「落ち着いた?」
「はい…すみません、ご迷惑をお掛けしました…」
泣く五月を宥め、今はベンチに座らせている。
「はい。お茶と…焼き芋。何か食べたそうに見てたから」
「うっ…お恥ずかしい限りです…」
五月にお茶と焼き芋2つを渡して、五月の横に座り自分の分のお茶を飲んだ。
「てか、食べたかったのなら自分で買えば良かったのに」
「その~…お財布を忘れてしまいまして…」
早速僕があげた焼き芋を食べながら申し訳なさそうに答えた。
「あらま。几帳面な五月には珍しいね。よっぽどの事があったのかな?」
僕の質問にピタッと五月の動きが止まった。本当に分かりやすい娘だ。四葉と一緒で嘘をつけないタイプだね。
「それで、何があったの?」
零奈には遅くなる事を連絡済みなので、多少なら話を聞けるだろう。
そんな思いで聞いたのだか、中々重い話を聞かされてしまった。
今日の家庭教師には姉妹全員で参加したそうだ。二乃は逃げようとしたそうだが五月が抑えてくれたのだと。本当にありがたい。
しかし、最初から二乃と三玖がいがみ合っていて、それを風太郎が何とか抑えようと色々画策して頑張っていたと五月が言う。
「へぇ~、あいつにしては頑張ってるじゃん」
「えぇ、私達のお手本になるのだと、頑張っていました...」
しかし、風太郎の頑張りも虚しく二乃が自分の部屋に戻ろうとした。それを、風太郎と三玖で何とか止めようとしたそうだ。だが...
「ふぅ~、二乃が三玖に差し出された風太郎お手製の問題集の束を拒否してばら撒いてしまったと...」
「はい...」
これはまずいと、落ち着くよう一花と四葉も声をかけたのだが二乃の暴走は止まらず、拾い上げた1枚の問題の紙を割いてしまったそうだ。
いつもであれば、この行為に対して三玖が怒るのだが...
「まさか五月が怒って、二乃の頬を叩くなんてね...」
その行動には、その場にいた誰もが驚いたようだ。
「あの問題集は私達のために上杉君が作ってくれたもの。決して粗末に扱っていいものではありません」
本来であれば、五月がここまで考えてくれていることを嬉しく思うところではあるのだが、今は違うか。
「彼の家にはプリンターもコピー機もない。本当に呆れてしまいました。あの量を全て手書きで作成しているのですから...上杉君はそこまで真剣に取り組んでくれている。であれば、私達も彼に負けないくらいに真剣に取り組んでいかなければいけない。そんな思いがあり、あのような行動を取ってしまいました...」
その後、口論の末家出をしてしまったそうだ。しかも二乃までも。
「しっかし、ドメスティックバイオレンス肉まんおばけって...ご、ごめん。笑いを抑えるのが辛いかもっ...」
「直江君、酷いです!」
「ははは、悪いって。それで、五月は帰る気はないの?」
「っ!ありません。今回の事、二乃からの謝罪がない限りは」
「はぁ~、とは言えどうすんの?お金もない、荷物もないって...行くあてとかあるの?」
「そ、それは...」
下を向いてしまった五月ではあるが、チラッと僕の方を見ていた。
また零奈に甘いって言われるんだろうな。
「仕方ない。五月、僕は今夕飯の買い出しに出てきてたんだ。付き合ってくれる?」
「はい!」
そう笑顔で返事をする五月を伴ってスーパーへ今日の夕飯の買い出しに向かうのであった。今日の夕飯は三...いや余裕を持って六人前くらい作った方がいいのだろうか。
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~五月視点~
「重くない?」
「いえ、これくらい大丈夫です。むしろ、直江君の方は大丈夫ですか?もう少しこちらに入れても良かったのですが」
「大丈夫だよこのくらい」
そう言って彼は買い物袋を掲げています。
スーパーでの買い物も終え、今は彼の家に二人で向かっているところです。
別に私から『泊めてほしい』と言った訳でもなく、彼から『うちに泊まっていくといい』と言った訳でもありません。彼はただ『買い物に付き合ってほしい』と言っただけです。
ですが、『じゃあ、零奈も待ってるし行こうか』と買い物が終わった後に言ってくれました。
そんな自然な流れで彼の家に泊まることができる。何故か嬉しく思えます。
『甘えたっていいんです。兄さんはきっと、そんなあなたでも受け入れてくれるはずです』
あの言葉をレイナちゃんに言われてからどうも直江君に甘えてばかりのような気がします。
しかし、泣いていたとはいえ男の人に抱きつくなんて、私は何てはしたないことを...
それでも、彼はいつもと変わらず接してくれています。まぁちょっと年下扱いをされているのでは、と思うところもあるのですが。
前を歩く彼の私達姉妹とは違う大きな背中を見ながら不意にそう思います。その時、
「どうしたの五月?後ろを歩いて。そんなんじゃ話しにくいじゃん。横に来なよ」
立ち止まった直江君は、振り向きながらそんな事を言ってきました。
「いえ、しかしレイナちゃんに止められてますし...」
「へ?......ぷっ、あははははっ...そういえばそんな事もあったね」
む~、何故笑っているのでしょうか。
「いいよ、この事は零奈には黙っててあげるから。ほらこっちに来なよ。さっきも言ったけど、横にいた方が話しやすいでしょ」
「そこまで言うのであれば」
そう言いながら彼の横に行き、そのまま歩くことにしました。
その後、姉妹のことや上杉君のこと、らいはちゃんやレイナちゃんのことなど色々なお話をしながら歩いたのですが、先ほどまで沈んでいた自分を忘れるくらい楽しい時間を過ごしました。もし叶うのであれば、この時間がずっと続いてくれればいいのに、と思うくらい。
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「ただいま~」
五月を連れて家に帰ってきた。
「ほら、入って入って」
「お、お邪魔します...」
妙に緊張している五月を中に招いて靴を脱ごうとした時ある異変に気付いた。見たことがあるような女性用の靴が鎮座されているのだ。
「ま、まさか...」
「あ、兄さん。おかえりなさい。あのですね、つい先ほどなのですが...」
僕のお出迎いのため玄関まで来た零奈だが、何かを言いかけて五月の存在に気付いた。
「五月さん!?いらっしゃいませ。えっと、つい先ほどなのですが二乃さんも来てまして。何かあったのでしょうか?」
「二乃が?」
怖っ!声だけで機嫌が悪くなったことが分かるよ五月さん。
真正面から五月を見ている零奈も異変に気づいているようで、ハラハラしている。
「えっと...兄さん、本当に何があったのですか?」
「まだ、事情は二乃から聞いてない感じ?」
「はい。キャリーバッグを持って訪ねて来たかと思えば、しばらく泊めてほしい、と言われまして。とりあえず兄さんがいないので上がってはもらいましたが...」
こっちは準備がいい事で。しかし、何でよりによってうちに来るかなぁ。
「今はリビングにいるの?」
「はい」
「分かった。五月、とりあえず落ち着いてね。いきなり喧嘩は駄目だよ」
「それは二乃次第かと」
「え?え?喧嘩?」
状況を知らない零奈はただ困惑するだけである。
あ-もう、ここにいてもどうにもならないか。そう思い、二人を連れてリビングに向かった。
そこには確かに二乃がいて、零奈が用意したであろうお茶を飲んでいた。傍には確かにキャリーバッグが置かれている。
「あら、おかえりなさい和義。悪いわね勝手に上がらせてもらって。それに、いいって言ってるのにレイナちゃんにお茶まで用意させてしまったわ」
「いや、それは別に構わないんだが...」
二乃の位置からは僕の後ろに隠れている五月の存在に気づいていないようだ。比較的に機嫌は良いように見える。しかし、
「二乃?何故あなたがここにいるのですか?」
そんな事を言いながら僕の後ろから姿を現した五月の存在に気付いた二乃は、一気に機嫌が悪くなっていった。
「五月!?あんた、何で和義と一緒にいるのよ?」
「先に質問をしたのは私ですが」
一触即発しそうな状態である。
「別に!ホテルでも良かったんだけど、こっちの方が料理もできるしで気分転換もできると思っただけよ。それにホテルとは違ってお金かかんないしね」
ここはいつから旅館になってんだ!
「私は外で偶然直江君に会いまして、彼から家に来るよう言っていただけたのでここに来ました。つまり私は招かれたお客さんと言うことです」
「はぁ~!?」
煽らないで五月。後、こっち睨まないで二乃。
「はぁ~、とりあえず喧嘩はなしで。喧嘩するなら二人共家から出てもらうからね」
「うっ...分かったわよ」
「分かりました...」
とりあえず納得してくれたようだ。二乃はテーブルの椅子に。五月はソファーにそれぞれ座って、お互い関わらないようにしている。
「じゃあ、夕飯作るからちょっと待っててね」
「私も手伝おうか?」
「いや、今日は簡単なものしか作らないから、二乃はゆっくりしててよ」
「そう?」
手伝いを申し出てくれた二乃にそう伝えてキッチンに向かった。
「私は手伝いますよ。状況も聞きたいので」
「病み上がりなんだから無理しないでよ」
「あちらにいた方が、気分悪くなりそうなので...」
「なるほど...」
という訳で、夕飯を作りながら現在の状況を僕が知っている限り零奈に伝えた。
「なるほど、そんな事が...」
「僕は二乃が一方的に悪いとは思えないし、かと言って五月が悪いとも思えないんだよ。だから困ってる」
テキパキと食事の準備をしながら零奈に自分の気持ちを伝える。
「え、今の話を聞く限りだと二乃さんが風太郎さんの問題用紙を割いてしまったことが原因のように思えるのですが」
「うん、出汁はこんなもんかな。確かに事の原因は二乃かもしれない。けど、二乃ってそんなことまでする娘じゃないから。きっと感情のままにしちゃったんじゃないかな。あ、でもその感情を抑えられない二乃が悪いことになるのか...う~ん...」
「兄さん、あなたという人は...どれだけ私を困らせればいいのですか」
「ん~?何か言った?」
「いえ。そろそろ麺を茹でても良いでしょうか?」
「そうだね。じゃあ、僕はこっちをやるよ」
そんな感じであっという間に夕食が完成した。
「ほ~い、出来たよ!席に着いて」
最初は席に座るのも躊躇っていた五月だったが、夕飯の誘惑には逆らえず、僕の横に二乃。正面に五月で、その横に零奈が座る形で落ち着いた。
「では、いただきます!」
「「「いただきます」」」
今日の夕飯はとろろ蕎麦にしてみた。もちろん、とろろの真ん中に卵の黄身を置いている。
「ん~、美味しいです!」
「ええ、食が進みますね」
「ありがとね、二人共。二乃はどうかな?口に合う?」
「ええ、美味しいわ。あんた、この出汁一から作ったのよね」
「そうだよ。鰹節や昆布、後は企業秘密ってことで。ちょっと時間かかったかもね。悪かったよ」
「別にそこを責めてる訳じゃないわ」
そう言って黙々と食べている。
「あ、五月もおかわりあ...」
「おかわりお願いします!」
うん。別におかわりは責めないけど、せめて最後まで言わせて。
「そうだ。昼の雑炊もまだ残ってたんだ。蕎麦に合わないかもだけど、食べる人いる?」
「いただきます!」
「あ、兄さん少しだけお願いします」
「私も...」
「ふふっ、分かったよ。ちょっと待っててね」
結局残っていた雑炊も含めて用意しておいた食事は全部なくなってしまった。主に一人の人間によるものなのだが。まああんなに美味しそうに食べてくれれば、逆に嬉しいんだけどね。
「じゃあ、今後の話をしようか」
食後落ち着いた頃に今後についての話を始めた。さすがにそこではバラバラの席ではマズイと思ったので、僕と零奈が並んで座り、その正面に二乃と五月が並んで座っている。
「二人は帰りたくないで良いのかな?」
「ええ」
「そうです」
「お二人共ここにいれば、家に帰った場合と同じではありませんか」
確かにそうなのだが、二人にとっては違うようだ。
「嫌よ。何か負けた感じがするじゃない」
「レイナちゃんが言うことでもこれだけは譲れません」
「はぁ...」
零奈が眉間に手を持っていって困り顔をしている。
「僕は二人に泊まってもらう分には特に反対はしていないよ。けどいくつかルールを作る。それを破ったら問答無用で家に帰ってもらう。良いね?」
僕の言葉に二人共頷いてくれた。
「うん。じゃあ零奈...」
「はい。一つ、この家にいる間絶対に喧嘩をしない」
「「!」」
「一つ、働かざるもの食うべからずです。家事などを手伝っていただきます」
「それくらいどうということないわ。家でもやってた訳だしね」
「はい...」
「一つ、ここに泊まる間ですが、お二人には同じ部屋で寝てもらいます。と言うより、部屋が客間しかありませんので」
「「それは...!」」
「何ですか」
「「いえ...」」
零奈の凄みで同じ言葉を言ってるよこの二人は。
「一つ。勉強を疎かにしてはいけません。ここにいる間はしっかりと勉強をしてもらいます」
「うっ...」
「それくらい構いません。むしろ色々と教えていただきたいです」
家事の部分の逆の反応だな。
「とりあえず以上です。また増えた場合はお伝えします」
「「はい...」」
今の風景を見ているとどっちが年上か分かんないな。まるで親が子に躾をしているみたいだ。
とりあえずこの日はお風呂に入り休むことにした。零奈も病み上がりであまり無理をさせたくないしね。
ちなみに五月にはこの間と同じ服を貸してあげた。
という訳で、二乃と五月の二人を直江家に来ることにしてみました。
ちょっと無理がある部分がこれから出てくるかもしれませんが、頑張ってみます。
ごとぱず2周年記念生放送見ました!面白かったですね。5人勢揃いではないのが大変残念ではありましたが、また3周年まで行けば揃ったところが見れるかもしれませんので、あることを願って待ちたいと思います。今後のゲームの予定など聞いて、ごときすをやりたくなり今からやろうか迷っている自分がいます。
来年発売のゲームも楽しみです!