五等分の奇跡   作:吉月和玖

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45.五人で一人前

~二乃視点~

 

今日はみんな朝早く起きて朝食を食べている。和義と五月に至っては四葉の所に向かうためすでに出かけてしまった。

今は私とレイナちゃんだけだ。

本当は私も四葉のところに行きたい思いはある。でも、私なんかが行ってもいいのかという思いもあり、五月みたいに行く宣言が出来ず躊躇ってしまった。

そんな時にレイナちゃんが私と話がしたいと言ってきたのだ。

 

「もう少し待ってくださいね。そろそろ来られるかと思いますので」

「?誰か来るの?」

「ええ」

 

ピンポーン

 

そんな話をしていると、来客の合図でインターホンが鳴った。

 

「ちょっと待っててください」

 

そう言ってレイナちゃんが玄関に向かった。一体誰だろう。私と話がしたいというのだから私の知らない人とは思えない。

でも、姉妹のみんなは今四葉のところに行ってるから、後はらいはちゃんくらいかな。

そんな風に考えていたら、予想だにしない人がリビングに入ってきた。

 

「お邪魔します...」

「三玖!?あんた、四葉のところに行ってるんじゃなかったの?」

「誰もそんな事言ってない」

 

確かにそうだけど、普通そっちに行くって思うでしょ。

 

「お茶を用意しますけど、三玖さんは緑茶ですか?」

「うん...お願い」

 

全く何でここに三玖が。でも待って、レイナちゃんがそろそろ来ると言っていたから、三玖を呼んだのはレイナちゃん?いや、もしかしたら和義かもしれない。

この間の話を三玖に相談したのかも。でも、あいつはあの事を姉妹の誰にも話していない、そう確信を持つことが何故かできる。

本当に不思議な奴。

そんな風に考えながら、用意された紅茶に砂糖を入れると三玖からの横槍が入った。

 

「そんなに入れると病気になる」

「私の勝手でしょ。その日の気分によってカスタマイズできるのが紅茶の強みよ」

「よく分からない。甘そうだし」

「そんなおばあちゃんが飲みそうなお茶を好んでいるあんたには一生分からないわよ」

「この渋みが分からないなんてお子様」

「誰がお子様よ!」

 

っていつもの調子で喧嘩している場合じゃないか。

 

「こんな時まであんたと喧嘩してらんないわ。で、何しに来たのよ?」

「私はレイナちゃんに呼ばれただけ...」

「え?」

「はい。私が兄さんにお願いして呼んでもらいました」

 

やっぱりレイナちゃんか。て事は、やっぱり他の姉妹にあの事話してないんだ。

何故かその事に安心している私がいる。

 

「二乃さん。単刀直入に言います。自分の家に帰りたくないのですか?」

「っ...!帰りたくないわね。今の家はいるだけでストレスが溜まるんだもの。昔と違って姉妹達の好き嫌いも変わってすれ違いも増えたわ。バラバラの私達がそこまで一緒にいなきゃいけない?一緒にいる意味もないわ」

「家族だから...それだけじゃ変?」

「...っ!」

 

私の問いに対して三玖が答えた。

 

「そうですね。家族であれば、一緒に過ごす事の意味としては大きいと思います。それに...」

 

そこでレイナちゃんは自分の紅茶を飲んで続けて話した。

 

「亡くなったお母様はきっとこう願っていると思います。親として姉妹全員一緒にいて欲しい、と。たとえどんな事があったとしても、大切なことは五人で一緒にいることだ、と」

「「え...?」」

 

なんでレイナちゃんがその言葉を。驚いているのは私だけではなく、三玖も驚き目を見開いてレイナちゃんを見ている。

だって今の言葉は生前のお母さんがいつも言っていた言葉...

ニッコリと笑っているレイナちゃんの後ろにお母さんの面影が浮かんだいるようだった。

 

「変わっているのは二乃さん、貴方もじゃないですか?例えば…料理とかはどうですか?二乃さんは小さい頃から料理は得意でしたか?」

「それは、そうだけど…」

「ふふっ、二乃さんの料理の腕はピカイチだと思います。でも、それは最初から出来た訳でもなく、かといって姉妹皆さんが得意という訳でもない。二乃さん、貴方だけが経験したことで培ったもの」

「……」

 

本当にこの子は凄い。言葉が出ないとはこの事かもしれない。

 

「では、三玖さん貴方には何があると思いますか?」

「え?」

 

急に話を振られた三玖はビックリしたけど恐る恐る答えた。

 

「…私、昔から戦国武将が好きなんだ...」

「え?戦国武将って...あんなおじさんが?」

「うん」

「いいじゃないですか。それが三玖さんだけが持っているものです。他には…一花さんは自分が長女であるという自覚からか姉妹みんなの事を良く見ていますね。何より今は女優という道を進んでいる。四葉さんはなんと言ってもあの運動神経ですね。それに困っている人を見過ごせない性格。五月さんはあの真面目さではないでしょうか。真面目過ぎるのも玉に瑕ですが、これも五月さんだけが持っているもの」

 

レイナちゃんは私達姉妹の事を次々と話している。良く見てくれてるんだ。

 

「では、ここでお互いのお茶、飲んでみませんか?」

「「え!?」」

 

急に言われたから私と三玖はビックリしてお互いの顔を見た。

そして、言われるがままお互いが飲んでいたお茶を飲むことにした。

 

「やっぱ甘すぎる...」

「苦っ!」

「自分から飲もうとは思わないですよね。しかし、それは二乃さんと三玖さん、それぞれの好みがなければお互いに知ることのできなかった味です」

「「っ...!」」

「すみません、兄さんから二乃さんと話した内容を聞きました。その話によると、確かに中野さん達は昔五人そっくりで諍いもなく平穏だったのかもしれません。しかし、それでは…そうですねテストで言えば20点のまま。笑ったり、怒ったり、悲しんだり、色々な経験を一人一人が行い、足りないところを補い合っていき、五人で一人前、100点になっていく。それもいいのではないでしょうか。これから先、色々な困難が立ちはだかるでしょう。しかし、五人それぞれが違っている部分で補い合えば、きっと乗り越えていけます。私はそう信じてます」

 

レイナちゃんはそこまで言い切ると、自分の紅茶を飲んでこちらに向かって微笑んだ。その微笑みは私達にとって懐かしもののように感じた。

そして、三玖のお茶をもう一口飲んでみた。

 

「やっぱり苦いわね!こんなの飲もうとも思わないわ。でもそうね、これでハッキリしたわね。やっぱり紅茶の方が勝ってるって」

「紅茶だって元は苦い」

「こっちは気品のある苦味なのよ。きっと高級な茶葉から抽出されてるのよ!」

「緑茶は深みのある苦味。こっちの茶葉の方が良いのを使ってる」

 

そんな争いをしてたらレイナちゃんから呆れたように言われた。

 

「何を争っているのですか...紅茶も緑茶も同じ葉を利用しているのですよ。発酵度合いで違っているのです。ちなみに烏龍茶も同じ葉です」

「「え...!?」」

 

レイナちゃんには悪いと思ったけど、信じられず携帯で調べてみたが言った通りだった。

 

「「嘘...」」

「ふふっ」

「あははっ、何それ!今度みんなにも教えてあげ...」

 

そこで言葉が止まってしまった。やっぱり私は姉妹みんなのことが好きなのだと改めて感じた。

 

「ちなみに兄さんは知っています。むしろ知らなかったのかと呆れられるかもしれませんので、兄さんに話すのはオススメしません」

「は-い...……今を受け入れるべき。いい加減覚悟を決めるべきなのかもね。レイナちゃんはさみはどこにあるの?」

「え?はさみなら戸棚にあるので持ってきますね。少々お待ちください」

 

そう言ってはさみを取りに行ったレイナちゃん。

 

「二乃?何するつもり?」

「あんたにも手伝ってもらうんだから、覚悟しなさい」

「え!?」

 

何故か恐怖顔になっている三玖に向かって笑顔を向けたのだった。

 

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朝食の後、僕は四葉のところには行かず、リビングと庭を繋ぐテラスで隠れて話を聞いていた。もちろん零奈には前もって了承を取っている。だから窓が開いており、中の会話が聞こえているのだが。

五月には、零奈と二乃の話が気になるからやっぱり残る旨を伝えて先に向かってもらった。

しかし、我が妹の大人びいたこと。どこからあんな知識が出てくるのだろうか。直江家の七不思議に登録してもいいかもしれない。

そんな事を考えていると、こちらに誰かが近づいてきた。

 

「兄さん?いるのですか?二乃さんと三玖さんは客間の方に行ったので大丈夫ですよ」

 

零奈のようだ。

零奈の存在が確認できたので、リビングを背にテラスに腰かけた。

 

「二人は何してるの?」

「それは後のお楽しみです」

「さいですか...…零奈ありがとね。これで二乃も前に進むことができるよ」

「私はただ思ったことを伝えただけです」

「それでもだよ。不甲斐ない兄で申し訳ない」

「そんな事ありませんよ」

 

そう言いながらキッチンの方に向かっていった。何か準備をしているようだ。

そして、お盆に何かを乗せてこちらに戻ってきた。

 

「はい、兄さん。温かいほうじ茶です。体も温まると思いますよ」

「お、ありがとうね。助かるよ」

 

零奈からほうじ茶を受け取ってゆっくり飲んだ。体の奥から温まるのを感じる。

そこに零奈が、後ろから首に腕を回しながら抱きしめてきた。

 

「おい、零奈!?」

「いいじゃないですか。たまには甘えさせてください」

 

それを言われると言い返せないよ。

 

「兄さんは不甲斐ないことなんてありません。今回だって、二乃さんと五月さん、二人から自分の気持ちを聞き出せたじゃないですか。お二人は兄さんだからこそ自分の気持ちをさらけ出したのでしょう。それがあったからこそ、私は二乃さんとお話ができたのです。ありがとうございます、二人に寄り添ってくれて」

 

五月とのことを知ってるってことは、あの時感じた気配は零奈だったか。

しかし、零奈の言葉に心も温かくなってきたような気がした。まったくどちらが年上なのか本当に分からないものだ。

 

「レイナちゃん、はさみありがとね。助かっ...」

「ん?どうしたの二乃?な、に、が...」

「あ、二乃さんに三玖さん。もう終わったのですか?」

 

どうやら二乃と三玖がこちらに来たようだ。僕は後ろの零奈のおかげで振り返れない。しかし、何故だろう。今振り返ると怖いものを見ることになりそうだ。

 

「か、和義!あんた何やってんのよ!」

「む~...」

「へ?何って、兄妹のスキンシップだと思うけど...」

「そうですね!これは兄妹によるスキンシップです!」

「そうなんだけど...あ~もう~!それより、話すときはこっちを見なさいよ」

「分かったよ。零奈そろそろ離れてくれないかな」

「仕方がないですね」

 

零奈が離れてくれたおかげで、ようやく振り返ることができた。そこには...

 

「二乃...その髪...」

 

二乃のあの長かった髪はなく、四葉と同じくらいまで切られていた。

 

「ど、どうかしら...」

「うん、二乃はどんな髪型でも似合うね。とても可愛いよ」

「~~~~~っ!」

「む~~...」

「はぁ、兄さんの天然発動ですね」

「え?何かまずかった?正直な感想を言ったんだけど」

 

何故か、二乃は後ろを向いてしまい。三玖はジト目でこちらを向き。零奈は眉間に手を持っていき呆れている。

感想を言っただけでこれって納得いかないのだが。

そんな時だ。僕の携帯に着信が入った。

 

「どうしたの、風太郎?」

『そっちに三玖は来てるか?』

「ああ、いるけど...」

 

三玖の方を見ながら風太郎の質問に答えた。

 

『そうか!なら三玖を連れてこっちに向かってくれ!今にも四葉が合宿に連れて行かれそうなんだ』

「何で三玖を...って、まさか...」

『ふっ、話が早くて助かるな。そう、ドッペルゲンガー作戦だ!場所は駅前だ、急いで来てくれ』

 

それだけ言うと風太郎から携帯を切ってしまった。

 

「ドッペルゲンガーって...」

「電話何だったの?私の方を見てたけど...」

「あぁ、風太郎からで、今まさに四葉が連れて行かれそうだから急いで三玖を連れてこいってさ」

「私を?何で...あぁそういう事。でも難しいかも。今の私変装するためのウィッグがない」

「ってそうか。どうするかな...」

「何困ってんのよ。ここにもう一人同じ顔がいるじゃない」

「そうか!二乃、頼めるかな?」

「任せなさい!四葉はジャージよね。急いで着替えてくるわ」

「頼んだ!僕と三玖は外で待ってるよ」

 

三玖と外で待ってると、ジャージに着替え頭にうさぎりぼんを着けた二乃が家から出てきた。

 

「どうです?」

「ああ、間違いなく四葉だね。見た目だけは」

「む、何か含みのある言い方ね」

「何て言うか、確かに見た感じは四葉なんだけど、雰囲気?が何か二乃って感じがする。あ、母さんの運動靴用意したから、入るか確かめてみて」

「え、カズヨシ…それって…」

「うん、ちょうど良い感じね。じゃ早速行きましょうか」

「そうだね。ごめん、三玖さっき何か言った?」

「ううん。大丈夫だよ。行こう」

 

三玖が何か言ったような気がしたが、気にしてないようなので風太郎達の待つ駅前に向かうことにした。

 

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そろそろ着く頃に風太郎に電話して知らせた。

 

「風太郎そろそろ着くけどどうすればいいの?一旦合流する?」

『いや、ちょうど良いところに来てくれた。正に今移動を始めようとしている。俺が合図したら三玖を向かわせてくれ』

「あ、今回は三…」

 

そこで電話が切れた。あいつ今日はやたらとすぐ切るなぁ。

本当は二乃が行くって言おうとしたが、まあいいか。

 

「二乃。風太郎が合図したら向かえってさ」

「あの集団の所に行けば良いのよね。て言うか、合図って何よ?」

「さあ?」

「さあって、あんたねぇ…」

 

二乃が抗議した瞬間である。

 

「痴漢だー!痴漢が出たぞー!!」

 

風太郎の声が辺りに響いた。

 

「まさか…」

「これが合図?カズヨシ…」

「あいつ凄いこと仕出かすわね」

 

階段を登っていく風太郎が見え、三人で呆れていると…

 

「そこの人、止まりなさーい!」

 

そのセリフと共に四葉が風太郎を追いかけだした。

 

「風太郎も大概だが、追いかける四葉も凄いな…」

「まあいいわ。じゃあ行ってくるわね」

「二乃、ファイト…」

「任せなさい」

 

四葉と入れ替わるように四葉に変装している二乃が陸上部員が集まっている場所に向かっていった。

 

「僕達は先に風太郎達に合流しようか」

「分かった」

 

風太郎が先ほど登っていった階段を登りながら、二乃の様子を伺っているが、陸上部の部長らしき人が膝から崩れ落ちて放心してしまった。

 

「二乃のやつ何言ったの?」

「分からない。けど、上手くいったみたいだね」

 

まあそうなんだけどね。良いのだろうか。

階段を登った先では風太郎に一花、四葉と五月が僕達と同じように陸上部員達の様子を見ていた。

 

「よ!間に合ったみたいだね」

「和義。グッドタイミングだったぜ。お前が三玖を連れてきてくれたおかげで…」

「私は何もしていない。ウィッグの用意がなかったから変装できなかった」

「!?」

「「「三玖!」」」

 

まさか素の三玖が僕の後ろにいるとは想像していなかったのか、そこにいた全員が驚いていた。

 

「お、おい。五…四…一…三…ってことは…」

 

風太郎が数字を数えながら変装を誰がしているのか考えていると…

 

コツコツ…

 

後ろからこちらに近づいている気配を感じた。

 

「僕も詳しくは知らないけど、きっと何か気持ちの変化があったんだよ。ね、二乃?」

 

いつもの蝶々を象ったリボンを、頭の両脇に着けながら僕の後ろから颯爽と登場した二乃に話しかけた。

 

「ちょっと二乃~。そんなにサッパリいくなんて、もしかして失恋ですかー?」

「馬鹿…そんなんじゃないわよ」

「え~?三玖は何か知ってる~?」

「知らない」

 

髪を切った三玖とからかっている一花以外の人間は、二乃の変貌にただただ驚いていた。

 

「四葉」

「!」

「私は言われた通りにやったけどこれでいいの?こんな手段取らなくても本音で話し合えば彼女たちも分かってくれるわよ、きっと。あんたも変わりなさい。辛いけど、いいこともきっとあるわ」

 

姉妹を思う優しい顔で二乃は四葉にそう諭した。

 

「…うん。行ってくる」

「付いて行こうか?」

「ありがとう。でも……一人で大丈夫だよ」

 

一花の言葉に四葉は笑いながら答え、陸上部員が集まっている場所に向かっていった。

四葉はこれで大丈夫だろう。後は…

 

「二乃…先日は…」

「待って。謝らないで。あんたは間違ってない、悪いのは私…ごめん。あんたが間違ってるとすれば、力加減だけ。凄く痛かったわ…」

「二乃ぉ~」

 

五月はすでに泣いており、顔がグシャグシャである。

そしてそのまま二乃に抱きつき、抱きついてきた五月を優しく二乃は抱きしめていた。

 

「騒動は収まったよ。ありがとね、零奈…」

 

ここにはいない今回の立役者であろう零奈に向かって、空を見上げながら僕は感謝を述べるのであった。

 

 




二乃のショートカット解禁です!
いよいよ来ましたね~
アニメで、リボンを結びながら登場したシーンは好きなシーンでもあります。
この話を書きながら何回も観てしまいましたw

さて、次回はあのお話ですね。オリジナルキャラもいるのでどんな感じにしようか現在も模索中です。
では、また次回に。
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