時は少し遡り...
今回の呼び出しは予想通りでやはり告白のためであった。相手は同じ学年らしいのだが、如何せん話したこともないのでいくら告白されてもという思いだ。
「キャンプファイヤーねぇ...」
この学校には、林間学校の最終日に行われるキャンプファイヤーのダンスで、フィナーレの瞬間に踊っていたペアは将来添い遂げる縁で結ばれるという、良くあるような伝説があるのだ。
別にそういう伝説が作られることがいけないこととは思わない。しかし、そういった伝説やジンクスと言ったものがあると、こういった告白が増えてきて正直迷惑この上ない。
ただ、相手の娘たちの中には純粋に好意を向けていて、勇気を振り絞って告白をしてくる娘もいる。そういった娘たちの告白を断ったときの顔を思い出すだけで胸が張り裂けそうになるのも事実である。かと言って告白を受ける訳にもいかず、といつものように心はモヤモヤとしている。
「とりあえず風太郎達と合流しますか。いつもの風太郎のテンションを受けてたら気分も晴れるだろうし...」
そんな感じで図書室に向かっていたのだが、前方に見知った生徒が教室に入っていくのを見かけた。
(あれって一花だよね。でも、一花からは今日も仕事だからってさっき連絡があったような)
そう思い携帯を見たが、やはり仕事に行く旨の連絡が入っていた。仕事前に忘れものややり忘れた用事でもあるのだろうか、という思いから教室に近づいていった。
「俺とキャンプファイヤーでのダンスを踊ってください!」
おっと、こっちでも告白イベントが発生しているようだ。しかし、一花は転校してきたばかりなのにもう告白されるなんてさすが女優になっただけはある。
このままここで聞き耳をたてている訳にもいかないと思い、立ち去ろうとした。
「ありがとう...返事はまた今度でいいかな...」
「今聞きたい!」
あまりいい流れではないように思えたため、その場に留まることにした。
しかし、一花にしては柔軟な対応ができていないように思える。こういう事には不慣れなのだろうか。
そんな考えをしていると、さらに良くない流れになっているようだ。
どうやらいつもの一花と雰囲気が違うのではないだろうかと相手の男子生徒が疑いだしたのだ。
まぁ疑いたくなる気持ちは分からんでもないんだが。
一花は思考が停止しているのか何も答えることができず、ただただ後ずさりをするだけだ。
そんな彼女を怪しんでいる相手の男子生徒は、徐々に追い詰めている。
(こいつはマズイね。まったくやり過ぎは良くないってのに。まぁこれで一花に貸し一つかな)
そう思いながら一花と男子生徒の間に入った。
「はーい、そこまで。これ以上はさすがにマズイでしょ。彼女、怖がってるよ」
「な!?お前、直江か!」
「カズヨシ...」
(?)
一瞬違和感を感じたが、まずは目の前のことを片付けなければならないと思い目の前の男子生徒と対峙した。
「何勝手に登場してんだコラ!」
「いや~、本当はここまでとは考えてなかったんだけど、ただ事じゃなさそうだったからね。介入させてもらったよ」
そう言いながら、一花を僕の背後に来るよう誘導をした。
一花は僕の服を握っているが、その握った手は震えているように見えた。
「返事くらい待ってあげなよ。少しは人の気持ちを考えてあげなって」
「うるせぇ!俺は中野さんと踊りたいだけなんだ。お前には関係ないだろ!」
大切な友人であり関係者だと言おうと思ったが、一花の言葉で遮られた。
「そんなことない!カズヨシ君は私にとって大切な人だから。それに、キャンプファイヤーはこの人と踊ることになってるし」
「へ?」
「嘘だぁーーーーー!!」
僕のすっとんキョンな返事は彼の絶叫でかき消された。
「ま、待てよ。直江ってたしか色んな女子から告白されていて。それを尽く断っているって聞いたことがあるぞ。まさかそれは中野さんと付き合っているからなのか...」
「そ、そうだよ。私とカズヨシ君はラブラブなんだから」
そう言って一花は僕の腕を組んできた。
「そ、そうだったのか...」
彼はあからさまに残念そうに項垂れている。
「あ、この事は誰にも言わないでほしいんだけど」
「何でだよ。自慢すればいいじゃないか」
「この事が広まって、もしかしたら一花に迷惑がかかるかもしれないんだ。一花を守ると思って、頼む!」
僕は頭を下げて彼にお願いをした。
「そこまで言われたら...分かったよ、誰にも言わねぇよ」
「ありがとう」
「けっ!テメェのためじゃねぇよ、中野さんのためだ!」
頭を掻きながら彼はそう答えてくれた。本当はいい奴なのかもしれない。
「あの...私が今聞くことじゃないことは分かってるんだけど、何で好きな人に告白しようと思ったの?」
「ホント、それ中野さんが言うセリフじゃないよね...そーだな、とどのつまり、相手を独り占めしたい!これに尽きる」
「!」
「おい!俺は中野さんを困らせないためにこの事は誰にも言わねぇ。お前も中野さんを困らせるんじゃねぇぞ」
「分かってるよ。行こうか一花」
そう一花に向かって手を差し伸べた。一花は一瞬戸惑ったがすぐに僕の手を握ってくれた。そのまま、彼の前から立ち去ったのだ。ここまですれば彼には印象を付けられるだろう。
彼から見えなくなったくらいのところで、僕は一花に切り出した。
「それで、どうすんのこれ?
「え!?」
立ち止まり僕の方をビックリした顔で見上げてきた。
「さっき、僕のことを一度だけ『カズヨシ』って呼んだでしょ。後から『カズヨシ君』に変わってたけどね。あの時は余程動揺してただろうから仕方なかったけどね」
「はぁ、さすがカズヨシ。その観察眼は黒田官兵衛の如くかな」
そう言いながらウィッグを外し、ヘッドホンを付ける三玖。あの呼び方がなかったら本当に一花と思っていた程三玖の変装は完璧だった。流石五つ子である。
「僕がうまく口止めが出来たから良かったけど、あのままだったら僕と一花が付き合っているって噂が学校中に広まってたよ。自分で言うのもなんだけど、僕って結構有名みたいだし」
「ご、ごめん...」
「こっちこそごめんね。責めるつもりじゃなかったんだけど。よく頑張ったよ、三玖」
そっと頭を撫でながら伝えると、『...うん』と小さな声で答えてくれた。
「そういえば、勝手に告白断って良かったの?」
昇降口に着いたところで三玖に聞いてみた。
「大丈夫だよ。一花、今は仕事優先だって言ってたし」
「それならいいけど。ただなぁ、キャンプファイヤーのダンスどうするかな...」
「......」
三玖と話しながら昇降口から外に出ると、風太郎と二乃・四葉・五月が待っていた。
「どうしたんだ?」
「これから上杉さんの林間学校で着る服を見に行くことになりまして、それで二人を待ってたんです」
「さっき四葉からメッセージが来てた」
「それ早く言ってほしかったな三玖さん」
ということで、急遽風太郎の服を見に行くことになった。
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現在、五つ子(一花以外)が風太郎に似合いそうな服を見繕っている。
そして、それぞれが選んできた服を実際に風太郎に着てもらいお披露目をする運びとなったのだ。
「では、まずは私からですね!普段から地味目な服装なので、派手な服を選んでみました!」
「多分だけどお前ふざけてるな?」
(いや、四葉のことだから素かもしれないよ)
四葉の選んだ服は派手なのだが、服にはこれでもかって程動物の絵柄が載っていた。四葉には悪いが僕は着ないかな。
「フータローには和装が似合うと思ったから、和のテイストを」
「和そのものですけど!」
(たしかに似合っているんだが、林間学校に着ていくのはちょっと...)
三玖が選んだのは、華道などの家元が着ていそうな服装である。先にも思ったが林間学校に着ていくようなものではない。ただ、ちょっと僕は興味ありだ。家の中であればいいかも。
「私は男の子の服がよく分からなかったので、男らしい服装を選ばせていただきました」
「お前の男らしい像はどんなだよ!」
(五月にとって男らしい服装ってこんなだったんだ。意外だ。ってか、風太郎似合わなすぎでしょ)
五月が選んだのは、所謂ヘビーメタル系の服であった。これを着て林間学校にはさすがにない。
「......」
「二乃本気で選んでる」
「ガチだね」
「あんたたち真面目に選びなさいよ!」
「(やっとまともなものが出てきた)うん、流石二乃だね。センスあるよ」
「当たり前でしょ!」
二乃の選んだ服を褒めてあげたが、そっぽを向いてしまった。
二乃が選んだ服は、普段風太郎が絶対に選ばないようなものだが、風太郎に似合っていた。うん、やっぱりいいチョイスだ。
結局二乃が選んだ服を買うことにした。風太郎ではなく五つ子がだが。
「本当にいいのか?買ってもらうことになって」
「いいんですよ!気にしないでください!」
「うん」
「そうよ!だっさい服装で私達の近くにいられても迷惑だしね」
「うーん、男の人と一緒に服を選んだり買い物をしたりして、これってまるでデートって感じですね!」
「はは、四葉って意外にロマンチストだね」
「こ、これはただの買い物です。学生の間に交際だなんて不純です」
「あー、五月ってば上杉さんみたいなこと言ってる」
「一緒にしないでください!私達はあくまでも教師と生徒、一線を引いてしかるべきです!」
「言われなくても引いてるわ!」
「はは、流石は五月だね」
「!」
五月に声をかけたのだが、何故かそっぽを向かれてしまった。
「ほら、そんなやつほっといて残りの買い物済ませるわよ」
「そうですね。男性お二人はここで待っていてください」
「OK」
「は?なんでだよ」
「いいからそこで待ってなさい!」
「そうだよ、ここで待ってようよ風太郎」
「そうはいくか!さっきは俺の服を勝手に選んでいたんだ。今度は俺がお前らの服を選んで...」
「下着!」
「買うんです!」
「待ってまーす」
「だから言ったのに...」
「デリカシーの無い男ってほんとサイテー!」
相変わらずの風太郎節である。そんな時携帯に着信があった。
「もしもし、母さん?どうしたの」
『あ、和義。近くに風太郎君っている?」
「いるけど、何かあった?」
『流石私の息子。察しが良くて助かるわ』
「で、何があったの?」
『うん、落ち着いて聞いてね......』
母さんからの電話が終わったので、四葉と仲良く言い合っている風太郎に話しかけた。
「風太郎、四葉と仲良くしているところ悪いけど、ちょっといいか?」
「仲良くなんてしてねぇよ!」
「いいから。悪い四葉、僕達用事ができたから先に帰るね。3人にも伝えといて」
「分かりました!直江さんもしおりをちゃんと読んでおいてくださいね」
ブンブンと手を振る四葉に軽く手を振って風太郎と一緒にショッピングモールを後にした。
家に向かう最中、風太郎に先ほどの電話の内容を説明した。
「和義、どうしたんだ、いきなりお前の家に来いだなんて」
「らいはちゃんが学校で倒れたって」
「な!?らいはが!」
「それで勇也さんが仕事で抜けれないことを考慮して、うちで預かることになったそうだよ。丁度母さんが今家に居たからさ」
「綾さん帰ってたのか!?」
「そうなんだ!僕の林間学校に合わせてね。僕が林間学校に行っている間に零奈が一人になることを考えて帰国したみたい。ちなみに、うちに預かることを提案したのはその場にいた零奈だってさ」
「そうか...」
「僕も褒めてあげるけど、風太郎からも零奈にお礼を言っといてくれ」
「もちろんだ!」
本当はもう少し早く走りたかったが、風太郎のペースに合わせて家に向かっている。おそらく今の風太郎であれば、僕のペースに合わせることはできるが、着いた時に倒れてしまう可能性もあるからだ。それでは本末転倒である。
家に着いた風太郎は一目散にらいはちゃんが寝ている客間に飛び込んだ。
「らいは!無事か!?」
「こ~ら!心配なのは分かるけど、病人が居る部屋で大声出さないの!」
「あ、すみません。つい...」
「ごめんね。お買い物してたんでしょ。なんか熱みたい...」
「お前は身体が弱いんだ、無理すんな」
母さんに謝りながらも、風太郎はらいはちゃんの近くで座り込んだ。
「母さん、ありがとね。面倒見てくれてたんでしょ」
「これくらいどうってことないわ。どうせ暇してたんだしね」
「それでもだよ。それに零奈も。大人顔負けの判断をしてたんでしょ。流石だよ。ありがと」
そう言いながら近くまで来ていた零奈の頭を撫でてあげた。
「兄さんに撫でてもらえるのであれば、この位何てことありません」
「こんなので良ければいつでも撫でてあげるよ」
「えへへ」
「む~。お母さんだって頑張ったんだから、お母さんのことも撫でてくれてもいいと思うな!」
「あ~、はいはい」
ここで拒否すると後で面倒になるので、素直に母さんの頭も撫でてあげた。
「えへへ」
「綾さん、零奈。この度は本当にありがとうございました」
風太郎は座ったままこちらを向き、そのまま頭を下げた。
「いいっていいって、勇也君の娘さんであれば、私にとっても娘みたいなもんだし。いつも居ない分、居るときは頼って頼って」
「はい...」
らいはちゃんの無事が確認できたので、僕と風太郎は夕飯を食べることにした。今日は風太郎もうちに泊まることになったのだ。
「風太郎の布団はあんまり良くないけど、らいはちゃんの横に敷いておくから、少しは休みなよ」
「ああ、サンキューな。お前にも頼りっきりだ」
「いいってことよ。持ちつ持たれつでしょ」
らいはちゃんは薬が効いたのか、その後はぐっすりと眠ってしまった。とりあえず一安心である。
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次の日の朝。
いつもより早めに起きた僕は朝食の準備の前に客室に様子を見に行った。
「風太郎、お前...」
そこには、昨日と同じ姿勢で座ってらいはちゃんの様子を見ている風太郎の姿があった。
「ちゃんと寝たんだろうね?」
「あぁ、少しだが休ませてもらったさ」
たしかに布団には多少の乱れがあるが、本当に少ししか横にになっていないのだろう。まったく、相変わらずのきかん坊である。
「はぁ、朝食を作るからこっち来て食べな」
「分かった...」
朝食の準備が出来た頃に零奈も起きてきたので3人で朝食を食べることにした。ちなみに母さんはまだ起きてこない。
「で、林間学校は行かないの?」
「あぁ、あの状態のらいはを置いてとてもじゃないが行けない」
「言うと思ったよ。そっか、じゃあ風太郎が行かないなら僕もサボるか」
「兄さん!?」
「お前は関係ないだろ!」
「親友がいない林間学校なんて何も面白くないしね。それだったら、家で勉強してた方が有意義だよ」
「はぁ、お前って奴は...」
「呆れ果てました。しかし、それでこそ兄さんですね。では、私も今日は学校を休みますか」
「おいおい、零奈まで付き合わなくていいんだぞ」
「私も、らいはさんがいない学校なんて行っても意味がありませんから」
そんな零奈の言葉の後、3人で笑いながら朝食を食べるのであった。
そろそろバスが出る頃だろうか。中野姉妹には悪いことをしちゃったかもしれないな、そんな考えをしているとそこに勇也さんが家に駆け込んできた。
「らいは!無事か!?」
本当に親子である。
「親父、まだ寝てるんだ静かにしろ」
「看病してくれてたのか。ってもう、林間学校のバスは出てんじゃないか?」
「そうかもな。でもいいんだ、俺と和義は参加しないからな」
「和義お前もか...」
「はは...」
「さてと、親父も帰ってきたし、俺は少し休ませてもらうわ」
そう言ってらいはちゃんの近くから立ち上がり移動をしようとする風太郎。そんな風太郎の近くにしおりが落ちていたのを勇也さんは拾い上げた。付箋をいっぱい付けているしおりを。
「風太郎忘れ物だぞ。早く帰れなくて悪かったな。一生に一度のイベントだろ。今から行っても遅くないんじゃないか」
そう言ってしおりを風太郎の頭にポンッと勇也さんは置いた。
「バスも無いし、別に大丈夫だ」
そんな時だ。
「あ~お腹すいた~」
そんな言葉と同時にらいはちゃんが起き上がったのだ。
「らいは、熱は?」
「治った!っていうか何でお兄ちゃんと和義さんはまだいるの?ほら早く行った」
そう言いながら風太郎を押して行かせるようにするらいはちゃん。空元気かもしれないが、昨日よりは大分良くなっているようではある。
「俺の気遣いを返せ!」
「ありがとっ。私はもう大丈夫だから、林間学校行ってきて!」
「しかしバスが...」
そんなやり取りをしているとようやく母さんが起きてきた。
「朝から騒がしいわねぇ~」
「綾先生!おはようございます。昨日からすっかりお世話になっております」
「あら、勇也君じゃない。おはよう。昨日からのことは気にしなくていいわよ。っていうか、やっぱり2人は林間学校に向かわなかったのね」
「ある程度予想済みってこと?」
「まあね。まったく、準備するから少し待ってなさい」
そう言って洗面所の方に向かった。
「あ、そうだ。零奈ちゃん、お泊まりの準備は終わってる?」
「はい!もちろんです」
「流石は零奈ちゃん。じゃあ、玄関に持って来といてね」
「分かりました!」
「零奈?君たちは何の話をしているのかな?」
「すぐに分かりますよ。兄さんは母さんの行動力を甘く見ていたようですね。まぁ、斯く言う私もこればっかりは想像していなかったのですが」
「ま、まさか...」
「恐らく今兄さんが想像している通りですよ」
「ん?どうした和義?」
「いや、自分の親のことなのだが、頭が痛くなってきた」
僕が予想していたことはこの後すぐ現実となるのであった。
母さんの準備が終わったとのことなので、皆で外に出る。らいはちゃんはまだ病み上がりということと勇也さんが今日から休みになったこともあり、2人は上杉家に帰っていった。
丁度それと入れ違いに中野家の車がうちの前に止まった。中からはぞろぞろと中野姉妹が出てきている。
「お前ら...!?」
「カズヨシ、フータロー」
「おっそよー」
「おはようございます!上杉さん、直江さん」
「ったく何してんのよ」
「みんな...!え、バスは?」
「見送らせていただきました」
「は!?」
「肝試しの実行員を任されそうになったのですが、暗いところで一人待機するなんて私には無理です。オバケ怖いですから。上杉君、あなたがやってください」
「......ったく、しゃーねーな」
そんな風に言う風太郎であったが、その顔はどことなく嬉しそうである。
「それよりも、お二人共家の前で何をしているのですか?レイナちゃんまでも」
「はは、すぐに分かるよ」
「?」
丁度そこに大型のキャンピングカー、所謂バスコンと言う名の車が家の車庫から出てきた。
運転席から出てきたのはもちろん母さんである。
「おまたせ!さあさあ乗った乗った!ってあら?どちら様?」
「父さんから聞いてるでしょ。今、僕と風太郎が家庭教師をしている生徒さん達だよ」
「あぁ、マルオ君とこの」
「父をご存知なのですか!?」
「そりゃあ元教え子だもの」
「え?元教え子?」
「え、でもどこから見てもカズヨシ君のお姉さんなんじゃ」
「あら!そう見える?」
「う、うそでしょ...もしかして...」
「カズヨシのお母さん?」
「そうでーす!和義と零奈ちゃんのお母さんでーす!気軽に綾さんって呼んでね」
「えーーーーー!信じられません!」
「事実だ。俺も最初に会ってから今までの間にほとんど変わりがないからビックリしている」
「うん!いい反応だ。それで、マルオ君の娘さんたちがどうしてここに?」
「えっと、直江君と上杉君のお二人が林間学校のバスの集合場所に来られなかったので、私達で迎えに来たのです」
「へぇ~、仲良くやれてるみたいじゃない」
「まぁね」
「なら丁度良かったわ。今からこの車を使って4人で林間学校に向かうところだったのよ。あなた達もついでに乗せていってあげるわ」
「お待ちください。私は旦那様よりお嬢様方のことを任されております。いくら、家庭教師の親御さんとはいえ、大事なお嬢様方をお預けする訳にはまいりません」
「じゃあ、その旦那様が許可すればいいのよね」
「え、それはそうなのですが」
「いいわ、ちょっと待ってなさい」
そう言うや否や母さんはどこかに電話をした。まさか......
「もしもし、久しぶり!元気してる?...忙しいところ悪いわね。今から私の息子を林間学校に連れて行くんだけど、目の前にあなたの娘さん達がいるのよ。ついでに乗せていこうと思ってるんだけどいいわよね?...うん、分かってるって、じゃあ今から運転手さんに替わるわね、はい!」
「え?...お電話替わりました。旦那様!いえ、はい、はい、かしこまりました。ではそのように致します。失礼致します」
そこで運転手さんが電話を切った。本当に中野父に電話したのかこの母親は。
「大変失礼致しました。先ほど旦那様より許可をいただきましたので、どうかお嬢様方の事、くれぐれもよろしくお願い致します」
「まっかせなさいって!」
運転手さんが深々と頭を下げているのに対して、自分の胸を叩いて答えている母さん。自分の母親ながら本当に凄い人である。
「よし!あなた達のお父さんから許可をもらったし、ここからは私が責任持って送らせてもらうわね!さあ乗った乗った」
母さんの号令の元、全員バスコンに乗り込んだ。
「みんな乗ったわね!では出発進行!」
「「「「「「おーーーーーー!」」」」」」
母さんの言葉にテンションが上がっている風太郎と中野姉妹が答える。
一方の僕達兄妹はというと、
「「おー......」」
これからどんなことが起こるのか、心配で心配で堪らず、テンションダダ下がりである。
そんな中、一路林間学校に向けて、母さんの運転するバスコンは出発するのであった。
いよいよ本格的に林間学校がスタートしました。まぁ、まだ現地についていないのですが。。。
原作では江端さんの運転する車で林間学校に向かいましたが、こちらでは直江母の運転する車で向かうことにしました。しかも零奈付きです。
果たして無事に林間学校を過ごす事ができるのでしょうか。
次回更新がちょっと遅くなると思います。
見てくれている皆様、本当に申し訳ありません。