五等分の奇跡   作:吉月和玖

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28.お揃い

僕達が乗っているバスコンは順調に目的地、林間学校の宿舎に向かっている。

 

「♪~~」

 

僕は助手席に座っているのだが、隣で運転している母さんは上機嫌に鼻歌交じりに運転をしている。

 

「母さんやけに機嫌いいね」

「え~、だって久しぶりに子ども達と旅行ができてるんだよ。機嫌も良くなるよ」

「旅行じゃなくて送迎ね」

「ぶぅ-、いいじゃない旅行で!」

「てか、いつから計画立ててたの?どうせ、僕と風太郎が普通に林間学校に向かってても付いてきてたんでしょ」

「......何のことか分かりません」

「その間が物語ってるよ」

「いいじゃない!もう、本当は内心嬉しいくせに」

「まったく思ってないよ!はぁ...どこの世界に高校生の息子の林間学校に付いてくる親がいるんだって話だよ」

「いるじゃない、目の前に」

 

もう駄目だ、まったく話が通じない。こういう時の計画性については母さんは抜きん出ている。どうせ、近くにキャンピングカーを設置できる場所も調べ済みでしょ。

 

「あれ?もう反論しないんだ」

「無駄だって悟ったの!どうせ、宿舎の近くにキャンピングカーを泊める場所予約済みなんでしょ」

「流石、和義!もうお母さんのこと何でも分かってるんだから」

 

母さんはますます上機嫌になっている。

機嫌がいいといえば後ろのみんなもテンションが高いのか盛りがっているようだ。

特に風太郎は誰もが想像できない程ハイテンションである。

 

「そう言えば、零奈ちゃんえらく中野さん達に懐いてるわね。こういう時、いつもだったら和義にベッタリなのに。そう、私やお父さんではなく和義に...」

 

自分の言葉に落ち込んでいる母さん。こっちもこっちでテンションが高いようだ。

今まで気にしたことがなかったが、確かに不思議ではある。

何しろ零奈は、家族や上杉家以外の人達には自分から話しかけたりしない。だからといって友人が少ないという訳ではない。人を惹きつける何かがあるのか、学校では常に周りに誰かがいるようだ(らいはちゃん談)。

そんな零奈が中野姉妹にはすぐに打ち解けていて、今では笑いながら話もている。

 

「フィーリングが合ったんじゃない。うかうかしてると、母さん達より中野姉妹の方が好きになるかもよ」

「いやぁ-!それだけは...」

 

母さんを揶揄いながら外を見ていると若干だが雲行きが怪しくなってきた。

心配性ではあるかもしれないが、少しでも天気が悪くなると立ち往生になってしまう可能性もある。

そう思い、携帯でこの辺一帯の天気図を調べることにした。

 

「どうしたの?いきなり携帯を見たりして。もしかして、お母さんとの話に飽きてきたの...」

「一々落ち込まない!ちょっとだけ雲行きが怪しいと思ったから、この辺の天気図や雲の動きを見てるだけ」

「雲行きって...普通だと思うけど」

 

母さんの言う通り、他の人が見たら気にしないレベルかもしれない。

けど、念には念を。もし気のせいであれば、それだけでもいい情報である。

ただ、こういう時の勘って結構当たったりするものだ。

 

「母さん次のSAで一旦停めてもらっていい?多分母さんが予約してるであろう場所に遅れる連絡をいれなきゃだから」

「ふ~ん。和義が言うんだったら間違いなさそうね。分かった」

 

という訳で、丁度すぐSAが見えてきたのでそこに入った。

車を停めると同時に母さんんはすぐに電話をかけている。僕達は休憩がてら辺りを散策することにした。

 

「う~ん。やっぱりずっと座ってると体がカチコチになっちゃうね」

「一花、あんたはずっと寝てたじゃない」

「あははは...」

「辺りの山、雪で覆われてる...」

「おぉ-!どこか近くに積もってないかな?」

「やはり、少し肌寒く感じますね」

「おい、和義!らいはに何か買って帰ろうと思うんだが何がいいと思う?」

「いや、どんだけ旅行気分だよ!あんまり大きすぎると林間学校では邪魔になるし、キーホルダーとかでいいんじゃない」

「それもそうだな!ちょっと選んでくる」

「まったく...とりあえず少しの時間だけど、それぞれ自由行動でいいと思うんだけど、どう?」

 

みんな特に反対意見もないようで、それぞれ行きたい場所に向かって行った。

 

「兄さんはどうするのです?」

「う~ん、別に買いたいものも無いしなぁ。零奈は何か欲しいものはないの?」

「私も特には」

「じゃ、みんなの様子を見る感じでぶらぶらしますか」

「はい!」

 

最初に見つけたのは、一花と二乃だ。

天然石で作られたアクセサリー関係のコーナーを2人で見ていた。

 

「何かいいのあった?」

「あ、カズヨシ君」

「う~ん、まぁSAだったらこんなもんかなってとこ。あ、でもこれとか可愛くていいかも」

「本当ですね。これならお揃いとかできるかもです」

「お、レイナちゃんもやるね!あれ、二乃買わないの?」

「今はいいわ。他を見に行きましょ」

 

と言い残し一花と二乃は他の場所に移動をした。

僕は気になったものがあったのでそれを手に取り、会計に向かうのであった。

 

次に見つけたのは、三玖と五月だ。

2人はお土産のお菓子コーナーで色々と物色しているようだ。

 

「どう?気になるものでもあった?」

「カズヨシ...」

「直江君!実は困っているんです。どれも美味しそうで」

「五月はずっとこんな感じ。あまり多く買っても食べきれないと意味ないし」

「そだね。さっき風太郎にも言ったけど、今後の林間学校には邪魔になっちゃうし。三玖は何か見つけたの?」

「うん。この抹茶で作られたチョコクッキーにした」

「へぇ~、そんなのもあるんだ。って五月、決め切らないなら好きなの買いな。母さんにお願いして、車の中に置いとくから。これじゃあ、いつまで経っても出発できないよ」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

そう返事をした五月はこれでもかって程買い物カゴに入れていき三玖と一緒に会計に向かった。

 

「あんなに買って食べきれるのでしょうか?」

「まぁ、五つ子だし、みんなで食べればいけるんじゃない...」

 

五月の買う量に兄妹で若干引きながらも、そんなに買うのであればここで買うものもないかと思い、別の場所に移動することにした。

 

最後に見かけたのは風太郎と四葉である。

2人はキーホルダーの中からどれにするか迷っているようだ。

 

「風太郎は分かるが、四葉もキーホルダーに興味があったの?」

「いえ、私が欲しいという訳ではなく、らいはちゃんのを一緒に選んでいたんです」

「なるほどね。って風太郎その龍が剣に巻きついてるのはやめとけ!」

「ん?カッコよくないか?」

「カッコいいかもしれないが、らいはちゃんは女の子だろ」

「あはは...先ほどからこんな感じで、中々決まらないのです」

「まったく...零奈はどれがいいと思う?」

「そうですね、これなんかいいんじゃないですか?」

 

零奈が手に取ったのはご当地キャラなのか、果物の着ぐるみ?を着た動物である。

まぁご当地感があっていいんじゃないかと思う。龍よりは特に。

 

「おぉ、レイナちゃんセンスいいですね!上杉さんこれにしましょうよ!」

「ん?女子二人が選んだのであればいいのかもな。よし、これにするかっ」

 

その後、そろそろいい時間なのでキーホルダーを買った風太郎と四葉と一緒にバスコンまで戻ることにした。

バスコンに戻ると他の姉妹も戻っており、母さんも外に出ていた。

 

「よし!みんな揃ったわね。じゃあこれからのことだけど、和義説明よろしく!」

「僕かよ...まぁいいや。本来の予定では、このまま林間学校の宿舎に向かうはずだったんだけど、このまま進むと多分猛吹雪にかち合うような気がするんだよね」

「猛吹雪ですか...」

 

五月が心配そうな声を出しているが、とりあえず先に進める。

 

「そうなってくると、立ち往生になってしまいかねない。ってことで、向かう先は同じだけど、先に別の旅館なりホテルなりを見つけて、そこに泊まってから明日林間学校の宿舎に向かおうと思ってる」

「へぇ~、カズヨシ君って天気予報士みたいなこともできるんだ」

「でも、全然晴れてるように見えるけど...」

「兄さんが言うのですから、そうなんでしょう。前も同じような事がありましたが、その時も兄さんの言う通りにして難を逃れましたので」

 

四葉の疑問に対して、零奈がフォローを入れてくれた。

 

「いいんじゃない。直江の言う通りにしましょ」

「意外だねぇ。真っ先に二乃が賛同するなんて」

「別に、ここで協議してても無意味って思っただけよ。それに、一花あんたも反対してる訳じゃないんでしょ」

「まぁね」

「うん、カズヨシの案で問題ない」

「はい!私も問題ありません!」

「ですね。よろしくお願いします、直江君」

 

という事で、向かう先は同じだが移動しながらも宿泊先を探すことに決定した。

ちなみに、すでに母さんが色々と動いていたようで、先行しているバスの教師に明日の合流になることを連絡済みとのことだ。まったく抜かりない人だ。

僕は宿泊先を助手席で携帯を使って探していたのだが、あることを思い出していた。

 

「そういえば零奈。あれ皆に配ってあげて!」

「はい!」

 

後ろの零奈に向かって声をかけると零奈が応えてくれて、後ろのメンバーにあるものを配ってくれた。

 

「え...」

「これって...」

「可愛い...」

「わぁ~!」

「ブレスレットですか?」

「そうだよ。さっき一花と二乃が見てたんだけど、天然石のブレスレットだって。みんなには色違いのお揃いを買ってみた」

 

一花にはイエロー。二乃にはパープル。三玖にはブルー。四葉にはグリーン。五月にはレッド。風太郎にはブラック。そして、零奈とらいはちゃんにはピンクを用意した。ちなみに僕のはホワイトである。

 

「ま、今日の記念ってことで!」

「やるねぇ~、こんなサプライズを用意するなんて!」

「ありがとう、カズヨシ。大事に使うね」

「俺とらいはの分もあるのか。ありがとな、大事に使わせてもらうぜ。きっとらいはも喜ぶだろう」

「ほら、五月さん。お揃いです!」

「本当ですね!」

「ふん!あんたにしてはやるじゃない!」

 

みんな気に入ってくれたようで、早速手首にそれぞれ付けてくれた。そんな光景を見た後、自分の手首に付けているお揃いのブレスレットを見て、また宿泊先の検索に勤しむのであった。

 

「ねぇねぇ、私のは?」

「え?ないよ」

「ちょっと酷い!さすがに泣けてくるわよ」

「冗談だって。母さんには別にペンダントを買ってあるから、後で渡すよ」

「さっすが和義!もう大好きっ!」

「はいはい」

 

この時の僕は宿泊先の検索と母さんの相手をしていて気づくことが出来なかった。

僕の買ったブレスレットを手首に付け、それを本当に大事そうに握っている娘がいたことを。

 

 




久しぶりの投稿です。
私生活が忙しすぎて書く暇がありませんでした。。。

今後も不定期な投稿になるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします!
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