1月1日元旦。
その日はアラームで起こされた。
「ん~…あれ?アラームセットしたっけ?」
枕元に置いていた携帯を見るとアラームではなく通知が来ていたようだ。
時刻を見ると6時過ぎ。まあ起きてもいい時間かもしれないがもう少し寝かせてほしい。
「ったく、誰だよこんな時間から…」
携帯の画面を見るとどうやらグループメッセージのようだ。
そう言えば、中野姉妹がうちに来てから便利だってグループ作ってたっけ。何故かタイトルが『直江家』なんだよなぁ…
後、姉妹皆ノリノリなんだよね。何でだろ。
おっと、そろそろ返事しなきゃだね。
『おっはー、カズヨシ君起きてる?』
『あんたにお願いがあるんだけど』
『初日の出見たいんだ』
『それで場所を提供していただきたくて』
『和義君のお部屋行っても良いですか?』
初日の出ね。まあそれくらいならいいでしょ。
と言うわけで『OK』の返事を出しといた。
コンコン
「お邪魔しまーす」
「入るわね」
「ここがカズヨシの部屋…」
「おー、男の人の部屋は初めてです」
「失礼します」
やっぱり五人揃うと賑やかだね。
「部屋を貸すのはいいけど、あんまり見えないと思うよ」
「いいのいいの。庭よりは高いじゃん」
「それに、前に来たときバルコニーがあったのを思い出したのよ」
そう言って二乃は、慣れたように僕の部屋の窓を開けバルコニーに出ていった。それに皆が続く。
靴まで用意して準備が良いことで。
僕は外までは出ずに窓のところで背を預け、五つ子達が日の出を見ている後ろから見守っていた。
「そろそろですね」
「見て!明るくなってきたよ!」
「…綺麗」
「本当ね。空気が冷たいからよりそう見えるのかしら…」
「じゃー、いくよせーの」
一花の合図で皆が後ろを向く。そして、
「「「「「明けましておめでとう」」」」」
朝日をバックに新年の挨拶を僕に向かって姉妹揃って笑顔で言うのであった。
「うん。明けましておめでとう。今年もよろしく」
それに僕も笑顔で答えたのだった。
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そろそろお昼に差し掛かる頃、初詣に向かうことになった。
昨日、母さんから届けられた振袖を皆で着て行くとのことで、僕はリビングで待っている。
しかし、箱の中身が振袖なら別に僕が見ても問題ないと思うんだけど。何がしたかったんだろう母さんは。
零奈に聞いても振袖以外は変わったことなかったって言うし。驚かせたかったのだろうか。
そして、
「「「「「「お待たせ」」」」」」
六人の着替えが終わったのかリビングに入ってきた。
「へぇ~~」
そこには振袖に身を包んだ六人の少女いた。
「うん、皆良く似合ってる!凄く可愛いよ!」
「いやぁー、照れますなぁ」
「ま、当然よね」
「…えへへ…」
「ししし、ありがとうございます!」
「ふふ、何故でしょう…ただ感想を言われただけなのにここまで嬉しく思えるのは…」
「兄さんならそう言っていただけると思ってましたよ」
皆振袖が気に入ってるようで、お互いに見せあっている。
「それじゃあ、行きますか」
僕の号令で皆が玄関に向かってるところ、一番後ろにいた三玖に話し掛けた。
「三玖、その簪って僕が買ったやつだよね?」
「うん…その、似合ってるかな…?」
「もちろん!やっぱ印象変わるよね。可愛いよりも美人って言葉の方が合うかも」
「ありがとう…本当に嬉しいよ……あの、ずっとは難しいかもだけど、今日は隣で歩いてて良いかな?その、お話もしたいし…」
「へ?全然良いよ。そう言えば、年始に放送される時代劇の話とかしたかったんだよね」
「うん…!私も…」
先程よりも上機嫌になった三玖。
そんなに時代劇の話がしたかったんだ。こんなことなら、もう少し時間作ってあげれば良かったかな。
では、いざ初詣へ。
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近所の神社に到着すると、僕達はかなり注目されていた。
まあ、振袖姿の女の子が六人も一緒にいるのだから仕方がないか。
お陰で僕は注目から外れてるから助かってるんだけど。
境内に入ってお参りをするため進んでいると、くじを結ぶ場所に上杉兄妹がいた。
どうやら向こうも僕達に気付いたようだ。
「よ!風太郎。明けましておめでとう」
「おう!おめでとう。勢揃いだな」
「うわぁー!皆綺麗!」
「ふふ、ありがとうございます。風太郎さん、らいはさん、明けましておめでとうございます」
姿勢正しく礼をしながら挨拶をする零奈。それを見て慌ててらいはちゃんも挨拶をしてきた。
「そうだった…明けましておめでとうございます。零奈ちゃん、和義さん」
「うん、おめでとう、らいはちゃん」
「中野さん達も明けましておめでとうございます」
「「「「「明けましておめでとう」」」」」
「ふわぁー、新年そうそうらいはちゃんに会えるなんて。今年はいい年になりそうです!」
そんな言葉と同時にらいはちゃんに抱きつく四葉。らいはちゃん愛ハンパないね。
「て言うか、なんでいつもあんたはいんのよ!」
ビシッと風太郎に指差しながら二乃は言う。
「まあ良いじゃん。そうだ、二人共この後うちに来なよ」
「いや、この「はーい!」」
風太郎が何か言おうとしたが、らいはちゃんの言葉で遮られるのであった。
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結局、風太郎とらいはちゃんはあの後うちに来た。
五つ子と零奈は今着替え中である。
「はい、お雑煮だよ」
「わぁー、美味しそう!」
「ありがとな」
六人が着替え中の間に、二人のためにお雑煮を用意してあげた。
「今年は餅どうしたんだ?」
餅を食いながら風太郎が聞いてきた。
「今年は餅つきしない予定だったんだけどね。四葉に話したら、やってみたいって言うから餅つきやったよ」
「そうだったのか」
「上杉家へのお裾分けもあるから持って帰ってよ」
「いつもありがとうございます!」
「今年はちょーっと消費が激しいけどね…」
「あぁ、なるほどな」
「?」
僕の言葉に風太郎は納得したようだがらいはちゃんは分からないようだった。
すると、着替えが終わった五つ子と零奈がリビングに入ってきた。
「お待たせぇ~」
「和義。録画しておいたドラマ観ても良いかしら?」
「ああ、良いよ」
僕の返事を聞くや否や、テレビの前に置いてある炬燵に入って中野姉妹はドラマを観だした。
「こいつら、自分の家のようにくつろいでないか?」
「良いのではないでしょうか。それだけ居心地が良いと言うことですよ。風太郎さん、らいはさんおかわりはいりませんか?」
「お願い!」
「じゃあ俺も頼むわ」
「分かりました」
そして今度は零奈がお雑煮を温めに行った。
「それで?風太郎は年内はずっとバイトだったの?」
「ああ。お陰で大分稼がせてもらった」
「ふ~ん」
「そう言えば、店長はまだお前の事を諦めていなかったぞ」
「ま、機会があればね」
その後も零奈が持ってきてくれたお雑煮とおせちの残りを食べながら近況報告的な話をしていた。すると、テレビを観ていた姉妹達が騒ぎだした。
「キスしました…」
「ロマンチックだわ」
「録画しておいて良かったね」
どうやらドラマのキャストが告白をしてキスをしたらしい。
それを観て五月、二乃、四葉が話している。
「誰を好きとか嫌いとかくだらねぇ」
姉妹達には聞こえない声でボソッと風太郎が言っている。
一花と四葉に聞こえなくて良かったよ。
「もう、お兄ちゃんはもう少し恋愛に興味持とうよ」
「勉強に邪魔なものには興味ないね」
「ぶぅー。和義さんはどうなんですか?」
「おっと、こっちに来たか……」
そしてドラマを観ようとテレビの方を見ると、ちょうどこっちを見ていた五月と目が合った。しかし、五月はすぐにテレビの方に向き直した。
「少し考えるようになったかな…」
「マジかっ!?」
「……」
「ほら!お兄ちゃんも少しでもいいから興味持とうよ。ね?」
「……………考えておく」
「今はそれが聞けただけ良しとしようかな」
そう言ってらいはちゃんもドラマを観だした。零奈はあまり興味がないのか、食べ終わった後片付けを始めた。
「僕も手伝うよ」
「はい」
二人で食器洗いをしていると零奈から質問をされた。
「先ほど、恋愛について考えるようになったと言っておりましたが。それは五月さんの事があったからでしょうか?」
「んー?何だ、五月から聞いたの?」
「ええ、まだ異性としてなのか、家族としてなのか分かっていないけれど、好きだと伝えたと」
「そっか…まぁそうだね」
「そうですか……」
それから零奈は黙ってしまい、キッチンには食器を洗う音だけが響いていた。
洗い物も終わりリビングに戻ると、風太郎が何故か五つ子にマッサージされている現場に遭遇した。
横ではらいはちゃんがお母さんにお祈りをしている。
「何?どういう光景?」
「俺が聞きてえよ?何を考えている?」
「な、なんでもないですよー」
「ひ、日頃の感謝だけだよ…」
「嘘つけ!」
風太郎の問いに四葉と三玖が答えるが、風太郎は信じていない。
感謝ねぇ。
そう思いながら椅子に腰かけた。そこで五月と目が合う。
「あ、あの!和義君も肩揉みましょうか?」
「え?いや、僕はいいかな…」
「そうですか…」
「うっ…」
五月からの肩揉みの提案があったがやんわり断った。
すると、シュンと五月は下を向いてしまった。気のせいか、五月のアホ毛も垂れているように見える。
「あーもう分かったよ!肩だけだよ」
「はい!」
僕が承諾すると、パーッと笑顔を僕に見せた。そしてそのまま僕の後ろに行き肩を揉みだした。
「ふふ、どうですか?」
「ああ、気持ち良いよ…」
確かに気持ちいい。だが、何故か視線が痛い。
「む~…五月だけずるい」
「早い者勝ちです」
「カズヨシ…」
上目遣いで三玖が訴えかけてくる。いや何でそこまでしてマッサージしたいのか分かんないんだけど…
「はぁ…はい。右腕お願い」
「うん…!」
右腕を三玖に差し出すと嬉しそうに僕の腕を揉みだした。
あれ?普通嬉しくなるのって、マッサージしてもらう方であって、する方が嬉しく思うっておかしくないだろうか。
後二乃、無言でこっち見ながら風太郎をマッサージするのやめて。マジで怖いって。
更に後ろから零奈の『フフフ』と言う笑い声が聞こえてきて、もうホラーなんだけど。絶対後ろ見れないやつじゃん。
そこで二乃がスクッと立ち上がった。
「いつもお疲れ様」
とびっきりの笑顔で僕と風太郎を労っている。
その笑顔が怖いのは僕だけだろうか…
「そうです。お二人とも、私のおやつ食べてください」
「え?」
「は!?」
普段であれば絶対に五月から発せられることがない言葉が今発せられた。
上機嫌なのだろうが、逆に何かあるのではと怪しんでしまう。
「お正月らしく福笑いでもどうですか?五つ子バージョンを作りました!」
いやクオリティ高いなぁ。いつの間に作ってたんだ四葉のやつ。え?試されてるの?
「えっと、カズヨシとフータローに渡したいものが…」
「待って!それはまだ早いよ」
何か渡したいものがあるのか三玖が発言したが、それを四葉が遮った。
「みんな、客間に行こうか」
一花の号令で姉妹全員客間に向かった。
「何を企んでやがる…」
「さ、さあ…?ほら、五月からのおやつのプレゼント。この先、いつ貰えるか分かんないよ」
そう言いながら、風太郎に五月からのプレゼントのおやつを差し出した。
「俺はさっき食べたばかりなんだが…」
「ほら、食べ物の恨みは怖いって言うじゃない。もし食べずに置いてたら、逆にめちゃくちゃ怒られるかもよ。後、四葉自家製の福笑いも折角だからやろうよ」
「いや、これは難しすぎるだろ!」
「物は試しだよ」
そう促すと、風太郎はどのパーツが合うのかと選んでいった。
もうこれ福笑いじゃないじゃん。パズルゲームだし。
そして風太郎による五つ子顔パズルゲームが切って開始された。
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~客間~
一花の号令で客間に来た五つ子達は円を描くよう座って何かを話し合っている。
「どうする?あいつら気にしてなさそうだったけど」
「でもこのままじゃ悪いよ。クビになった上杉さんと直江さんに、仕事でもないのに家庭教師を続けてもらうんだもん」
二乃の問いに四葉が答える。
「何かしてあげたい…」
「だね。けど、お父さんにはできるだけ頼りたくないし」
「とは言え、私達が彼にしてあげられることって…何があるのでしょう…」
何かをしてあげたい三玖と一花であるが、五月の言った通り何をしてあげれば喜んでくれるのか案が中々思いつかない。
そこで四葉以外の姉妹は、先ほどのドラマであったキスシーンを思い出し顔赤くしていた。
ちなみに四葉は手作りのメダルを思いついていた。
「「「「…………」」」」
「ん?どうしたの皆?顔を赤くして黙っちゃって」
「……四葉以外はおんなじ事考えてるみたいだね…」
「五月。あんたがこういう事考えて騒がないなんて珍しいわね」
「そんなことありません…」
「あはは、それでフータロー君とカズヨシ君が喜ぶとは思えないけどね」
「あいつらも男だから分からないわよ。女優ならほっぺにくらい出来るんじゃない?」
「じょ、女優を何だと思ってるの!で、でもそういうことなら…私より三玖の方が適任じゃないかな!」
「私…私がカズヨシと…」
急に話を振られた三玖は妄想の世界に旅立ってしまった。
「だ、駄目だよカズヨシ…やめて…やっぱやめないで…」
「あんたが止まりなさい!」
「皆何の話をしてるの?」
一人蚊帳の外の四葉が質問するが誰も答えてくれなかった。
「無難にお菓子でもと思いましたが…」
「クリスマスの和義が作ったケーキを見せられるとねぇ」
「まあ、カズヨシ君は普通に喜ぶと思うけどね。とは言えやっぱりこれかな」
一花はそう言うと候補の物を取り出した。
「そうだね。予定通りあげようよ」
「ですね。上杉君は一番喜ぶと思いますよ」
その物を見た四葉と五月は賛同し、他の姉妹もそれに続いた。
「よし!じゃあリビングに戻ろうか」
そして五つ子達はリビングに戻って行くのであった。
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風太郎は、現在一花の顔作りで最後の部分に差し掛かっていた。
「くっそー、どっちだ!俺はこっちだと思うんだが…」
「ええ…こっちだって!」
風太郎の意見とらいはちゃんの意見が別れたようだ。
その時、
ガチャ
リビングのドアが開き、五つ子達がリビングに入ってきた。が、先頭の一花に向かって風太郎が迫っていた。
「一花。動くな」
「えっ、ちょ、何…やめっ、ん…」
徐々に風太郎の顔が、一花の顔に迫っている。何が何だか分からない一花は、口を閉め目を瞑り風太郎を受け入れようとしている。
端から見たら風太郎が一花にキスを迫っているみたいだ。
おー、一花は風太郎とだったらやっぱり受け入れるんだ。
そんなアホな考えをしていると。
「やはり!」
当たり前だが、風太郎は一花にキスをする訳でもなく、何かを確信したかと思うとリビングの机に並べている一つのパーツを選んだ。
「これが一花の口だ!間違いない!」
「えー、こっちだと思うけどなー」
風太郎は一花の口を見るために迫っていたのだ。
本当に紛らわし奴である。
一花は力が抜けその場にへたり込みそうになったが、それを三玖と五月で支えてあげた。
「わー遊んでくれてるんですね!」
「まあ、ルールが全然違うけどね」
「四葉これでどうだ?」
完成した一花の顔を風太郎は四葉に見せる。
「えー、どれどれ…あ、上杉さん、ほっぺにクリーム付いてますよ」
そう言うや否や、四葉は風太郎のほっぺに付いているクリームを口で直接取ったのだ。
どう見てもほっぺへのキスである。
「お兄ちゃん!?四葉さん!?」
「ふむ。四葉さんやりますね」
「いや、冷静にコメントしなくていいよ零奈…」
「あ………今のほっぺにチューが家庭教師のお礼ということで…」
「??」
キスされた風太郎は完全に混乱している。
「四葉さん?兄さんにもする気ですか?」
「殺気!」
零奈が笑顔で四葉に質問すると、四葉は恐怖顔でガタガタしていた。
「て…家庭教師のお礼?」
僕が疑問に思った事を伝えると、五月が答えてくれた。
「その件ですが、今の私達では十分な報酬を差し上げられない状況でして…せめてもと…」
なるほど。今は一花の収入だけで生活してるもんだからね。仕方ないか。けど、
「何だよ、そういうことは早く言え。ずっとそんな事気にしてたのか。俺がやりたくてやってるんだ。給料のことなら気にすんな」
「そうだね。僕も同じだよ。その気持ちだけで十分だよ」
「和義君…上杉君…」
給料を気にしないなんて、風太郎も成長したな。そんな風に考えていたが、僕はまだまだ風太郎の事を理解しきれていなかった。
「出世払いで結構だ」
「「「「「「え?」」」」」」
風太郎の言葉に五つ子と僕の声がハモった。
「その代わりちゃんと書いとけよ!一人一日五千円!一円たりともまけねぇからな!」
無惨にもその言葉がリビングに響いていた。
「こういう奴だったわね」
「本当だね。少しでも風太郎の事を関心したのは馬鹿だったよ」
二乃の言葉には心から同意する他なかった。
本当に少しでもお前の成長を感じてしまった僕の心を返してほしい。
そんな感じで、新年は初日から騒がしく過ぎていくのであった。
それにしても、結局渡したいものが何なのかは分からず仕舞いであった。
お待たせして申し訳ありません。最新話の投稿です。
やっと新年を迎える事ができました。。。
ちょっと脱線しすぎたかもしれませんがご容赦いただければと思います。
ここから2年生最後の試験まで怒涛の如く原作では行きますが、また多少寄り道をしながらになるかもしれません。
いつも読んでいただけている皆様本当にありがとうございます。
今後もどうぞよろしくお願いいたします。