五等分の奇跡   作:吉月和玖

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29.温泉騒動

「生き返るな~」

「あぁ、らいはにもこの景色と温泉堪能してほしかったぜ」

 

あの後、何とか宿泊先を見つけることができた。如何せん、9人という人数の泊まれる先を探すのには苦労したものだ。

宿泊先に向かう途中から雪がチラホラ降ってきたのだが、宿泊先に着き部屋に案内されたころには僕の予想通りの猛吹雪にまで発達していた。

その光景を見た時には皆ビックリしていた。

今は吹雪も大分落ち着き、風太郎と共に雪景色が見れる露天風呂にて疲れを癒している。

 

「やべぇ~、こんな風に過ごしてたらもう林間学校なんてどうでも良くなってくるわ」

「だな。さっきの夕飯も上手くて最高だったぜ!」

「まだテンション高いんだね。どしたの?」

「うむ。お泊まりで言えば、お前の家や中野家に泊まったが、こんな遠出は久しぶりだからな。あと、あのバスコンだっけか?あんな乗り物に乗ればテンションが上がるってもんだ!」

「なるほどね~」

 

こうやって今はのんびりできているが、実はちょっと前に一悶着があったのだ。

 

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時は戻り、まだ宿泊先が決まっていない頃。

 

「駄目だ、やっぱこの人数だと中々見つからないな」

「部屋を分けたりでも駄目?」

「むしろそれで探してるんだけどね...3人部屋を3つとか2人部屋を5つとかね。だけど、観光名所だったり他のスキー旅行者だったりで中途半端にしか空いてないみたい」

「そっかぁ~。お、降ってきたみたいね」

 

母さんの言う通り外ではチラホラ雪が降ってきたみたいだ。いよいよ時間がなくなってきている。

焦る気持ちを何とか抑えながら探していると一つの旅館が目に止まった。

その旅館のホームページには料理も美味しそうに映し出されている。だが...

 

「何?見つかったの?」

「いや、見つかったというか、何というか」

 

丁度信号で停まったところで、その部屋を母さんに見せた。

 

「あらいいじゃない。もうここで決まりね」

「いやいや、ちょっとまずくない?」

「もうそんな事言ってる場合?緊急事態なんだからいいでしょ!」

 

そんな母さんの圧しもあり、結局その部屋の予約を取ることにした。ちょっとイレギュラーでもあったが、旅館の人にも普通に対応してもらい、無事予約を取ることができた。

問題点と言えば...

 

「何であんた達と同じ部屋に泊まらなくちゃいけないのよ!」

 

案の定部屋に案内された後に二乃が叫んだ。

そう、僕達が案内された部屋は一つで、普通であれば7人が泊まる部屋なのだ。

とは言え、旅館には珍しくベッドがある部屋と和室とがあり別々に寝れば問題ない。まぁドアとかないんだけどね。

 

「仕方ないでしょ、色々と探したんだけど、中途半端にしか部屋が空いてなかったんだから。この人数で泊まるにはやっぱり事前に探しとかないとね」

「車があるじゃない!キャンピングカーなんだから大丈夫でしょ」

「いくらキャンピングカーでもこんな吹雪の中だと死んじゃうよ。ここ、キャンピングカー専用の駐車場スペースがないから外部電源も持ってこれないし」

「そう言えば外にもう一つ部屋があったじゃない。あっちに男子を泊めれば...」

「犬小屋がね...」

「上杉さんも直江さんも死んじゃうよ!」

 

そんな言い合いをしているところでも風太郎はテンションが上がったままである。

 

「めっちゃいい部屋じゃねぇか!マジかよ、すげぇ~」

 

あちこち見て回っては、歓喜を上げている。

 

「文句言ってないで楽しもうぜ!」

「風太郎の言う通り、楽しもうよ」

「だねぇ、こんな経験他では味わえないんだしさ」

「一花あんたねぇ。はぁ、レイナちゃんと綾さんがいれば何かが起きることもないだろうし、今回は良しとしましょ」

 

ようやく二乃も諦めてくれたようだ。他の姉妹については最初から諦めているようである。

 

「それにしても凄い吹雪...カズヨシの言ってた通りになったね」

「えぇ、驚きです」

 

三玖と五月は部屋の窓から外を見て、感嘆の声を漏らしている。

 

「とりあえずまだ夕飯まで時間もあるけど、どうしよっか?」

「私は運転で疲れたからベッド使わせてもらうわね。零奈ちゃんも一緒に寝る?」

「結構です」

 

零奈に速攻断られた母さんは『ぶぅ~』と言いつつベッドに向かった。あんな態度を取っているが相当疲れたのだろう。今はそっとしておこう。

 

「はいはい!私は旅館の中を探検したいです!」

「さすが四葉。旅館の人には迷惑かけないようにね」

「四葉、俺も行くぜ!」

「おぉ、上杉さんにしてはノリがいいですね。では行きましょう!」

「あ~、あの二人だけだと心配だからお姉さんも一緒に行くね」

「一花さんだけでは大変かもしれません。私も行ってきますね兄さん」

「あぁ、疲れたら部屋に戻ってくるんだよ」

 

そして4人は旅館の探検に行ってしまった。まったく元気なものだ。

 

「私は下のお土産を見に行こうかしら」

「二乃、私も行きます」

「そ。あんたたち二人はどうするの?」

「私は疲れたから休んでる」

「僕もかな」

「分かったわ。じゃ、行ってくるわね」

 

二乃と五月はお土産屋に行ってしまった。五月、追加のお菓子を買ってこないよね...

 

「さてと、お茶でも淹れようか」

「ありがとう...」

 

室内に用意されているお茶とお茶菓子を準備する。まぁ準備と言ってもパックのお茶なのだが。

 

「あれ、パックのお茶なんだよね?何か美味しく感じる」

「それは良かったよ」

「カズヨシが淹れてくれたんだよね。どうやったの?」

「それは企業秘密ってことで」

「むぅ~...」

 

その後も三玖とお茶を飲みながらも、歴史の話に華を咲かせてまったりと過ごしたのだった。

 

夕飯の時間になったので、旅館の人が準備のため部屋にやってきた。

部屋のテーブルに並べられていく料理の数々はとても豪華なものである。

料理の準備が終えた頃になると、全員が戻ってきた。なので、母さんも起こすことにする。

全員揃ったところで夕食の開始だ。

ちなみに席順はというと、僕の右に零奈でその横に五月。さらに僕の左には二乃が座っている。

向かい側には、僕からみて左から風太郎、一花、三玖、四葉の順だ。ちなみに母さんは二乃の斜め前、上座のようなところに座っている。

二乃が僕の横に当たり前のように座ってきたことには中野姉妹がビックリした。

二乃曰く、『料理の感想を聞くにはこいつの近くがいいのよ』とのこと。零奈と五月が仲良く座っているのも相変わらずである。

 

「それにしても凄い料理だな!タッパーに入れて持ち帰りたいぜ!」

「やめてください...」

「本当だよ風太郎。ここまではいかないけど、また夕飯ご馳走するから」

「ふむ、この料理も旨いが、和義の料理も旨いし綺麗だからな!また頼む」

「でも、こんな豪華な料理を食べてたら、明日のカレーが見劣りしそうだよ」

「三玖、あんたの班のカレーは大丈夫なんでしょうね?」

「問題ない。カズヨシもいるから」

「あ、そういえば林間学校のスケジュールよく読んでなかったかも」

 

一花のその言葉に答えるように風太郎がスケジュールをスラスラと話しだした。

 

「2日目の主なイベントは、オリエンテーリング、飯盒炊爨に肝試しだ。3日目は自由参加の登山にスキー、川釣りが開催される。そして夜はキャンプファイヤーだ」

「何でフータロー君そこまで答えられるの?」

「こいつ、しおりの中身を暗記してるんだよ」

「上杉さん流石です!あと、キャンプファイヤーの伝説の詳細が分かったんだけど」

「伝説?」

 

一花は伝説について知らないようで、四葉に聞き返している。

 

「関係ないわよ。どうせこの子達に相手はいないんだから、話したってしょうがないでしょ」

「あはは...」

 

そんな二乃の言葉を聞きながら向かいの一花と目が合った。

ここまでバタバタと来たので忘れていたが、一花に変装していた三玖が前田の前で『この人と踊ることになってるし』と発言したがために一花とダンスを踊ることになっていたんだっけ。

伝説には興味ないけど、みんなの前で一花と踊るとなるとどうしたもんか。噂は速攻で広まるだろう。

チラッと三玖の方を見るが、気にせず夕食を食べ続けていた。

 

「兄さんは誰とも踊らないのですか?」

「あ~......」

「あんた聞いたわよ、何でも女子からの誘いを片っ端から断ってるんだって?」

「(二乃ナイスッ!)まぁね。今はそういうのいいかなって」

「そうなのですか。私はてっきり中野さん達の誰かと踊るのかとばかり思ってました」

「「「「!」」」」

「え---!直江さんは私達の誰かと踊るんですか!?」

「今のところ考えてなかったけど。何?四葉は僕と踊りたいの?それとも風太郎だったりして」

「いやいや、そんな私なんかがお二人とだなんて恐れ多いです!」

「そんな事ないんじゃない。四葉だって結構男子に人気かもしれないし。ほら色んなところで人助けして。しかもいつも笑顔だし。そういうところに惹かれる男子だっているんだよ。ね、風太郎?」

「知らん!」

「はぁ~、風太郎は相変わらずと」

「何よ和義、あなたは四葉ちゃんみたいな娘が好みだったの?」

「「「「「「!」」」」」」

「いや、そういう訳ではないよ。けど、四葉と一緒にいると楽しいし、落ち着くってのはあるかな」

「はうぅ~......」

 

こういう話には慣れていないのか、四葉の顔は茹で蛸みたいに真っ赤だ。てか、痛い!両サイドから足を抓ないで!

 

「に、い、さ、ん?食事中に何をされているのですか?」

「何、人の妹を口説いてんのよ!」

「二人共痛いって!てか、口説いてないし。素直な気持ちを言っただけだし」

四葉みたいな娘がいいのかな?」「四葉みたいな娘がいいのでしょうか?

「ん?三玖と五月はどうしたの?」

「何でもない」「何でもないです!」

「あはは...お?ここ露天風呂があるんだね!結構いい感じじゃん。ん?混浴?」

 

パンフレットを見ていた一花がとんでもないことを口にした。僕がホームページで検索した時には載っていなかったと思うのだが。

 

「はぁ!?部屋だけではなくお風呂まで一緒ってこと!?」

「言語道断です!」

「二乃も五月ちゃんも、何で一緒に入ること前提?」

「二乃、一緒に入りたくないだなんて心外だぜ。俺とお前は経験済みだろ~?」

「え!?風太郎と二乃ってそういう関係だったの!?」

「ち、ちがっ!わざと誤解を招く言い方すんな!」

「ははは、いつものお返しだ!」

「あ、ごめん。混浴じゃなくて温浴でした」

 

一花、それは読み間違わないでほしいかな。確かに似てるけど。

ちなみに、風太郎と二乃が一緒のお風呂を経験済みというのは、中間試験の時に中野家に泊まり込みで勉強会を行った時だそうだ。ただそれは、風太郎がお風呂に入っている途中、外から五月のモノマネをしてクビ宣告のことを聞き出したものであって、実際には一緒に入っておらず、服を着た二乃が『いい事聞いちゃった』と風呂場に乱入したそうだ。

こうして、楽しい?夕食は幕を閉じたのであった。

 

余談ではあるのだが、混浴がないことに母さんがショックを受けていたのはまた別の話である。

 

 




投稿完了です!
少しずつ投稿しているせいか、全然進まない。。。
林間学校もまだ1日目です。
次回くらいで1日目を終わらせれたらなと思っております。

またしばらく間が空くと思いますが、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m
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