次の日の朝。
風太郎が僕達の部屋に来て正座をしている。
「それで?何やらかしたの?」
「ずずず…」
「……」
昨日は夜も遅かった為その場で解散し、今日事情を説明してもらおうと思い呼び出したのだが、この事を零奈に話すと有無を言わさず風太郎は正座をさせられた。
当の零奈は僕が入れたお茶を飲んでいる。
「待ってくれ、本当に俺には身に覚えがないんだ」
「ふ~ん。じゃあ、一方的に家庭教師を辞めるように言われたと…」
「ああ…」
「埒が明かないですね。その時の事を話してくれますか?」
「分かった。あれは…」
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~風太郎side~
「ふぃ~極上!混浴があったおかげで家族で風呂に入れたな」
「お兄ちゃんものぼせる前に出なよー」
「ああ」
しかし、まさか三玖も旅行が当たるとはな。
旅行先でもあいつらと一緒だなんて驚きだぜ。
「ん?」
着替えようと着替えを入れるかごの中を見るとメモが置いてある。
『0時 中庭 中野』
は?中野の誰だよ!てか、メモで呼び出すなんて…
そういやー、携帯充電してなかったな。また、和義あたりに文句言われそうだ。
しかしどうしたものか…
ーー結局来てしまった。
指定された時間に中庭に向かうため一階まで降りてきた。
「しっかし、本当に誰なんだ?こんな回りくどい事しやがって…うおっ!」
ふとメモから目線を上げると受付に爺さんが座っていた。
「中庭ってこっちですよね?」
「……」
中庭の方を指差しして聞くも反応がない。やっぱ死んでんじゃねえか?
そんな時、階段を下りてきた者がいた。
あれは五月か?とりあえず聞いてみるか。
「おい、五月。これはお前が書いたのか?」
そう言いながらメモを五月に見せる。
「……そう…ですね」
ん?何か歯切れが悪いが今は用件が先だ。
「それで何の用なんだ?」
「と…とりあえず中庭へ」
「ここでもいいだろ。何か話があるんじゃないのか?」
「………上杉君は私たちの関係をどう思っていますか?」
さっさと用件を聞きたかったのでここで話すように迫ると、観念して話し出したのだが予想していなかった事を聞かれた。
「え…それは…まぁ…パ…パートナーとか言ってたろ…お前が」
「いいえ。私たちはもうパートナーではありません」
は?いきなり何言ってんだこいつは。
「確かに最近はろくに授業もしてないから否定はできんが、まだ少しくらい俺たちで教えてやらなきゃまた落ちちまうぞ。進級できたとはいえ俺たちの受けた依頼はお前たちの卒業までだ。それまでは一応家庭教師として…」
「もう結構です。あとは私たちだけでできそうです。この関係に終止符を打ちましょう」
な!?
「何言ってんだ。ちゃんと説明しろ」
「痛っ」
「父親に言われたのか?なぜ今そんなことを…言うん…」
ダアンッ
五月に事の真相を問い詰めているといつの間にか仰向けになって床に寝かされていた。
視界にはさっきまで受付に座っていた爺さんの姿があった。
「爺さん…死んでたはずじゃ…」
背中が痛え。投げられたのか?
「…………」
爺さんは何か言ってるみたいだが何も聞こえない。
「え!?何ですか!?」
聞き取るために耳を爺さんの口元近くまで持っていく。すると、
「儂の孫に手を出すな。殺すぞ」
もう訳わかんねぇ。
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風太郎から経緯を聞いたが、確かに風太郎は何もしていないように見受けられる。
「後は五月を追ってたらお前に会ったから説明はいらんだろ」
「ふ~む…この旅行前に何かしちゃったとかは?」
「試験結果が出た後は三玖以外の姉妹に会っていない。お前の家にも行っていないだろ?」
「確かに…」
じゃあ何が五月をそこまでさせてるんだ?そう言えば、最近僕に対しても以前よりよそよそしい感じがしてるんだよね。
「兄さんと風太郎さんが見たのは、確かに五月さんなのですか?」
「え?」
「は?あのアホ毛にセンスの欠片もないヘアピンは五月以外いないだろ!」
「……兄さんは五月さん以外にそういった格好をしてる姉妹を見たではありませんか」
「あ!」
そうだ。昨日仏壇の部屋にいた時、何故か四葉が五月の格好をしていた。
「まさか…いつもの変装か?しかし何故そんな事を?」
風太郎の疑問には同意である。そんな事をする理由が分からない。そう言えば、四葉が変装している理由があるっぽい素振りを見せてたな。
「しかし、五月さん本人の可能性もないとは言いきれません」
「だね。僕が見た時は暗くて一瞬だったから五月だとばかり思ってたよ。ずっと話してた風太郎は…」
「分かるわけないだろ!」
「だよね~」
これは本人に直接聞くしかないか。
「あんまり気乗りはしないけど、本人達の所に行こうか。折角なので挨拶したいですって言えば中野さんも許可してくれるでしょ」
「俺は昨日断れたんだが…」
「昨日は時間的にマズイでしょ」
「兄さんに同意見です。深夜に女の子の部屋に行くなんてどうかしてます」
「うっ…」
二人に責められて何も言えない風太郎であった。
零奈と風太郎を連れ五つ子達がいると思われる部屋に向かった。
「おや。直江君ではないか。君たちもここに来ていたんだね」
「ええ。母から言われて、
「っ…!そうか、ありがとう。僕からもお礼を言わせてくれ」
「そんな。それで、昨日四葉さんに会ったので、折角だから挨拶しておこうと思いまして。皆さんは起きてらっしゃいますか?」
正確に言えば、昨日二乃にも会ったがこれは言わない方が良いでしょ。
「ふむ。確かに起きて着替えなども終わっていると聞いている。君なら問題ないだろう。付いてきなさい」
そう言って部屋に案内された。
後ろでは、『俺との対応の差は何だ?』『人望でしょうか』と風太郎と零奈が言い合っている。零奈、なかなか辛辣だな。
「ここだ…(コンコン)僕だ。直江君と上杉君、それにレイナ君が来ている」
「はーい!」
「僕は他に用があってね。離れさせてもらうよ」
「分かりました。案内していただきありがとうございます」
頭を下げて伝えると、中野さんは部屋から離れていった。
ガラッ
「直江さん、上杉さん、それにレイナちゃんもいらっしゃいませ!」
扉を開けられるとそこにはとんでもない光景が広がっていた。
「五月の森…何で全員五月になってんだ…?」
「上手いね風太郎…僕もさすがにビックリだ…」
「……」
部屋には五月の姿をした女の子が五人いたのだ。
「三人ともいらっしゃい」
「ビックリさせちゃったかな…」
「これには事情がありまして…」
一人の五月が説明をしようとすると、もう一人の五月がそれを手で制した。
「丁度良かったわ。あんたらにはもう一度試してみたかったのよ。覚えているかしら?五つ子ゲームを。私たちが誰が誰だか当ててみなさいよ。そうねぇ、さしずめ五つ子ゲーム中級者編ってとこかしら」
「な!?」
「そう来ましたか…」
「はぁ…」
「あ、レイナちゃんは何も言っちゃ駄目だよ?」
「…分かりました」
だよね。多分もう見分けがついてるだろうし。
そして、急遽五つ子ゲームが開始された。
ー一人目ー
「自己紹介ですね。中野五月。5月5日生まれ。17歳のA型です」
ー二人目ー
「好きなことですか…やはりおいしいものを食べている時は幸せですね」
ー三人目ー
「日課ですか?そうですね…腹筋とヨガを行っています。和義君もジョギングしていますし、上杉君も何か運動した方が良いのでは?」
ー四人目ー
「なっ、そんなこと答えられません。上杉君!女の子にそのような質問をするのはいけませんよ!和義君も止めてください!」
ー五人目ー
「……」
「くそぉ、全然違いがわからねぇ!」
今まで五人と話してきたが全員同じ話し方で同じ回答である。風太郎でなくても叫びたいよ。
「もう質問もないのなら…」
「ん…そうだ、これだけは今までの奴には聞いてないんだが…何で全員五月の変装をしてんだ?」
「確かに。それは僕も疑問に思ってたよ」
「......えーっと...ですね...」
「ん?」
「話すと長いん...の...ですが...えっと...」
この娘はもしかして...
チラッと風太郎を見るが、風太郎も確信しているようだ。
「む...昔からそっくり五つ子で自他ともに認める仲良しさんだったのです。おじいちゃんもそれを見て喜んでくれてました」
そこで僕と零奈の方をチラッと見てきた。
「しかしある日私がみんなと違う恰好をしてみたんです」
なるほど以前話していた風太郎に気づかれなかった時のショックでリボンをつけだしたことか。
「ふーん、どんな格好なんだ?」
「それは今と同じウサちゃんリボ...」
おいおい。
「あ!あーっと危ない!誘導尋問とは卑怯ですよ上杉さん!」
もうボロボロだね。
「お前四葉だろ!」
「な、なんのことかわかりませーん」
「はぁー...それで?まだ続きがあるんでしょ」
「は...はい。五人同じじゃない私たちを見ておじいちゃんはものすごく心配しちゃって、仲が悪くなったんじゃないかと...しまいには倒れてしまったのです」
チラッと零奈を見ると、コクンと頷いた。
「それ以来おじいちゃんの前ではそっくりな姿でいると決めました。話し合いの結果、五月ということになりまして」
「なるほどね。それがみんな五月の恰好をしている理由か」
「はい」
「あんな怖い爺さんのためにお前ら偉いな」
「いいえ。とっても優しい人ですよ。私大好きです」
屈託のない笑顔でそう言ってくる四葉。本当におじいさんの事が好きなんだね。
零奈も満足そうに微笑んでいる。
さて、全員との話が終わったわけなんだが...
「さて、一通り話して見分けられましたか?」
「ああ...あれ...ど...どれが五人目の五月だ...?さっきはわかったのに...」
「はぁ...ガッカリです...やっぱりだめみたいですね」
「待ってくれ!もう一回...」
「もういいです。では、和義君はどうですか?」
一人の五月から促される。全員の視線が僕に集中した。
「ごめん。僕も判断できないや。さすが五つ子だね」
両手を上げ参ったというアクションを取ると、五月たちは全員下を向いてしまった。
「でも...雰囲気から何となくだけど判断してる娘がいる。確証がないけどね」
「な、何!?虚言は良くないぞ和義。俺と同じで分からないでいいじゃないか」
僕の言葉に下を向いていた五月たちがバッと僕の方を見る。
風太郎は風太郎で一生懸命言ってくる。何でそんなに必死なんだ。
「それで?兄さんは誰が誰と判断したのですか?」
「ああ。真ん中が五月かな。他の四人に比べて五月っぽかったよ」
「っ...!正解です!」
「後はごめん。五月かそうでないかでしか今は判断出来ないや」
「それでも十分かと」
零奈にそう言ってもらえると報われるね。
五月は当ててもらって嬉しいのか、下を向いているが笑ってくれている。他の姉妹は様々な反応をしていて、これを見れば僕でも見分けがつく。とはいえ、ここまでしないと分からないなんてやっぱり僕もまだまだだね。
「あー...追試って意味ではないけど、今の反応で大体判断できたかも。試しに言ってみていい?」
「え?ど、どうぞ...」
五月の許可ももらえたので僕なりの答えを出してみる。
「じゃあ、僕から見て左から一花に二乃。それに、五月を挟んで三玖に四葉。どう?」
「な...なんで...」
僕が一花と判断した五月がビックリしたように言葉を漏らした。
「お?当たった?」
僕の質問に五つ子全員が頷いた。ちょっと安心したかも。
「何で分かったのよ?」
「えっと...僕が五月を当てた後のみんなの反応が様々だったからね。二乃と三玖はちょっと残念そうにしてて、四葉は凄いって反応をしてた。一花はなんて言うか驚きとさみしさが混ざった感情だったかな」
「私と二乃の違いは何?」
「う~ん...前に二乃と三玖が言ってたじゃん。うるさいのが二乃で、薄いのが三玖だって。あれを参考にしてみた」
「何よそれ!」
「ははは、ごめん」
「それでも当ててもらえて嬉しい...」
「そっか...」
「くっ...和義に指摘されたところを見ても全然わからん」
「まあ、僕はここ三ヶ月一緒に暮らしてきたからね。でもやっぱりすぐに判別できないのは悔しいかな」
「おー、直江さんが悔しがっているの珍しいです」
「こいつは負けず嫌いだからな」
コンコン
そんな風に話していると来客が来たみたいだ。五つ子のおじいさんだ。
「む?お前はまた孫に何かしているのか?」
「何もしてませんよ」
おじいさんに詰め寄られる風太郎。前科持ちだからね。
「本当か一花?」
「う...うん。大丈夫だよおじいちゃん」
「そうか。朝食の準備が始まったから大広間に来なさい。直江先生の子どもたちも良かったら一緒に食べるといい」
「ありがとうございます」
僕の返事を聞いたらおじいさんはそのまま部屋から出ていった。しかしさすがである。自分の孫のことは瞬時に見破れるのか。
そんな風に考えていると風太郎が何やら考え込んでいる。
「悪い。和義たちは先に行っててくれ」
そう言い残して風太郎も部屋から出ていった。
「何だ?」
「さあ...」
「じゃあ私たちも大広間に向かおうか」
一花の言葉にみんな動き出した。みんなが出ていったので部屋から出たところで呼び止められた。
「ちょっといいですか?」
「......えっと...五月?」
「正解です。瞬時とまではいきませんが分かりましたか」
「まあね。ちょっと怪しかったけど」
そして五月と並んで大広間に向かう。零奈は今四葉と手を繋いで僕の前を歩いていると思う。四葉だよね?
「先ほどは当ててくれてありがとうございます。嬉しかったです」
「さっきも言ったけど、五月かそうでないかでしか判断ができない状態だからね。何とも悔しい限りだよ」
「ふふっ。本当に負けず嫌いなのですね」
「...君たちと向き合っていくって決めたからね。こんな事では到底君たちの隣を歩けないって思ってるよ」
「和義君...そこまで考えていただき嬉しいです」
そう言いながら五月は僕の手を握ってきた。
「え、五月!?」
「今だけはこうさせてください」
しかし、僕のビックリした声に他の姉妹が振り向いている。
「五月!あんた何してんのよ!」
「ふふっ、最初に当ててもらえた特典です」
「むー...それを言われると何も言えない」
「はわぁ...五月ってば大胆」
「兄さんは後でお話があります」
「何で!?」
「あははは、カズヨシ君も大変だ」
そんな風に騒がしくも大広間に向かう。
その後の朝食時の僕の隣争奪戦が勃発したのは言うまでもない。
サブタイトルにもなっていますが五つ子ゲームが再び勃発しました!
和義は当てるべきか外すべきか悩みましたが、時間をかけて当てるということにしました。
和義の観察眼を持ってすれば、五月とそうでない姉妹との違いも違和感で気付くとも。
そして、原作にあった一花と二乃の入浴シーンは今回省かせていただきました。すでに二乃は和義のことを好きなのを姉妹に公言してますしね。
ただ、そこで相談した内容は別のシーンとしてどこかで出てくるかもしれません。
補足ですが、和義達が混浴風呂に入ったのは上杉家が上がった後と時系列はしております。
また、マルオの一人称って僕でしたね。今さら気づいたので、前の話を編集したく思ってます。
さて、今年の投稿はこれで最後かもしれません。
頑張って後一話くらいは投稿できればなと思っています。
できなかったらすみません。何せ、年末年始も仕事があるので…
それではまた次回のお話にて。また読んでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。