五等分の奇跡   作:吉月和玖

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40.お弁当

朝、登校しているとコーヒーショップから一花が出てくるのを見かけた。

 

「おはよう、一花」

「おっはー、カズヨシ君。あれ?今日は一人?」

「風太郎とは特に待ち合わせとかしてないよ。基本、一人で登校してる。そっちこそ妹達と一緒じゃないの?」

「うん、たまにここのコーヒー飲みたくなるからその時は一人なんだ」

 

偶然会ったこともあり、一花と一緒に登校する事にした。

 

「それにしても、良いのかな?君の隣を歩いても…」

「ああ、この間の零奈の宣言ね。別に良いでしょ、偶然会ったんだから。そこで、別々に登校する方がおかしいって。学校生活はノーカンだよ」

「だよね!でも、あの発言には私も驚いちゃったよ」

「僕もだよ。でも、兄としては可愛い妹の姿が見れて嬉しい限りだけどね」

「あははっ、相変わらずのシスコンだね」

「ほっといてよ…でも、零奈の宣言は一花にはあんまり関係ないんじゃない?」

「何で?」

「いや、一花って風太郎に気があるでしょ?」

「ゲホッゲホッ…ちょっ…」

 

突然の僕の言葉に驚いたのか、一花は顔を赤くして噎せてしまった。

 

「あれ?違った?」

「……何でそう思ったの?」

「ん~、林間学校での閉じこめられた時、僕と一花はお似合いだから踊ればいい、みたいなことを風太郎に言われて泣いたって聞いたよ。それって何よりも風太郎に言われたから悲しかったんじゃないの?」

「うっ...」

「それに、お見舞いの時の一花の風太郎を見る目は優しい感じだったよ」

「う~~~...」

 

一花は顔を手で覆い恥ずかしそうに唸っている。

 

「私ってそんなに分かりやすいかなぁ...」

「う~ん、どうだろう...風太郎や一花の事だからかもね」

「はぁ...そっか~...」

「この事は他の誰かには...」

「言う訳無いじゃん!姉妹の皆にも言ってないよ」

「あ、そうなんだ。僕も風太郎には言ってないから安心して。でもそっか...」

「もぉ~、何でそんなに嬉しそうなの?」

「いやだって、僕以外にも風太郎の良さが分かる人ができて嬉しくってさ!」

「ここ一番の君の笑顔を見れた気がするよ」

 

僕の笑顔に若干呆れられてしまった。

 

「にしても、一花って結構初な娘だったんだね。結構告白されてるみたいだから、こういうのには慣れてると思ってた」

「人に告白されるのと、人を好きになることは別物。君にも分かるんじゃないかな...」

「まぁね。まぁ、まだ人を好きになったことがない僕には、そこまでは分からないかもだけど」

「そっか...三玖も大変な人を好きになっちゃったね

「ん?」

「何でもないよ!あ、だからって今後もいつも通りに接してよね。変に勘付かれるのは嫌だし」

「それはいいけど...相手は難攻不落のお城みたいな風太郎だよ」

「分かってる。けど、今のまま告白とかしても何も響かないと思うんだ。だから徐々に攻めていこうと思うよ。えっと、何だっけ?堀を埋めていくみたいな」

「外堀を埋める、ね。どんな城でも外堀から埋めていけば落城することができる。大阪夏の陣が有名かな」

「ふ~ん。まぁ、それだ!大阪夏の陣が何なのかは分かんないけど」

「はぁ~...そうだね、今は期末試験に集中してくれると嬉しいかな」

「は~い」

 

本当に分かっているのかどうか不明ではあるが、まあこれを機に勉強にも励んでくれるとありがたい。

 

「にしても、一花が羨ましいな」

「え?どうしたの急に...」

「だって、やりたい事が明確にあって、それに向かって突き進んでいる。女優という仕事も恋も...僕にはそういうのがないからさ...」

「っ...!」

「ってごめんね、朝から暗い話をして」

「ううん。大丈夫だよ、カズヨシ君ならきっと見つけられるよ」

「そっか。ありがとね」

 

その後は、風太郎のことや中野姉妹のことなど楽しいことを話して学校に向かった。

 

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昼休み-

 

「君はブレないね風太郎。今日も飯を食いながら勉強って...」

「もうすぐ期末試験だからな。あいつらに教えながら自分の成績も維持しなければいけない。ふっ、次こそ勝たせてもらう」

「はいはい...」

「やっほ-」

 

いつもの席で風太郎と昼食を摂っていると一花が声をかけてきた。少しずつでも行動をしているのかな。

 

「や、一花。珍しく一人?」

「そうなんだ...一緒いいかな?」

「僕は良いけど...」

 

チラッと風太郎の方を向く。風太郎は参考書から目を離していない。が、

 

「別に構わん。知らん仲ではないからな。ただし、俺の勉強の邪魔だけはするなよ!」

 

少しは成長しているようだ。

 

「それじゃあ、お邪魔しま-す」

 

そう言って風太郎の横に......ではなく何故か僕の横に座っている。

 

ちょ、何でこっちに座ってるの?

だって、朝あんな話しちゃったから、妙に意識しちゃったんだもん。カズヨシ君のせいでもあるんだよ!

え~...

 

一応配慮して風太郎には聞こえないように喋っていたのだが、恋って人をここまで変えるんだな、と思ってしまった。

 

「はぁ...一花はお昼はちゃんと食べてるんだね。五月ほどではないけど」

「五月ちゃんと比べられるとみんな少ないと思うよ。でも、ちゃんと食べないとお仕事に影響出るからね。体力も付けないとだし。ただ体型を維持するのが少し大変かな」

「へ~、偉いじゃん」

「まぁ~ね」

 

それにしても体力ね。そんな事を考えながら風太郎の昼食を見ていた。いつもの焼肉定食焼肉抜きである。

 

「ねぇ~風太郎?」

「何だ?」

 

顔は上げないものの、しっかりと僕の声かけには答えてくれている。

 

「前から考えてたんだけど、風太郎の弁当を僕が作ってきてあげようか?」

 

僕の言葉に勉強する手を止めて僕の方に顔向けてきた。てか、一花も食べる手を止めてこっちを何故か見ている。まあいいか。

 

「いや、そんな食事を続けてたら本気でいつか倒れちゃうって。そんな風太郎にテストで勝てても嬉しくないし」

「む~...」

「ほら、戦国の逸話でこんな話があるじゃない。上杉謙信の最大のライバルである武田信玄が、北条家と今川家との間に結んでいた三国同盟を自ら破った。その影響で、塩の流通を止められてしまう。その事を知った謙信は武田家を好機と見て攻める訳ではなく、自分たちは塩の流通を止めることはしないと武田家に書状を送ったんだ。これが後にことわざとなった『敵に塩を送る』だよ」

「その話はもちろん知っている」

「だよね。ま、謙信は別に無償で塩を流通した訳ではないんだよね。でも、値を上げたりもしなかった。そこで、どうだろう僕の弁当を100円で買い取るっていうのは」

「良いのか?お前が大変になるだけだろ...」

「なぁ-に、僕の食費も浮くしで大丈夫だよ。これで後顧の憂いなし。僕も期末試験に向けて集中して勉強できるしね」

「分かった。お前の申し出に甘えよう。ふん、負けた言い訳にするなよ」

「交渉成立だね。言い訳にはしないって」

 

そんなやり取りをしている横で、何故か一花はため息を付いていた。

 

「どしたの、一花?もしかして、一花も弁当希望?」

「そうじゃないよう...はぁ~...」

「?」

「まぁいいや。でも、私ってまだカズヨシ君の作ったご飯食べたことないんだよね。それを考えるとお弁当には興味ありかな」

「2個も3個も同じもんだしね。じゃあ、二人には明日から作ってくるよ」

 

というわけで急遽ではあるが、明日からお弁当を作ってくることになったのだ。一花の弁当箱どうしよう...

 

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次の日の朝。早速弁当作りに取り掛かっている。

とはいえ本当に簡単な物を入れる予定だったので、時間はそこまで掛かっていない。丁度作り終わったところで零奈がリビングに下りてきた。

 

「兄さん、おはようございます。早いですね」

「ああ、おはよう零奈。風太郎の弁当を作ってあげようと思ってね。もうすぐ試験だし、どうせ徹夜続きになるだろうしで体力付けないと」

「はぁ...兄さんは少し、いえかなり風太郎さんの世話を焼きすぎだと思います」

「そうかな?」

「そうなんです。あら、こちらのお弁当は小さいですね。それに3つ...どなたかに作られたのですか?」

「ああ、それは一花のだよ。丁度、風太郎の弁当の話をしていた時に近くにいたからね。一花も女優の仕事で栄養を付けなきゃと思って、風太郎の弁当とついでに作ったんだ」

「なるほど一花さんのですか。一波瀾起きなければいいのですが...」

「?」

 

零奈のよく分からない言葉があったがとりあえず学校に向かうことにした。

登校中昨日とは違い、コーヒーショップの前で一花が待っていた。

 

「おっは-、カズヨシ君」

「おはよう一花。今日も風太郎はいないよ」

「ぶぅ~、今日はカズヨシ君を待ってたんだよ」

「僕?」

「そうだよ。意外?」

「まぁね。あ、そうだ...はいこれ。昨日言ってたお弁当だよ」

「わお!ありがとう。お昼が楽しみ...じゃなくて。これだよ、これ!」

「これ?弁当の事?」

「そうだよ。お見舞いの時は林檎を剥いてあげて、挙句にはお弁当を作ってあげるなんて、君はフータロー君の彼女なのかな?」

「あ-、二乃にも同じ様な事言われたけど、これくらい普通でしょ」

「いやいや、普通じゃないよ」

「ふ~む...まぁ今は試験に集中しときなよ。まずは赤点回避。それで風太郎はとても喜ぶと思うからさ」

「...は~い」

 

釈然としないといった態度ではあったが、これで一花が試験に集中してくれることを祈ろう。

その後、今日は天気も良いから外で食べないかと一花を誘った。気分転換にはいいかもしれないしね。

 

昇降口で一花と別れて教室に着いた。

 

「おはようカズヨシ。ねぇ、今日は一緒に...」

「「「直江ぇ-!」」」

 

自分の席に着いたところで、隣の席の三玖に挨拶をされたのだが、クラスの男子達の罵声で邪魔をされた。

 

「朝から何?今日は宿題なかったと思うけど」

「そんな事よりも重要な案件がある!」

「宿題より重要って、よっぽどな事だね」

「あぁ、お前中野一花さんと付き合っているって本当か?」

「は?」「えっ?」

 

僕の声と三玖の声が同時に発せられた。

妹よ、君はこの事を予感していたのかな。確かに一波瀾ありそうだよ。

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。
中々試験が始まりませんねぇ。僕も早く始めたいと思ってはいるのですが、すみません寄り道ばかりしてしまってます。
ただ、そろそろ始めたいとは思ってはいるので、気長にお待ちいただければ幸いです。

では、今後ともどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m
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