五等分の奇跡   作:吉月和玖

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46.試験結果、そして...

「この度はご迷惑をおかけしまして...全ては私の不徳の致すところでして...」

 

中野家の玄関近くまで来たところで四葉が土下座をしながらみんなに向かって謝っている。見事な土下座である。

しかし、誰も聞いちゃいない...

 

「えっと、四葉...女の子がこんな事しちゃいけないよ。もう気にしていないから、ほら顔を上げて...」

「う~...直江さ~ん...お優しいお言葉心に染みます。それに比べて...も-、みんな聞いてよ-」

「あ?いつまでそんなこと気にしてんだ、早く入れ」

「いや、お前の家じゃないだろ...」

 

四葉は文句を言っているが、みんなはやはり気にしていないようで笑顔で四葉を見ている。

 

「それと...おかえり。二乃、五月ちゃん」

「「ただいま」」

 

その後二乃と五月以外の姉妹はまだ朝食を食べていないということで、簡単におにぎりを作ってあげた。今回の事での謝罪を込めて、四葉も手伝ってくれた。

今は僕と二乃以外のみんながおにぎりを食べているところだ。というか、五月も食べているが、君は朝食しっかり食べたよね。

 

「そう言えば、四葉。陸上部の事はどうなったの?」

 

大丈夫だろうとは思っていたのだが、やはり気にはなっていたので聞いてみた。

 

「あの後ちゃんとお話をして、大会にだけ協力してお別れすることになりました」

「そっか...」

「大会も断っちまえばよかったのに」

「一度お受けした以上お断りはできません」

「あの部長諦めが悪そうでしたからね」

「また何か言われたら教えなさい。今度こそしっかりと教育してあげるわ」

「教育って...」

 

マジであの時何言ったの?

 

「ありがとう二乃!でも今度は一人でやってみる!」

「あっそ」

「さて本題に移ろう」

 

風太郎がそう言いながら立ち上がった。

机の上にはみんながそれぞれやり終えた風太郎お手製の問題集が置かれている。

みんな自分の分は全部終えいているようだ。よく頑張ったね。

 

「とりあえず問題集は全員終わらせてるみたいだけど...」

「私達ちゃんとレベルアップしてるのかな?」

 

三玖と一花が心配そうに終わらせている問題集の束を見ている。

そんな中四葉がドヤ顔なのが気になるが。

 

「大丈夫だ、秘策がある!」

「?秘策とか用意してたんだ。僕も知らなかったよ」

「ふっ、任せておけ...カンニングペーパーだ!」

「「「「「!」」」」」

「おっと...」

 

風太郎が自信満々にカンニングペーパーを出してみんなに見せつけている。

 

「あ、あなたはそんな事をしないと思っていました...」

「そんなことして点数を取っても意味ないですよぉ」

「確かに」

 

どうしたのだろう風太郎の奴。

 

「じゃあもっと勉強するんだな!こんなもの使わなくてもいいように最後の二日間でみっちり叩き込む!覚悟しろ!」

「そういうことね。だったら僕も協力するさ」

「......というように進めさせていただきますが...いかがでしょう?」

 

おずおずと二乃に聞いている。まあそうだよね...

でも大丈夫だよ風太郎。

 

「何それ。今まで散々好き勝手にやってきたくせに。やるわよ、よろしく」

「!」

「ほら、机の上片付けなさい。始めるわよ」

「「「「は-い」」」」

 

二乃の合図で机の上を片付けてみんな勉強の準備を始めている。嫌々な娘はいない。みんな笑顔で勉強に取り組んでいる。

そんな光景を風太郎は感慨深く見ている。

 

「ふっ...ほら始めるよ風太郎」

 

風太郎の肩に手を置きながら話しかけた。

 

「和義...」

「よかったね、フータロー君」

 

こちらに振り返りながら一花が風太郎に声をかけた。恋する乙女、本当にいい笑顔だ。

 

「まだ...これからだ」

 

何か覚悟をした顔つきでいる風太郎は、勉強を教えるために姉妹の所に向かう。そんな彼に僕も続いた。

 

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「ここまで荷物を運んでいただきありがとうございます」

「ホント助かったわ」

 

あの後勉強に一区切りを付けて、二乃と五月の荷物を取りにうちまで戻っていた。

そして、その荷物を持ってまた中野家に戻ってきたのだ。ちなみに零奈も一緒だ。

 

「今日もお泊りさせていただきありがとうございます」

「いいのよ。料理が出来る子が増えると私も助かるもの」

「今日も一緒に寝ましょうね、レイナちゃん」

「はい!」

 

土日の追い込みのため、風太郎が泊まることになった。そこで、今回僕も泊まるよう言われた。

そこで、荷物を取りに行くついでにと、零奈も誘うことになったのだ。

 

「零奈、夜食の準備とか手伝ってもらうかもだけど、よろしくね」

「はい!お任せください」

 

さて、明後日の期末試験に向けて頑張っていきますか!

 

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期末試験当日---

僕は試験前の朝、屋上に向かっていた。屋上の扉を開けると、そこには風太郎が携帯を眺めながら佇んでいた。

 

「よ!風太郎、早かったね」

「ん?ああ、和義来たか...」

 

いつにもまして真面目な顔である。

 

「はぁ~...んで、昨日言った事に変わりはない?」

「ああ!」

「そ。なら僕は止めないさ」

 

そう言って壁に寄りかかった。

 

「俺が言うのも何だが、いいのか本当に?」

「僕はいつでも君の味方だよ。まぁ、駄目と思ったらちゃんと止めるさ」

「そうか。その時は頼んだぞ、和義先生」

「はいはい。まったく手のかかる生徒だこと」

 

そこでお互い笑いあった。そして、風太郎はある人に電話をかけるのである。

 

「...ええ、五人とも頑張っていますよ。これは本当です......そこで勝手ですがお願いがありまして......今日をもって家庭教師を退任します......」

 

風太郎の電話の声を聞きながら、空を見上げていた。今日もいい天気だなぁ。

 

「一花、二乃、三玖、四葉、五月。君たちが五人揃えば無敵だ。頑張れよ」

 

空を見上げながら呟いたその言葉は空に溶けて消えていった。

 

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~中野家~

 

-試験結果-

・一花

国語 24点、数学 52点、社会 28点、理科 41点、英語 36点、合計 181点

 

・二乃

国語 26点、数学 34点、社会 36点、理科 43点、英語 72点、合計 211点

 

・三玖

国語 37点、数学 43点、社会 75点、理科 40点、英語 20点、合計 215点

 

・四葉

国語 51点、数学 17点、社会 31点、理科 24点、英語 27点、合計 150点

 

・五月

国語 43点、数学 28点、社会 38点、理科 70点、英語 34点、合計 213点

 

「こ、これは酷い...」

「あんなに勉強したのにこの結果か-」

「改めて私達って馬鹿なんだね」

「み、みんな元気出して!」

「あんたは自分の心配しなさいよ」

 

五つ子は自分たちの試験結果を見て、落胆していた。

風太郎と和義には自分たちの家庭の事情に巻き込んでしまった。にも関わらず、最後まで勉強を見てくれたのだ。それなのにこの結果である。

 

「丁度家庭教師の日だし、今日は期末試験の反省がメインだろうね」

 

ピンポ-ン

 

一花がそう言った時、来客の知らせであるチャイムが鳴り響いた。

 

「お、噂をすればだね...」

「フータローにしこたま怒られそう...カズヨシは教室で結果を教えたから知ってるけど」

「だね-。直江さんはそこまで怒りそうにないけどね」

「なんで嬉しそうなのよ」

「あはは。結果は残念だったけど、またみんなと一緒に頑張れるのが楽しみなんだ」

「あれっ...お二人ではありませんでした」

 

モニターを見に行っていた五月が確認した時、そこには風太郎と和義の姿はなかった。

 

「失礼いたします」

「なんだ江端さんか-」

「今日はお父さんの運転手はお休み?」

「ええ。本日は臨時家庭教師として参りました」

 

三玖の質問に対して中野家を訪問した江端はそう答えた。

 

「そ、そうなんだ」

「江端さんは昔教師をやってたもんね」

「あいつらサボりか」

「体調でも崩したのかな...」

 

四葉、一花、二乃、三玖がそれぞれ発言したことに対して江端は答える。

 

「お嬢様方にお伝えせねばなりません。上杉風太郎様及び直江和義様は家庭教師をお辞めになりました」

「え...」

 

五つ子全員がその言葉に驚き、五月が唯一声を漏らした。

 

「旦那様から連絡がありまして、上杉様と直江様は先日の期末試験を最後に契約を解除されたとのこと。私は次の家庭教師が決まるまでの臨時家庭教師をすることになりました」

 

全員が固まり、江端の言葉を信じることが出来ずにいた。

 

「え...待って、それってつまり...フータロー君とカズヨシ君はもう来ないってこと...?」

 

辛うじて一花が言葉を発することができた。五つ子の誰もが思いたくない言葉を。

 

「嘘......」

 

三玖はもう放心状態である。

 

「やっぱり...赤点の条件は生きていたんだわ。試験の結果を知られてパパに辞めるよう言われたのよ」

「それは違うと思われます」

 

二乃の発言に対して、江端が反論した。

 

「上杉様は自らお辞めになられたと伺っております。そして直江様も、自分は上杉様の補佐だからと、こちらも自らお辞めになったようです」

「自分からって...」

「カズヨシ...どうして...」

「そんなの納得できません。お二人を呼んで、直接話を聞きます」

 

四葉と三玖は信じられない、といった様子でいたところ、五月が自分の携帯を出して二人を呼ぼうとした。だが、

 

「申し訳ありませんが、それは叶いません。上杉様と直江様、お二人のこの家への侵入を一切禁ずる。旦那様よりそう承っております」

「なぜそこまで...」

「分かった。私が行く」

 

三玖がそう決心をして玄関に向かおうとしたが、それを江端は許さなかった。

 

「江端さん通して」

「なりません。臨時とはいえ、家庭教師の任を受けております。最低限の教育を受けていただかなければここを通すわけには参りません」

 

そして、江端の用意した問題用紙に五つ子が取り掛かることとになった。

 

「これが終われば行ってもいいのよね」

「ホホホ、ご自由になさってください」

「全く、あいつらどういうつもりよ」

「私はまだ信じられないよ」

「とにかくこれを終わらせて、本人たちの口から直接聞き出さないとね。誰か終わりそう?」

「私はもうすぐです」

「私も...」

「私もよ」

 

一花の問いに対して、五月、三玖、二乃が答えた。

 

「この問題比較的簡単だよ。きっと江端さん手心を加えてくれてるんだよ」

「そうね。けど、少し前の私達であれば危うかったわ。自分でも不思議なほど問題が解ける。悔しいけど全部あいつらのおかげだわ」

 

一花の問題に対する気持ちを話すと二乃がそれに応える。五つ子たちは順調に問題を解いていった。しかし、

 

「う~...あと一問なのに...」

「私も最後の問題だけなのですが」

「最後の問題だけは異常に難しいわね...」

 

五つ子はそれぞれ後一問というところまで進めたがペンが止まってしまった。

 

「ホホホ、その程度も解けないようであれば特別授業を行うしかありませんな」

「「「「「~~~っ!」」」」」

 

江端はそう言いながら、五つ子のお茶の準備をするためにキッチンに向かっていった。

それを見た五月が全員に対してある提案をする。

 

「あの...カンニングペーパー見ませんか?」

「それって期末の?」

「い、いいのかな...」

 

四葉の心配なセリフに対して五月は、

 

「有事です。なりふり構ってられません」

「五月が上杉さんみたい」

「あんた変わったわね...」

「じゃあ私から...」

 

一花が風太郎から預かっていたカンニングペーパーを筆入れから出して広げてみた。そこには、

 

『安易に答えを得ようとは愚か者め』

 

「な~んだ。初めからカンニングさせるつもりなかったんじゃない」

「フータローらしいよ...」

「ですが、どうしましょう....」

「待って、続きがあるみたい...2?」

「私かしら?」

 

そして二乃が自分のカンニングペーパーを広げた。

 

『カンニングする生徒になんて教えてられるか』

 

「自分で作ったんじゃない」

「繋がってる...これ上杉さんからのメッセージだよ」

 

三玖のカンニングペーパーには、

 

『これからは自分の手で掴み取れ』

 

四葉のカンニングペーパーには、

 

『やっと地獄の激務から開放されてせいせいするぜ』

 

「あはは、やっぱり辞めたかったんだ。私たちが相手だもん。当然と言えば当然だよね」

 

そう言って項垂れる四葉。

 

「最後は五月だけど...五月?」

 

二乃が五月に声をかけるも、五月は自分のカンニングペーパーを見ながら固まっていた。そして、

 

「......だが、そこそこ楽しい地獄だった。じゃあな」

 

自分のに書かれていた文章を五月は声に出してみんなに聞かせた。

 

「私......まだ、上杉さんや直江さんに教えてもらいたいよ」

「私だって...カズヨシなしじゃ...もう...」

「そうは言ってもあいつらはここに来られないの。どうしようもないわ」

 

全員これからも二人と勉強を頑張っていきたい気持ちとどうしようもない現実とで板挟みになっていた。

そんな時一花からある提案を妹たちに出された。

 

「みんなに...私から提案があるんだけど...」

「あんたそれ本気?」

「うん。実は前から綾さんと話してたことなんだ」

「あんた達二人で何話してんのよ...」

「いやぁ~、最初は冗談で話してたんだけどね。じゃあ、みんな賛成ってことでいいかな?」

「ええ」

「問題ない」

「う~...これもお二人に家庭教師を続けてもらうためだね」

「賛成です」

「よし。じゃあ...」

 

そして五つ子達は一斉に立ち上がり、お茶を用意した江端を迎えた。

 

「おや、どうされましたか?」

「江端さんもお願い。協力して」

 

一花のセリフに対して、姉妹全員が真剣な顔をしているのを見て、口角を上げて江端はこう漏らした。

 

「大きくなられましたな」

 

 




いよいよ期末試験編もこの話でラストです。
今回の話は短い感覚で場面が変わっていたので読みにくかったかもしれません。ご容赦いただければ幸いです。

次回からは新章をスタートいたします。
さあ、風太郎と和義は家庭教師を辞めてしまいましたが、今後はどうなるのでしょうか。
原作を知っている人は分かるかもですが。。。

では、また次回の更新をお待ちください。
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