~五月side~
姉妹それぞれがチョコ作りに奮闘している時、五月はある人物と待ち合わせをしていた。
「五月さん!お待たせしました!」
「おはようございます、らいはちゃん」
五月は昨日らいはを買い物に誘っており、今はショッピングモールの前で待ち合わせをしていたところにらいはが到着したのである。
「それで、今日は何を買いにきたんですか?」
「特に決まってはいません。ただらいはちゃんの意見が聞きたくて」
「もしかしてバレンタインのプレゼントですか?」
「うっ…」
お年頃のらいははこういう話が大好きである。目をキラキラにさせて五月に詰め寄っている。
「やっぱり和義さんですか?」
「えーっ!?」
「そうなんだぁ」
恋愛事にはまだまだ疎い五月の分かりやすいリアクションで、らいはは直ぐに察した。
「う~…私って分かりやすいのでしょうか?」
「ふふ、そういう素直なところ私は好きだよ。きっと和義さんも好感を持ってくれてます」
「そうでしょうか…ただ、私は今まで男性の方に好意を持ったことがありませんでした。ですので、今のこの気持ちが姉妹に対する好意なのか異性に対する好意なのか分からないんです。それなのにプレゼントなどしても良いのかと思ってしまいます」
「う~ん、難しく考えなくていいと思うけどなぁ。私も和義さんの事好きですけど、もう一人のお兄ちゃんって感じなので。だから今年もバレンタイン渡すつもりです!」
天真爛漫な笑顔でらいはが言うと、『そうですね』と五月は笑顔で答えるのだった。
その後二人はモール内を色々と見て回ることになったのだが、どこもバレンタイン一色で多くの女性達で賑わっている。
「五月さんはやっぱりチョコレートをあげるの?」
「それなのですが、和義君は毎年たくさんのチョコを貰ってると思うんです」
「確かにたくさん貰って帰ってきてますね」
「ですので、チョコ以外をプレゼントしようと思っています。そこでらいはちゃんの意見が聞きたくて」
「う~ん…」
自分の事を頼ってくれていることが嬉しくて何とかしてあげたい思いがあるらいは。
しかし、この事についてはあまり役に立たないかもしれない。何故なら…
「ごめんなさい。私も和義さんの好みは分からなくって…今まで何度か贈り物をあげたんですけど、和義さんってどんなものでも笑顔で受け取ってくれるし、今でも大事に取ってるものあるので…」
基本、零奈とらいはにとことん甘い和義である。
この二人から贈られる物はどんなものでも嬉しく、食べ物以外は今でも部屋に飾ってあったり保管をしているのだ。
「そうですか…しかし、あの人らしいですね。それだけらいはちゃんの事を大事に思っているのだと思います。少し妬いてしまいますね」
「零奈ちゃんには敵わないけどね…」
そう笑ってらいはは答えるのだった。
「となると、困りましたね。和義君の好きなものと言えば…歴史…?」
「後、料理をするのも好きって言ってました」
(改めて私は和義君の事を知らなさすぎると痛感しちゃう。まだ出会って半年も経ってないから仕方ないかもだけど…もっと彼の事が知りたいなぁ)
そんな考えが頭を過ったからか、五月はため息が出てしまった。
「五月さん?」
「あっ…すみません。好きなものも分からないなんてと思ってしまいまして」
「五月さん…」
五月の事が心配になったらいはであったが、その時目に付いた物があった。
「五月さん!あれなんてどうかな?」
「あれは…」
らいはが指さした物は手袋やマフラーといった冬物コーナーだ。
それを見た瞬間、五月は自分が身に付けているストールに手を添えた。クリスマスの日に姉妹全員に贈られたストール。同じ種類の色違いのそれは、姉妹全員が喜んでいた。
プレゼントの箱には英語で書かれたカードが付いていたので、四葉がサンタからのプレゼントだとはしゃいでいたものだ。
しかし、五月はすぐに誰からの贈り物かは分かった。恐らく四葉以外の姉妹も気付いたかもしれないが。
このストールは、今では五月にとって手首に付けているブレスレットと並ぶ大事な物なのだ。
「良いかもしれませんね」
「だよね!ちなみに、和義さんは渋い色が好みです。黒やグレーですね」
「それは、いい情報を聞けました」
笑顔でらいはに答えた五月は早速選び始めた。
その時の五月の顔はキラキラしていたとらいはは後に語っている。
らいはもそこでプレゼントを選ぶことにして、靴下をプレゼントすることにした。
そこでの買い物が終わった二人はお昼を食べ、午後から家庭教師がある五月の為その日は解散した。
家に帰る五月の足取りは、今まで以上に良いものだった。
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四葉のチョコ作りを手伝った次の日の放課後。僕はショピングモールに来ていた。
モール内は、2日後に迫るバレンタインの為かあちこちでバレンタインのコーナーが設置されていた。
買い物に来ている女性達も楽しそうに買い物をしている。
これだけの女性比率が高いところには絶対に行かない僕であるのだが…
「何で僕はここにいるんだろ?」
「もー!折角女の子とデートしてるんだから、もう少しテンション上げていこうよ!」
「デートって…」
テンションがやたら低い僕に対して文句を言ってきてるのは、ここに僕が来ることになった原因である一花だ。
今日も授業が終わり勉強会に向かおうと考えていたときに一花から、『今すぐモールに来てくれるかな?来てくれるよね?』、とメッセージを送られてきたのだ。
無視をしても良かったのだが、後で何を言われるか分かったもんじゃなかったため、教室で三玖に勉強会に行けない事を伝えてモールに来たのだ。
その時の三玖の追及は凄かったが、何とか誤魔化す事が出来今に至る。
「こういうところは苦手だって一花も知ってるでしょ?」
一応眼鏡をかけて軽く変装はしているが、いつバレるか分かったもんじゃない。
「まぁまぁ。皆自分の買い物に集中しているから大丈夫だって。ほら、私も眼鏡してるしね。どう知的に見える?」
「わぁ、知的な美女だな」
「典型的な棒読みだね…まぁ美女という言葉で許してあげよう」
そう言って前を歩く一花。
「はぁー…それで?目的は大体予想はつくけど何で呼び出したの?てか仕事は?その為に今日は早退したんでしょ」
「んー?仕事はもちろん終わらせたよ。お姉さん頑張りました!」
「さいですか」
「むぅ~...何か私に対してだけ扱い酷くない?」
「そんなことないですよ」
「また棒読みだし...」
「ふっ、まあ付き合いやすいところがあるからかもしれないね。姉妹の中では気兼ねなく話せるのが一花だよ」
「ふ、ふーん...」
「何?一花嬉しかったりする?」
「べっつにー...」
僕の言葉に対してそっぽを向いて歩く一花。やっぱり一花と話すと楽しい。
「それで?チョコ売り場は全然見てないけどチョコを買うんじゃないの?」
「うん...考えたんだけどさ、別にプレゼントは必ずチョコレートって訳でもないでしょ?だから他のをプレゼントしようと思ったんだ」
「ふ~ん、いいじゃないかな」
「そこで君の出番って訳だよ」
そう言いながら一花に指をさされたけども、僕にどうしろと...
「参考書を渡しとけばきっと喜ぶよ」
「バレンタインに参考書って...何か他に思いつかないの?」
「と言われてもなぁ...」
二人で並んで歩きながら色々と見て回るがピンと来ない。
ウィンドウショッピングを楽しみながら(?)歩いていると一花から質問を投げかけられた。
「そう言えばさ、カズヨシ君はやっぱり毎年貰ってるの?チョコレート」
「あー、そうだね...」
「テンション低っ!!」
あまりのテンションの低さにビックリする一花。だって仕方がないじゃん...
「ごめんって。まぁ、実際に見れば分かるよ。明後日乞うご期待って事で」
「う~ん。楽しみにしてるよ...」
「この辺とか良いんじゃない?」
話をそらすために目が入った冬物コーナーを勧めてみた。
「ふ~ん。マフラーなんかいいかもね...」
そう言いながら手を取り僕にあててきた。
「あのー、一花さん。僕に似合うものを選んでも意味ないのでは?」
「ちょーと黙っててね...う~ん、やっぱりこっちかな...」
集中している一花は展示されているマフラーを次々に見ていった。そんな時だ。
「彼氏さんへのプレゼントですか?」
店員さんが声をかけてきた。
「へ!?か、彼氏ですか!?」
店員さんの言葉に一花がビックリしている。まあ、傍から見たら彼氏のために選んでる風景にしか見えないよね。
「残念ながら僕はこの人の彼氏ではないんですよ。今は僕の友人のプレゼントを選んでいるんです。そして僕はそのお手伝いです」
「そうだったんですね。失礼しました」
「いえいえ。それにしても、友人は羨ましいですよね。こんな可愛い娘にサプライズでプレゼントされるなんて」
「ですねぇ。それでは、何かありましたらお呼びください」
そう言って店員さんは離れていった。
「ふぅー...って一花?」
一花はマフラーを持って固まっていた。
「おーい、一花さんやーい」
「はっ...!どうしたの、カズヨシ君?」
「どうしたのはこっちのセリフだよ...」
「ご、ごめんごめん。ちょっと思考が停止してたよ。いやー、ビックリしちゃったなぁ」
「?」
「あはは...うん、分かってたから。気にしなくていいよ。それよりもこれにしようと思ってるけどどうかな?」
「うん。いいんじゃないかな。これだったら風太郎も身に付けてくれるでしょ」
「よし!じゃあこれにするよ。会計してくるから待ってて」
会計に向かう一花を見送った後、僕もその辺の商品を見てみることにした。
こうやって見ると色々とあるものだ。
ちょっと気になったものが目に入ったのでそれを手に取ってみた。
へぇーこんなのも売ってるんだ。ちょっと欲しいかも。
そんな風に思っていると一花の買い物が終わったのかこっちに向かってきた。
「お待たせー!ん?それ買うの?」
「いや、ちょっと良いなと思ったけど、また無駄遣いを、って零奈に怒られるからね。それじゃあ帰ろうか」
「そうだね。今日はありがとね」
手に取った物を元の場所に戻して、一花と共に帰宅の途に着いた。
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2月13日の放課後。今日も放課後に図書室で勉強会を行っている。
うちでするのもいいが、ここの方が集中できるのと放課後すぐに始めれるのとで定番になっている。
「よし!今日はここまでにする。帰ってもしっかり復習するんだぞ」
風太郎の号令で本日の勉強会は終了。
「皆成長してるよ。この調子で頑張っていこうね」
僕の言葉を聞いた五つ子達は、自分たちも成長を感じているのが分かっているのかお互いを褒めあっている。
「あの!最後にここ質問いいですか、直江さん?」
「ん?帰ってからでも良いと思うんだけど」
「今のうちに確認したくて...」
「分かったよ。どれどれ...数学かぁ。途中までは合ってるから後は計算だね。ここの部分を落ち着いてもう一度計算してみて」
「えーっと...これでどうでしょうか?」
「うん!正解だよ。やればできるじゃん!」
少しだけ教えたものの、きちんと自分で解けたことを褒めながら四葉の頭を撫でてあげた。
「えへへ...気になっていたところが解けたので、スキッリした気持ちで帰れます」
「分かるよ。もう少しで解けるってところで帰るとモヤモヤした気持ちになるよね」
お互いにうんうんと頷いていると、二乃から声をかけられた。
「ほら、終わったんなら早く帰るわよ」
「わわ、待ってよー」
僕と四葉は慌てて帰る支度をする。
「そう言えば、明日のここでの勉強会はなしでもいいかな?」
「ん?何故だ?」
「ほら、明日はバレンタインじゃん。だから...」
「ああ、もうそんな時期か。仕方ない...」
「?どういうこと?」
僕と風太郎の話に三玖が質問をしてきた。
「こいつは毎年バレンタインになるとあちこちから声をかけられるからな。放課後はさっさと帰ることにしているんだ」
「捕まったら面倒だしねぇ」
「モテる男の子の定めだねぇ」
「そう言う一花だって最近告白されてるんでしょ?」
「なはは、まあね。少し前からかな...チョコ目当てが目に見えてるよ」
一花も僕ほどではないがげんなりしているようだ。
「一花の噂は良く聞くけど他の娘はどうなの?皆人気あるでしょ?可愛いんだし」
「あんたはよくもまあ平然と言えるわね...」
「私は教室ではいつもカズヨシの近くにいるからか、声かけられない...」
「そう言えばそっか。何かごめんね」
「問題ない。むしろ助かってる」
「私はたまにありますよ。やんわりお断りしてますが...」
「私はそもそも男子とお話をしませんので。最近は上杉君に勉強の質問に行っているからか、話しかけられることも少なくなりました」
「俺のせいにするな」
「私の場合も助かっていると言っているのですよ」
「私だってたまにあるけど、全部断ってるわよ」
「二乃の理想は高いからねぇ」
四葉の言葉に『まあね』と答えながら先を歩いている。
「二乃の眼鏡に叶う人ってこの学校にいるのかなぁ...」
僕の言葉に、二乃以外の姉妹達がこちらを見ている。
「ん?どうかした?え、もしかして間違ってた?」
「いえ。別に...」
「うんうん。カズヨシ君はやっぱりカズヨシ君だね」
「う~ん。察しがいいのか悪いのか分からなくなるときあるよね直江さんって」
「不思議...」
「?」
何か釈然としないところがあるが、言えない何かがあるんだろう。そう勝手に解釈した。
「そうだ。風太郎は明日うちに泊まる?毎年らいはちゃんと泊まりに来てたけど」
僕の言葉に前を歩く一花と四葉が若干反応した。
「む?そうだな。だが、今年はこいつらがいるから無理なんじゃないか?」
「別にどうってことないでしょ。僕と零奈の部屋にそれぞれ風太郎とらいはちゃんが寝ればいいんだし。それに、零奈はその気でいるみたいだよ」
「そうか?なら、お邪魔させてもらおう」
「OK。じゃあ零奈にも伝えとくよ」
「よろしく頼む」
さて、明日は平和に一日が終わればいいけど。そんな思いの中家に帰るのだった。
今回は一花と五月の準備の様子を書かせていただきました。
前編はチョコ作り、後編はチョコ作り以外のプレゼント探しで書いてみました。
いよいよ次回はお渡し回です。なるべく早く投稿出来るように頑張りたいですが、私生活が忙しくなった場合は遅くなってしまう可能性があります。ご容赦頂ければ幸いです。