ、善処する」
「頼むよ」
そう言い残し図書室を後にした。
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夕飯の買い物を終えて、夕飯の準備に取り掛かろうとしたところ丁度雨が降ってきた。かなり土砂降りのようだ。
「うわぁ、洗濯物先に入れておいて正解だったね」
「そうですね。雷も鳴りそうです」
そんな零奈の言葉の後に、ゴロゴロいう音が聞こえてきた。遠いところのようだ。
そんな時、ピンポンっと玄関のチャイムが鳴った。
「宅配便か?」
「両親からの荷物かもしれませんね。たまに送られてきますし」
そんな会話をしながら、玄関に向かうとそこには一人佇む姿があった。
「五月!?何やってるんだこんな雨の中」
「直江君...わ、わたし。わたし...」
五月は雨に打たれてびしょ濡れの状態で、しかも雨で分かりにくかったが泣いているようだった。
いよいよ中間試験が始まります。
原作とは違う展開にしていこうかと思っておりますが、駄文などあれば申し訳ありません。
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