「おかえりなさい、兄さん」
「ただいま零奈。はいこれ、僕が作ったケーキだよ」
「うわぁ-、兄さんの手作りとなると間違いないですね」
僕からケーキを受け取った零奈はいつも以上に上機嫌になり、ケーキを冷蔵庫に入れるためにリビングに向かった。
「そうだ。二人だと食べきれないだろうから、らいはちゃんを呼ぼうと思うんだけどどうかな?」
「いいのではないでしょうか。今は冬休みなのでお泊りでもいいと思いますよ」
「うん。じゃあ電話で呼んでおこうか。ついでに風太郎にメッセージ送っとこう。そう言えば、母さんから何か荷物届いた?」
「いいえ。何か送られてくるのですか?」
「ああ、昨日母さんがクリスマスプレゼントを送ってるって言ってたんだよ」
「なるほど。何なんでしょうねプレゼントって...」
う~む、最初は楽しみであったのだが、ここに来てな-んか嫌な予感がするのだが...
『やめろ!お前の嫌な予感は大抵当たるんだからな』
そう言えば、風太郎にこんな事を前に言われてたっけ。
え、待って今回も嫌な予感が当たるの...
そんな風に思っていると、
ピンポ-ン
「ん?噂をすれば宅配かな?」
「ですかね...」
玄関まで来客を迎えに行くと、配達員の人がいた。
いや、配達員の人の後ろの荷物の量半端ないんだが...しかも一人じゃないし...
「こちらは直江様のお宅でお間違いないでしょうか?」
「はい、確かに直江ですが、あの~荷物は...」
「少し多いので、こちらで運ばせていただきます。えっと、直江綾様より客間に運ぶよう手配も受けております。場所の案内をお願いできますか?」
「え?客間ですか...分かりました。こちらです」
そう言って客間に案内をしたのだが、荷物が多すぎる。ダンボールが10箱。
これ全部プレゼントなのだろうか...
「搬送は以上です。終了確認のためこちらにサインをお願いできますか?」
確かに書類にはダンボール10箱と書かれているしこれでいいのだろう。
「これでいいですか?」
サインを終えたのでそれを配達員の人に渡す。
「はい確かに。ではこれで失礼いたします」
サインを貰った配達員の人は次の場所があるのだろう。すぐに帰っていった。
「あの、兄さん。本当にこれ全部がうちへの配達なのでしょうか...」
「うん。配達の紙にはそう書かれてるしね。だけど...これは『衣類』?」
「衣類って...これ全部ですか?」
「いや、全部って訳じゃないけど...」
何を考えているんだ母さんは。そんな考えをしていると携帯に連絡が入った。
「あ、母さん?荷物が今届いたけどこれってどういう事?」
『無事に届いたんだ。あ、中身はまだ見ちゃ駄目だよ!女の子の下着とか入ってるかもだから』
「は!?下着!?」
「兄さん、何の話をしているのですか?下着とは何ですか?」
「いや、母さんが女性の下着が入ってるから、勝手にダンボールを開けるなって...」
「はぁ!?」
「ちょっと、どういう事?」
『ああ、実は私の友達の娘さんがうちに下宿することになったのよ。その荷物はその娘
「いやいや、母さん何言ってんの?そんな下宿とか聞いてないんだけど...」
『それはそうよ。今言ったんだから』
「もう頭痛くなってきたんだけど...って、ちょっと待って。今
『ええ、そうよ。私にとっても大事な人達なんだから失礼のないようにね。っと、私も用事があるからもう切るね。あ、もうそろそろ来ると思うから、しっかりとおもてなししてね。じゃ!』
そこで母さんからの電話は切れてしまった。
「ちょっ、母さん!?マジかよ...どうすんのこれ?」
「えっと、兄さんどうしたのですか?下宿とは?」
「え-と、母さんの友達の娘さん達がうちで下宿することになったんだって...」
「え?下宿?後、娘さん達って…一人ではないのですか?」
「みたい...しかも今日からって」
「今日ですか!?」
兄妹で頭を抱えていた時ふとダンボールに目が行った。そう言えば、ダンボールに数字が書かれていたっけ。あれって、ちゃんと自分用にと数字を割り振ってあったんだ。
「えっと、数字は...一、二、三、四、五......おいおい、まさかとは思うけど、下宿に来る母さんの友達の娘さんって...」
「兄さん、どうしたのですか?」
「いや、ダンボールに数字が割り振られてるんだけど、それが…」
ピンポーン
零奈にダンボールに書かれている数字について説明をしようとしていた時チャイムが鳴った。
僕の予想が正しければ、玄関で待っているのは恐らく...
玄関に行くのを多少躊躇していると、零奈が不思議そうにこちらを見ていた。
「兄さん?玄関に行かれないのですか?どこの誰かは知りませんが、母さんのお客様という事であれば招かなければいけませんよ」
「だよね...」
二人で玄関に向かい、ドアを開けるとそこには予想通りの光景が広がっていた。
「え...?」
「こんにちは!お母様から聞いているかもしれませんが、今日からお世話になります、中野一花です。よろしくね」
「中野二乃よ。よろしく」
「中野三玖...よろしく...」
「中野四葉です!よろしくお願いします!」
「中野五月です。どうぞよろしくお願いたします」
本当に僕の嫌な予感って当たるんだね、風太郎。そう心の中で思うのであった。
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母さんが許可をしている手前、追い返すこともできず、とりあえず五人をリビングに通した。
テーブルの椅子は四つしかないので、ソファーの前の机を囲うように座ってもらっている。
零奈は今全員分のお茶を用意しているところだ。
「色々と聞きたいことがあるんだけど、まず...みんな本気なんだね?」
「もちろんだよ。荷物だって発送したのに、これで冗談はさすがにないかな...」
一花が代表して僕の質問に答えてくれた。やっぱりマジなんだ。
「えっと、皆さんお茶どうぞ」
そんな中零奈が全員分のお茶の用意が出来たので、みんなに配っていた。最後に僕と自分用に置き、僕の横に座った。
「それで、どうしてこんな事になってるの?」
「あんたが私たちに質問をするのなら、私たちにも聞く権利があると思うんだけど。まず、そっちから答えなさい。何で家庭教師を辞めたのよ?」
「そ、それは...勝手に辞めたことは本当に悪いと思っている。けど、君たちに勉強を教えるのが嫌になったから辞めたわけじゃないことは断言できる。だけど、風太郎には風太郎なりの考えがあって家庭教師を辞めるという考えに至ったんだ。僕はそれを尊重した。けど、その風太郎の考えをここで僕からは言えない」
「フータローが私たちの事を教えるのが嫌になったから辞めた訳じゃないことは分かってる。フータローからのメッセージ貰ったし...」
「メッセージ?」
「ほら、試験前に私たちに渡してたでしょ。あのカンニングペーパーよ」
あの時のカンニングペーパーにそんな仕込みがあったのか。やるな風太郎。
「直江さんも知らなかったんですね」
「ああ、そもそもカンニングペーパーを用意していることすら知らなかったんだしね」
「直江君たちに考えがあって家庭教師を辞めたように、私たちにも私たちなりの考えがあって今回の行動を起こしました」
「それを言われると何も聞けないな~」
「本当はね、どっかのアパートでも借りようと思ってたんだ。それで一応綾さんに相談したら、『だったらうちに来れば?大丈夫、大きな客間があるからそこ使えばいいよ。もちろん、光熱費とか食費のことを考えると貰うものは貰わないとだけどね。でも、そこら辺のアパートを借りるより安く済むし、部屋の広さも気にならないんじゃないかな。バス・トイレ別のキッチン付きだよ』、って返ってきたんだよねぇ」
「あの母親は何を言っているんだ...」
「全くです」
兄妹共に同じ意見である。
「あんたにはしたくもない勉強をさせられて、必死に暗記して公式覚えて、でも問題解けたら嬉しくなっちゃって...こんな気持ちにさせたんだから最後まで責任取りなさいよ!」
「そうですね。以前、三玖と私も言いましたね。責任取ってください、と」
「ぐぅ~...でも良いの?広いとはいえ、客間で五人生活をするの大変だよ」
「大丈夫です。大切なのはどこにいるかではなく、五人でいることですから!」
四葉の宣言に他の姉妹も笑顔で頷いている。もう何を言っても無駄かな。
「皆さんの決意は分かりました。母さんも許可しているのです。私達からこれ以上どうこう言おうとは思いません」
「零奈...」
「二乃さんと五月さんには前にも話しましたが、一緒に暮らすにあたってルールを作らせていただきます。良いですね?」
零奈の言葉に対して姉妹全員が頷いた。
「よろしい。では一つ。ここでの姉妹喧嘩は御法度です。軽い言い合いまでは許しますが、この間のような喧嘩が起きた場合には家に帰っていただきます」
「「うっ...」」
二乃と五月はこの間のことがあったのか居心地が悪くなったようだ。
「一つ。働かざるもの食うべからず。光熱費や食費を払っていただく一花さんには強要はしませんが、家事などはしっかりとやっていただきます」
これは満場一致で全員頷いている。
「一つ。ここで暮らす以上勉強を疎かにしてはいけません。兄さんと風太郎さんの指導の元、しっかりと勉強に励んでもらいます」
ごめん風太郎、勝手に巻き添え食らっちゃってるよ。
「そして最後にこれが一番重要です。ここには男性が兄さんしかおりません。節度を持った生活を送っていただきます。もちろん、これは兄さんにも当てはまりますが...」
こちらを睨みながら零奈が発言している。怖っ!
「大丈夫だよ。そこは弁えてるって。この間みたいに客間に近づかなければいいんでしょ?」
「そうですね。兄さんに至っては特に心配はしてません。後は、トイレの鍵かけ忘れがないようにすることや脱衣所用に使用中の看板を作るくらいで事足りるでしょう。しかし...」
そう言って五つ子の方を見ている。いや、睨んでいるなこれは。
「中野さん達は十分肝に銘じておいてください。どうせ、母さん辺りから何か言われているのでしょう?」
ビクッと全員が反応した。おい、何言った母さん。
「そうですね。中野さん達には二階への侵入を禁止にしましょう。もちろん、私や兄さんの許可があれば問題ありませんが...」
分かっているでしょうね、と僕を見ている零奈。信用されてないなぁ。
「以上です。他に追加事項が出来たらまたお知らせします。良いですね?」
「「「「「はい...」」」」」
零奈の迫力に誰も文句を言ってこない。凄すぎです零奈。
本当にこの子は一体何者なのだろうって、我が妹ながら思ってしまう。
「では、真面目な話はここまでにして。兄さん、一日早いですが今日は歓迎会も兼ねてクリスマスパーティーなんてどうでしょう?この後、風太郎さんとらいはさんも来るのですから」
「良いんじゃない。じゃあ、食材とケーキも買いに行かないとだね。この人数だと流石に1ホールじゃ足りないだろうし…」
「ケーキ買っていたのですね」
「ああ、今日は風太郎がバイトしてる店に朝からヘルプで行ってたからね。そこで僕が作ったケーキを1ホールだけ貰ったんだよ」
「カズヨシの手作り?」
「うん。整った設備で作ったから結構自信作なんだ!」
僕の言葉を聞いた後、女性陣の目の色が変わった。女の子は甘いものに目がないからなぁ。あれ、三玖は甘いの苦手じゃなかったっけ?
「それじゃあ、二乃。僕が買い出しに行ってくるから、冷蔵庫の中を見て何を買ってきたらいいかピックアップして連絡してくれる?すぐに取り掛かれるものがあればもう作り出してもらうと助かるかな」
「分かったわ」
「四葉と零奈は飾り付けの道具とかを出すのお願いしてもいいかな?」
「道具の場所を知っているのは私と兄さんしかいませんからね。適任かと」
「分かりました!」
「三玖と五月はうちに届いてる荷物の整理をお願い。早めに終わったら四葉達を手伝ってあげて」
「分かった…」
「お任せください」
「で、余った一花は僕と一緒に買い出しね」
「ちょっとぉ、余り物みたいで酷いんですけど!」
「文句言わない。適材適所だよ。後、らいはちゃんがそろそろ来ると思うから、二乃の手伝いか四葉達の手伝いかはその場の判断に任せるよ。じゃあ一花、行こうか」
「はーい」
そして一花を連れて僕は買い出しに向かうのだった。
という事で、なんと直江家に五つ子が下宿する事になりました!
いやぁー、こういう展開も面白いかなっていう思いで書きましたが、これからの展開とか考えると今更ながら大変なのでは、と思ってしまってます。
出来る限り頑張らせて頂きますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。