五等分の奇跡   作:吉月和玖

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49.クリスマスパーティー

「それで、何で買い出しに連れていくのは私だったのかな?」

 

一花を連れ、買い出しに向かう途中そんな質問をされた。

 

「え?だって一花って、片付けとか苦手なんでしょ?多方面から聞いてるよ」

「うっ…!その情報は正しいけどさぁ…ほらお姉さんと二人っきりになりたかったぁ、とかあるじゃん!」

「いや、何でだよ。あ、でも少し違う理由あるかな」

「ほほぅ?それで他の理由って何かな?」

「風太郎に会わせてあげたくて。最近会えてないでしょ?」

「~~~っ!」

「おお、顔真っ赤…」

意地悪…

 

ちょっとからかいすぎたかな。暫くそっぽを向いたまま僕の横を歩いていた。

 

「そう言えば、君ってばプライベートだと眼鏡かけるんだね?」

「ああこれ?伊達眼鏡なんだよ。近所を歩く時はこうやって変装してるの。今は隣に一花もいるしね」

「なるほど!徹底してるねぇ」

「まぁこの間の噂で懲りたからね…」

「確かに…あそこまで噂になるとはって感じだったよ」

「一花もそのうち変装必要になるんじゃない?」

「まぁ、そうなれるくらい有名になれるように頑張るよ」

 

少しは機嫌が良くなってくれたようで、その後のスーパーでの買い物もスムーズに終わった。

ただ、二乃からの連絡があった買い物リストの量が多く、『今日の分だけでいいんだけど』、と返したら、『今日の分よ』、と返ってきた。想像していたよりも食事の用意は大変そうだ。

 

「メリークリスマス!ケーキはいかがですかー?」

 

REVIVALの近くまで行くと風太郎の客寄せの声が聞こえてきた。まだこっちに気付いていないようだ。

 

「すみません。ケーキを1ホールお願いします」

「はい!…何だ和義かよ。って一花!?何でお前らが一緒に…」

「久しぶり、フータロー君!」

「ちょっと訳ありでね。後でうちに来たときに説明するよ。何?僕達二人がイブに一緒にいるのが気になった?」

「べ、別にそんなんじゃねぇよ!ただ確認しただけだ」

 

そう言った風太郎はそっぽを向いてしまった。

 

「「ほほぅ~」」

 

一花と僕とでニヤニヤしながら風太郎に近づくと、『うぜぇ~…』、とぼやきながら逃げられてしまった。

 

「まぁ、風太郎へのからかいはここまでにして、実際ケーキ買いに来たんだよね。案内よろしくっ」

「それを先に言え!」

 

そう文句を言いながらも店内に案内してくれた。

店の中まで案内した風太郎は、またすぐに呼び込みに戻ってしまった。

 

「おや、直江君じゃないか。どうしたんだい?」

「店長。先ほどはお世話になりました。ちょっとケーキが足りなくなりそうなので、もう1ホール買いに来ました」

「それはありがたいね。どれが…はっ!」

 

そこで何故か店長は驚いたように一花を見ている。あれ、もしかして一花も少しは有名になったのかな?

 

「直江君。君は上杉君と違ってモテるであろうと想像はしていた…」

 

何気に風太郎に対して酷い扱いだなぁ。

 

「しかし、こうも現実を突きつけられると僕の心にグサッと来てしまうのだよ…」

 

もしかして、一花と僕が付き合っていると勘違いしてるのだろうか。

 

「店長は勘違いしてるかもしれませんが、この娘とはそういう仲では…」

「良いんだ。僕に遠慮することはない。買い物帰りであるかのようにお互いに買い物袋を持ち、さらに必要になったケーキを買いにやってくる。正に!付き合っているカップルではないか…」

 

想像力豊かな店長だ。しかも、自分で発言した内容で落ち込んでるよ。好きだなぁこういう人。

隣の一花もどうしようって困り顔だからそろそろ止めないとだね。

 

「だから、この娘とはそういう仲じゃないんですって!友人ですよ。この荷物は友人とのパーティーの買い出しで、人数も増えたからケーキの追加を買いに来たんです。ちなみに僕には彼女はいませんからね」

 

だけど、集まってるのがほとんど女子って言うとまた暴走しそうだから、そこは黙っておこう。

 

「何だ、それならそうと早く言いたまえ」

「いや、言わせてくれなかったのは店長ですけどね」

 

立ち直り早い人だなぁ。

 

「あ、でも大切な人っていうのはありますけどね」

「へ!?」

「ぐはっ…!」

 

何故か顔を赤くしてビックリしたようにこっちを見ている一花と、胸を抑えてダメージを負ったような店長。何か変な事言っただろうか。

 

「それよりも早くしてくださいよ店長。家で待ってる他の友達もいるんですから」

「すまない、最後の一撃がとんでもなかったからね。用意をするから席で待ってるといい」

 

そして、フラフラと外の風太郎のところに店長は向かってしまった。

適当な席に一花と座るとすぐに風太郎がやってきた。

 

「お前は店長に何言ったんだ?」

「え、普通に一花は大切な友人だって言っただけなんだけど」

友人かぁ。だよね…もう私だってそんなに耐性ある訳じゃないんだよ

 

顔を赤くして俯き何かブツブツ言っている一花を二人で見た後、風太郎がこっちを見ている。

 

「お前、本当にそれだけしか言っていないんだな?」

「いや、本当なんだけど…えっと時間かかるなら、とりあえずミルクティーを。一花はコーヒーで良い?」

「え!?う、うん」

「はぁ~…分かった。少し待ってろ」

 

そう言って風太郎は準備のために行ってしまった。

 

「一花大丈夫?」

「ふぇ!?だ、大丈夫に決まってんじゃん」

 

顔もまだ赤いようだけど、本人が大丈夫って言ってるならあまり突っ込まないでおこう。

その後、注文したお互いの飲み物を風太郎が持ってきた。

どうやらケーキの準備にもう少しかかるようだ。ミルクティーを飲みながら周りを見るとイブだからかカップルが多い。

みんな幸せそうな顔をしている。

 

「一花も周りの人達みたいに風太郎とデートしてみたいの?」

「ゲホッ…!ちょっ…!」

「大丈夫だよ。風太郎はいないって」

 

僕の言葉に驚いて飲みかけのコーヒーを溢しそうになりながら、キョロキョロしだした一花。普段はからかう側の人間をからかうと面白いな。

こほん、と落ち着かせて一花は答えてくれた。

 

「そりゃあ、いつかはそうしたいなとは思ってるけど…カズヨシ君は?してみたくないの?」

「う~ん、どうなんだろう…今こうやって一花とお茶を飲んでるのも周りからしてみればデートに見えてるかもしれないじゃない。でも彼等がしているデートと僕が中野姉妹と出かけるのって、根本的に違う。お互いに好き同士で出かけるってどんな感じ何だろうって興味はあるかな…」

「興味が出てきてるだけでもいいじゃん。良かった…」

 

そう言った一花は本当に嬉しそうにコーヒーを飲んでいる。

僕の心の変化が多少出ていることに、自分の事のように喜んでくれてるのかと思うと心が温かくなってきた。

その後、少しして風太郎がケーキを持ってきてくれた。

ちなみに店長はキッチンで一心不乱にケーキを作っているそうだ。何が彼をそこまでさせたのだろうか。

そして、もう少しバイトの時間がある風太郎と別れ、みんなが待っている家に帰ることにした。

 

------------------------------------------------

「遅い!何してたのよ!」

 

家に帰るとご立腹な二乃の声が出迎えてくれた。

 

「ごめんねぇ~、ちょっとカズヨシ君とデートしてきちゃった!」

「なぁ!?」

「一花、ずるい…」

「兄さん?先ほど話したばかりではないですか」

「直江君!どういう事か説明をしてください!」

「五月とレイナちゃん落ち着こう!ね?」

「はわぁ~…和義さんと一花さん凄~い」

 

零奈と五月に詰め寄られている僕を、一花はウィンクをしながら笑ってこっちを見ている。

さっきからかい過ぎたからか、その仕返しなんだろうけど勘弁してほしい。

 

「デートじゃないって。ケーキの準備に時間がかかったから、それを待ってる間に二人でお茶してただけだよ」

「普通にデートじゃない!」

「うん、デート…」

「デートです!」

「デートだと思います」

「え~…」

 

姉妹全員同じ意見だった。見事なシンクロである。

 

「う~ん、私には難しいけど中野さん達が言ってるならデートじゃないかな」

「はぁ~…どうせ兄さんのことです。何も考えず行動されていたのでしょう」

 

最近の零奈の僕に対しての当たりがキツいような気がするんだが。そんな風に考えながら、買い出しで買ってきた食材などをキッチンに運ぶ。

キッチンには何品か既に出来ている料理が並んでいた。流石は二乃である。

 

「こんな事で時間取られるのも勿体ないわね。和義、残りの料理作るの手伝いなさい!」

「ウィーマドモアゼル」

 

そう返事をしてすぐに二乃の横に付いて手伝いを始めたのが良かったのか、ご機嫌に鼻歌を歌い始めた。珍しいものだ。

 

「む~…私も手伝う」

「定員オーバーよ。大人しく飾り付けの手伝いでもしてなさい!」

「ごめんね、三玖。うちは中野家ほど広くないから…二乃、こっちの下ごしらえ終わったよ」

「ありがと!じゃあ、次は...」

「次の料理に使う野菜を切ってるよ」

「私のやって欲しいことを先読みしてくれて助かるわ」

 

話しながらも手を止めずに料理を続ける。

 

「相変わらず息ピッタリですね、あの二人は」

「ああ、そっか。二乃と五月ちゃんはこの間ここに家出してたんだったよね」

「ええ。その時も二人で料理をしてましたが、お互いにうまくカバーし合ってました。少し羨ましいです...

「五月ちゃん?」

「いえ、さぁこちらも頑張りましょう!ほら三玖、手伝ってください」

「分かった...」

 

一花と五月が飾り付けの途中でこちらを覗きに来ていたが、邪魔になると思ったのだろう、すぐに飾り付けの方に三玖を連れて向かった。

飾り付けと料理が完成した頃には風太郎もバイトを終えてうちに到着した。

そして-----

 

「せ-の...」

「「「「「「「「「メリ-クリスマ-ス!!」」」」」」」」」

 

僕の合図でみんなそれぞれ手に持っているクラッカ-を鳴らしながら、定番の挨拶を叫んだ。歓迎会兼クリスマスパ-ティ-の始まりである。

 

「うわぁ-、どれも美味しそう!」

「好きなのを好きなだけ食べてもいいんだよ。あ、でもケーキもあるからほどほどにね」

「はい!ありがとうございます和義さん!」

「らいはさん。あちらを一緒に食べませんか?」

「うん!」

 

ニコニコと二人で美味しそうに食事をしている姿は癒される。

 

「あぁ、あの二人の姿は尊いですね直江さん」

「分かる!分かるよ四葉!写真をいっぱい撮っとこう」

「僭越ながら私もお手伝いさせていただきます!後で交換しましょう!」

 

零奈とらいはちゃん、二人の姿を収めようと二人の周りで四葉と一緒に写真を撮っていた。

 

「何をしているのですか、兄さん達は...」

「あはは、今日くらいいいんじゃないかなぁ」

「まぁ、らいはさんが言うのであれば...」

 

そんな撮影会の横では、

 

「お前達の馬鹿さ加減には呆れるな」

「うっさいわね!」

 

今までの経緯を聞いた風太郎が五つ子に向かって呆れながら話している。

 

「成功は失敗の先にある、でしょ。だからフータローも諦めないで、私達の家庭教師続けてほしい」

「はぁ~…お前達に配慮するのも馬鹿馬鹿しくなってきた。俺は俺のやりたいようにやってやる!最後まで付き合えよ!」

 

どうやら風太郎も吹っ切れたようだ。

そして、みんなが思い思いに料理を食べている。そんな光景を少し離れた場所から眺めていたら、零奈が横に来た。

 

「どうされたのですか?」

「いや、この光景も少し諦めてたからさ。また見ることが出来て良かったなって…」

「そうですね。母さんのクリスマスプレゼントです」

「やりすぎだけどね……母さん、ありがとう

 

零奈だけに聞こえる声で、僕はそう呟いた。

 

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食事も終えた頃、みんなの待ちに待ったケーキの登場である。

 

「こっちが僕の作ったケーキで、こっちがさっき買ってきたフルーツタルトね」

「ふわぁ~…どっちも美味しそうー」

 

らいはちゃんの目がキラキラしている。

 

「じゃあ、僕が作った方から切り分けるね。僕は向こうで食べたから8等分するよ」

 

切り分けたケーキをみんなに配り、それぞれ食べ始めた。

 

「美味しいぃ~。え、なにこれ凄く美味しいよ」

「これ本当にあんたが作ったの?」

「まあね。店のレシピ通りに作ったから美味しいと思うよ。あ、でも少しだけ店長に相談してアレンジ入れてみたんだ。どう三玖?そこまで甘くはないと思うけど」

「うん…とっても美味しいよカズヨシ」

「そっか、良かった」

「こんなケーキまで作れるなんて、直江さんをお兄さんに持つレイナちゃんが羨ましいです!」

「自慢の兄です」

 

零奈も美味しそうに食べてくれて何よりだ。

 

「直江君。食べ比べしたいので、こっちも食べていいですか?」

「ああ、切り分けてあげるから待ってて」

「兄さんも少しは食べたらどうですか?」

「バイト先で食べたから大丈夫だよ」

「それでもです。皆さんと一緒に食べる方が美味しいですよ。はい、あ~ん…」

 

零奈は自分の食べかけのケーキを、一口大に切り分けて僕の口まで持ってきた。

 

「はいはい、あ~むっ……うん、旨いね」

「「「あ~~~っ!」」」

「え、何?」

 

零奈に向かって感想を言うと何故か叫ばれた。

 

「あんた達、兄妹だからってベタベタし過ぎじゃないの?」

「そうかなぁ?小学生の妹との接し方なんてこんなもんでしょ」

「そうかもなんだけど。何かモヤモヤする…」

 

そう言われてもなぁ。そんなことを考えてたら、じっとこっちを見ている五月に気づいた。手元にはまだケーキがあるがまだ食べたりないのだろうか。そう思って、僕の分を一口大に切り分けて五月の口元に持っていった。

 

「五月はまだ食べたりない?はい、フルーツタルトだけど僕の分も食べて良いよ。あ~ん…」

「ふぇ!?」

「あ、ごめん。いらなかった?」

「いえ、いただきます。あむっ……美味しいです…」

「そ、良かった」

 

五月は恥ずかしそうに下を向いて食べている。流石に食べさせるのは年下扱いしすぎたかな。そんな考えをしていたら。

 

「流石にそれは擁護できないわよ!」

「うん、五月ばかりずるい…」

「え、そんなにフルーツタルト食べたかったの?」

「兄さん、そこではありません…」

「あははっ、本当にカズヨシ君の天然ぶりは凄いよね」

「私、近くにいなくて良かったかも…」

「全く…騒がしい連中だ」

「でも悪くないって思ってるでしょ、お兄ちゃん?」

「ぐっ…」

 

そんな感じでパーティーは終始賑やかに行われた。

そして、食べ物も飲み物も無くなって片付けを行うことになった頃だ。前々から考えていた事があってこの下宿はいい機会だと思い、片付けの為動き回っている四葉を呼び止めた。

 

「ねぇ四葉。お願いがあるんだけどいいかな?」

「直江さんが私にお願いなんて珍しいですね」

「うん、これは四葉にしかお願いできないことなんだよ」

「そうなんですね!私に出来ることであれば…勉強でお世話になっていますので叶えてあげたいです。何でしょう?」

「付き合ってほしいんだ」

「……………えっ?」

 

何故か固まってしまった四葉。そこに一花が不思議そうに近づいてきた。

 

「どうしたの?何だか四葉固まっちゃってるけど」

「いや、分かんないんだよね…」

「もう、また変な事言ったんでしょ?」

「失礼な。それって僕がいつも変な事言ってるみたいじゃん」

「無自覚って一番怖いんだよ…」

「むー…ただ四葉に付き合ってほしいって言っただけだよ」

「何だ、付き合ってほしいって言っただけか……って…」

「「えーーーーーっ!!」」

 

家の中全体を一花と復活した四葉の叫び声が木霊した。

 

 




クリスマスパーティー開催です!
原作では行われなかったですが、和義の家でならという思いで開催しました。
ちなみに、原作と違いアパートではなく和義の家での下宿にしたので、あの川に飛び込むところはカットしてます。
個人的にはあのシーンも好きなんですけどね。
あの出来事で風太郎は過去と決別を。二乃は風太郎に対して恋心を抱く訳なのですが。二乃が自分の心を否定しているシーンとかいいですよねぇ。
運動神経悪いのに着衣水泳が出来る風太郎にも驚きましたが。

それでは次回投稿も見ていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
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