五等分の奇跡   作:吉月和玖

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36.五つ子ゲーム

次の日。

無事に風太郎が退院したとのことで家庭教師を再開することになった。退院したその日から再開しなくてもいいと思うのだが。

 

そんな訳で風太郎が先に行っているであろう中野家に向かった。

向かったのだが...

 

「君たちは何をしているのかな?」

 

そこには全員同じポニーテール姿の中野姉妹がいた。まぁ髪の長さが違うんだけども。

 

「よう、来たか和義。どうだ、お前にこいつらを見分けられるか?」

「は?何でそんな事しなきゃならないの?」

「うむ、つい先ほどの出来事なのだが...」

 

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~30分くらい前・風太郎視点~

 

「ふふふ、オートロックも使いこなしてきたぜ」

 

ようやく退院することができたので、その足で中野家に向かうことした。

 

「お邪魔しま...またかよ...」

 

意気揚々と中野家の玄関を潜り、リビングに向かうとバスタオル姿の姉妹の誰かがいた。

 

変態!

「ピンポン押しただろ!」

 

バスタオル姿の誰かは何かを俺に向かって投げてきた。

どうやら紙袋のようで、中からあるものが出てきた。

 

「こ、これは...」

 

それは全教科0点の回答用紙であった。

 

「さっきのバスタオル姿のやつは誰だ?」

 

俺には顔だけで判断はできない。この間の林間学校では、五月が俺のことを咄嗟に『上杉君』と呼んだことで判断ができたが、顔だけではまったく分からん。

そんな時あることをを思いついた。

 

「急にどうしたのですか?」

「同じ髪型にしろって、今日は家庭教師の日じゃなかったの?」

「なんだ二乃らしくもなく随分前のめりじゃないか」

「それは三玖。二乃は私よ」

 

くそっ、全然分からん。ええい、こうなったらイチかバチかだ。

 

「五月!三玖!四葉!二乃!一花!」

 

右から順番にそう呼んだのだが。

 

「二乃!三玖!五月!四葉!一花よ!髪を見れば分かるでしょ!」

 

左からそう言われた。まさか全部違うとはな...

 

「......と、このようになんのヒントもなければ誰が誰かも分からない。最近のアイドルのようにな!」

「それはフータロー君が無関心なだけでしょ」

 

そんな時だ。

 

ピンポ-ン

 

「カズヨシが来たみたい」

「ねぇ、ちょっと試したいことがあるんだけど、みんないい?」

「どうしたのですか二乃?」

「さっき上杉は私達のことを見分けれなかったけど、和義はどうだろうと思って」

「ふ~ん、それは興味あるねぇ。にしても二乃ってばいつの間にかカズヨシ君の事を名前で呼ぶようになったんだろ」

「べ…別にいいでしょ...」

「う~ん、私では直江さんを騙す自信ないなぁ」

「私もです...」

「別にいいのよ。この位で見分けれないようならそれまでよ。そうね、これは五つ子ゲーム初心者編ってとこかしら」

「おぉ、カズヨシ君への挑戦だ!」

「初心者編で全敗の俺はいったい...」

「気にしない方がいいよ、フータロー...」

 

三玖、その慰めがまた心に来るものがあるがありがとよ。

 

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「なるほど、それで今の状況になっていると...」

「あぁ、どうだお前に見分けられるか?」

 

ニヤリと笑う風太郎。自分と同じ道を歩むことになると思ってるんだろうけど...

横に並んでいる五つ子に目をやる。

 

「「「「「...」」」」」

 

ふ~む、みんな喋らずか。余計なことを喋って正体がバレないようにしてるのかな。それにブレスレットも外す徹底ぶり。

でも...

 

「それじゃあ、僕から見て右から一花に四葉かな」

「あはは、いきなり当てられちゃったか...」

「う~...」

「まぁ一花についてはみんなより極端に髪が短いし、四葉に至っては服に自分の名前を携えてるしね」

「あはは、やっぱり直江さんには気づかれましたか」

「むしろ、それに気づかない風太郎もどうかと思うよ」

「くっ...」

「それで次に一番左が二乃かな。ポニーテールの長さが一番長い、つまり一番長髪な二乃ってことで」

「あら、分かってるじゃない。ま、あんたには簡単過ぎたでしょうね」

 

満足気な二乃である。マジで当てられて良かった。ここで外したら何言われるか分かったもんじゃないからね。

残るは三玖と五月かぁ。

 

「後は左から三玖に五月。どう?」

「うん、正解...」

「さすがの一言ですね」

「ふぅ...」

「私と五月はどこで判断したの?」

「ん?あ-、三玖は普段から前髪が長いでしょ。今回は髪型はそのままで、後ろ髪を結んだだけだから助かったかな。んで、五月はくせっ毛なのかな。髪型に詳しくなくて申し訳ないけど、左右の触覚のような髪は特徴的だよね」

「なるほど」

 

五月は納得しているようだ。とりあえず全員正解できて良かったかな。

 

「それにしても、流石だねカズヨシ君。ちゃんと私達の特徴を見れてるなんて」

「だよね!ところで、上杉さんはどうして今回のような事をしたんですか?」

「そうだった。事の発端はこれだ!」

 

風太郎は勢いよく紙の束をテーブルの上に叩きつけた。

 

「え、これって...」

「全教科0点...」

「ご丁寧に名前の部分を破り捨てている」

 

四葉の言ったとおり、全教科分のテストがあり、全て0点の答案用紙である。マジか!

 

「これをさっき俺に向かって投げつけたやつがこの中にいる。バスタオル姿で頭にもタオルを巻いていたから区別がつかなかったがな。まぁいい、四葉白状しろ」

「当然のように疑われている!?」

 

風太郎は四葉の肩に手を置いて白状するよう促している。まぁ一番成績が悪いからね彼女は。

 

「なるほどね。それでさっきは全員に同じ髪型にするよう言ったのか」

「あぁ。しかし改まって思うが、お前たちは何で顔だけで判別ができるんだ?」

「そこは同意。僕はまだ髪型くらいしか判断できないからね」

「は?」

「何でって...」

「こんな薄い顔、三玖しかいないわ」

「こんなうるさい顔、二乃しかいない。薄いって何?」

「うるさいこそ何よ!」

 

何となく二人の言わんとしていることが分かるような、分からないような。まぁ今後の参考にしよう。

 

「上杉さん、直江さん。良い事を教えてあげます。私達の見分け方は昔お母さんが言ってました。愛さえあれば自然と分かるって」

「愛ねぇ...」

「......道理で分からない訳だ」

「もう戻してもいいかな?何で今日はそんなに真剣になってるんだろ」

 

一花の一言で全員が髪を元の状態に戻そうとしている。そんな時だ。

 

「ん?この匂いは...シャンプーの匂いか...」

 

クンクンと匂いを嗅いでいる風太郎。

 

「えっえっ」

「なんかキモ...」

 

風太郎の行動に困惑している三玖と違い、ハッキリと言う二乃。僕も二乃に同意である。

 

「これだ!お前たちに頼みがある!俺を変態と罵ってくれ!」

「「「「「「...」」」」」」

 

風太郎の発言に姉妹全員引いている。斯く言う僕も今の発言には引いた。

 

「あんた...手の施しようのない変態だわ」

「違う。そういう心にくるような言い方ではなくてだな」

 

二乃の迫真の演技にたじろいでいる風太郎。まぁ二乃の場合、本当に思ってるんだろうけどね。

 

「ほくろで見分けることもできるけど...」

「お手軽!どこにあるんだ?見せてくれ!」

 

三玖の発言に風太郎は三玖に迫っている。

 

「はいはい。そんな訳にはいかないでしょ。風太郎、落ち着いて」

 

とりあえず三玖と風太郎の間に入り、風太郎を抑えた。

 

「...カズヨシになら見せても良いよ」

「見せんでいい!」「ダメです!」

 

僕の言葉と五月の言葉がハモった。

 

「フータロー君。もしかしたら、犯人はこの中にいないのかもしれないよ」

「どういう事だ?」

「落ち着いて聞いてね。私達には隠された六人目の姉妹、六海がいるんだよ!」

「なんだって-!?六海は今どこに...」

「ふふふ、あの子がいるのはこの家の誰も知らない部屋...」

「勝手にやってろ」

 

一花のアホな発言に本気で驚いている四葉。本当にいい娘だ。

 

「ややこしい顔しやがって!もう分からん!」

 

バンッ

 

その発言と同時にまた別の紙束をテーブルに叩きつける風太郎。

 

「最終手段だ。今から全員にこのテストをしてもらう。これは、その0点の問題を取りまとめたものだ。これが解けないやつが犯人だ」

 

風太郎の発言のもと、急遽テストが開始された。

 

「なんでこんな事になるのよ...」

「う~ん...」

「納得いきません!」

「今日のフータロー、ちょっと強引...」

 

全員納得はいかないまでもしっかりテストを受けている。

風太郎は皆を監視しているが、その横で僕は先ほどの0点の答案用紙を見ていた。

それにしても、一貫性がない答案用紙である。四葉みたいな送り仮名の間違いがあるが、四葉よりも漢字が書けている部分がある。かと言って一番漢字が書けるであろう三玖よりも字がうまくないように思える。

後、二乃はいつもファイリングをしているから二乃の用紙は割といつも綺麗だが、この答案用紙には綺麗なものと四つ折りしているものもある。これは一花っぽいかな。五月はしっかりと消しゴムを使ってるけど、答案用紙の中にはそのまま黒く塗りつぶしているところもある。

 

「これって、もしかして...」

 

ある仮説を思いついたところに最初にテストが終わった者が名乗り出た。

 

「は-い、一番乗り」

 

一花である。

 

「ふむ...」

 

一花の答案用紙を風太郎は採点をしているが、不意にその用紙を一花の頭に乗せた。

 

「お前が犯人か」

「あれっ。なんで、筆跡だって変えたのに...」

「ここ。bが筆記体になっている。筆記体で書くやつが一人だけいたのは覚えていた。俺はお前たちの顔を見分けられるほど知らないが、お前たちの文字は嫌というほど見てきたからな」

「や...やられた-」

 

風太郎の言葉にショックだったのか、一花は膝をついて悔しがっている。

 

「フハハハハハ!」

 

逆に風太郎はしてやったりといった態度である。

 

「あの-、一応私たちも終わりましたが...」

「ご苦労。とりあえず採点を...」

 

残りの四人から回答用紙を預かり、採点を始める風太郎であるが、固まってしまった。

 

「どしたの風太郎?」

「五月の『そ』、犯人と同じ書き方だ」

「ふんふん」

「良く見たら、二乃の門構え...」

「おぉ、これも一緒だね」

「三玖の4」

「これもこっちにあるのと筆跡が同じだね」

「四葉の送り仮名...」

「あ~、こんな間違いしてるの四葉だけだね」

「みんな犯人と同じ...お前ら~、一人ずつ0点の犯人じゃねぇか!

「やっぱね...」

 

風太郎の怒りに全員申し訳なさそうな顔をしている。

 

「何してんのよ一花!こいつらが来る前に隠す段取りだったでしょ」

「ごめ-ん」

「俺が入院した途端これか...やっぱりお前ら...」

 

気を落としている風太郎に何やら五月が話しかけている。

しかし、風太郎が入院している間は僕が面倒を見てれば良かったかな。反省点である。

 

「まさか、二乃と三玖も0点を取ってたなんてね」

「悪かったわよ...」

「ごめんねカズヨシ...」

「まぁいいさ。期末試験に向けてビシバシ教えるから、覚悟しといてね」

「「うへぇ~」」

 

そんな時だ。風太郎がいきなり姉妹全員に向かって言葉を発した。

 

「この中で昔俺に会ったことがあるよって人-?」

「「「「!」」」」

「へ?」

「何よ急に」

「どうしたの?」

 

風太郎のいきなりの発言に僕は驚いた。もちろん誰も名乗り出ていない。

 

「ま、そりゃそうだわ。お前らみたいな馬鹿があの子のはずね-わ」

「馬鹿とは何ですか!」

「間違ってねえだろ。まったく、よくもまぁ0点なんて取ってくれたな。今日はみっちり復習だ、五月」

「あ、馬鹿...」

「?」

 

風太郎が肩に手を置いたのだが、それは五月ではない。三玖だ。何でそこで間違えるかねぇ。

 

「もしかしてわざと間違えてる?」

 

当の三玖はご立腹のようで、顔を膨らませて風太郎を睨んでいる。

 

「もうフータローのことなんて知らない」

「す、すまん!」

「あははは、まずは上杉さんが私達のことを勉強しないといけませんね」

 

皆呆れた様に風太郎を見ている。

それにしても、いきなりあんな事を聞いてくるなんて。もしかして、この中に写真の子がいるのではと思ってるのだろうか。

たしか五月と何か話した後に聞いてきたから、五月も何か知ってるのだろうか。

今度それとなく聞いてみよう。

それよりも今は期末試験である。また大変だろうけど頑張りますか。そう一人心の中で決意するのであった。

 

 




時間が空いたので連日で投稿です。

次の投稿はまた少し先になるかもしれません。
原作コミックの通りに進みますので、次はあの回となります。
さて、どんなお話にしようか考え中です!
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