「先行ってるわよ」
「ああ、いってらっしゃい二乃。いつもと違う通学路だから気をつけて」
「ふ~ん...」
「ん?どしたの二乃?」
「べ、別に何でもないわよ!いってきます!」
次の日になると学校も始まったので登校しなければいけない。
みんなで話し合った結果、別々にに登校することになった。この間の噂の事もあるのでこういった処置を取ることにしたのだ。
そこで二乃が先に登校することになったのだが、見送った時に何故かじっと僕を見ていた。疑問に思ったので二乃に話しかけたのだが、慌てて行ってしまった。
「え、何?」
「さあ、今の兄さんには難しいかもしれませんね」
「どういう事です?」
「全く分からん...」
零奈には分かっているようだが、教えてくれなさそうだ。
その後、五月が登校し、僕も学校に向かった。
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その日の放課後、とんでもない事態が起きている事が僕の耳に入った。
「は?四葉、陸上部の助っ人まだ続けてたの?」
「うん...フータローの問題集をやっていれば大丈夫だって。今日も朝早く登校してたし、今も練習してるんじゃないかな...」
「はぁ...お人好しの性格が出ちゃったか」
「どうしよう...」
「僕はとりあえず風太郎の様子を見てくるよ。多分、風太郎は四葉の所に行ってるだろうし。三玖は先に図書室に行ってて。向かえない時はメッセージを送るから。一花と五月が来たらその事伝えといて!」
「分かった。二乃はどうするの?」
「もう連絡したけど行かないって…」
「そうなんだ…」
で、校庭に来たのだがそこには疲れ果てた風太郎の姿があった。
「風太郎、大丈夫?」
「ぜぇ…ぜぇ…すまん、四葉に逃げられた…」
「まぁ、風太郎の足じぁ追いつけないよね…」
「くっ…」
「どうする?僕も手伝おうか?」
「いや、この件は俺で何とかする…お前は後の姉妹の事を頼む…」
「風太郎、お前………分かった。こっちは任せたよ」
「ああ!」
とりあえず、今日の四葉は諦めて風太郎と二人図書室での勉強会に向かうことにした。
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その後しばらく風太郎と四葉の追いかけっこが続いた。
まぁ、風太郎の全敗ではあるのだが。
それでも風太郎は諦めずに追いかけ続けていた。
そんなある日。
「どうしたもんかな…」
二乃と四葉以外の姉妹は放課後の勉強会に参加してくれている。フータローの用意してくれていた問題集のおかげでレベルアップは少なからずしている。
二乃は家で僕の教えの下勉強をしてくれている。
後は四葉だが、自分で言った手前か問題集を進めているそうだ。
とはいえ、どれくらい成長しているかが見れないのは良くない。
そんな事を考えながら家に帰ると二乃が夕食の準備をしていた。
「あら、おかえりなさい」
「ただいま。あれ?二人は?」
「足りない物があったから買い物を頼んだところよ」
「ふ~ん、そっか…」
何かこの風景が当たり前になってきたな。とはいえ、何とか家に帰ってもらわないとね。
そんな時、机の傍に紙袋が置いてあったのに気づいた。中は何か紙の束のようだけど。
「何これ?」
「あ、それは…!」
紙袋の持ち手部分を持った瞬間に二乃が叫んだ為、ビックリして紙袋を倒してしまった。
中から出てきたのは…
「これ、風太郎の問題集……二乃、ちゃんとしてくれてたんだ」
「……」
「それにこれ。割いたのもテープで補強してる。やっぱり二乃は優しい女の子だね」
「なっ…!?」
倒れた紙袋を元に戻しながら二乃に聞いてみた。
「風太郎に本当は悪いって思ってるんだよね。なら、五月にその事を言って謝れば…」
「それは嫌!」
「何が二乃をそこまでさせてるの?」
「……ねぇ、あんたの部屋に行ってもいい?ここだと五月が帰ってきた時に聞かれそうだし」
「分かったよ」
僕の部屋に移動した二乃は窓を開け、空を見ながらポツリと話し出した。
「昔はあんなことをする子じゃなかったのよ五月は。なんだか知らない子になったみたいだったわ」
知らない子か。
『私は母の代わりとなり、みんなを導くと決めたのです』
この言葉が五月を変えている原因なのだろう。
「人は誰しもが成長をしていく。その過程で変わってしまうのは仕方がないんじゃないかな。だけど、変わらない部分だってあると思う。僕は君たちの昔を知らないから比べようがないけどね」
「かもしれないわね……ねぇ、あんたにアルバムを見せたの覚えてる?外見が同じ私達が写ってる写真」
「もちろん」
「あの頃ってね、性格も同じだったのよ。あの頃はまるで、全員の気持ちが共有されているような気がして居心地が良かったわ。でも五年前から変わってしまった」
「五年前…もしかしてみんなのお母さんが亡くなったのもそれくらい?」
「あら、よく知ってるじゃない」
「まぁね…」
なるほど。母親の死をきっかけに五月は母親の代わりとなることを決心した。
つまり、他の姉妹も少なからずそれをきっかけに変わったのだろう。けど二乃は…
「みんな少しずつ離れていった。一花が女優をしていたなんて本当に知らなかったわ。まるで五つ子から巣立っていくように、私だけを残して…私だけがあの頃を忘れられないまま。髪の長ささえ変えられない」
「………」
「だから無理にでも巣立たなくちゃいけない。一人取り残される前に。その決心がまだ出来ないんだけどね…」
これは僕が何を言っても二乃の心に響かないだろう。
彼女の心を動かせるのは姉妹達だけ。後は、今はいない母親だけか。
っていない人に期待しても意味ないか。
「ありがとね。二乃の心が聞けて良かったよ」
「あんたって不思議ね。何でも包み込んでくれそうって思えてくるわ」
「そんな風に思ってくれるなんて光栄だね。でも、これは二乃だからこそだよ。どうでもいい人にここまでしないさ」
「え、それって…」
「「ただいま帰りました!」」
「お、帰ってきたみたいだね。しかし、あの二人は話し方まで同じってどこまで仲が良いんだか…じゃあ下に降りようか」
「あんたは先に行ってなさい。私はここでもうちょっと涼んでいくから」
「涼むって…風邪引かないでよ」
「分かってるわ」
そう言いながら空を見上げている二乃の顔はとても良い顔だった。
その日の夜、零奈に二乃から聞いた話をしてみた。
「そうですか。そんな事が...」
「うん。こればっかりは僕では力になれてあげれないかなって。かと言って他の姉妹には話してはいけないような気がするんだよね」
「でしたら、今度の土曜日私が二乃さんのお話を聞いてみます」
「零奈が?」
「ええ。小さな子どもだからこそ話せることもあるかもしれません」
「まあ、確かに...」
「後、その日にどなたか姉妹の方を呼んでいただけないでしょうか?そうですね、三玖さんがいいかもしれません」
「へ?三玖を?まあ、いいけど」
僕の言葉に納得したのか笑っている零奈。けどこの顔は何かを企んでいる時の顔だ。二乃と三玖無事でいてくれればいいけど。
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次の日、風太郎と陸上部の部長とで一悶着が起こりそうだったが、そこで四葉が何とか収めてくれたようだ。
しかし姉妹から見ても、もう限界が来ているように見えているそうだ。そこに土日の合宿の話が舞い込んでいるというのだ。
『私が四葉の気持ちを聞き出してみるよ。フータロー君、カズヨシ君も聞いててくれる?フータロー君には私の携帯から。カズヨシ君には三玖から携帯借りてそこから流すね』
そういった一花の提案があったので、今直江家ではテーブルの上に僕の携帯をスピーカーにして置き、それを四人で囲んでいる。
もちろんミュートにしているので、こちらの声は聞こえていない。
「それにしても試験前に合宿など、何を考えていらっしゃるのですかその陸上部の部長は?」
「私もその場にいましたが、試験のことなど眼中にないようでした。それで上杉君の癇に障ってしまったようでして...」
「とんでもない部長だな...」
「......」
二乃は一言も話していないが、気にはなっているようでこの場には来てくれていた。
「と、始まったようだよ」
『送らないの?』
『うわぁっ!!一花~心臓に悪いよ~』
『私も歯磨き~』
『じゃあうがいしようっと』
『待って。もう!また歯ブラシ咥えているだけで全然磨けてないじゃん。ほら貸してやってあげるから』
『うっ...』
『前はよくしてあげたじゃん』
『で、でも~。もう子どもじゃもごご...』
『はい、あ~んして...』
『に...苦~~』
『私の歯磨き粉。これが大人の味なのだ。四葉には早かったかな?』
『よ、余裕のよっちゃんだよ!』
『ふふ、体だけ大きくなっても変わらないんだから。ほら無理しているから口内炎出来てるよ』
『私無理なんて...』
『こら!喋らないの......どれだけ大きくなっても四葉は私の大切な妹なんだから。お姉ちゃんを頼ってくれないかな』
『私......部活辞めちゃダメかな...』
『辞めてもいいんだよ』
『や、やっぱ駄目だよ!みんなに迷惑かけちゃうし。勉強とも両立出来てるんだし。一花がお姉さんぶるから変な事言っちゃった。同い年なのに。ガラガラ...ペッ』
『あはは、こんなパンツ穿いているうちはまだまだお子様だよ』
『わ--っ!しまっといて!上杉さんや直江さんが来たときには見せないでね!』
『は-い......ちゃんと聞こえてた?』
『お子様パンツ』
「いや、そこかよ!」
『あはは、良かった......明日陸上部のところに行こうと思うんだ。どうする?』
『行くに決まっている!四葉を開放してやるぞ!』
「こっちは行くメンバーが決まったら向かうよ。また連絡するね」
『分かった!』
『よろしくね』
そこで通話は切れた。さて...
「私は行きます!四葉が助けを求めていますので!」
「わ、私は...」
「...二乃さん。明日は私とお話しませんか?」
「え?」
「恐らく兄さんも行かれると思いますので、勉強どころではないでしょう。であれば、私とお話をしませんか?気分転換になるかもしれませんよ」
「レイナちゃん...」
「分かった。じゃあ、現地に行くのは僕と五月で。二乃、零奈のこと頼んでもいいかな?」
「ええ...」
明日で色々と決着をつけたいところではある。僕の出番はほとんどないかもしれない。
風太郎、零奈、三玖、頼んだよ。
いよいよ期末試験編もクライマックスに近づいてます。
結局、この章はこのままにして長くなってしまいましたね。
そろそろ次の章のタイトルを考えないといけないです。。。
では、またの投稿をお待ちいただければ幸いです。