五等分の奇跡   作:吉月和玖

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30.恋バナ

~露天風呂 女湯~

 

「うーん、絶景ねぇ」

「はい。ライトアップされていて景色が最高です」

「景色もそうなんだけどね」

 

零奈は綾の言っている意味が分からず、綾の見ている方向に目を向けた。そこでは、中野姉妹が仲良く温泉を楽しんでいる光景が広がっていた。

 

「あ~、気持ちぃ~」

「ホントねぇ~、生き返るわ」

「みんなでお風呂に入るなんて何年ぶりでしょうか」

「三玖のおっぱい大きくなったんじゃない?」

「みんな同じだから」

「あの娘達発育良すぎじゃない…」

「はぁ……」

 

綾の発言に対して、零奈はタメ息しか出なかった。

 

「やっぱり若い娘達との温泉は良いわね」

「あはは…綾さんの見た目が若すぎるので反応に困りますね…」

 

一花の発言に中野姉妹は皆、内心で同意していた。

 

「嬉しいこと言ってくれてありがとう!そうだ、せっかく女だけなんだしあれしましょ」

「あれ?」

 

三玖の疑問に対して、綾はニンマリと笑い答えた。

 

「旅行。女子。お話。と言えばあれしかないでしょ。恋バナよ。こ、い、ば、な!」

「恋バナですか…」

 

五月はあまり乗り気ではなかった。というのも、恋についてあまり分かっていないからである。

それは他の姉妹も大体同じで、恋バナに付いていけそうなのは一花と二乃ぐらいかもしれない。

それを悟った二乃が、『この娘達には分かりませんよ』と話そうとした時意外な人物から発言があった。

 

「恋バナ…じゃあカズヨシの好み教えてほしい…」

「「「「え!?」」」」

 

三玖の発言には他の姉妹全員がビックリしていた。

 

「和義の?あら、三玖ちゃんは和義の事気になるの?」

「うん……前にフータローの好みを教えてもらったけど、カズヨシのは聞いてなかったから」

「あぁー、そういえばそんな事もあったね」

「あれは酷かったよー」

 

一花と四葉は懐かしそうに話している。

 

「勉強会で一番騒がしかったときのでしょうか?」

「そうよ。私もちょうど上から降りてきた時に聞いたけど、答えが酷かったわね」

 

その時自室に居た五月は詳しく知らないが、二乃はその時ツッコミをいれていたので良く覚えていた。

 

「何々、風太郎君の好みなんて気になるんだけど!」

「……3位がいつも元気。2位が料理上手」

 

零奈はその時風太郎が発表したことをそのまま教えることにした。

 

「そして1位がお兄ちゃん想い、と言っていました」

「え、それって……らいはちゃんなんじゃ」

 

綾以外の6人は同時に頷くのであった。

 

「あはは、まぁ風太郎君らしいといえばらしいか。ん~、でも和義の好みかぁ...」

 

綾自身も何度か和義に聞いたことはある。だが、いつもはぐらかされるのだ。

まぁ、世の男子高校生なんて皆そんな感じだと思うが、綾にとっては面白くない。

 

「ごめんね、私も分かんないや。零奈ちゃんは知ってる?」

「私も分かりませんね。ただ、先ほどの夕食での兄さんの発言は的を得ていると思います」

「夕食のって、あの四葉を口説いていたやつね」

「~~~~~!」

 

二乃の発言にまた顔を赤くしている四葉。さらに、顔半分が温泉の中に浸かっていて口の周りでブクブク言っている。

 

「兄さんは天然なところがありますからね。素でさらっとそういうことを言ってしまうんです。前も五月さんに対して同じようなことを言ってましたし」

「っ~~~~~!」

 

その事を思い出したのか五月の顔も四葉同様真っ赤になっていた。

そんな五月を姉妹全員が注目している。

 

「おやおや、五月ちゃんも隅に置けませんなぁ~」

「で、カズヨシに何て言われたの?」

「三玖?目が怖いですよ...えっと、『ご飯を美味しそうに食べている五月の顔は好き』と......」

「たらしか、あいつは!」

「まぁ、そこは否定しませんが」

 

二乃の発言に零奈も同意を示した。

 

「ただ、誰に対してもそういうことを言っているようではないので、多少なりとも好感を持っている中野さん達だからこそ、そういった発言をされていると思いますよ」

 

零奈のそんな発言後、姉妹全員何か考えているのか、黙ってしまった。

 

(そういえば、前に笑顔を褒めてくれたっけ。今までの笑顔が演技だってのも指摘されたけど...でも、そんな指摘ができるくらい私のことを見てるってことだよね。まったくフータロー君といい罪な男だよ)

 

(姉妹の話をするときの笑顔が見とれるくらいいいものだってあいつ言ってたわね。不覚にもその時は多少ドキッとしたけど...それに、あいつと勉強するのは別に嫌って思わないっていうか…)

 

(私と歴史の話をしているときのカズヨシは本当に楽しそうだった。というよりも私は楽しい。てことは、私と一緒にいるときも楽しくて落ち着けてるってことかな...ふふ、そうだといいな)

 

(う~~~、こういう話は前からしてみたかったって思ってはいたけど、いざ自分の事となると恥ずかしくてたまらないよう---!直江さんと今まで通り接することはできるかな...)

 

(学生の本分は学業なのですから、こういう事は不純です!でも、直江くんに褒めてもらえたり、頭を撫でてくれるのは嬉しいんだよね。そ、その、好きって言葉も嬉しかったし...えへへ)

 

そんな姿を見ている直江親子はクスッと笑うのであった。

 

「さて、兄さんはどう責任を取るのでしょうか」

「ふふ、さすが私の息子ね!」

 

この時の五つ子の気持ちが恋なのかそうでないのかは、本人にすら分かっていなかった。

 

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温泉から部屋に戻ると女子の方が長いのか誰もいなかった。『鍵は兄さん達が持ってた方がいい』と言う零奈の言葉が正しかったようだ。

風太郎は昨日からの徹夜と今日のハイテンションで限界が来たのか、一足先にベッドで寝ている。

僕も特にすることがないから先に寝てもいいかと思ったが、皆が戻ってくるのを待つことにした。

手持ち無沙汰でもあったので、暇なときに読む用に持ってきていた歴史逸話本を読んで待つことにした。

 

しばらくすると皆戻ってきた。戻ってきたのはいいのだが、何故か皆のぼせたように顔が真っ赤になっていたのだ。

 

「おかえり。ってどうしたの?みんな顔が赤いけど、のぼせちゃった?」

「あはは、話が盛り上がっちゃってね。ちょっとのぼせちゃったかも」

「まったく、水を用意するから少しずつ飲みなよ。あ、ガブ飲みしちゃ駄目だからね!」

 

一花の発言を聞き、全員分の水を用意することにした。一人一人手渡ししていったのだが、何故か皆に目を逸らされた。何かしただろうか。

 

「あ、風太郎は先に寝ちゃったから。僕もみんなが帰ってきたら寝ようと思ってたけど、大丈夫そう?」

「ええ、大分良くなりましたので、私達も寝ようと思います」

「そっか、じゃあ悪いけどベッド使わせてもらうね」

「零奈ちゃんは私と一緒に寝ようね」

「私、中野さん達と寝たいのですが駄目でしょうか?」

 

零奈は母さんの言葉を完全スルーである。母さん固まっちゃってるよ。

 

「別にいいんじゃない。レイナちゃん一人増えたところでそう変わらないでしょ」

「うんうん。お姉さん達は大歓迎だよ!誰の横で寝ようか?」

「はいはい!私立候補します!」

「四葉は駄目。レイナちゃんが潰されちゃう」

 

そんな感じで中野姉妹と零奈は和室に向かっていった。

 

「ほら、僕達も寝るよ母さん」

「ぐすん。和義一緒に...」

「寝ません!」

「そんな~~~!」

 

何とか母さんを宥めて、僕も眠ることにした。

 

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翌朝。

早く目が覚めた僕は、自分用のお茶を用意して一息付いていた。まだ誰も起きていないようだ。

こんな所を零奈に見られたら、また子どもみたいにテンションが上がってるんですかって言われそうだ。

特にすることもないので、また本の続きを読むことにしたのだが、その時和室の方から誰かが来る気配がした。

 

「...おはよう、カズヨシ」

「おはようございます、直江君...」

「ふぁ~、おはよう直江。あんた早いわね」

「おはよう3人とも。てか、あまり眠れてない?」

「久しぶりの四葉の寝相で全然眠れなかったわ」

「当の本人はぐっすりですけどね」

「......」

 

そんなに四葉の寝相は悪いのか、そんな風に思いながら3人のお茶を用意することにした。三玖にいたっては、椅子の上で眠そうにしている。

 

「ほら、目覚めの一杯だよ。旅館だからお茶しかないけど。三玖はまだ眠いなら、僕の寝てたベッドで良ければそこで寝とく?」

「っ!!大丈夫、お茶いただくね」

「ほぁ~、美味しいです。これパックじゃないですよね」

「うん。受付の人がもういたから、お願いして茶葉を分けてもらったんだ」

「そこまでして。まぁ悪くないわね」

「ねぇ、カズヨシに聞きたいことがあるんだけど」

「ん?何?美味しいお茶の淹れ方?」

「それも今度教えて欲しいけど、今は違う。カズヨシは四葉に一緒にいて楽しくて落ち着くって言ったけど、それは私達も一緒?」

「「!!」」

「へ?」

「......」

 

いきなりの質問にビックリした。二乃と五月も一緒のようで驚いていた。

 

「何だそんな事。もちろんだよ!四葉だけじゃない。三玖に二乃、五月に一花、みんなと一緒にいることは楽しくって落ち着くよ。はは、女子と一緒にいてこういう風に思えたのは久しぶりかも。ありがとね」

「そっか、良かった...」

「ふん、別にお礼を言われることでもないわよ!」

「ですね。直江君にそう思っていただけるのであれば何よりです」

 

そんな感じで、みんなが起きてくるまで4人でまったり過ごしたのであった。

 

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~一花&三玖~

 

「う~~~ん。何気に昨日はいい一日だったね」

「うん」

「それにしても、今朝の食事の時もフータロー君がテンション高くてビックリだったね」

 

当の風太郎は他のみんなとお土産を見ている。そこにはもちろん和義もいる。

そんな光景を2人は少し離れた場所から見ているのであった。

 

「三玖、一昨日言っていたキャンプファイヤーのことだけど、本当に私でいいの?」

「うん。その場しのぎで言っちゃったことだから。一花にも迷惑になるかもだけど」

「ははは、いいっていいって。実際にどうなるか分かんないけどね...」

 

そんな会話を続けている時に、三玖の頭には前田の言った一言が響いている。

 

『相手を独り占めしたい!それに尽きる』

 

(そんなことはしない。私達は五等分だから...それに、一花なら心配ない)

 

そんな風に思いながら、三玖はお土産を見ている皆、というよりも和義をじっと見ている。和義自身に気づかれることなく。

 

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旅館から出発後は順調そのもので、昼過ぎには無事クラスのみんなと合流することができた。

どうやら、クラスのみんなも先の猛吹雪に立ち往生してしまい、他の旅館に急遽泊まったそうだ。

色々とあったりはしたが、いよいよ林間学校が本格的にスタートである。

 

 




お久しぶりです。
何とか林間学校1日目が終了しました~。
自分でもこんなに長くなるとは思わずで。。。

今後もどうぞお付き合いいただければ何よりです!
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