「ちょっと何叫んでんのよ。近所迷惑でしょ」
キッチンでの片付けをお願いしていた、二乃と三玖、五月が一花と四葉の叫び声を聞きつけこっちに来たようだ。
「うるさいぞお前ら。勉強が出来ないだろ!」
そして、僕の部屋に行って勉強をしていた風太郎も下に降りてきた。いや、お前は片付けの手伝いをしろ。
ちなみに、零奈とらいはちゃんはお風呂に先に入ってもらっている。この人数だと順番が大変だからね。
「いやぁ-、カズヨシ君の発言には毎度驚かされるけど、今回のは過去一だったよ...」
「あんた何言ったのよ?」
「え?実は前々から思っていたことがあったんだ。この下宿はちょうど良い機会だと思って、それで四葉に付き合ってほしいって...」
「ふぇっ!?」
「...嘘っ」
「あ、あんた自分が何言ってるのか分かってんの!?」
「もちろんだよ。四葉が良いのであれば明日からでもお願いしたいと思ってる」
そう言って四葉の方を見るが、当の四葉は顔を真っ赤にして視点が定まっていないようである。
「え-っと...な、直江さんの気持ちはす、凄くう、嬉しくお、おも、思いますが...」
「ちょっと大丈夫、四葉?顔も赤いし熱でもあるんじゃ...」
そう言いながら四葉のおでこに手を持っていく。熱はないようだ。
「あ、あのっ...!」
「何を騒いでいるのですか?」
四葉が決心して何かを言おうとした時、お風呂上がりの零奈とらいはちゃんがこちらに来ていた。
そして、経緯を二人に説明したのだが。
「なるほど...兄さん、そこに正座してください!」
「え、何で?」
「い、い、か、ら...」
「はい!」
零奈の迫力に負けあっさりと僕は言われた通り正座をした。
「それで、兄さんは
「え?......あれ言ってないかも」
「はぁ~...では兄さん。仮に中野さんの誰か...そうですね三玖さんに、何も言わずいきなり真剣な顔で付き合ってほしいと言われたらどう思いますか?」
「えっと...歴史の話とかかなぁっと...」
「カズヨシ...」
「では、二乃さんは?」
「料理?いやフランス語の勉強かも」
「こいつはっ...」
あれ、三玖と二乃が呆れてるんだけど。
「はぁ...では一花さんはどうですか?」
「え~っと今後の女優業の相談的な...後は内緒話だったり」
「これは重症だね...」
「四葉さんは?」
「そうだな...また部活の助っ人で困ってるから話を聞いて欲しい的な...」
「う~~~...」
「最後に五月さんは?」
「えっと、勉強の分からないところを教えて欲しいか新しいお店を発見したからそこに付き合ってほしいみたいな...」
「はぁ...」
あれ~、風太郎以外全員呆れてるんだが。
「流石だな、和義!そこまで考えることができるとはっ」
そんな事をいいながらサムズアップしてきた風太郎に対して、僕もサムズアップで返した。
「あんたは黙ってなさい!」
「お、おう」
だが、二乃の一喝で風太郎は黙ってしまった。以前の変態呼びをした時並の迫力である。
「皆さん申し訳ありません。こんな兄で…」
「それは私もだよ…」
零奈とらいはちゃんが中野姉妹に向かって頭を下げている。
「いいですか、兄さん!男女が付き合うとはどういう事か分からない貴方ではないでしょう?」
「え、何で今その話が出てくんの?そりゃあ最近は減ってるけど、僕も告白されてるし………はっ!?」
「気付いたようですね」
そこでとんでもない事をしでかした事に気付いてしまった。主語は大事だね。全員に向かって土下座した。
「この度は皆様に多大なご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
僕は頭を下げたままで上げることができない。
「全く…もう少しご自身の言動に責任を持ってくださいね。下手したら四葉さんを傷つけたかもしれないのですよ」
「あはは……」
顔を上げると四葉は申し訳ないような顔をしていた。
「本当にごめん!」
「そんな!早とちりした私も悪いですし…」
「いや、今回の件については四葉には何の落ち度もないよ。でも!四葉は魅力的な女の子であるのは間違いないから!女の子に対しての恋愛感情を持ててない僕が言うと説得力ないかもだけど…」
「ししし、モテモテな直江さんが言うのであれば間違いなしですね。ありがとうございます!」
こんないい娘を傷つけてしまったと思うと自分が情けなく思ってくる。
「それで?結局四葉には何に付き合ってほしかったのよ?」
二乃の言葉ではっと気付いた。
「そうだった!こんな事があった後でお願いするのも気が引けるけど、ジョギングに付き合ってほしいんだよ」
「ジョギングですか?」
「うん。僕も日課で走ってるけど四葉もって聞いてたから。だったら一緒にどうかなって」
「おー、それはいい考えですね!一人よりも二人で走った方が楽しそうです!私からもぜひお願いします!」
「良かった!じゃあ早速明日の朝からいいかな?」
「はい!」
僕の提案に対して笑顔で答えてくれる四葉。本当に良かった。
「蓋を開けてみればなんて事なかったわね…」
「本当に。今回の事を反省してもらう為に、残りの片付けを兄さん一人でしてもらいます!」
「いや、それは…」
「何ですか?」
「頑張らせていただきます!」
零奈に対して、正座のまま敬礼で返事をした。ここで逆らってはいけないな。
「では中野さん達は順番にお風呂どうぞ」
「えっと…いいのかな…」
「いいのよ。後は諸悪の根源が全部やってくれるわよ」
「じゃあ、今日は数字順で入ろっか。私から入らせてもらうね」
「では、私達は客間やリビングでゆっくりさせていただきますね」
「すみません、直江さん!後はお願いします!」
「私達は2階の私の部屋でもう休みましょう」
「そうだね。皆さんおやすみなさい!」
「じゃあ、俺は勉強の続きでもしてるか」
それぞれが自分の行動を開始した中、一人取り残されてしまった。
「はぁ…片付けするか」
のそのそと行動を開始しようと立ち上がりキッチンに向かうと、そこには三玖が待っていた。
「手伝うよカズヨシ…」
「いいの?」
「うん。二人でやった方が早いよ」
「ありがとね。流石にヤバいと思ってたんだよ」
三玖の助けにここは甘えることにしよう。
そして、二人並んでキッチンで洗い物をしながら今日の事を振り返っていた。
「今日は楽しめた?」
「うん!毎年五人でクリスマスを過ごしてるけど、今年は大人数で過ごせたから楽しかった。それに料理もケーキも美味しかったよ」
「そっか、楽しんでもらえたのなら何よりかな」
「カズヨシは?楽しめたの?」
「もちろんだよ。やっぱりみんなとこうやって過ごすのは楽しいよね」
「うん…!」
その後も今日まであまり話せなかったのを埋めるように色々な話をしながら洗い物をした。やはり、二人でやるとあっという間である。
洗い物もそろそろ終わりに差し掛かった時だ。
「三玖~?二乃上がったから次良いよ?」
四葉がお風呂の順番のため三玖を探しに来たようだ。
「あ、三玖ここにいたんだ!もう、直江さんの手伝いするなら声かけてくれれば良かったのに…」
「キッチンの中は狭いからね。後は飾り付けを片付けなきゃだから、そっちをお願い。カズヨシ、私はお風呂行くね」
「ああ、ありがとう。助かったよ」
「うん…」
そして三玖はお風呂に向かった。
「じゃあ、残りの飾り付けの片付け始めますか!四葉、手伝ってくれるの?」
「もちろんです!」
「ありがとう!四葉がいれば百人力だよ」
「ししし、レイナちゃんには内緒ですね」
四葉の手伝いもあったので残りの片付けもあっという間に終わった。ツリーとかはまだ明日もクリスマスということもあり、出しとくことになった。
片付けを手伝ってもらった四葉にお礼を言い、四葉がお風呂に向かったのを見届けた後、僕はソファーに座り自分の順番が回ってくるのを待つことにした。
「四葉が上がったら五月が入って。その後は風太郎に入ってもらって、最後に僕かな…」
今日は色々あって疲れが溜まっているのか、うつらうつらしてきた。
とりあえず、五月にお風呂上がったら風太郎に連絡するようメッセージを送って、そのままソファーの上で眠りについてしまった。
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「……え……く……きて……」
どこからか声が聞こえてくる。それに体も揺らされてるような。そっか、あのまま寝ちゃったんだっけ。
「五月…?」
「えっ…!?」
体をグーっと伸ばしながら起きると、目の前に少し驚いた顔の五月がいた。
「う~ん…ごめん、ちょっと疲れてたからか寝ちゃってたよ…」
五月はまだお風呂から上がってすぐなのか、髪がほんの少し濡れている。
お風呂上がってすぐの五月は見たことがなかったのでなかなか新鮮である。
「どうしたの?そんな驚いたような顔をして」
「いえ、私の名前を呼びながら起きたのでビックリしました。すぐに私だと分かったのですか?」
「そういえば…何かフィーリング的な?」
「何ですかそれはっ…」
五月はそう言って、フフッと笑いながら優しい顔をしてこちらを見ている。
「うん、今の顔凄く素敵だ……ってごめん、また変な事言っちゃって」
「別にいいよ。直江君の突拍子もない言動にはこれから慣れていかなきゃだね。それに今の言葉は嬉しかったよ」
いつもの敬語をやめて、僕の隣に座りながらそう答えた。
今は僕と二人だからそうしてるみたいだ。
「そうそう、上杉君に連絡したけど繋がらなくて。それで困ってたんだけど」
「あー、あいつ充電するの忘れやすいんだよね。どうせ今も勉強に集中してるんでしょ。それか疲れ果てて寝てるか…」
「そんなことだと思った……ねぇ、少しだけお話してもいいかな?」
「僕はいいけど、他の姉妹は?」
「さっき見てきたけど、みんなもう寝ちゃってた。みんなも疲れてたんだね」
「まぁ無理ないでしょ。姉妹全員で家出した日にパーティーしたんだから」
「むー…たまに意地悪になるよね直江君って」
「悪いって。ホットミルクでも用意しようか?」
「うん、ありがとう」
キッチンに向かい二人分のホットミルクを用意する。
いつも零奈に作ってあげていたから手慣れたものだ。すぐに用意ができ、五月の元に戻った。
「はい。まだ熱いかもだから気をつけてね」
「うん……うわぁ美味しい」
「気に入ってもらえて何よりだよ。それで、話って?」
「うん……私達の本当のお父さんの事なんだけど…」
「そういえば、中野さんは再婚相手なんだっけ。そっか、前話してもらった時は、お母さんが女手一つで育ててくれたって言ってたけど、お父さんの事までは言ってなかったね」
「うん、まあ私も見たことないんだけどね…」
「え!?」
「私達の本当のお父さんは、お母さんのお腹の中に五つ子がいると分かった時点で姿を消したんだって…」
「なっ…!?」
何だよそれ!育児放棄以前の問題じゃないか、信じられない。自分の子どもだろ!何でそんなことが出来るんだ。
そんな風に考えてたら、自然と自分のズボンをギュッと力強く握っていた。
その手に五月は自分の手をそっと添えてきた。
「ありがとう。やっぱり君は違う。私達の為に怒ってもくれる」
「当たり前だろ!っとごめん、ちょっと熱くなってた」
「ううん、いいんだよ。むしろそこまで感情的になってくれてる方が嬉しい」
本当に嬉しいのだろう。僕に向けている笑顔は作り笑いではない笑顔だった。
「お父さんの話をお母さんから聞いてから、私は男の人を信じる事が出来なくなったの。男の人はみんなお父さんみたいな人じゃないのかって」
「そんな風に思うのは変じゃないよ…」
「だから、最初に会った時の上杉君の態度は私のそんな心に、やっぱり男の人は信用出来ないって刻み込まれそうになったんだ」
「それはそれは…我が友人ながらあれは酷かったからね…ん?
僕の疑問に満足したような顔を五月はしている。
「流石だね。本当にちゃんと向き合ってくれてる。そうだよ、あの後あなたに会えたからこそ刻み込む事はなかった。あなたの『根はいい奴』って言葉を信じることにして、彼と向き合おうと思ったんだ。まあ、その結果この家に押し掛けたり、一花に変装したりとやらかしちゃったけどね…」
その時の事を思い出したのか、申し訳ない顔をしながら笑っていた。
「今の私って、直江君と似てるかも。女の人を信用出来ないけど、少しずつ向き合っていこうとしてるとことか…」
「僕の事よく見てるね」
「ふふっ」
五月は、笑いながら立ち上がり窓際の方に進んでいった。
それを僕はソファーに座りながら目で追っていった。
そして、窓際に着いた五月はカーテンを開け、外を見ながら僕に質問をしてきた。
「ねぇ、直江君はあの五つ子ゲームの時に四葉が言った私達の見分け方について覚えてる?」
そういえば四葉はあの時、『お母さんが言っていました。愛さえあれば自然と分かるって』とか言ってたな。
「愛さえあれば自然と分かるだっけ?」
「うん。さっき私の事をすぐに分かったのも、きっと私達の事を大切に想ってくれてるからだと思うんだ。それが凄く嬉しかった」
そこで五月はこちらに振り返った。そして、
「私はね、直江君の事が好き………かもしれない」
僕の事をまっすぐ見ながらそう告白してきた。その姿は、今まで告白をしてきたどの女子よりも幻想的であった。
「学生のお付き合いなんて不純だって分かってる。でもそれはお父さんの事があったからであって。それに、さっき直江君が四葉に付き合ってほしいって言った事を聞いた時、自分でも分からないけどこの気持ちを伝えなきゃって思ったんだ。で、でもね!その…私って今まで恋愛の事とか考えたことがなかったから、この気持ちが異性として好きなのか、それとも姉妹みんなに対して想っている家族として好きなのか分かんなくって…」
「そっか…」
「だ、だからね!本当に直江和義という男の人を好きになったら改めて告白するね!そ、その駄目かな…?」
自信無さげにモジモジと五月はこっちを見ている。しかし、この提案は如何にも真面目な五月ならではだと思う。
ちょっと前までの僕だったら断ったかもしれない。けど、
「分かった。その時は五月の気持ちを真剣に受け止めてその時の自分の気持ちを伝えるよ」
そう返事を出したのだった。
「ありがとう!それに今は、赤点回避の為の勉強も大事だもんね」
「そこは五月だね。大丈夫、後一科目だもん。次は全科目回避できるさ」
「うん!今後ともよろしくね、先生!」
「ああ!」
「あ、そうだ。これを機に和義君って呼んじゃ駄目かな?」
「僕は気にしないけど、他の姉妹が変に勘ぐるんじゃない?」
「大丈夫だよ。二乃だっていきなり名前で呼んでたんだし」
全く。用心深いのかお気楽なのか分からない娘だ。
そんな五月をちょっとからかってあげようと思い、立ち上がりあることを伝えた。
「ふふっ…でもさ、もしかしたら僕から先に告白してるかもしれないよ。僕だってこれから考えていくかもしれないからね」
「ええぇー!」
そんな風に話しながら五月の横に立ち、カーテンを開け空を見上げた。
「顔、真っ赤だよ」
「もう!からかわないでください!」
「あ、敬語に戻ってる」
「ビックリしたからです!」
敬語がデフォルトって。でも、零奈と同じ喋り方だからか落ち着く。
そんな時だ、空から雪が降ってきた。
「見てよ、雪が降ってきた」
「わぁーっ」
「時間も0時回ってるし、ホワイトクリスマスだね」
「はい…」
しばらく降り続ける雪を見て、五月は客間に戻り僕はお風呂に入った後部屋に戻って眠るのだった。
ちなみに、風太郎はすでに僕の部屋に敷いていた布団で寝ていた。やはり疲れていたのだろう。
なんと五月が告白をしてしまいました!
まだ自分の気持ちについて整理が出来ていない状態ではありますが。。。
自分でもこの話を書きながらどうしようかと、かなり迷いました。まだ、赤点回避も出来ていない状況でもありましたからね。
でも思い切って書く決断をしました!
ヤバいですね。。。
今後の展開を考えるのが滅茶苦茶大変です。
後、1日が長かった。。。
12月24日が終わるのに3話半かかってしまいました。
林間学校初日以来ですね。
ぐだぐだになってしまいすみません。
今後もお付き合いいただければと思います。