五等分の奇跡   作:吉月和玖

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70.新生活

「ふわぁ~…おはよー…」

 

旅行から帰って数日。もうすぐ最上級生としての学校生活がスタートする。

そんなある日の朝、遅めに起きてリビングに降りてきた。

 

「おはようございます、和義君!」

「おはようございます。最近起きるのがまた遅くなってきたのではないですか?」

 

笑顔で迎えてくれる五月と小言を言いながら迎える零奈。

見た目的には逆の反応のような気がするんだが…

零奈は母さんよりも母親感半端ないな。

 

「悪い、最近徹夜で勉強してるからさぁ…」

 

実際には勉強ではなく、例の論文を提出した大学から色々と意見を求められているからそれに対して答えている。

父さんと母さんが交渉に行った時に、どうやら僕のパソコンのアドレスを向こうに教えていたようで、たまに意見を求めてくるのだ。

内容が面白いものもあったりで僕も答えているのだが、如何せん集中してしまうと時間を忘れて徹夜になってしまうのが玉に瑕だ。

 

「もうすぐ学校も始まるのですからしっかりしてください」

「分かってるって…ところで皆は?」

「皆、それぞれのバイトに行ってますよ」

 

僕の朝食を配膳しながら五月が答えてくれた。

 

「ありがとね……これ五月が作ったの?」

「え…ええ、お母さんに教えてもらいながらですが…」

「そっか。ではいただきます!……うん、美味しいよ」

「~~~っ…ありがとうございます!」

 

確か五月が家で料理しないのって分量がおかしいからだっけ。

なら、分量さえ間違わなければ問題ないってことか。

朝食を食べながらそう思う。

ご飯に味噌汁、それに玉子焼きや焼き魚といったスタンダードなメニューであるのだが良く出来ている。

 

「二乃や三玖が許す限り、私も料理頑張ってみようと思ってます。その…和義君に食べていただきたいので…」

 

少し顔を赤くしてじっとこちらを見て言ってくる。

 

「そ…そっか…うん、楽しみにしてるよ」

 

僕がそう答えると喜んでくれるのだが、朝からなんちゅう恥ずかしいことを。

 

「えっと…四葉からはジョギング行けない事を伝えた時に知ったけど、他の娘も今日からなんだね」

「ええ。二乃はREVIVALに。三玖は兄さんの勧めていたパン屋に。四葉は掃除業者のバイトですね」

「そっか。しかし、学校が始まる前にバイト始めるなんてそんなにお小遣い欲しかったのかな?」

「「……」」

 

ん?何をそんなに見てるんだろ。

 

「はぁ…これだから兄さんは…」

「へ?」

「別にいいですよ。それよりも私たちもそろそろ準備をした方がいいのではないですか?」

 

五月にそう言われて時間を確認すると確かにそろそろ準備をした方がいい時間でもある。

他の姉妹が仕事に励んでいるが五月と僕も今日から下田さんのもとでバイトがあるのだ。

 

「そうだね。てか、零奈も本当に塾に通うの?必要ないでしょ」

「そうですよぉ。お母さんが塾に通う必要ないと思います」

 

ニコニコと五月が言う。

 

「必要あるかないかではありません。兄さんがいる。それが重要なのです」

 

この親子は…恥ずかしげもなくポンポンと言えるね。こっちが恥ずかしくなってくるよ。

てか、二人が笑顔でお互いを見ているけどバチバチ感が半端ないな。バイトを始める前から疲れそうだよ。

 

-------------------------------------------------

「よう。良く来たねぇ」

 

塾まで行くと下田さんが迎えてくれた。

 

「今日からお世話になります」

 

僕の言葉を合図に三人で頭を下げる。

 

「はっはっは!そんなにかしこまらなくていいさ。さて、早速だがそれぞれの教室に案内しよう。まずはっと…直江零奈(れいな)…って零奈(れな)先生と同じ漢字じゃないか」

「ええ。父と母がその零奈(れな)先生のように成長してほしいと名前を付けてくれたそうですよ」

 

今となっては零奈(れな)先生本人になってるけどね。

 

「十分零奈(れな)先生と同じ雰囲気出せてるよ。てか、お前さん頭良すぎだろ…入塾にあたって実施したテストが満点。更に希望した私立中学入試レベルのテストも満点。今回特例として、希望していた中学生と同じクラスにしといた」

「ありがとうございます」

 

当の零奈は気にしていないようだ。

零奈(れな)さんの記憶があることを教えてもらってから少しして、なぜ今さら勉強してるのか聞いてみたが、『兄さんの隣に並ぶ女性として精進しています』、と返ってきた。

何でも小学一年生から自分なりに復習をしていき、今は中学まで行ったので本人的には今回の塾通いは丁度いいそうだ。

零奈の利用する教室まで来たところで、零奈が見上げてきた。

 

「では私はここで。終わりましたら連絡しますね」

 

そう言って先日父さんに買ってもらった携帯を見せて教室の中に入っていった。

携帯を買うにあたって一日一通はメッセージを父さんに送ること、という条件が出来たが『娘達と連絡が取れるようになるのであればどうということはありません。それに一通でいいのですから』、と言っていた。

哀れな父さんだ。まあ一通でも歓喜してることだろう。

ちなみに、零奈が入っていった教室からざわめきが聞こえてきた。

そりゃそうだ。小学生が中学生の教室に入ってきたのだから。

 

「次はここだ。五月お前さんのクラスだ」

「はい…」

 

そう言った五月は少し緊張しているようだ。

 

トンッ

 

「え…?」

 

そんな五月の頭に手を置いた。

 

「緊張するな、っていう事は言わない。とりあえずいつも通り授業を受けてきな。大丈夫。分かんないところは僕が教えてあげるから」

「……っ!うん!行ってくるね!」

 

そう言って最後は笑顔で教室に入っていった。

 

「見せつけてくれるねぇ。やっぱあんたら付き合ってるだろ?」

「付き合ってませんよ。それより僕はどうすれば?」

「はいはい。お前さんには講師をしてもらう。念のため学力を見させてもらったが…兄妹揃って化け物だね。某私立大学入試試験の過去問で満点とは…」

「そうですか…しかし、僕は教壇で教えたことがありませんが…」

「満点は気にしないと…はぁ…そこは大丈夫だ。この塾では希望者にマンツーマンで教える制度を実施していてな。そっちに付いてもらう。家庭教師をしていたお前さんなら慣れてるだろ?」

「そういうことであれば」

「よしっ!この制度では教師を指名することも出来るが、指名なしもある。今日はその指名なしをしている子に教えてやってくれ」

「分かりました」

 

そして案内された教室。そこは一つ一つの席が遮られていて一人で勉強に集中するにはもってこいだ。

なるほど。その横に付いて教える訳か。

 

「あの子だ。4月から高校に入学する子で。成績はかなりいい。真面目な子だからすぐに馴染むだろう」

「分かりました。案内ありがとうございます」

 

『頑張れよ』という下田さんの言葉を背に紹介された子に近づいた。

集中して勉強をしているのか、僕が近づいても気付かない。

机には色々な参考書が重ねておいてあり、かなり勉強をする人物であると伺える。まるで風太郎だ。

しかし凄い姿勢が良いな。そこに黒髪ロングだから大和撫子みたいだ。

そう。この子は女の子で時折長い髪を耳にかけながらペンを走らせている。

 

「こんにちは」

「……え?」

「ごめんね、集中してるところに声かけて。今日君の担当になった直江って言います。よろしく」

 

下田さんから預かっていた名札を見せながら名乗り出た。

 

諏訪 桜(すわ さくら)と申します。あのぅ…失礼かと存じますが、学生のようにかなりお若く見えるのですが…」

 

僕の名乗りに対して席を立ち一礼しながら名乗ってくれた。しかし、礼も綺麗だなぁ。

 

「察しの通りで、僕はこの春から高校三年生の学生だよ」

「そうなのですか!?」

「普通は驚くよね。ま、僕の実力を見てもらうってことで、今やってたところで分からないとこあれば教えるよ」

「かしこまりました。では、こちらの問題なのですが…」

「へぇ~…凄いね。下田さんから聞いた話だと今度高校に入学するって聞いたけど。これって高校の範囲の数学だよね?」

「ええ。自分なりに予習をしております」

「そっか…よし!じゃあ始めようか。まずはこの問題だけど……」

 

・・・・・

 

「……できました!」

「うん!良く出来ました!やるじゃん」

「そんな…先生の教え方が良かったのです。とても分かりやすくためになりました」

 

そう言って頭を下げてきた。本当に慎み深い子だ。

真面目って言う意味では五月に似てるけど、五つ子達とはまた違ったタイプの子だね。

 

「どうかなさいましたか?」

 

顔を上げた諏訪さんはじっと見ている僕に不思議に思っている。

 

「ああ、ごめんごめん。綺麗だなって思ってさ」

「え!?あのぉ…」

「ああ、姿勢だよ。勉強をする時の姿勢。礼をする時の姿勢。どれも凄く綺麗だった」

「ありがとうございます。華道と弓道を習っているので、そのせいかもしれません」

「なるほどね、それでか…っと、もうこんな時間か。じゃあ今日はここまでだね」

「あら…もうそんなに経っていたのですね。あの、今後は先生のもと勉学に励みたく思います」

「僕?」

「はい。本日の授業は大変ためになりました。ですので、次回以降も先生より教えを乞いたいのです」

「ははは。僕なんかで良ければ全然構わないさ。って、僕って今日から来たばっかだから、そういった手続きとか任せていいかな?」

「構いません。では、本日は失礼いたします」

「うん、またね」

「っ…!はい!」

 

手を振って挨拶すると、今日一番の笑顔が返ってきた。

そして諏訪さんは教室から出ていったのだった。

今日は初日ということもあり、彼女一人で終わった。

そんなとき零奈から連絡がきたので迎えに行くことにした。

 

「お疲れ零奈」

「兄さんもお疲れ様です。いかがでしたか?」

「さすがに疲れたかなぁ。五月も迎えに行こうか」

「ええ」

 

そして下田さんのところに向かう。

五月は授業が終わった後は下田さんのところで手伝いを行う予定であるからだ。

 

「下田さんお疲れ様です」

「おう。お疲れさん!」

 

五月の方を見るとどうやら書類の整理をしているようだ。

 

「そういえばさっき諏訪が来てたぞ。ほれ」

 

そこで一枚の紙を渡された。

 

「これは?」

「こいつは来月の和義の予定表だ。見事に全日諏訪が入ってるな」

「それはありがたいことですね」

「どんなマジックを使ったんだ?」

「は?」

「いや、諏訪は先生を選ばないことで有名なんだよ。彼女に聞くと誰でも同じと返してくるときたもんだ」

「彼女?」

 

横にいた零奈が彼女という言葉に反応したが今は触れないでおこう。

 

「別に普通に授業をしただけですよ。特にこれといった特別な事は何も…」

「ふ~ん…ならフィーリング的に良かったのかもな。この女たらしめ」

 

肘を付いて下田さんが皮肉を言ってくる。

その皮肉は今言ってほしくなかったかも。零奈だけでなく五月も手を止めて睨んでるじゃん。

 

「あー、それで。彼女以外の時間帯はまたフリーの人に教えればいいんですか?」

 

無理やり話を反らした。

 

「おう。とは言ったものの、お前さんは基本一日三時間だからね。諏訪以外だと一人かいないかだな」

「分かりました」

 

そして五月の仕事が終わるまで自分の勉強をする事にした。

しかし、何が彼女を僕を指名するのに至ったんだろう?謎である。

 

-------------------------------------------------

「五月から聞いたわよ!」

「塾で女子をたぶらしたって本当?」

 

夕飯時になり二乃と三玖に詰め寄られた。

五月を見ると不機嫌に目をそらされた。そういえば帰りも不機嫌だったなぁ。

 

「カズヨシ君…それはやってはいけないよぉ」

「わ…私は直江さんがそんなことしないって思ってます!」

「あら。四葉は私と五月の言葉が信じられないと…」

「うっ…!ごめんなさい直江さん…」

 

四葉崩落。脆いなぁ。

まあ最初は僕を信じてくれたからやっぱりいい娘だよ。

 

「いやいや。たぶらかしてなんかないって」

「それでは、何故今までマンツーマン相手の先生を指名してこなかった女子が、今日会ったばかりの兄さんの事を指名しているのでしょうか?」

「それは……僕も知りたいんだけど…」

「まぁ、カズヨシ君の事だから無意識に相手の心を射止めちゃったんだろうね」

「む~…五月。その女子はどんな娘なの?」

 

三玖が五月に聞くが、

 

「それが…私も詳しく分からず……」

 

チラッと僕を見ながら答えた。

その事で僕に対する視線が集中した。

 

「和義。隠さず話しなさい。私達には聞く権利があると思うわ」

「って言ってもなぁ…さっき零奈が言った通り今日会ったばっかりだしなぁ」

「何でもいい。さあ白状して…」

 

白状って…

 

「う~ん…歳は二個下だね。この春に高校入学するって言ってたし。あ、でもすでに自分で高校の内容の勉強してたから頭は良いと思うよ」

「年下のガリ勉っと…」

 

二乃、その言い方はちょっと。

 

「後はそうだな…姿勢や礼が良かったからそれを褒めたら喜んでたね。華道と弓道やってるんだって。それに丁寧な話し方で黒髪ロングだったから大和撫子って感じだったかな」

「「「「「……」」」」」

 

何で皆黙っちゃったんだろ。

 

「正にこの子達とは正反対ですね」

「「「「「うっ…!」」」」」

「それはまあ感じたかな…」

「カズヨシはそういう娘が好みなの?」

「え?別に違うけど」

「本当でしょうね?」

「ああ。て言うか、僕については好み云々の前の話だと思うけど」

「そりゃそうだ」

 

自分で言った事だけど、一花に同意されると何か釈然としない。

 

「まあいいわ。お母さんと五月は引き続き監視任せたわよ」

「か…監視って…」

「「分かりました」」

「あはは…直江さんファイトです!」

 

その後、諏訪さんには普通に勉強を教えて特に何かがあった訳ではなかった。

彼女の吸収力は凄く、どんどんと覚えてくれ教えがいがあった。しかし、無理をせずペースを維持して授業を進めた。それについては彼女も反対をする事もなく僕の指示にしたがっている。

 

-------------------------------------------------

「てなことがあったんだよ」

 

今日は新学期初日。風太郎と一緒に学校に向かっている。

 

「ふーん。その女凄いな」

「だよねぇ。昔の風太郎みたいにどんどん勉強するから懐かしかったなぁ」

「そ…そうか」

「おっはー」

 

二人で歩いてると例のコーヒーショップの前で一花がコーヒーを飲んでいた。

 

「よう」

「相変わらずコーヒー好きだねぇ。こればっかりは良さが分かんないや」

「普通に美味しいよ?それでは失礼して」

 

そう言いながら僕と風太郎の間に入り、並んで登校することにした。

 

「そういえば旅行以来か、一花と会うのは」

「そうだよ…全然家庭教師に来てくれなかったよね。お姉さん寂しかったんだから」

「そ…そうか…」

「まぁ、来ても皆バイトや一花の女優業なんかで家庭教師どころじゃなかったかもだけどね」

「頑張ってるんだな」

「うん。皆がそれぞれバイトを始めてくれたからね。そろそろ私もやりたいことに挑戦してみよかなって」

「何にせよ。成績さえ落とさなければいいさ。新学期からビシバシいくからな!」

「あはは…まあここまで来たら卒業したいよね。頼りにしてるよせーんせっ」

「はいよ」

 

一歩前に出て振り返りながら一花がそう言ってきたので僕は答えたのだが、風太郎は何故か前髪を弄りながらそっぽを向いてしまった。

 

「風太郎?」

「いや、何でもない…」

 

何でもない事はないと思うが風太郎が言うなら何も言うまい。

 

「でもさ、皆がバイトを始めたからか一緒に過ごす時間が少なくなっちゃったんだよね…私たち、このまま大人になっていってバラバラになっていくのかな…」

「さあな。だが、きっと悪いことではないだろう」

「だねっ」

 

丁度そこで学校に着いた。

今日は新しいクラス発表のため張り出された場所に皆が集まっている。

 

「そういえば二人は同じクラスになった事ってあるの?」

「んー…中学入ってからないかなぁ」

「まあいつも一緒に勉強してたからな。クラスなどどうでもいい……あった一組だな」

「見つけるの早っ」

「風太郎はあ行だからねぇ。僕と一花はな行でほぼ真ん中だもん…っとあった僕も一組か…って、え?」

やった!

 

隣から小さな声だが、喜びの声が聞こえた。

 

一組

上杉 風太郎

直江 和義

中野 一花

中野 五月

中野 二乃

中野 三玖

中野 四葉

 

-------------------------------------------------

「五つ子だぞ…!ありえねぇ…」

「まあまあ、こんな事もあるよ」

「同じなのは顔だけにしてほしいぜ…」

「しかし俺らも同じクラスになるなんてな」

 

そう話しかけてきたのは前田だ。実は前田も同じクラスなのである。

 

「高校最後の一年、楽しくなりそうだね」

「ああ」

「ふっ…」

 

僕の言葉に前田は答えてくれたが風太郎は答えない。

だが、口は笑っている。

 

「それより中野さん達は大丈夫なのか?」

 

前田がクラスメイトに囲まれている五つ子を親指で指差しながら聞いてきた。

 

「う~ん…ちょっとまずいかもね…」

 

二乃が本性出してキレなきゃいいけど…

そんな考えが過ると風太郎が急に立ち上がった。

 

「風太郎?」

「何だ?助けに行くのか?」

「そんな訳ないだろ。トイレだ」

 

そう言ってクラスメイトが固まっている方に向かっていった。

 

「退いてくれ」

「フータロー」

「た、助けてください」

 

風太郎の存在に気づいた三玖と四葉が助けを求めている。

 

「何?上杉君も中野さん達のこと気になるの?」

「トイレだ。邪魔だから退いてくれ」

 

その後風太郎は教室から出ていった。

 

「え…何あれ」

「あの人感じ悪っ」

 

今言った女子。もう君と話すことはないだろう。

 

「あいつ何がしたかったんだ?」

「五つ子の事は心配してたみたいではあるね。トイレに行きたいなら前のドアから出れば良かったんだから」

「なるほどな」

 

そんな時だ。

 

「みんなやめよう。ね?そんなに一気に捲し立てたら中野さん達も困っちゃうよ。ね?」

 

一人の男子生徒がクラスメイトの質問責めを止めた。

 

「誰あれ?」

「ん?ああ武田だよ。俺と一花さんは二年の時同じクラスだったな」

「ふ~ん…」

「はーい、席に着いてください」

 

おや、担任はまたおんなじなんだ。

三条 葵(さんじょう あおい)先生。二年の時も担任で若くて恐らく歴史好き。

この先生の授業面白くて好きだから結構嬉しい。

先生の声もかかった事で皆自分の席に戻っていった。そこにトイレから風太郎も戻ってくる。

ちなみに風太郎は一番前の席で僕はその後ろ。しかし、何を基準にこの席順になったのだろうか。

 

「和義君。今日からよろしくお願いします」

 

隣から五月に声をかけられた。

 

「うん、よろしく」

「まさか席も近くになるなんてね」

「私も和義の隣が良かったわ」

 

五月の前の席の一花と後ろの席の二乃からも声をかけられる。

並びとしては、前から一花、五月、二乃、三玖、四葉である。

ちなみに前の風太郎は席に戻ってからはずっと勉強をしている。

 

「今日からあなた達は三年生です。最上級生としての自覚を持ち後輩の皆さんのお手本となるよう学校生活を……」

 

ん?どうしたんだろう。

 

「あのぅ―…中野…四葉さん。どうかしたのかな?」

 

振り返ると四葉が黙って手を挙げている。

 

「このクラスの学級長に立候補します!」

「えっと…まだ何も聞いてないんだけど…」

 

先生、めっちゃ困ってんじゃん。

 

「そこをなんとか!」

「反対もしてないんだけどね…まあ、他の立候補者がいなければいいけど…」

 

そして、

 

「皆さん、困ったら私になんでも言ってくださいね!」

 

パチパチ…

 

四葉が学級長として決まった。

 

「ついでに男子も決めちゃいましょうか。立候補する人はいますか?」

「いますかー?」

「推薦でもいいですよ?」

「いいですよー?」

「何か四葉ノリノリだけど何かあった?」

「いえ。全く…と言うか姉妹として恥ずかしいです…」

 

あーそれはそれは…

 

「男子の学級長なんて決まってるよなぁ」

「だよなぁ、武田か直江だろ」

 

全く勝手なんだから。

 

「先生、私学級長にピッタリな人を知ってます!」

「へぇ~、誰?」

「上杉風太郎さんです!」

「はぁ!?」

 

驚いた風太郎は立ち上がった。かくいう僕も驚いているのだが。

 

「え?上杉君で大丈夫…?」

「武田君や直江君を差し置いてだなんて…」

「じゃあ、他の係も決めちゃいましょうか」

「先生!俺はやるとは言ってません!それに俺なんかより適任者がいます」

 

おいおい、まさかとは思うが。

 

「あら誰かしら?」

「直江和義です」

「おまっ…!」

 

本当に嫌な予感は当たるな。

 

「いいじゃん!直江君なら適任だよ!」

「だよね!」

「ふむ…周りの皆の反応も良いみたいだから直江君で決まりね」

「いやいや。先生、ちょっと待ちましょうか」

「もー、では多数決を取りましょうか。直江君で良いと思う人は手を挙げてください」

 

クラスのほぼ全員が手を挙げる。

 

「決まりですね」

「はぁー...」

 

こうして三年一組の学級長に僕と四葉がなることになったのだった。

 




本年最初の投稿です。
諸事情がありまして、年明けのご挨拶は省かせていただきます。

いよいよ三年生スタートです!
スタートする前にバイト先の塾でのやり取りが入りまして、学級長が決まったところで今回は終わらせていただきました。

いやー、学級長は風太郎と和義どっちにしようか迷ったのですが、やりたくない風太郎は和義に振るかなって思い、和義にしました。
後、担任の先生ですが、原作では男の人でしたがこのお話ではオリジナルの二年生の時の担任の先生にしました。
そして今回で名前登場です。今後も登場するかもしれませんので、名前を付けさせていただきました。

では、また次回投稿まで。
本年もよろしくお願いいたします。
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