25.母、襲来
中間試験も無事(?)に終わった後の最初の家庭教師の日。
僕は家での用事で少し遅れて中野家に向かっていた。
そんな時、僕はこれからの事を考えていた。
中間試験では二乃の機転で何とかなった。しかし、二乃が言っていたように次は誤魔化せないだろう。
次のハードルをかけるとすれば期末試験。それまでに何とかしてあの娘達の底上げをしなければいけない。
最初の風太郎が用意した小テストで五つ子の得意科目は何となく分かっていたが、今回の中間試験でそれは確定した。そこをうまく活用できればいいのだが。
しかし、得意科目が全員バラバラって本当に五つ子なのかと疑問に思ってしまう。
そんな考えをしながら歩いていると、薬局から三玖が出てきた。
「あれ?三玖どうしたの?」
「あ、カズヨシ。フータローの薬を買いに来たの」
「は?風太郎の?」
三玖と並んで中野家に向かいながら経緯を聞いたのだがツッコミ所満載である。
三玖がコロッケを作ったので、それを風太郎と四葉に食べてもらったそうだ。
そこで、二人の感想がまったく逆だったことに対抗心の火が点いた三玖は、二人が美味しいと言うまではと、コロッケを作り続けたそうだ。
そして、遂に風太郎のお腹に限界がきて倒れてしまったと。
「しかし、さすが風太郎。そこまで付き合ってあげるなんて」
「うん、フータロー優しかった」
うんうん。三玖の風太郎に対する印象も良くなってきてるようで、僕も嬉しく思う。
中野家のマンション前に着いた時、見知った人物2人がマンションから出てきた。
「げ、直江!?」
「直江君...」
「おやおやお二人さんどちらに行かれるのですか?」
二乃と五月である。2人は何か悪さをしたところを親に見つかってしまった時のような顔をして固まっている。
「ちょ、ちょっとランチに行ってくるとこよ」
「ほう~、たしか今日は家庭教師の日だったはずだよね。まぁだから僕はここにいるんだけど」
「カズヨシがフータローみたい...」
「すみません、直江君。今日だけは、今日だけはどうしても行かなければいけないのです!」
「ん?何かあるの?」
「今日行くレストランのランチなのですが、限定ランチが今日までなのです!これを逃す訳にはいきません!」
「お、おう...」
「というわけで、行くわよ五月!」
「ええ!」
五月の食に対する想いに圧倒されている僕を尻目に2人はさっさと行ってしまった。
「五月のプレッシャーに圧倒されてしまった...」
「五月の食事に対する想いには誰も勝てないと思う」
「はぁ、今日は一花も仕事でいないし、三玖と四葉それぞれに風太郎と僕でマンツーマン授業かな...」
「そ、そっか...ふふ」
これからの事を考えていたときにこの有様かと落胆している僕と裏腹に、何故かご機嫌の三玖の2人で中野家に向かう。しかし、そこでとんでもない光景を目にすることになってしまった。
「お邪魔しま...」
「好きだから」
「え!?」
四葉が寝ている風太郎の頭を自分の太ももに乗せて告白をしている現場に遭遇してしまった。
「へ!?ふ、二人共なんで此処に...」
「薬を買ってきたから帰ってきた。そっか四葉はフータローのことを」
「わ、悪い。邪魔をするつもりではなかったんだが...」
「うわぁ-----!!ち、違うんです!これは、嘘が下手だって言う上杉さんを揶揄っていただけです!」
「嘘だったのか...」
「へへ、ひっかかりましたね!私だってやればできるんです!」
「和義。俺はもう誰も信用できないようだ...」
「え~僕のことも」
「お前がたまに一番信用できないと思うときがある」
「え、酷くない...」
先ほどの告白は演技だと言う四葉。あれが演技だというならば、とんでもないなと思う。まさに迫真の演技である。
そんな風に考えていると、テーブルの上の物体に気づいた。
「なぁ、この黒い物体は何?」
「私が作ったコロッケ。もう冷めてるけど食べる?」
「いや。三玖には悪いけど、これはコロッケとは言えないかな...」
「む~、見た目は悪いかもだけど味には自信がある」
いやこの見た目で味が良ければそれは奇跡なのではないだろうか。というか、風太郎の腹痛の原因は食べ過ぎではなく、これが原因のように思えてきた。
「風太郎、悪いけど今日は四葉の勉強を見てやってくれ。三玖には今から料理とは何かを教える!」
こうして急遽三玖の料理教室が始まったのであった。この間の約束のこともあるしいい機会だろう。
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結局今日一日勉強をする時間もなくなってしまった。その代わりに問題集のプリントを宿題で置いてきた。
それを見た五つ子達は恐怖していたがそんなことは知ったことではない。
そんな事もありながら、今は家に帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい、兄さん...」
「ん?どうしたんだ、えらく疲れているように見えるけど」
「そ、それが...」
「あら、おかえりなさい和義」
「げ、母さん!」
そこに現れたのは僕らの母さん、
「実の母親に向かって『げ』とは何です!」
「いや、何も連絡もせずに帰ってきたからビックリしただけだよ。今回はどうして?」
「あなたの学校でもうすぐ林間学校が始まるでしょう?3泊4日で」
「あぁそういえば(最近五つ子達の勉強のことばかり考えていたからすっかり忘れてた)」
「はぁ、自分の通っている学校の行事くらい把握しなさいよ。その間、さすがに零奈ちゃんを一人にするわけにもいかないから私が帰ってきたという訳」
「なるほどね。それじゃあ父さんも?」
「いえ、あの人は今も仕事をしているんじゃないかしら」
「え、置いてきたの?」
「えぇ!これで零奈ちゃんを独り占めです!」
そう言うや否や零奈を抱きしめている。当の零奈はというと何を言っても無駄だと悟り、諦めた顔をして母さんのされるがままになっていた。疲れていた顔をしていたのはこういう訳か。
どうも、父さんも母さんも零奈を溺愛している。というか親バカである。ただ、その親バカ加減が母さんは父さんと比べられないくらい強い。なぜなら、
「そうだ!久しぶりに家族3人でお風呂に入りましょう!」
「却下っ!」
「えぇ~~~」
「はぁ...ごめんけど零奈が母さんとお風呂に入ってあげて」
「...分かりました」
こうである。どうも母さんは零奈だけではなく僕にもベッタリなのだ。もう勘弁してほしい...
さぁ、林間学校編突入です!
ここでオリジナルキャラが出てきたので、これを機会にオリジナルキャラの紹介をします。今更ですが。。。
直江 和義
本作主人公。頭脳明晰、運動神経抜群と周りが羨む青年。
上杉風太郎の唯一無二の親友で一緒にいることが多い。
面倒見のいいことから、女子に人気であるが知らない人から告白されるのをうんざりしている。
妹である零奈には甘いところがあり、お願いされると断ることができない。
直江家では料理担当をしていることから料理の腕前はかなりいい。
歴史好きで、日本の源平合戦~江戸初期と三国志が特に好きであり、プレイしているゲームもそういった傾向である。
直江 零奈
和義の妹。誰にでも敬語で話す真面目な女の子。
兄に負けず劣らずの頭脳明晰ぶり。
人を遠ざける節があるが友人関係は良好である。特に風太郎の妹のらいはとは親友と呼べる程仲良しである。
兄に対しては厳しいことを言っているが、兄のことを慕っている。
兄に近づく女子に対しては品定めをしている節もある。
直江 綾
和義と零奈の母親。
自分の子どものことを溺愛しており、零奈のみならず今でも和義にベッタリなところも。見た目が若く見えすぎることもあり、以前和義の彼女ではないかと周囲に噂が立ったことも。
人当たりもいいこともあり、教師を勤めていたときは生徒からも人気があったが、夫の転勤を機に辞めてしまう。
家事については料理以外は普通にこなすことができるが、何故か料理だけは上手くいかない。夫が料理担当であったが、忙しさもあり現在では和義が料理担当になっている。
胸が小さいことに劣等感を持っている。