五等分の奇跡   作:吉月和玖

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お待たせしてすみません。最新話の投稿です!

最近、お気に入りをしてくれた方が増えていました。ありがたい限りです。
この場をお借りして御礼申し上げます。


80.行動開始

~男子部屋~

 

『風太郎君。私はあの時からずっと好きだったよ』

 

「……っ!」

 

風太郎が昨日の四葉からの告白を夢でも見て勢いよく起き上がった。

 

(はぁぁぁ…あの子が四葉だってことでも混乱してるってのに、そこに告白だと?勘弁してくれ…)

 

喉が渇いた風太郎は、部屋に備え付けてある水を飲むためベッドから起き上がった。

 

(俺にも和義以外の友人が出来るとはな…)

 

コップに注いだ水を飲みながらまだ寝ている前田と武田を見て、風太郎は笑みを溢しながらそう考えた。

 

(もうすぐ七時か。まだ寝てても良いかもしれんが、このまま寝ると寝坊しそうだな。それに、さっきの夢のせいで目が冴えちまった…和義もさすがにまだ寝て…て、あいついつの間に起きてたのか。全然気付…かなかった…)

 

そこで風太郎はある違和感に気付いた。

自分のベッドの横のベッドで寝ているはずの親友の姿が見当たらない。

それだけであれば、和義が良くやっている朝早くに起きての散歩にでも行っているのかと思うのだが、他にあるはずのものがない。

 

(何だ?この違和感は…?……っ!!)

 

そう。自分達で纏めて置いてある荷物の数が足りないのだ。

ただの散歩であれば荷物まで持っていく必要性がない。

 

「おい!起きろお前ら!!」

 

それに気付いた風太郎は大きな声で前田と武田、二人を叩き起こした。

 

「ふあぁぁー…何だよ上杉…こんな朝っぱらから騒ぎやがって…」

「んーー…もう少しだけ寝ててもいいじゃないか…」

 

急に叩き起こされた二人は無論反論をする。しかし、風太郎はそんなことお構いなしに二人に話しかけた。

 

「和義がいねぇ!」

「「は?」」

 

バスルームなどを確認しながら言う風太郎に起きたばかりの二人の頭は付いていけていない。

 

「朝の散歩かなんかじゃないのか…?そこまで慌てることかよ…ガキじゃねぇんだぞ…」

 

そう言いながら、前田は寝足りないのかモゾモゾと布団の中に入っていった。

そんな中、風太郎の慌てっぷりにただ事ではないと思った武田は、『ふむ…』と考えながら部屋を見渡した。

 

「なるほど……前田君、君は散歩に行くときに何を持っていく?」

「ああ!?何って…そりゃあ、携帯と財布持っとけば事足りるだろ」

「だよね」

「お前は何が言いてぇんだ?」

「足りない」

「は?何が?」

「直江君の荷物さ」

「は?何言ってんだ……て、マジか…」

 

武田の言葉に起き上がった前田は、本来置いてあるであろう場所に和義の荷物がないのに気付いた。

 

「てことは何か?あいつ帰っちまったのか?」

「分からない。だが、彼の性格から言えば先生に黙って行動するはずがないね」

「だったら葵ちゃんに聞きに行こうぜ。しっかし、あいつの性格ならむしろ俺たちにも何か言っていくだろ」

「そうだね…」

 

前田の言葉に武田は顎に手を当て、そのまま視線を風太郎に向けた。当の風太郎は何やら考えているようだが。

 

(畜生!一花の言ってた通りじゃねえか!あいつに気にしてろって言われてたのにっ!)

 

風太郎は前日の四葉の二つの告白で動揺していたので、和義の事を気にする余裕がなかったのも無理はない。

それでも風太郎は自分が許せなかった。

 

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~零奈・綾の部屋~

 

「~~♪」

 

(あらあら。鼻歌なんて歌っちゃって。今日は相当ご機嫌みたいね)

 

零奈が自分の髪をセットしているのを綾はニコニコしながら眺めていた。

 

「何ですか?人の顔をニヤニヤしながら見たりして」

「べっつにー。ご機嫌だなって思っただけだよ」

「?いつもと変わりませんが」

「無意識かぁ…」

「訳の分からないことを言っていないで、母さんも早く準備してくださいね」

「はーい」

 

ブブブ…

 

ちょうどその時着信がきた。

 

(あら。和義からなんて珍しいじゃない)

 

普段は絶対に自分から連絡してこない我が息子からのメッセージに嬉しくなって見てみると。

 

「えぇ!?」

 

内容が突拍子過ぎて思わず声が出てしまった。

 

「誰からの連絡ですか?」

「えっと……友達からだったんだけど、あまりの内容でビックリして声が出ちゃった。ごめんね」

「母さんが驚くなんてよっぽどですね」

「ま…まあね」

 

そこまで興味がなかったからなのか、人の友人関係を根掘り葉掘り聞くものではないと思ったからなのか、零奈は追及せず自分の準備に勤しんでいる。

 

(ふぅぅ…いやー、我が息子ながらとんでもない爆弾を放り込んできたわね)

 

和義からのメッセージはこうだ。

 

『ごめん母さん。これは母さんの心の中だけに留めておいて。ちょっと一人で考えたいことがあって、先生に頼んで修学旅行を抜けさせてもらった。風太郎に零奈、五つ子のみんなには悪いと思ってる。母さんにはちょこちょこ連絡はするから心配しないで』

 

(風太郎君や零奈ちゃんにも黙ってるってことはよっぽどの事ね。何に悩んでるのやらあの子は。まあ、大体予想は出来てるんだけどね…)

 

そんな風に考えながら準備をしている零奈を見た。

零奈が機嫌が良いのは、娘達と京都観光が出来るのはもちろんだが、それよりも自分の愛する男と一緒にいられるからである。

部屋に設置された時計はもうすぐ八時になろうとしている。

 

(多分今頃、風太郎君が先生に確認してるとこかな。あぁー…これから起こるであろう事を考えると憂鬱だわぁ。零奈ちゃん、荒れるんだろうなぁ…)

 

そう思いながらも自分の準備に取りかかる綾であった。

 

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~バスの乗り合い場所~

 

朝食も終わり、旭高校の学生達はそれぞれ選択したコースごとにバスの近くに集まっている。

その中にはもちろん中野姉妹達もいる。

 

「さぁー、今日で最後なんだから今までの分取り返すわよ!」

「張り切ってるね二乃…」

「そういう気持ちにもなるわよ。ここまで何も進展がないんだから。初日は三玖に。昨日の二日目はまさかの一花に二人っきりの時間取られたんだから」

「別に取ったわけじゃない。たまたま…」

「抱きついた子が良く言うわよ」

「侵略すること火の如し。チャンスはものにしないと」

「あら、気が合うじゃない。恋は攻めてこそよね」

 

朝からバチバチな二乃と三玖である。

 

「あはは…朝から元気だねあの二人は」

「なるほど。恋は攻めてこそですか。しかし、私に人前でなんて出来るのでしょうか…それでも………」

「あちゃー、こっちもか」

 

四葉が五月に声をかけるも、当の五月はブツブツと考えごとをしている。

 

(あーあ。私だって風太郎君と色々見て回りたいなぁ)

 

そんな考えをしながら四葉は一花を見た。

四葉は、自分と同じで一花も風太郎のことを好きだと思っているからだ。

ただ、その一花は先程から携帯を見ては溜め息をついたりと、挙動不審である。

 

「どうしたの一花?」

「え、何が?」

「何がって…さっきから携帯見たり、周りをキョロキョロしたりしてるから」

「あはは…ごめんね心配かけて。大丈夫だよ」

「だといいけど…」

 

とても大丈夫そうに見えないが、四葉はとりあえず一旦身を引いた。

一花が挙動不審になっているのは、朝から和義に連絡しているにも関わらず、電話にも出ずメッセージも返ってこないからだ。しかも、メッセージは既読すら付かない。

 

(何で?連絡くらいしてよカズヨシ君っ…!)

 

「四葉。カズ君達はEコースなのよね?」

「うん!昨日、上杉さんに聞いたからね。四人とも同じコースを選択したんだって」

「私はてっきりDコースを選ぶと思ってました」

「私も。だけど、カズヨシのことだからみんなに合わせたのかもしれないね」

 

そんな会話を五つ子がしていると、風太郎、前田、武田の三人がこちらに来ているのに気付いた。そこには和義の姿がない。

 

「ちょっと、上杉。三人だけ?」

「あ…ああ…」

「?上杉君?」

「カズヨシは一緒じゃないの?」

「和義は……」

 

風太郎はどう説明すればいいか分からず言葉に詰まった。

 

「上杉さん?」

「フータロー君。何かあったんだね?」

 

持っていた携帯を握りしめながら、一花が風太郎に尋ねた。

 

「すまん。一花から気を付けるように言われてたのに…」

「はぁ…直江君はここにはいない」

 

風太郎にはこれ以上言えないと察した武田が発言した。

 

「は?いないってどういうことよ?」

「どうもこうも、言葉の通りだ。このホテルに彼はもういない」

「え…」

 

二乃の問いに冷静に武田は答えた。しかし、彼の胸中も穏やかではない。

そんな彼の言葉の意味が分からず、言葉が漏れた三玖を始め、姉妹全員固まってしまった。

 

「な…何言ってんのよ。だって…」

「くそっ!俺たちだって訳わかんねぇよ!今朝起きたらあいつのベッドがもぬけの殻で、荷物だってなくなってたんだ」

「落ち着きたまえ、前田君。皆が怯えている」

「すまん…」

 

二乃の言葉を遮るように前田が吠えるが、それを武田が抑えた。前田の吠えるような声に三玖と四葉がお互いの両手を握り震えていたからだ。

そんな武田は、いまだに下を向き何も喋ろうとしない風太郎をチラッと見た後に言葉を続けた。

 

「ここで議論するにももう時間がないようだね」

「Eコースの皆さん!もうすぐ出発するので集合してくださーい」

 

武田の言葉に続いて先生のそんな言葉が辺りに響いた。

 

「僕達に迫られた選択肢は二つある」

 

Vサインにした手を前に出しながら武田は言葉を続ける。

 

「一つはこのまま直江君なしで映画村に向かい修学旅行を楽しむ」

「そんなのはっ…」

「まあ落ち着きたまえ。二つあると言っただろ?」

 

武田の提案に二乃が反発しようとしたが、それを抑えて武田は続けた。

 

「そしてもう一つ。これは賭けでもあり覚悟もいる。それは……この選択コースに参加せず直江君を探しに行くことだ」

「「「「「「「!」」」」」」」

 

武田の言葉に全員が目を見開いた。

そして、先程まで下を向いていた風太郎も顔を上げる。

 

「面白ぇじゃねえか!」

 

前田が自分の掌に拳をぶつけてニヤリと笑っている。

 

「あんた、真面目で胡散臭い奴だと思ってたけど、中々面白いこと言うじゃない」

「ふっ…お目に叶って何よりだよ。だが、先程も言ったが第二の選択は賭けと覚悟がいるかなりハイリスクなものだ」

「たしかに。普通に考えれば選択コースを抜け出すことを先生方が許すとは思えません。それに勝手に抜け出せば後で何を言われるか…」

 

五月の言葉に沈黙が流れる。

 

「賭けって言ったよね?何か策があるの?」

 

そこで三玖が武田に問いかけた。

 

「ああ。本当に賭けと言っても過言ではないがね。それで?先程五月さんが言った通り、もしかしたら先生の大目玉を食らうかもしれない。最悪停学だ。それでも皆は覚悟あるのかい?」

 

中野姉妹と前田はすぐに頷いた。

 

「もちろんよ。和義がいない修学旅行なんてナンセンスね」

「うん…!」

「周りの人たちは私たちの行動を不良と言うかもしれません。ですが…」

「うん!この学校に来て私たちはずっと直江さんに支えられてきた。今度は私たちの番だよ!」

「ちくしょー!燃えてきたぜ!」

「フータロー君…」

 

全員が盛り上がっている中、一言も喋っていなかった風太郎に全員の視線が集まった。

 

「ふん。まったくお前らときたら……最高だ!俺は、和義のヤツに一言文句を言ってやらないと気が済まないんだよ。武田こそ良いのかよ?親父さんが泣くぜ?」

「ちょっとした反抗期さ」

「言ってくれるぜ」

 

風太郎の言葉に全員が笑顔を向けている。

 

「それで?賭けってなんなのよ?」

「直接先生に言っても普通に反対されるだろう。だから第三者を立てる」

「なるほどな」

 

武田の言葉にすぐ風太郎は理解した。

 

「ん?上杉さん、どういうことですか?」

「いるだろ。このホテルに常識に縛られない人が!」

 

------------------------------------------------

その頃。零奈と綾は駐車場に停めているレンタカーに向かっていた。

 

「それで?目的地は映画村でいいんだよね?」

「ええ。あの子達が教えてくれましたので」

「へぇー。相変わらず仲が良い母娘(おやこ)ね。羨ましいわ」

「私達も比較的仲が良いと思いますよ。貴女もちゃんと母親をしています」

「あら、零奈(れな)先生のお墨付きが付くなんて光栄だわ」

「そのようにすぐ調子に乗らなければ、兄さんももっと構ってるはずですよ」

「ぶぅー、ぶぅー」

「そういうところです…」

 

ブブブ…ブブブ…

 

「ごめん。電話みたい……はいはい、どうしたの二乃ちゃん」

 

(二乃?二乃がなぜ綾さんに…)

 

綾の携帯に連絡をしてきたのは二乃。零奈にはそれが不思議でならなかった。

 

「ふん……ふんふん……なるほどねぇ……もうお義母様だなんて…」

 

(何の話をしてるのですか!)

 

綾の言葉からお義母様という単語が出てきて、零奈は内容が気になって仕方がなかった。

 

「大丈夫よ。娘の頼みだもん、まっかせて!すぐにそっちに行くから待ってて」

 

綾はそこで電話を切った。

 

「何だったのですか、今の電話は!?というよりも、二乃は貴女の娘ではないですよ!」

「ごめん。ちょっと急ぐから付いてきて」

「綾さん?」

 

急に真面目モードになった綾は車には乗らず、零奈の手を引いて電話をしながら歩き始めた。

 

「ちょっ…何があったんですか!?」

「もしもし…ご無沙汰してます、直江綾です。先日はどうも。今お時間良いですか、武田理事長?」

 

(武田理事長…!?)

 

零奈はますます混乱するしかなかった。

 

------------------------------------------------

二乃が綾に電話をした後、しばらく経つと出発の時間になってしまった。

 

「あなた達!出発するから早く乗りなさい!」

 

Eコースを担当する先生からバスに乗るように、中野姉妹と風太郎、前田、武田は急かされていた。

そんな時だ。

 

「ごめんなさーい!この子達は今日私が預かることになったので…」

「「「「「「綾さん!」」」」」」

 

ナイスタイミングと言わんばかりに綾がいつもの調子で登場したのだ。

 

「な、何を言ってるのですか!修学旅行は遊びではないんですよ!」

「許可なら取ってますよ。どうぞ…」

 

そう言いながら綾は自分の携帯を差し出した。

 

「?もしもし…り、理事長!はい…はい…」

 

携帯を渡された先生は頭を下げながら応対をしている。

 

「理事長って…マジかよ!」

「正直僕もここまでとは思わなかったよ」

 

まだ綾の行動力に慣れていない前田と武田はただただ驚きを隠せなかった。

そこで綾は顔だけを中野姉妹達の方にに向けウインクをするのだった。

 

「失礼いたします……えー…理事長より中野さん五人と上杉君、前田君、武田君は今をもって修学旅行終了の指示がありました。直江さんの言うことを聞いて、無事に家に帰るように。以上。直江さん、後はお願いします」

「分かりました」

 

綾の返事を聞いた先生はバスに乗り込み、そのバスはそのまま出発してしまった。

 

「さーてと。どう二乃ちゃん?こんな感じで良かったかな?」

「バッチリです。さすがです!」

「本当に!?もう私の子供達ってひねくれてるからあんまり誉めてくれなくって。こんなに誉められるのは新鮮で嬉しいなぁ」

 

二乃と綾はお互いに両手を握ってキャッキャ騒ぎだした。そこで、二乃は綾にだけ聞こえるように『ありがとうございますお義母様』と言うので、綾は更にテンションが上がるのだった。

 

「ひねくれていてすみませんね。それで?状況を説明してもらいましょうか?」

「そうでした!実は……」

 

そこで五月が自分の知る限りの事を零奈と綾に伝える。

すると。

 

「あの人はぁー!何を考えているのですか!誰にも相談なくこんな事をしでかしてぇー!」

「レ、レイナちゃんどうどう…」

 

珍しく感情剥き出しになった零奈を一花が宥める。

 

「そういえば、直江さんってどうやって修学旅行を抜け出せたんでしょうね?」

「ふむ…僕達が三条先生から聞いた情報によるとだね。君達は知っているかも知れないが、彼は最近飛び級入学の話があったようでね」

「うん。知ってる」

「なら、話は早いね。その話はなかったことになったんだが…」

「ああ、あれでしょ?たしか前にカズヨシ君が言ってたんだけど、論文とかなんとかで相手の大学から意見を求められてるって」

「それも知っていたのか…そう、その論文の話を出して抜け出したみたいだよ。相手の大学から連絡がきて急いで始めなければならない、とね。学校側からすれば、学校の落ち度でこんな事になったわけだしね。彼の言うことを聞かなければならないのさ」

「さすが和義ね」

「あいつは、昔からこういうのに良く頭が回るからな」

 

武田の説明に二乃が関心し、風太郎が呆れたように意見を言った。

 

「だとしても、恐らくその論文が抜け出した原因ではないのは明らかですね」

「だね!それなら私たちに直江さんは言ってくれるはずです。ごめん抜けることになった、と」

「ということは、抜け出した理由が他にある…」

「それも私たち。いえ、上杉やレイナちゃん、綾さんにも相談できないような内容ってことよね」

「言ってて悲しいが、付き合いの短い俺らならまだ分かる。けどよ、上杉や家族に言わずにってのは相当だぞ」

 

うーん、と全員が考え込んだときだ。

 

「あ、あのね…実はカズヨシ君、昨日から少し様子がおかしかったんだ」

 

一花がそう切り出した。

 

「様子がおかしかったって、私たちと別れた後から?」

「ううん。私が感じだしたのは清水の舞台にいたときからだよ」

「そんな前から…全然気付かなかった…」

 

一花の言葉に三玖は驚きを隠せなかった。

 

「私は、ほら。女優って仕事で色んな人と交流してきたから、そういうのに敏感っていうか。でもほんと、あれ?て思うくらいだったから」

「なるほど。兄さんは分かりやすい時は凄い分かりやすいですが、自分の感情を本当に知られたくない時は内に秘めますからね」

「そういえば、私が直江さんに相談してたときも、見たことないような怖い顔して考え込んでたかも…」

「四葉!それはいつで、どんな相談だったのですか?」

 

四葉の言葉に五月が詰めよった。

 

「えー!?私が相談したのは、旅行初日の夜のミーティングの後だよ。内容は…ここではちょっと言えないかなぁ…」

「四葉そこをなんとか!その内容が重要かも知れないんです!」

「無理無理無理無理!ここじゃ言えないよぅ~」

「五月ちゃん落ち着いて。多分私は分かるけど、ここじゃ言えないかな…そうだ!ごめん、女子だけ集合。男子はそこで待機」

「は?」「へ?」「おや」

 

風太郎と前田、武田を置いて、少し離れた所で円陣を組むように女子達が固まった。もちろん、零奈と綾も含んでる。

 

「昨日、姉妹のみんなとお母さんには話したけど、四葉が六年前にフータロー君に会ってたの。で、それを昨日フータロー君に伝えたのね」

「ええ聞いたわね。そこで更に告白したんでしょ?四葉もやるわよねぇ。カズ君には及ばないけど、あいつもいい奴って思えるわ」

「はぅ~~…」

「あら、そんなことがあったのね。残念だけど確かに風太郎君もいい男だと思うわ」

「で、その後押しをしたのがカズヨシ君なの」

「そ、そうだったんだ…」

「な、なるほど。たしかにこの話はあの三人の前では出来ませんね」

「しかし、相談事が四葉の恋愛相談であれば、なぜ和義さんはそこで四葉が怖いと思うほどの顔で考え込んでたいたのでしょうか…」

 

(うーん、これは私の想像通りの内容かなぁ)

 

姉妹と零奈はまだ分かっていないようだが、綾はすぐに理解した。

 

「四葉。その…言いにくかったら言わなくてもいいのですが、どのような話をした時に和義君は悩みだしたのでしょうか?」

「え?えっと…たしか、私が上杉さんに六年前の事を話すのを躊躇してたけど、私自身が話したいのか話したくないのか聞かれたんだよね。それで、自分はどうなんだろうって、目を瞑って悩んで、ふと目を開けるとそんな状態だった」

 

(四葉が風太郎さんの事を悩んでる時に…)

(待って…たしか私が違和感を感じた時、私どうしてた…?)

 

四葉の言葉を聞き終わった後、一花と零奈がそれぞれの考えに没頭した。

 

「一花…?」

「お母さん。どうしたのですか?」

 

そんな二人の事が気になった三玖と五月が声をかけるも二人に反応がない。

綾はそんな二人の姿を静かに見守っていた。

 

(四葉が風太郎さんの事で悩んでいる。つまり恋愛について。それを四葉は目を瞑って悩む。つまり真剣に…)

(たしかあの時、四葉がフータロー君にツーショットをお願いして、それを五月ちゃんが察して撮ろうとしてたんだっけ。で、それを見て無意識にカズヨシ君の服を引っ張ったんだ。そして、カズヨシ君はそのままでいいみたいな事を言った後、たしか、それだけ強い想いがあることが羨ましいって…)

 

「「まさかっ…!」」

 

一花と零奈が同時に考えが纏まったのか声を出した。

 

「何々?なんなのよ!」

「二人とも何か分かったの?当事者の私では全然分かんないのに…」

「分かったなら聞かせて…」

「そうです!もう、私には何がなんだかさっぱりです」

 

一花と零奈。お互いに考えが纏まった事でお互いを見て姉妹を見渡した。

だが、果たしてこの事を言っても良いのか、とも思ってしまった。

 

「な、何よ?」

 

本人達は悪いことをしているわけではない。

 

「どうしたの…?」

 

だがこの事を知れば自分のせいだと、自分を責めるのではないかと。

 

「?どうしたのですか?」

 

彼への想いが強ければ強いほどに。

かく言う一花と零奈も、今胸が張り裂けそうな気持ちでいるのだ。

自分たちが彼の優しさに甘えてしまい、壊してしまったのではないかと。

 

「ちょっ、お母さんに一花どうしたの!?」

「「え…?」」

「…泣いてる…」

 

四葉の驚きの声に何の事を言っているのか分からなかったが、三玖の指摘があり、二人はそこで自分たちが泣いていることに気付いた。

 

「はぁぁぁ…もう見てられないわね。一花ちゃんはともかく、零奈(れな)さんしっかりしなさい!貴女がそれでどうするの!」

「あ、綾さん。急にどうしたのですか?それにお母さんの事を…」

「ごめん、五月ちゃん黙ってて」

「はいっ!」

 

いつもと違う綾の雰囲気に驚きを隠せないでいる姉妹達。だが、綾は気にせず続けた。

 

零奈(れな)さん。貴女はこうなることを分かってて自分の気持ちを伝えたのでしょ」

「…っ!」

「それとも何?和義なら大丈夫、全て和義が何とかしてくれるって思ってた?」

違う…

「そして何よりも……貴女の想いはその程度だったの?」

「違う!そんな訳ありません!」

「だよね♪」

 

零奈の言葉に満足した綾はいつもの調子に戻って、零奈の頭を撫でながら笑っている。

そして、五つ子達を見渡しながら話しだした。

 

「ごめんねみんな。今から私はちょっとキツい事を言うかもしれない…」

「「「「え…?」」」」

「ひっく…」

 

泣いている一花以外の姉妹は訳が分からず綾の言葉を待つ。

 

「今回の和義の事。貴女達のせいであってせいでもない」

「え…私たち…?」

「うん。和義も限界が来ちゃったんだろうね」

「ちょっと待って。私たちのせいで限界が来たって…」

「……多分、みんなの強い想いに対してキャパオーバーしちゃったんだろうね。我ながら情けない息子だよぉ」

 

笑いながら綾は話しているが誰も笑っていない。

 

「はぁぁ…自分の事をこんなにも想ってくれてるのであれば応えなきゃいけないって考えて、多分今までずっと答えを探してたんだと思う。そうやって探しながらも、まっすぐに自分の気持ちと向き合っていく貴女達。どんな時でも強い心を持つ貴女達。それをずっと近くで見ていてこう感じたんだろうね。彼女達の想いは凄い、それに比べて自分はどうだ?好きっていう気持ちが分からないと逃げてるだけじゃないか、てね」

「そ、そんな事…」

「うん。五月ちゃんの思ってる通り。これは和義のただの自己満足だよね」

「いえ、そこまでは思ってませんが…」

「ふふっ…そんな訳であの子は多分一人で考えたかったんじゃないかな、これからの事を…」

「じゃあ、私たちの今までの行動が…」

「カズヨシの心を追い詰めてた…」

「それなのに自分の事で相談なんかしちゃってたんだ私…」

「彼の優しさに甘えてしまってたのですね…」

 

綾の言葉を聞き、自分を責め始めた姉妹達。

 

「それで?どうするの?」

「「「「「え?」」」」」

「まあ、四葉ちゃんはもう風太郎君に告白してる訳だけど…和義の事、諦める?」

「「「「「…っ!」」」」」

「うんうん。諦めることも、和義に対する優しさだと思うよ。好きだからこそ諦める。美徳だね」

「綾さん…貴女という人は…」

 

五つ子を煽る綾を、すでに立ち直っている零奈が呆れて見ている。

 

「諦める?そんな事あり得ないわ!」

「うん…!弱さを見せてくれたおかげで惚れなおした…!俄然やる気出てきた」

「あら、部屋で丸くなって泣いて諦めて良かったのに」

「二乃こそ…」

 

すぐに反応したのは二乃と三玖である。それぞれの言葉を聞いて、いつものようにバチバチしている。

 

「あはは…相変わらずの二人だね…でも…」

「うん!私は上杉さんの事を好きですが、同じくらい直江さんの事好きですから放っとけません!」

「おやおや。四葉も言うようになったもんだ。なら、ここでお姉さんやる気出さないとね。まだ負ける気はないもんね」

 

四葉と一花はお互いを見合って笑っている。

 

「……」

「五月…」

「ごめんなさいお母さん…」

「え?」

「将来お母さんは私の事を姉さんと呼ぶことになるかもしれません」

 

ニコッと笑いながら五月が言う。

 

(和義君は私にとって唯一甘えられる場所になってくれた。なら今度は私があなたにとって唯一の場所になってあげる!)

 

「五月も言うようになりましたね」

「何しろお母さんの娘ですから!」

 

こめかみをピクピクさせている零奈に対して、満面の笑みで五月は返すのだった。

 

「話は決まったわね。私は皆が乗れる車を改めてレンタルしてくるから、皆は荷物を纏めてホテルの前で待ってて。そうだ、四葉ちゃん。悪いんだけど私達の荷物も一緒に持ってきてくれる?男手は借りていいから」

「分かりました!」

「で、一花ちゃんは私達のチェックアウトをお願い。分からないことは零奈ちゃんに聞いてね」

「分かりました」

 

そこでそれぞれが動き出した。

 

荷物の纏めと零奈に頼まれたチェックアウトが終わり、一花・二乃・三玖・四葉・五月・零奈・風太郎・前田・武田がホテルの前で待っていると、綾が乗った車が目の前で停まった。

 

「お待たせ!さあ、乗って」

「お世話になります」

 

綾の勧めで風太郎を筆頭にどんどん乗っていく。

 

「さあ、出発するわよ!」

「出発するのはいいですが当てはあるのですか?」

「たしかに京都と言っても広いですからね。そもそも京都にまだいるのでしょうか?」

 

運転席の後ろの席に座ってる零奈と五月が当然のごとく綾に聞いてきた。

 

「当てならあるわよ。今は嵐山の竹林にいるみたいね。ほら」

 

そう言いながら自分の携帯を綾は二人に見せた。

 

「これって…」

「母さん?これはどういうことでしょうか?」

 

綾が見せた携帯には、

 

『母さんには面倒かけるね。今は嵐山にいるんだけど、竹林が凄い景色だよ』

 

写真の添付と一緒にそう書かれていたのだ。

 

「なぜ黙っていたのですか?」

「だって和義に頼まれたんだもん。黙ってるようにって」

 

零奈に聞かれた綾はそう言いながら運転を開始する。

 

「貴女達の気持ちを聞いたら話そうとは、最初から思ってたんだけどねぇ~。もちろん、何もアクションがなければそのまま話さないつもりでもいたわよ」

「まったく、母さんときたら…」

「さぁー出発よ!」

 

そして一同は和義捜索に向かうのだった。

 

------------------------------------------------

そんな事が起きていることを知らない僕の身に今、とんでもないことが起きていた。

 

「先輩…いいえ、直江和義さん。(わたくし)、諏訪桜とお付き合いしていただけませんか?(わたくし)は貴方の事をお慕い申し上げております」

「桜…?」

 

僕は京都のある一室で、桜から告白をされたのだった。

 

 




今回は主人公がほぼ出ないというスタイルで書かせていただきました。
こういうのちょっと新鮮ですね。

さて、今回のような出来事は現実ではほぼないことかと思います。修学旅行を途中で抜け出すなんて…しかし、それも燃えるような展開で良いのではと思ってしまいました。
また、今回は綾の二面性を出せれたのも自分の中では良かったのではとも思います。

さあ、最後に桜が出てきましたね。ここまでほとんど沈黙していた彼女が動きだしました。
果たして、彼女が和義に告白をした経緯は?そもそもなぜ彼女が京都にいる?綾や零奈みたいな行動力?
次回はその辺りを書ければと思っています。

ではでは、また次回も読んでいただければ幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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