五等分の奇跡   作:吉月和玖

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33.平等と公平

-林間学校3日目。

 

明日は一日移動なので、今日が最終日と言っても過言ではないだろう。

昨日の風太郎と一花の一件だが、あの後先生がすぐに来たことで、2人は呼び出しを食らうはめにになり詳しく聞くことが出来なかった。

僕は何か理由があってあの場所に閉じ込められたと信じることはできる。

だが五月は...

 

『すみません。私は先に部屋に戻り休みたいので、3人への説明は直江君に任せてもいいでしょうか?』

 

その言葉を残してさっさと部屋に戻ってしまった。

最近ようやく五月自身でも風太郎のことを認めてきたような気がしてきたからちょっと残念ではある。

まぁ、誰もいないところで2人っきりでいたのだ。そこに僕の考えも相まってしまったのだろう。

 

「あぁ~憂鬱だ」

 

今日の夜にはキャンプファイヤーがあるのだが、そこで一花と踊ることについて結局何も対策も考えていない。どうしたものか。

部屋に閉じこもる訳にもいかず、とりあえず気分転換も兼ねて自由参加の行事に参加しよう。その思いで宿舎の玄関に向かう。

 

「あら、和義じゃない。おはよ」

 

玄関に向かう途中偶然二乃に会った。

そういえば、昨日の肝試しから僕のこと名前で呼ぶようになっていた。まぁ僕は気にしないけど。

 

「おはよう、二乃。その姿、二乃はスキーに参加するんだ」

「そうよ。と言っても、私はスノボだけどね」

 

二乃の今の格好はスキーウェア。さすが二乃、何でも着こなすというか似合っている。

それに、何だか昨日から生き生きしているような...

 

「そう言うあんたは何するの?」

「僕?そうだな...何も考えずのんびり川釣りに勤しむのもいいかも...」

「何?いつもよりも元気ないじゃない。ははぁ~ん、さてはスキー滑れないのね。運動神経抜群って言っても出来ることと出来ない事ってあるわよねぇ」

 

カチン。

言ってくれるじゃないですか二乃さんや。

 

「ふっ、安い挑発だけどここはあえて乗ってあげようじゃないか。僕の滑りを見て後悔しないようにね」

「へぇ~言うじゃない。じゃあ上級者コースであんたの滑り見せてもらいましょうか」

「朝から何してるの二人共...」

 

そんな言い合いをしているところに三玖が声をかけてきた。

 

「おはよう三玖。いや、今から二乃と上級者コースに行く話をしてたところだよ」

「へぇ~、そっかカズヨシは滑れるんだね。いつの間に二乃とそんなに仲良くなったんだろ?う~、何だかモヤモヤする

「(後半よく聞こえなかったけどまぁいっか)まぁ人並みには滑れると思うけどね。ただ、二乃から滑れないんだろっていう安い挑発に乗ってあげることにした訳」

「そっか。私はあまり滑れないから四葉に教えてもらうつもり。フータローも連れてくるって言ってたよ」

「そうなんだ。じゃあ、ある程度滑ったらそっちにも合流しようかな。僕でも教えれることあるかもしれないし」

「本当!?待ってるね」

「あぁ!よし、二乃上級者コース行くよ!」

「はいはい。じゃ三玖、また後でね」

「いってらっしゃい二人共」

 

三玖の見送りを受けてまずはスキーウェアを借りに向かうことにした。

 

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「どうよ二乃!ちゃんと滑れたでしょ」

 

上級者コースで二乃と一緒に何度か滑っていた。二乃に合わせて僕もスノボである。

 

「あんた本当に化物なんじゃないの。プロ顔負けの滑りだったわよ...」

「そうかな?そう言う二乃だって相当滑れてるじゃん」

「私はあんたに付いて行くのがやっとだったわよ。はぁ...はぁ...」

 

もう少し滑りたかったけど二乃もお疲れの様子だし。この後は三玖達に合流しますか。

 

「にしても、相変わらずの女子からの熱視線ね。どうよ感想は?」

「う~ん。あんまり嬉しくないかなぁ...」

「ごめん!冗談でも言うことじゃなかったわね」

「良いって。ただ、二乃のことも心配かな」

「は?私?」

「うん。自意識過剰かもしれないけど、僕のせいで二乃の風当たりが悪くなるんじゃないかって少し心配してる」

こんな時まで私の心配って、本当に参っちゃうわね

「ん?何か言った?」

「何でもないわよ!それより、三玖達に合流するんでしょ、行くわよ!」

「ちょ、待ってよ」

 

二乃の後を追う形で僕達は三玖達に合流することにした。

 

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「おっ...とと...はは...」

 

ぎこちなく滑っている風太郎発見!

 

「へっぴり腰になってるよ風太郎」

「和義!来てたのか」

「まぁね。さっきまで二乃と上級者コースで滑ってたよ」

「ぷぷっ。上杉、あんたは本当に運動神経悪いわね」

「ほっとけ」

「あ、カズヨシに二乃来てたんだ」

 

風太郎を揶揄っていると三玖が後ろから声をかけてきた。

 

「約束してたからね。じゃあ並走しながら教えようか」

「うん!お願いします...」

「四葉!三玖には僕が教えるから、風太郎のことお願い!」

「わっかりました!」

「二乃はどうする?」

「そうねぇ。ふふっ、上杉のへっぴり腰が面白いからそっちで揶揄ってるわ」

「ほどほどにね」

「分かってるわよ」

 

気分良さげに、二乃は風太郎と四葉の方に向かっていった。

 

「二乃、機嫌がとても良いけど何かあった?」

「いや、これといって何もなかったけど。普通に滑ってただけだし」

「ふ~ん、そっか...」

 

この話は終わりという具合に、三玖は滑りに集中していた。

 

「何だ、普通に滑れてるじゃん三玖」

「そ、そうかな...」

「うん。もうボーゲンは完璧だね。じゃあ、三玖さえ良ければパラレルターンを教えるよ」

「分かった。お願いします」

「兄さん!」

 

三玖に次のステップを教えようとした時後ろから声をかけられた。

 

「零奈と母さんも来てたんだ」

「ここなら気兼ねなく声をかけられるでしょ。それにしても探したわよ」

「あぁ、二乃と上級者コース行ってたから。さすがに零奈を連れては上級者コースは来れないよね」

「なるほど。二乃さんとは仲良くされてるんですね」

 

笑顔の零奈ではあるのだが圧を感じるのは僕だけだろうか。

 

「今は三玖さんにスキーを教えていたのですか?」

「そう。今からパラレルターンを教えてもらうところ」

「あの!三玖さんさえ良ければなのですが、私も参加してもいいでしょうか?」

「うん。全然構わない。いいよね、カズヨシ?」

「ああ!じゃあ2人に教えますか!」

 

急遽、三玖と零奈に対するスキー講座が開始された。母さんはというと、少し離れたところでニコニコしながらこっちを見ている。本人が楽しいのであればいいけども。

そんな感じでしばらく2人に教えていると更なる来客があった。

 

「わ-、ぎこちないな-」

「本当に誰だ!」

 

風太郎に同意である。フードを被ってゴーグルにマスクって顔ほとんど見えないし。

 

「一花だよ」

「!」

 

ゴーグルとマスクを取っている一花を見て、隣にいた零奈はビックリしていた。まぁ体調良くないって言ってたしね。

昨日のスプリンクラーで風邪引いちゃったかな。

風太郎と一花が何か話しているが、そんな時零奈から声をかけられた。

 

「あ、あの兄さん。あれ五月さんです。なぜ五月さんは一花さんの真似など...」

「は?」

 

とりあえず今の会話を他に聞いている人はいないようだ。

え、じゃあさっき零奈がビックリしていたのはこっちか。いや、しかし。

 

「零奈、何で五月だと思うんだ?他の姉妹も一花と思っているようだが...」

「え?しかし、先ほど顔を出したとき明らかに五月さんの顔でしたよ」

「えっと...ごめん見分けつかないや...」

「しっかりしてください、兄さん。後声も違いましたよ」

「マジかぁ...」

 

零奈には悪いが全然顔や声の違いが分からんのだが。今までだって身に付けてる装飾品や髪型で判断してたし、今はウェアの違いで何とか見分けてる状況だ。

というか零奈の言うことが本当であれば、何故変装をしているのかってことだが。

 

「零奈、悪いけどこの事は他の人には言わないでほしいんだけど。五月のことだ、何か考えがあるんだろうし」

「分かりました」

 

どちらにしろ、もう少し様子を見ることにしよう。

 

「一花!上杉さん、全然言ったこと覚えてくれない!」

「それは常日頃からお前に対して俺が思っていることだ」

「激しく同意するわぁ」

「直江さんまで酷いです!」

「はは、じゃあ楽しく覚えようよ。追いかけっこなんてどう?上手な四葉が鬼ね!」

「お、おい!」

「は---い!」

 

何故か急遽決まった追いかけっこ。五月?はさっさと行ってしまった。

 

「五月はどうするの?後、レイナちゃん達も」

「もちろん五月も見つけたら捕まえるよ!」

「私はパスで。さすがに皆の体力にはついていけないよ」

「私も。体力的に難しいかと」

「分かった。じゃあまた後で。皆行くよ!」

 

僕の合図で二乃と三玖もスタートした。一人風太郎だけが出遅れたようだ。

 

「そんじゃ皆さんおっ先に!」

「っ!カズヨシ早い...」

「あいつ本当に化物ね」

 

聞こえませ-ん。

てか、これって滑り終わったら後どうすればいいのだろうか。下まで行ったらスキー関係なくね。

とりあえずどこか隠れてればいいか。そんなことを考えている間に下まで降りきってしまった。

どこか隠れる場所がないか探しているとかまくらを見つけた。いい感じに周りにはスキー板やスノボがありカモフラージュにちょうどいい。

とりあえずかまくらの中で休むことにした。てか、これじゃあ隠れんぼだぞ。

しばらくすると誰かが近づいてきた。

 

「どうしよう...このままだと四葉に見つかってしまう」

 

う~ん、僕には零奈ほど声での判別はできないからな。四葉から逃げてるってことは四葉以外の誰かってことだし、大丈夫だろ。

 

「こっちこっち」

「え?」

 

手だけ出して手招きしたが、入ってきたのは三玖だった。

 

「えっと、お邪魔します...」

「あぁ、まあ僕が作った訳じゃないんだけどね」

「ふ~ん、中って結構暖かいんだ」

「だよね。しっかしこれからどうしたものか。僕なら逃げ切れる自信があるけど、他の姉妹や風太郎には厳しいかな」

「それなら...そうだ、四葉にハンデを付けてもらおうよ」

「ハンデ?」

「うん、何か...荷物を持ってもらって、足の速さを平等に!」

「ふ~ん、まぁ盛り上がっていいかもしれないね」

「うん、じゃあ...」

「でも、あんまり僕は好きじゃないかも」

「え...」

「これは風太郎からの受け売りなんだけどね。少し昔話をしてもいいかな?」

「う、うん...」

「あれはたしか中学2年くらいだったかな...」

 

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~中学2年の二学期~

 

「ふふふ、ようやくお前に勝てる見込みが出てきたぞ。和義、今度の期末勝負だ!」

「はいはい、まぁ本当に僕に勝てるのであれば、僕も勉強を教えてきた甲斐があったってものだ」

「ふん、余裕でいられるのも今だけだ!お前も油断するなよ」

「油断なんてしないよ。今まで通り満点を取るつもりだし」

「くっ、その言葉言ってみたいぜ」

 

そんな事を試験前に話していたが、僕は試験の日に休んだ。その日は、零奈が発熱してしまったのだ。

父さんに外せない仕事が入ってしまい、母さんも付き添わなければいけなかったので、僕が看病をすることになったのだ。

 

「ごめんね和義。昨日って期末試験だったよね」

「別にいいさ、ここまでいい成績できたから学校側も考慮してくれるでしょ。それよりも零奈のことが大事だよ」

「に、兄さん...」

 

零奈の頭を撫でてあげると申し訳なさそうにこちらを見ている。まったくこういう時くらい年相応の態度を取ってくれればいいのに。そんな思いで学校に行くと信じられないことを先生から聞かされた。

なんと、風太郎は昨日の試験を未記入で提出したそうだ。

 

「風太郎!お前自分が何したのか分かってんのか?こういうのは平等でなければいけない。今回の事は僕が欠席する事を選んだ。だからお前は普通に試験を受ければ良かったんだ」

「ふん!そんな事でお前に勝っても意味がないからな。お前とは公平に勝負がしたい」

「はぁ、お前って本当に馬鹿だよな」

 

そんな事を言いながらも僕は笑っていた。

結局この時の期末試験は学校側の考えもあり、二人共再試験を受けることになったが、この時より風太郎は試験で満点しか取らなくなった。

 

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「あの時もし風太郎が普通に試験を解いていれば、多分そこで初めて風太郎に試験で負けてたんだよね。再試験があったとしても、通常の試験は0点だし」

「そんな事があったんだ...」

「ね?あいつ馬鹿でしょ?」

「うん。でもフータローならやりかねない」

「はは、だよね。まぁ今回のこととは全然違うけどさ、四葉のあの身体能力って今まで四葉が努力して身につけたものだよねきっと」

「そうだと思うけど...」

「こんなお遊びで何言ってんだって思うかもだけど、その四葉の努力を否定したくないんだ。きっと風太郎ならこう言うと思うよ。『全員平等もいいがそこに至るまでを否定してはいけない』って。だからさ、平等じゃなく公平にいこうよ」

「!」

 

何か思うところがあったのか急に三玖はかまくらの中で立ち上がった。まぁそうなると天井に頭をぶつけるはめになるのだが。

 

「痛い...」

「ちょっと、大丈夫?」

「うん.........公平にいこう」

 

三玖は微笑みながらそう呟いていた。

 

「暑くなってきたね。ちょっと外の空気を吸ってくるね。ついでに周りの様子も見てくるよ」

 

そう言って僕はかまくらから外に出た。

 

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~三玖視点~

 

平等じゃなく公平にいこう、か。

その言葉が頭の中で何度も繰り返される。

そんな中ある人物に電話をしようと携帯を取り出した。

 

『何?どうしたの?』

「一花、あのね、話したいことがあるんだ」

 

 




いよいよ3日目開始です。
投稿している時に毎回思うのですが、やはり文章構成とか難しいですね。もう僕は滅茶苦茶のように感じます。。。

では、次回で林間学校も終わりを迎えたいと考えております。次回投稿までお待ちいただければ幸いです。
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