五等分の奇跡   作:吉月和玖

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第7章 三学期末試験
56.試験に向けて


「よし!今日から勉強始めていくぞ!」

 

そんな事を勢い良く宣言して我が家に来た風太郎。でも、

 

「あ、ごめん。まだ五つ子達は起きてないや」

「は!?」

 

朝食の準備を零奈としながら風太郎に答えた。

 

「多分もうすぐ起きてくると思うよ。風太郎も食べていく?」

「いや、もう食べてきたからな。勉強しながら待たせてもらう」

 

そう言って炬燵に入り自分の勉強を始めた。

そんな時だ。客間から騒々しい声が聞こえてきた。どうやら起きたようだ。

 

ガチャ

 

「もううんざりだわ!なんであんたは私の布団に潜り込んでくんのよ、五月!」

「さ、寒くって!」

「あんたの髪がくすぐったいのよ、さっぱり切っちゃいなさい!」

「あ-!自分が切ったからってずるいです!」

「朝から騒がしいなこいつらは...いつもこうなのか?」

「たまにね...」

 

二乃と五月が言い合いをしながらリビングに入ってきたのを見て、風太郎が聞いてきたので応える。

二乃は朝早く起きて朝食を作ることが多いのだが、ここ最近は寒くなってきたからか布団から出てくるのが遅いときがあるのだ。

 

「でも、お布団は久々でまだぐっすり寝られてません。ふかふかなんですけどね」

「四葉はもう少し寝付けない方がいいと思う」

 

四葉の発言に対して三玖が顔を摩りながら抗議をしている。

良く見ると頬が腫れているようだ。

 

「三玖大丈夫?」

 

水で冷やしたタオルを三玖の頬に当ててあげながらそう尋ねる。

 

「あ、カズヨシ...えっと、大丈夫だけどもう少しこのまま当ててくれると嬉しいかな...」

「あ、ああ...」

 

目を瞑りながら僕の手にそっと自分の手を添えてそう言ってくる三玖に少しドキッとしてしまった。

だが、

 

「兄さん、三玖さん?朝食が冷めてしまいます。早く席についてください」

 

ニッコリと笑いながら零奈が言っているが、これは絶対に怒っている。これも駄目なのか。異性の友人との接し方は難しいものだ。

零奈の言葉もあり、それぞれの席について朝食を食べ始めた。

 

「でも、私の布団が消えたのは不思議です...」

「本当に不思議」

「ベッドから落なくなったのはいいよね」

「四葉、あんただけよ」

 

本当に賑やかな朝食である。

 

「ん?おい、一花はどうした?」

「あれ?そう言えばいないね」

「まだ寝ているのではないでしょうか」

「では、私が起こしに行きますね」

 

そう言って零奈が立ち上がり客間に向かっていった。

 

「大丈夫でしょうか?」

「ん?寝起き良くないの?」

「まあ、寝起きは良くないですね...」

「それだけじゃない」

「は?」

「一花が寝ている場所の周りが凄いことになってるからレイナちゃんが引かないかなって思ったのよ」

「何だ。もう一花の部屋並に散らかっているのか」

 

風太郎の言葉に対して姉妹四人が頷いた。

 

「例の汚部屋ってやつか」

「はい、そうです...」

 

申し訳なさそうに五月が僕の問いに答えてくれた。

そこに一花を連れた零奈が戻ってきた。

 

「まったく、どうやったらあそこまで散らかるのでしょうか。お正月に片付けたばかりだというのに」

 

僕の横の席についた零奈がそう呟いている。

 

「えっと...そんなに散らかってたの?」

「信じられません!あそこまで散らかすなんて、どうかしてます!」

 

零奈がここまで言うって事は相当なのだろう。

 

「いや-面目ない...」

 

一花が申し訳なさそうに炬燵に入り朝食を食べ始めた。

 

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朝食も食べ終わったところで勉強を始める事になった。

 

「よし、やっと始められ...!」

 

一花が風太郎の斜め前でうとうと眠りについている。

 

「一花」

「あ、ごめん」

 

四葉に起こされて一花が目を覚める。

 

「これからは勉強に集中できるように仕事をセーブさせてもらってるんだ。次こそ赤点回避して、お父さんにギャフンと言わせたいもんね」

「うん」

「私も今度こそ...!」

「そうですね。全員で合格して、お父さんに和義君と上杉君を認めさせましょう」

「五月...」

 

一花の言葉に三玖と四葉が続き、五月が意気込みを口にする。

そこまで言われればやる気になるものだ。全く僕達の生徒達は乗り気にさせるのが上手いことで。

 

「ふん、赤点なんて低いハードルにこれほど苦しめられるとは思わなかった。しかし、三学期末こそ正真正銘のラストチャンス。さっそく始めよう!まずは冬休みの課題を片付けるぞ!」

「え?」

「え?」

 

風太郎の言葉に五月は疑問に思い、その反応に風太郎もまた疑問に思った。

 

「ふふ」

「あはは」

 

四葉と一花も面白く笑っている。

 

「フータロー...」

「あんた舐めすぎ」

「そうそう僕もいたんだよ」

「課題なんてとっくに終わってるわ」

 

二乃の言葉に姉妹みんなが自分の課題を机の上に出す。

 

「あっそう...」

 

予想外だったのか風太郎はビックリした顔でみんなを見ている。

ま、普通は終わっていないと思うよね。

 

「じゃあ通常通りで...」

「それでいいんじゃない。どうする?いつも通り手分けして勉強見る?」

「う~む...そうだな」

「じゃあ、一花と四葉をお願いね。残り三人は僕で見るよ」

「へ?」

「えっ!?」

「ああいいぞ。三人を任せることになるが良いのか?」

「問題ないよ。じゃあ、二乃、三玖、五月。始めようか」

「ええ」「うん...」「はい!」

 

僕はテーブルで、風太郎は炬燵でそれぞれ教えている。

 

「カズヨシ。ここ分かんないんだけど」

「どれどれ...」

 

隣に座っていた三玖に質問されたので、近づいて教えてあげた。

 

「えっと...数学ね」

「!」

「目の和が奇数になる場合は何通りか、か。サイコロは三つだから奇数になるのは二通りあるのは分かるよね?偶数偶数奇数。あとは、奇数奇数奇数...」

 

三玖に教えていると、口元辺りに視線を感じた。

 

「三玖?」

「はっ!?ご、ごめん...」

「いや、良いけどね。どうかした?」

「ううん...」

 

じ~~~~~~

そこに今度は二乃と五月からの視線を感じた。

 

「えっと...どうかした?」

「いやっ、なんでもないわ」

「あ、あの!次はこちらをお願いします!」

「はいはい。順番ね」

 

質問を受けて順番に教えていると、炬燵の方から風太郎の声が聞こえてきた。

 

「おい、一花起きろ」

 

どうやら一花はまた寝ているようだ。ふむ、風太郎と一緒なら眠らずに勉強すると思ったんだけどね。

 

「いや-ごめん...寝て......ない、よぉ...」

 

いや寝てるだろ!

 

「この野郎...何がギャフンと言わせるだ...」

「少しは寝かせてあげなさい」

「は?」

 

寝ている一花を風太郎が起こそうとしているが、二乃がそれを止めようとしている。

 

「一花、さっきはあんな風に言ってたけど、本当は前より仕事を増やしてるみたいなの」

「生活費を払ってくれていますからね」

 

生活費と言ってもここに泊まるための宿泊費と光熱費を少し。後は食費と五つ子それぞれが使うお小遣い。

恐らく後者にお金がかかっているのではないかと思っている。

食費も払わないで良いようにしたかったのだが、如何せん量が量だからなぁ。

 

「貯金があるから気にしなくていいって本人は言ってたけど...こうやってカズヨシとフータローに教えてもらえてるのも全て一花のおかげ」

「だからって無理して勉強に身が入らなきゃ本末転倒だ。おい、起き...」

「あの」

 

風太郎が一花を起こそうとすると五月が提案をしてきた。

 

「私達も働きませんか?少しでも...一花の負担を減らせたらと思いまして...」

 

まあバイトくらいいいかと思うのだが、それに待ったをかける者がいた。風太郎である。

 

「今まで働いた経験は?」

「あ、ありません...」

「勉強と両立できるのか?赤点回避で必死のお前らが」

「うっ...」

「確かに、そこがネックだね...」

「う~...それなら...私もお二人のように家庭教師をします!」

「「!?」」

「教えながら学ぶ!これなら自分の学力も向上できて一石二鳥です」

「やめてくれ...お前に教えられる生徒がかわいそうだ...」

「ごめん。僕も風太郎と同意見」

「うっ...」

 

家庭教師案は僕と風太郎で即却下された。

 

「それならスーパーの店員はどうでしょう?近所にあるのですぐに出勤できますよ」

「即クビだな」

「スーパーも覚えること多いからね」

 

スーパー案も却下された。

 

「私...メイド喫茶やってみたい」

「へぇ~、意外に似合いそうだね。それに人気も出そう」

「そ、そうかな...」

「でも接客とか出来るの?」

「うっ...」

 

メイド喫茶も却下になった。

 

「二乃はやっぱ女王様?」

「やっぱって何!」

「そもそも女王様ってどんな職業だよ」

 

三玖の提案についツッコミを入れてしまった。

 

「二乃はお料理関係だよね」

「ふん、やるとしたらね」

「だって二乃は自分のお店を出すのが夢だもん」

「!」

「へぇ始めて聞いたな」

「でも二乃なら出来そうだよ」

「こ、子どもの頃の戯言よ。本気にしないで」

「私、美味しいケーキ屋さんを知ってますよ」

「!.........」

 

五月の言葉に対して顔を赤くして黙ってしまった。

 

「どうしたの二乃?」

「な、なんでもないわ!」

「そ、そう?なら良いけど...」

 

黙ってしまった二乃に声をかけたのだが、そっぽを向いてしまった。まあ、本人が大丈夫って言ってるのであれば大丈夫なのだろう。

 

「俺もさまざまなバイトを経験してきたが、どれも生半可な気持ちじゃこなせなかった。仕事舐めんな!」

 

今まで色々なバイトをこなしてきた風太郎の言葉はやはり重みがある。そんな中で毎回満点を取っているのだからやはり僕なんかよりも凄いと思う。

 

「赤点を回避しあの家に帰ることができれば全て解決する。そのためにも今は勉強だ。一花の女優を目指したい気持ちも分からんでもない。だが、今回だけは無理のない仕事を選んでほしいものだ」

「ん-...」

 

風太郎の話が終わったところで一花が動き出した。起きたのだろうか。

そう思ったのだが、起きている訳ではない。

 

ヌギ

 

「は!?」

 

一花は寝たまま服を脱ぎだしたのだ。

 

「上杉さん見てはいけません!」

「カズヨシ」

 

風太郎は四葉が。僕は三玖が目隠しをしてきた。

 

「一花!寝ながら服を脱ぐのを止めてくださいといつも言っているではないですか!」

「あんたらはリビングから出ていきなさい!」

 

バタンッ

 

僕と風太郎はリビングから追い出されてしまった。

 

「この仕事舐めすぎたぜ」

「理不尽過ぎる...」

「何事ですか?」

 

追い出されたところで、騒がしかったからか二階の自分の部屋に行っていた零奈が降りてきた。

そこで経緯を説明した。

 

「なるほど。しかし、寝ながら服を脱ぐなんて器用なものです」

 

呆れながらも関心をする零奈であった。

 

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次の日。家で夕飯の準備をしていると一花が帰ってきた。

 

「ただいま~」

「おかえり一花」

 

帰るや否やリビングのソファーにダイブしている。

 

「こら一花、はしたないよ」

「ん~~~」

 

生返事である。

 

「他のみんなは-?」

「二乃と四葉には買い物をお願いしてるよ。五月はどこかに出かけたみたいだね。三玖には先にお風呂入ってもらってるよ。零奈は自分の部屋で勉強中」

「うわぁ-、零奈ちゃんは真面目だねぇ」

 

一花が起き上がりながらそう答えた。

 

「ん?」

「どうしたのカズヨシ君?お姉さんに見とれちゃった?」

「なんでだよ!いや、何か機嫌良いみたいだから、何かいい事でもあった?」

 

僕の質問にビクッと反応している。珍しく分かりやすい反応である。

普段はク-ル振っている一花がこういう反応をするって事は。

そんな事を考えていると風太郎からメッセージが届いた。

 

『今、二乃と四葉の買い出しに付き合わされている。そう言えば、今日バイト先に一花が撮影に来ていたぞ』

『了解!荷物持ちよろしく!』

 

風太郎にメッセージを返した後に一花を見てニヤリと笑った。

 

「な、何かな?その笑顔は...」

「風太郎のバイト先で撮影があったんだって?そこでいい事でもあったのかな?」

「うっ...」

「こういう話になると本当に一花って分かりやすいよね。顔、真っ赤だよ」

「もう本当に意地悪な時があるよねカズヨシ君って!」

「あははは」

「...ただね、私の演技を褒めてもらったんだよ。『女優らしくなった』って。その...その時私恥ずかしくって顔を見せられなかったんだ。で、寝たふりをしてたんだよ。そしたら、そ、そのフータロー君が自分の肩に私の頭を預けてくれてね、私の肩に腕を回してくれたんだよ-」

 

その時の事を思い出して、嬉し恥ずかしくなっているのか、顔を手で隠して体をクネクネしている。

本当に嬉しかったんだろうね。

何だか今の一花を見ていると、やっぱり恋っていいものなのかなって思ってきた。

 

「ふっ...良かったね一花」

「うん!」

 

とてもいい笑顔でこちらに振り返る一花。この顔を風太郎に見せてあげたいな。

そう思うのだった。

 

 




いよいよ2年生最後の試験に向けて勉強開始しました!

風太郎のバイト先での一花の撮影エピソードは、最初は和義がバイトの手伝いに行った時に起こる体で書こうと思ってました。
けど、一花と風太郎の邪魔をするのは無粋かなと思い書くのを止めて、後から人伝で知るように書かせていただきました。

この後は、それぞれの姉妹にスポットを当てて原作は進んでいきますが、僕はアニメの方を参考に日を追って書いていこうと思ってます。
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