五等分の奇跡   作:吉月和玖

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81.頭を過るもの

修学旅行三日目の早朝。

荷物を纏めた僕はホテルの前まで出て、振り返った。

多分まだ誰も起きていないだろう。

そして僕はそこでホテルに向かって頭を下げた。

 

さて、これからどうしたものか。折角だから京都を回ってみるか。どちらにしろこの荷物が邪魔か。まずは京都駅だな。

はぁぁ…二乃に零奈あたりが怒りそうだな。

そんな考えが頭を過らせながら京都駅に向かうのだった。

 

これでよし。

とりあえず母さんにだけは所在を教えとかないと、母さんっていざ怒ると怖いんだよね。いつもとギャップがあるからだろうか。

適当な店に入って朝食を食べる事にした。その時に、修学旅行を抜け出したこととちょこちょこ連絡するから心配しないように、という内容を母さんにメッセージを送っといたのだ。

お!

 

『了解』

 

母さんからそんな短いメッセージが送られてきた。

抜け出した理由は軽くしか書いてなかったけど、多分察したんだろうな。本当に敵わないよ。

そんな風に考えているとまた着信が入る。

一花?今朝はやけに連絡してくるな。でもごめんね。今は考える時間が欲しいんだ。

メッセージの内容も確認せずにスルーをすることにした。

 

・・・・・

 

「おー!ここが二条城かぁ。何気に来るのは初めてだからワクワクするなぁ」

 

始めに来たのは二条城。やっぱり京都に来たらここは外せないよねぇ。本当は伏見城とかも行きたかったが、距離が離れてるからなぁ…ここは量より質で行こう。

てなわけで、今日は一人ってこともあったのでじっくり見て回ることにした。幸い時間はあるしね。

 

で、結局一時間ほど時間が経ったところで見て回るのをやめた。

いつもであればここだけで半日以上は使えるのになぁ。

今日は何かが足りないと思ってしまったのが原因である。

 

「この間、三玖と零奈とお城に行った時は充実してたんだけど…」

 

『カズヨシ…!ほら見て見て!あの石垣はね……あ、写真撮っとかないと!』

 

はぁぁ…とりあえずお土産見てから別の場所行くか…

頭を掻きながら行動に移すことにした。

 

・・・・・

 

「へぇー…ネットとかで見たけど、やっぱり実物は壮観だなぁ」

 

次に来たのは嵐山近くにある竹林だ。

二条城から電車で四駅だったのと、前からちょっと興味あったのとでこの場所を選んだ。

途中映画村を通り過ぎたが、こっちは電車の中だから問題ないだろう。

あいつら楽しんでるかなぁ…て、途中抜け出した僕が心配する資格ないか。

そんな考えをしながら風景を携帯に収めていく。

 

『やっぱ映えるわぁ~。ねぇねぇカズ君!ここをバックにツーショット撮りましょうよ!』

 

そこで携帯で写真を撮るために上げていた腕を下ろした。

何やってるんだろ僕は。

母さんには嵐山にいることをメッセージして、また次の場所を目指した。

 

・・・・・

 

特に行きたいという場所が思い浮かばす適当に歩いていると、情緒溢れる街並みが目の前に広がっていた。

 

「さすが古都京都。街並みだけでも良い景色だ」

 

ストリートの両脇にはお店も並んでいる。

観光名所の近くだけあって、雑貨にお菓子などの食べ物系が多く取り扱っているようだ。

そこで一つの雑貨屋さんで足を止めた。

へぇ~、結構種類があるんだな。

 

『どれも可愛いなぁ。あ、ねぇカズヨシ君。これとこれどっちがお姉さんに似合うかな?』

 

「くっ…」

 

次に見たのは西陣織のお店。

さすが有名な反物。お値段は結構するなぁ。あ、でもこの辺とか割とリーズナブルかも。

スカーフやネクタイ、バンダナにリボンまである。

 

『おー!いつも使ってるのより高級感ありますね!んー…でも私なんかに似合いますかね…どう思います直江さん?』

 

ボーッと見ていたからかお店の人に心配そうに声をかけられてしまった。

 

・・・・・

 

「うまっ…」

 

お昼になったので湯豆腐専門店に来ていた。

京都の豆腐は良質な水と良い大豆を使ってるから美味しいんだっけ?何かネットで読んだことあるような…

そんな考えと、出された料理にどんな調味料が使われてるのか一つ一つ吟味していた。

京都の料理って薄味なイメージだから、素材の味を生かして調味料使ってるのかも…

 

『ふわぁー…美味しいです!やっぱり和義君の料理はどれも美味しいですね!おかわりお願いします!』

 

カチャ…カチャ…

 

一人のご飯ってこんな感じだったか…

一緒に食べる人がいないから当然ではあるが、何も喋らず食べていると周りの楽しそうな話し声が、更に自分が今独りだということを感じさせられてしまった。

 

昼御飯も終わり、さてこれから何しようかと考えていると財布の中身がヤバい事に気づいた。

ちょっと色々と買いすぎたかもな…

 

『だから言ったじゃないですか。まったく、いつも無駄遣いが多いんですよ兄さんは』

 

今回は必要経費ってことで勘弁してほしいな…

ここまで色々見て回ったけど、その都度彼女達の言葉が聞こえてくるように感じた。

やっぱり僕にとって彼女達は…

 

「先輩?」

 

そんな風に一人しんみりしてると、不意に後ろから声をかけられた。

声の方に振り返ると和装の桜が佇んでいる。

 

「え…桜?」

 

僕が気付いたことで桜はこちらに近づいてくる。

 

「やっぱり先輩でした。こんなところでお会いできるなんて思いもよりませんでした」

 

ニッコリと笑顔を見せる桜。

 

「僕こそだよ。だって桜学校は?」

「以前、華道を習っているとお話ししたことを覚えていますか?」

「ああ。綺麗な姿勢を褒めた時だよね」

「はい!覚えてくださっていて嬉しいです。それで、その華道なのですが、(わたくし)の祖母に教えていただいておりまして、本日はその祖母の展覧会に参列するために、ここ京都まで来ております」

「そうだったのか」

「本来、学生である(わたくし)であれば学業が本職。ですが、今回の展覧会では(わたくし)の作品も展示していただける名誉を頂きましたので、学校を欠席致しました」

「え!?それって凄い事じゃないか。おめでとう!」

「ありがとうございます。先輩の祝辞はどの祝辞よりも嬉しく思います」

「まったく…いつも大袈裟なんだよ」

「そんな事はありません…その……一つ我が儘が許されるのであれば、いつものように頭を撫でて頂けないかと…」

「へ?」

 

桜から意外な言葉が出たので驚いてしまった。

 

「別に構わないけど。その…しっかりと髪をセットしてあるから、撫でてあげると崩しそうで。まだその格好でいなきゃなんでしょ?」

「う~…」

 

そんな上目遣いで見られても。こういうところはまだまだ幼さを感じるな。

諦めて、なるべくセットを崩さないようにゆっくりと撫でてあげた。

 

「あっ…」

「改めて、おめでとう桜」

「……ありが、とう、ございます…」

 

そっちが照れると、こっちまで照れてくるから勘弁してほしい。

その後、展覧会会場に戻らなければならない桜を送るため、会場まで一緒に歩くことにした。

 

「そういえば、先輩はお一人なのですか?上杉先輩や中野先輩方がお見えになりませんが」

「あー…ちょっと訳ありでね。今日は一人なんだよ」

「そうなのですね。でしたら、もしお時間があれば展覧会にいらっしゃってください」

「え?でも、そういうのって招待客とかじゃないと入れないんじゃない?」

「そうですね。祖母の展覧会は招待がないと入ることはできません。しかし、(わたくし)から祖母に頼んでみますので。きっと祖母も許可してくれるはずです」

「桜がそこまで言うのなら…」

「決まりですね」

 

僕の答えに満足する桜。

正直なところ、これからどうしようと思ってたから桜からの申し出は助かった。

だけど、困ったことがある。僕には華道の心得がないので、花を見て違いが分かるのかという不安があるのだ。

軽く話ながら歩いていると会場に到着した。

凄いお屋敷だなぁ。学生服の僕なんかが入って大丈夫なのだろうか。

 

「さあ、どうぞお入りください」

「あ、ああ」

 

桜の後ろを付いていく。受付で桜が何やら話しており、受付の人がこちらを見たときは軽く会釈をした。

こういうところのマナーとか全然分からないんだけど…

とりあえずいつも以上に姿勢正しくいることにするのだった。

桜がお祖母さんを呼んだそうなので、その場に待機することになる。しばらくすると、

 

「おかえりなさい、桜」

 

威厳溢れる女性が、数人女性を引き連れ桜に声をかけながらこちらに近づいてくる。

 

「ただいま戻りました、お婆様」

 

桜がお辞儀をしながら挨拶をしたので、急いで僕も頭を下げた。

 

「それで?そちらが…」

「はい。(わたくし)に勉学を教授していただいております。直江和義先生です」

「な、直江和義と申します。よろしくお願いいたします」

 

桜からの紹介があったので、自分からも自己紹介をして再度頭を下げた。

 

「先生…どう見ても学生にしか見えませんが…しかし、直江和義…どこかで聞いたような…」

 

ですよねぇ。学生にしか見えないって?そりゃ学生ですからね。服も学生服だし。

てか、僕は貴女のような人会ったことないですよ。ないよね?

笑顔を崩さないようにしながらも、冷や汗がどんどん出てきそうだ。

 

「たしかにこの方は(わたくし)と同じ学校に通う学生です。年も二つしか変わりません。しかし、この方の教えは本当に素晴らしいものなのです」

「あら、桜がそこまで絶賛するなんて珍しいですね」

「はい。それにこの方は先日行われました全国統一模試を満点で全国一位に輝きました」

「全国一位!」

「それよりも満点など…」

 

桜の言葉にお祖母さんの周りが騒ぎだしたが、お祖母さんが手を上げることで静まった。

すごっ!

 

「ふむ…貴方、最近論文を書いたことは?」

「え?論文ですか…」

「お婆様。高校生で論文提出など…」

「私は彼に聞いているのです」

「っ…!」

 

静かな言葉ではあるが威圧感がハンパないな。

 

「論文でしたら、2月末にアメリカの大学に提出しました。一時期飛び級入学の話がありましたのでその時に。今では多くの方に、恐れ多くも見ていただけております」

「せ、先輩!?」

「やはりそうでしたか…」

 

教えるほどでもなかったので、言ってなかった桜は心底驚いていたが、お祖母さんはいたって冷静だった。

 

「噂で聞きました。貴方、向こうからの歓迎があったにも関わらず、飛び級入学を蹴ったそうですね」

 

その言葉にまた周りが騒ぎ始める。

てか、この人の情報網凄いな。

 

「よくご存知で…」

「先輩…貴方は一体…」

「ふふっ…良いでしょう。今日はゆっくりしていきなさい」

 

その言葉を残してお祖母さんは周りの人を引き連れて去っていった。

 

「な、なんとかお祖母さんのお眼鏡に叶ったかな?」

「叶ったなんてものではありません。最後笑ってましたし、相当気に入られたと思いますよ」

「そっか…まあいいや。入場の許可が貰えた訳だし、とりあえず案内よろしく」

「先輩は時々大物なのか分からない時がありますね」

 

桜のそんな言葉が出たが、会場を案内してくれることになった。

会場は庭を中心にしているようで、建物の中はごく僅か。庭から見えるように花が設置されていた。

 

「凄いな。生け花もそうなんだけど、この庭もお祖母さんが?」

「はい。今回の展覧会のために設計されてます」

「へぇー…」

 

庭の設計までするなんてどんだけ凄いんだ。

てか、さっきからやたら視線を感じるな。まぁ、こんなところに学生服を着て来る人なんていないしね。それに…

チラッと隣の桜を見た。

桜は主催者の孫だし、その孫と一緒にいるアイツはなんなんだ、て感じか。しかし、桜ってやっぱり着物似合うんだね。絵になるってこういう事を言うのかも。

その後も色々と説明しながらも案内してくれた。その時に気になったことはメモを取るようにしている。

 

「先輩。先ほどから気にはなっていたのですが、その万年筆…」

「ああ。この間桜から誕生日に貰ったものだよ。使いやすくって、こういうメモを取ったりとかする時に使わせて貰ってるんだ」

「そうですか。気に入って頂けたようで良かったです」

 

僕の言葉に嬉しそうな顔で桜は話してくれている。

 

「先輩は、どれか気に入られた作品はありましたか?」

「え?えーっと…」

 

正直なところどれも同じに見えてしまっている。

とはいえ選ばなきゃだよね。

そう思っていると一つの作品に目が止まり、それを指差した。

 

「あれかな…」

「えっ…」

「正直に言うと、僕にはまだ良し悪しが分かんなくてさ。ただ、あの作品は何て言うか僕の中では良いなって思ったんだよ。一目惚れかな……て、桜?」

 

反応がないようなので桜の方を見ると俯いてしまっている。若干震えているような。

 

(わたくし)の作品です

「え?」

「っ…ですから、あれはこの会場の中で唯一の(わたくし)の作品です」

 

顔を上げて桜は言うが、顔が真っ赤である。

 

「あ、そうだったんだ。す、凄いよ。うん」

「先輩は(わたくし)の心を乱すのが好きなのですか?」

「えっ!?そんな事ないけど…なんかごめん」

「謝らないでください。(わたくし)には嬉しい事ですので」

「そっか…喜んでくれてるのなら何よりだよ」

「ふふっ…少し休みませんか?お茶用意しますね」

 

そこでお茶を用意してくれた部屋に案内してくれた。

 

「ふぅぅ…落ち着くぅ」

「ふふっ…先輩は注目の的でしたからね。皆さん、花よりも先輩を見てたんじゃないですか?」

「やっぱり…針のむしろだったよ。正直この休憩は助かるかな。ありがとね」

「いえ。先輩のお役に立てたのなら何よりです………あの、一つ聞いても良いですか?」

「ん?何?」

「本日お一人だったのは……あ、無理に話していただかなくても大丈夫です」

 

やっぱり気になっちゃうよね。

お茶を一口飲み僕は話しだした。

 

「逃げてきた」

「逃げ…え、何からですか?上杉先輩と喧嘩でもされたのですか?」

「ははは、違うよ。う~ん、何て言ったら良いんだろう……桜はさ、好きな人いる?」

「へ!?」

 

突拍子もないことを言ったからか、珍しく桜が驚いた声をあげた。

 

「え…えっと…お慕いしている方はいます…」

「そっか。凄いね……ここからちょっと重い話になるかもだけどいいかな?」

 

コクンと桜が頷いたので、話を続けることにした。

 

「こう見えて僕って結構モテるんだよ。今までも何度か告白もされてきたんだ」

「先輩は(わたくし)達の学年でもすでに有名人ですよ。なので、先輩と入学式に話していた(わたくし)にどういう関係なのか聞いてくる人もいるくらいです」

「それは…迷惑をかけて申し訳ない…」

 

そこで頭を下げてお詫びをした。

 

「別に問題はありません」

「ありがと。で、告白してくる娘は殆どが喋ったことすらない娘でさぁ。ほら、僕っていつも風太郎と一緒にいるから。当時の僕はその告白というものが、ただただ恐怖でしかなかったんだ。え?僕の何を見て好きって言ってるの、て」

「何となく先輩の仰りたいことが分かるように感じます。(わたくし)にも経験がありますから」

「桜、モテそうだもんね」

「あまり嬉しくはありませんが…」

「だよね…そんな訳で、僕には恋ってものが分かんなくなっちゃったんだよね…そんな時だよ。こんな僕に対して真剣にまっすぐ想いをぶつけてくる娘が現れたんだ…」

「……もしかして、それは中野先輩達ではないですか?」

「うん…そう…分かっちゃう?」

「分かりますよ。入学式の時の警戒心、凄かったですから」

「あの時はとんだご迷惑を…」

 

ふふふ、と桜は笑っているので気にしてはいないようだ。

 

「では、先ほど先輩が仰ってた逃げてきたというのは…中野先輩達からということでしょうか」

「そう…情けない話、彼女達の気持ちに応えられるのか自信がなくなっちゃって。僕は彼女達と向き合えられるのかってね…」

「そう…だったのですね…」

「ま、そんな訳で今日は一人で過ごしてるんだよ。考える時間も欲しかったしね」

 

そこで一息つくためにお茶を飲んだ。あぁ~落ち着くぅ。

 

「...っ。先輩はこのまま中野さん達のどなたかとお付き合いしたいと思っているのですか?それ以外の誰かと、とは考えていらっしゃらないのでしょうか...」

「え...?」

 

そんな問いかけがあったので桜の方を見ると、下を向き僅かに体を震わせている姿があった。

えっと...五つ子以外って言うと、零奈も考えられるけど桜はその事を知らない訳だから...

 

「先輩...いいえ、直江和義さん。(わたくし)、諏訪桜とお付き合いしていただけませんか?(わたくし)は貴方の事をお慕い申し上げております」

「桜...?」

 

何を言っているんだ。

 

「中野さん達でお困りであれば、他の方とお付き合いするのも一つの手かと」

「本気で言ってるの、桜?」

 

まっすぐと桜を見ながら確認すると、桜もまた僕をまっすぐと見てコクンと頷いた。

 

「私は本気で和義さんの事をお慕いしております。こんな気持ちは初めてなんです。貴方の側に置いていただきたい。そして、貴方の事を支えていきたいと考えています」

「桜...」

 

桜が本気だって事は顔を見れば分かる。

なら僕はどうする?このまま桜を受け入れるのか...

 

そんな時だ。不意にあの娘達の顔が頭を過った。

一花...二乃...三玖...四葉...五月...零奈...

みんなが屈託ない笑顔を向けているところを。

 

「......ごめん...」

「え...」

「桜の申し出はとても嬉しいよ。けど...ごめん。桜とは付き合えない」

「なぜ...」

「ここで桜と付き合った方が僕は後悔すると思うんだ。それに、君と彼女達両方を傷つけることになる」

「え?」

「……桜からの告白凄く嬉しかった。本当だよ。桜と付き合ったら楽しいんだろうなって考えたくらいだよ…でも駄目だった…」

「駄目?」

「……今日一日一人で過ごしたって話したじゃない?」

「はい」

「そこでね、どこに行っても彼女達の顔や声が頭を過ってたんだ。告白された今もね」

「……」

「だから、こんな状態で他の娘と付き合ったとしても良くない結果になるって思うんだ」

「そう…ですか…」

 

そこで沈黙が続いた。

 

「やはり弱っている時に告白して成功させようなんて虫が良すぎたのかもしれませんね。こんな(わたくし)を嫌になりましたよね…」

「そんな事ないさ。その、こっちこそ虫がいい話になるけど、今まで通りにいてほしいって思ってるよ」

「今まで通り…和義さんをお慕いしている気持ちを持ったままでも良いのでしょうか?」

「えっ!?ま、まぁそこは桜の自由だと思うから良いんじゃないかな…」

「本当ですか!では、これからも直江和義という男性の事をお慕い続けます。隙あらばあなた様の心を奪ってみせますので、今日みたいにウジウジなさらないように気をつけてくださいね」

「うっ…!肝に銘じておきます…」

「ふふっ…すみません。少し席を外させていただきますね」

「ああ」

 

そこで桜は部屋から出ていった。

最後まで僕の前で泣くことがなかったが、もしかしたら今泣いているかもしれない。

ごめん桜。そしてありがとう。

 

「失礼しますよ」

 

ガラッ

 

「え?」

 

桜と入れ替わるようにお祖母さんが入ってきた。今回は一人で来たようだ。

 

「少し話しても?」

「あ、どうぞどうぞ。すみません、自分の家ではないのでお茶を用意することができず…」

「構いませんよ……桜のこと、振ったのですね」

「うっ…」

「先ほど泣いていた桜とすれ違いました。別にそこを責めるつもりはまったくありませんよ。ただ、あの娘は高校に入学してからというもの、前よりも明るくなり生け花もより良い作品を作るようになっていました。そこだけは知っていてほしいのです」

「はい!」

「ふふっ…やはり良い眼をしていますね。さすがは景さんと綾さんの息子ですね」

「両親を知っているのですか!?」

「私も顔が広いですからね。といっても、あの人達はかなり有名ですよ。貴方が思っている以上にね」

 

やっぱりうちの親は凄いんだな。こんな人とも知り合いだなんて。

 

「これからも桜と仲良くしてあげてください」

「はい!桜さんが望む限り」

「……時に、和義さんはお付き合いされている女性はいらっしゃるのですか?」

「え?いませんけど…」

「そうですか。私は貴方を気に入っております。桜が諦めない限りは、あの子に男性を落とす手腕を伝授しておきましょう」

「えっ!?」

「諏訪家との繋がりを確かなものにしておきたいからですね。最終的に結ばれれば良いのですから。過程がどうあれね」

「えーーっ!?」

「ふふふ…」

 

この人何て事言っちゃってるんですか。冗談…ではないなあの眼は。狩人の眼だよ。

 

「すみません。お待たせしました…お婆様!?ここにいらっしゃったんですか!?」

「ええ。桜、まだまだ諦めるのは早いですよ。私も力になりますから、この方の心掴み取りましょうね」

「お婆様…はい!華道を始め、これからも精進して参ります。ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします」

 

桜は正座で頭を下げお祖母さんに教えを乞うように決意している。

いやいや、何考えてるのこの祖母と孫は…

 

「ふふっ…というわけで和義さん。覚悟しててくださいね」

 

とびっきりの笑顔でそう宣言されたのだった。

 

 




今回のお話では、和義が色々な場所を一人で回るもどこに行っても五つ子達と零奈の事が頭を過り、自分にとってどれだけ大事な存在なのかを改めて感じれた内容としました。
後、大きな目玉は桜の告白でしょうか。和義の事を本気で支えていきたいという気持ちをもっと良い表現で書きたかったのですが、難しいですね。

次回は、和義と捜索メンバーの合流の話を書かせていただければと思っております。
ただちょっと仕事が忙しくなってきたので、間隔が空くかもしれませんが、ご了承いただければなと思っております。

では、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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