五等分の奇跡   作:吉月和玖

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26.入れ替わり

「明日から林間学校です。皆さん今日は早めに休んで明日に備えてくださいね」

 

担任教師のそんな言葉で本日の授業は終了した。

 

「カズヨシ。今日も勉強会するの?」

「あ~、僕はやらなくてもいいと思うけど、風太郎は違うだろうね」

「じゃあ一緒に図書室に行こう」

「そうだね」

 

三玖と一緒に図書室に向かおうとした時である。

 

「おーい、直江。呼ばれてるよ!」

 

クラスメイトからそう声をかけられた。

そっちを見るとどうやら女子生徒が呼んでるようだ。

最近はなくなってきたと思っていたが甘かったか。

 

「悪い三玖、先に行っててくれ。風太郎にはいつものやつだって伝えといて」

 

そう三玖に伝えて女子生徒のところに向かった。

 

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~三玖視点~

 

カズヨシに先に行くように言われたので図書室に向かうことにした。

いつもの席に誰かが座っていたので、そちらに向かったのだが、

 

「よう三玖」

「......何してるの、フータロー?」

 

そこには金髪のカツラにピエロのお面をしたフータローがいて、こちらを向いて挨拶してきた。

私のリアクションがあまりにも薄かったのか、フータローはお面を外して悔しがっていた。

 

「ノーリアクションだと何か泣けてくるな」

「ごめん」

「いや、謝ることはない。それより和義は一緒じゃないのか?」

「カズヨシは誰かに呼び出されてそっちに行っちゃった。フータローにはいつものだって伝えとくよう言われたよ」

「...そうか。最近はなかったのだが、林間学校があるからだろうな」

「?カズヨシは何しに行ったの?」

「あぁ、あいつはよく女子に告白をされているのを知っているか?今回もおそらくそれだろう」

「!」

「イベント事があるといつもそうだ。まぁ今回も断るだろ、十中八九な」

「そうなの...?」

「あぁ、あいつは知らないやつからの告白は今まで全部断ってるからな」

「そっか...」

 

何でだろう?フータローの言葉に安心する自分がいた。

そんな話をしていたら、こちらに走ってくる足音が聞こえてきた。多分四葉だろう。

フータローも先ほどの格好になって待機している。まだやるんだ。

 

「上杉さん!いよいよ明日から林間学校ですよ!」

「四葉」

「うわあああああ!」

 

四葉のリアクションに満足したのか、フータローは仮面を付けたり外したりして四葉の反応を楽しんでいた。でも、ここ図書室ってこと忘れてないかな。

あ、やっぱり怒られちゃった。

 

「それにしてもその金髪のカツラ微妙に似合ってますね。どうしたんですか?仮装道具もこんなに揃えて」

「肝試しの実行委員になったんだ」

「へぇ~、肝試しって林間学校のですよね?上杉さんにしては珍しく社交的ですね」

「ふん。やりたくてやっている訳じゃない。うちのクラスは肝試しの担当らしいんだが、あいつら俺が自習をしている間に面倒な役を俺に押し付けてやがった」

「お気の毒に...」

「(役決めをしている時に自習って)自業自得」

「とびっきり怖がらせてこの恨み晴らしてやる。忘れられない夜にしてやるぜ」

「ノリノリだね。同じクラスなのに五月は手伝ってくれなかったんだ」

「そうです!一人にやらせるなんてあんまりです。ちょっと一組に抗議してきます!」

「やめておけ。三玖の言う通り自業自得でもあるしな。それに林間学校自体がどうでもいいしな」

「むぅ...」

 

あ~あ、四葉ってこういうイベント事結構好きだから、フータローの素っ気ない態度に火が付いちゃた。

斯く言う私もこういうのには興味ないんだよね。でも、今年はちょっと楽しみな自分がいるのもまた事実でもある。

 

「では!林間学校が楽しみになるお話をしましょう!クラスの友達に聞いたのですが、この学校の林間学校にはとある伝説があるそうなんです。その伝説というのは、林間学校の最終日に行われるキャンプファイヤーでのダンス。そのフィナーレの瞬間に踊っていたペアは生涯を添い遂げる縁で結ばれるというのです。どうです?ロマンチックですよね!」

「ふん!非現実的だな」

「うん」

「冷めてる!現代っ子!」

「学生カップルなんてほとんどが別れるんだ。時間の無駄遣いだな」

「でもでも!やっぱり好きな人と付き合いたいって思うじゃないですか!」

 

2人の言い合いを聞きながらふと思ったことを聞いてみた。

 

「...なんで好きな人と付き合うんだろ」

「「え!?」」

 

私の質問に対して二人共固まってしまった。そんなにおかしな事を聞いたかな。

 

「それはね、その人のことが好きで好きで堪らないからだよ」

 

私の疑問に答えてくれたのは、丁度そこに来た一花だった。

 

「三玖にも心当たりあるんじゃない?」

「ないよ...」

 

一花が変な事を言ってくるから焦ってしまった。そんな事ないのに。でも...

 

「一花遅い!もう始めるぞ!」

「えーっと、いったい何を始めるのかな?」

 

フータローはカツラと仮面を付けたままなので一花の疑問ももっともだ。

 

「でも今日も撮影が入ってるんだ、もう行かなきゃ。今は何よりお仕事優先!ごめんね寂しい思いをさせて」

「別に寂しくねぇよ」

「頑張って」

「一花ファイト!」

 

最近の一花は本当に生き生きとしてる。今の女優のお仕事が本当に楽しんだろうなって思えてくるくらいに。

そんな一花の携帯にメッセージがきたようだ。

 

「あーやば...クラスの子たちに呼び出されちゃったんだけど、もう仕事に行かないと。林間学校についてまだ決めてなかったことがあったみたい。てことで、三玖いつものお願い!」

「分かった。四葉、フータロー先に始めてて。後、カズヨシが来たら席外してるとも伝えといて」

「何をするのか知らんが、分かった。逃げるなよ」

「いってらっしゃーい!」

 

いつものというのは入れ替わりだ。五つ子ならではで、こんな時のために鞄の中には皆の特徴を掴んでいるアイテムを常に入れている。

一花への変装はウィッグをかぶるのと、服装を変えるだけで事足りるから結構楽だ。まぁあのテンションでいるのは疲れるけど。本当はピアスも付けたほうが完璧だけどそこまで見ている人はそうそういないと思うから大丈夫。

さてと、一花のクラスは2組だったよね。でも何だろう林間学校について決めてないことって。

そんな思いの中2組の教室のドアを開けた。開ける時から静かだなと思ってたけど、教室には男子生徒が一人だけ居た。

 

「な、中野さん...来てくれてありがとう」

「あれ?えーっと、前田君だっけ...クラスのみんなは?」

「悪い、君に来てもらうために、林間学校のことについてって嘘をついた」

「えっと、一...私に何か用事かな?」

「俺とキャンプファイヤーでのダンスを踊ってください!」

 

何が起こっているのかが分からず、危うく一花って言いそうになった私。その事には気づいていない様で、前田君はそう言うと私の前まで来て頭を下げた。

 

「え?私と?なんで?」

 

頭が回らない。さっきから何が何だか分からなかった。でも更に衝撃的な事を言われた。

 

「それは...中野さんのことが好きだからです...」

 

そっか一花は可愛くって社交的なところもあるから、こういうこともよくあるのかな。でもどうしよう。私は実際に告白されたことがないし。私は一花でもないしで、どう答えればいいのか分かんないよ。

もうパニックしっぱなしで、これ以上ここに居ればバレてしまうんじゃないかと考えてしまう。

 

「ありがとう...返事はまた今度でいいかな...」

「今聞きたい!」

「えっ...えっと、まだ悩んでて...」

「じゃあ可能性はあるんですか!」

「いやぁー」

 

こんなにグイグイ来られるのは苦手である。けど、今の私は一花だ、しっかりしないと。

そんな事を考えていると、前田君から思いもよらないことを言われた。

 

「あれ?何かいつもの中野さんと少し違うような...雰囲気変わりました?」

「!」

「髪...ん?なんだろう...そういえば中野さんって五つ子でしたよね。もしかして...」

 

マズイ!このままだとバレちゃう!前田君は私の気持ちなど知らず、どんどん顔を近づけてくる。

どうしよう...怖い、助けて。

 

(カズヨシ!)

 

無意識ではあったが、助けを求めるように心の中で今一番頼りにしている男の子の名前を呼んだ。

その時だ、

 

「はーい、そこまで。これ以上はさすがにマズイでしょ。彼女、怖がってるよ」

 

そんな言葉と一緒に、私と前田君の間にスーっと男子生徒が入ってきた。

 

 




今回は三玖視点を中心に書かせていただきました。
三玖の前に颯爽と現れたのはいったい誰なのでしょう。まぁ大体想像が付いてると思いますが。。。

という訳で、次回投稿もお待ちいただければと思います。
最近は私生活が忙しく、不定期な投稿になっていますが、ご容赦いただければ幸いです。
そんな中、お気に入りに入れていただいている皆様、本当にありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
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