五等分の奇跡   作:吉月和玖

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83.本音

「凄ぇ~…」

 

京都駅で荷物をロッカーから取り出し、周辺を暫く観光した後、楓さんの展覧会会場まで戻ってきた。

そこで、大きな門構えに圧倒された前田が感嘆を漏らしている。

 

「前田君。呆けていないで早く来たまえ」

「お、おう…」

 

門まで迎えに来てくれたお手伝いの人に皆が付いていくも、前田は一歩も動かなかったので武田が声をかけることで前田も付いてきた。

 

「風太郎も呆けるかと思ってたよ」

「まあ、お前がいたからな…」

 

そんな風に答えてはいるが、やはりどこか緊張しているようだ。

そして玄関まで案内されると、そこでは桜と楓さんが出迎えてくれた。

 

「ようこそおいでくださいました」

「ご無沙汰しております、諏訪さん。本日は急な訪問を受け入れていただきありがとうございます」

 

楓さんの出迎えの挨拶に対して、真面目な態度で母さんが応えて頭を下げたので、皆がそれに続いた。

 

「良いのですよ。それよりも皆さんお疲れでしょう。これより部屋に案内しますね。桜」

「はい。皆様、改めましてようこそおいでくださいました。後、おかえりなさいませ和義さん」

「「「「「「和義さん!?」」」」」」

 

桜の言葉に五つ子と零奈が反応した。まあそうだよね。何か流れでいつの間にか名前で呼ぶようになってたし。別にそれを拒否する理由もないから止めていないけど。

 

「えっと…ただいま桜。今日は皆共々よろしくね」

「はい!では、お部屋へご案内します。どうぞこちらへ。あ、和義さん、お荷物お持ちしましょうか?」

「いや、そこまでしてもらわなくても大丈夫だから」

「しかし…」

 

お願いだから、そんな悲しげな顔しないでー!

周りからヒシヒシと殺気の様なものを感じる。

片や、『当然渡しますよね』、という圧力。片や、『当然渡さないよね』、という圧力。

後、『和義渡して-!』、という母さんの悲痛な叫び声も聞こえるような気がした。

結局…

 

「じ…じゃあ、こっちの軽い方をお願い…」

「はい!」

 

僕の差し出したバッグを笑顔で受け取ると、先頭に立って部屋に移動を開始した。

 

「「「「むーー…」」」」

「カズヨシ君も大変だ…」

「だねー…」

 

何か着いて早々疲れてきたんだけど。

その後、桜に部屋を案内してもらった。

 

「男性の方々はこちらの部屋をお使いください」

 

桜はその場に跪き入り口の襖を開けている。まるで旅館の案内をされているみたいだ。一つ一つの動作が綺麗である。

 

「おー、広いな!」

「何もない部屋で申し訳ないですが…」

「いやいや、ただ寝るだけだから十分だよ。ありがとね」

 

中に入るや否や騒いでいる前田。

入り口で申し訳ないように話す桜に答えてあげた。

 

「そう言っていただけると助かります。では、(わたくし)は女性の方々の部屋を案内しますので失礼いたします」

 

桜は一度頭を下げて襖を閉めた。

 

「何もないって言ってたが、テレビがない以外は旅館と変わんねぇぞ」

「だな!なんかテンションが上がるぜ」

「分かってんなぁ、上杉は!」

 

テンション上がりっぱなしの風太郎と前田を置いといて、入り口とは反対側の襖を開けた。そこは、一面ガラス張りで小さなテーブルと対をなすように椅子が二つ置いてあった。

 

「これは…中庭と呼ぶべきか。この家は、この庭を囲むように建っているようだね」

「ああ。展覧会をしていた表の庭も凄かったけど、こっちも相当なものだね」

 

とはいえ、勝手に家の中を歩き回るわけにもいかないため、男四人でトランプをして時間を潰すのだった。

 

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「うんめぇー!」

「もう少し静かに食べたまえ前田君」

 

夕飯の支度ができたとの事で広間に通されたのだが、そこには美味しそうな料理がずらっと並べられていた。

楓さんも交えれば良かったのだが、自分がいれば萎縮する人がいるだろうと今回は別々に食べている。配慮が出来る人だ。

それは良いんだが…

 

「和義さん。お代わりが必要でしたら仰ってくださいね。上杉先輩に、前田先輩と武田先輩も」

「おう、ありがとな」

「じゃあ、早速で悪いが頼めるか?」

「かしこまりました」

 

そう言って、桜は前田の所まで行き空いた茶碗を預かりご飯をよそっている。僕の横で。

 

「って!普通に馴染んでるけど、席順おかしいでしょ!」

「食事中に何を叫んでいるんだ二乃?」

 

状況を理解していない風太郎がマイペースにご飯を食べながら二乃に話しかけている。僕の横で。

つまり、僕は桜と風太郎に挟まれて座っているのだ。

お代わり用のご飯を入れているおひつが桜の座っている席の脇に置いているから、前田のお代わりを僕の横でよそっている訳だ。

 

「?何かまずかったでしょうか?中野先輩達は姉妹で並んだ方が良いと考えたのですが…」

「問題ないんじゃないか?」

「そうだね」

「うっ…」

 

桜の言葉に前田と武田が援護したため二乃も反撃できずにいる。

桜もお代わりの対応をするため、お代わりの頻度が高いであろう男子の並びに座っているのだ。知らない人から見たら別に何らおかしくはない配置である。知らない人が見ればだが。

 

「そ、それよりもご飯美味しいね。この筑前煮とか味が染みてて美味しいよ」

「本当ですか!?実は、その筑前煮は(わたくし)が調理いたしましたので、お口に合うかドキドキしておりました」

「え?本当に?凄く美味しいよ。桜も料理するんだ」

「はい…といっても、和食が中心でして…洋食などはあまり…」

「十分だって。和食って難しいからね…あむ……うん、旨い」

「ありがとうございます」

「たしかに。和義の料理と遜色ないな」

「マジかよ!直江の料理ってこれくらい旨いのか?」

 

風太郎の感想に前田が驚いている。

そういえば、料理することは言ってるけど実際に食べてもらったことないや。

 

「和義君の料理はどれも美味しいんですよ」

「だね!直江さんのつくるお菓子も美味しいです!」

「そうそう。しかもそのお菓子と合うお茶も淹れてくれて最高だよぉ」

「ありがとね」

 

その時の事を思い出したのか、うっとりとした顔で一花が答えてくれたので、感謝する。

 

「そ、そうなのですね。ちなみに和義さんの得意なジャンルはあるのですか?」

「んー…強いて言えば、やっぱり和食かな…」

「あ…同じなのですね」

「そうだね。洋食も作るんだけど、洋食だと二乃に劣るし」

「え…」

 

僕の言葉に桜がちょっと驚いた顔をしていた。

二乃が料理得意なのに驚いたのかな?

 

「二乃の洋食のレパートリーが凄いんだよ。僕も作った事がない料理とかも作れて、しかもどれも美味しいんだ」

「ほ…褒めても何も出ないわよ」

「むー…そう言いながら顔がにやけてる…」

「うるさいわよ三玖」

「私だってレパートリー増やしたい」

「大丈夫だよ。腕はあがってるんだから、これからこれから」

「カズヨシ…ありがとう…」

「最近は四葉と五月も料理するようになったし、これで中野家の食卓は更に安泰するんじゃない?」

「そうねぇ~。これで何の憂いもなくいつでもお嫁さんとして迎えることができるわよ。ね?カズ君」

「ぶっ…」

 

突然の二乃の言葉に驚いてしまった。危ぇ、口の中に物があったら大惨事になってたよ。

 

「カズ…君?」

 

案の定、隣の桜は驚いている。

 

「カズ君だぁ!?お前、直江どういう事だよ!しかも嫁ってなんだよ!」

「えっと…」

 

もう一人、前田が過剰反応している。

 

「二乃さん?兄さんも困っていますので、人前でそのような発言は控えた方が良いかと」

「別にこのメンバーなら問題ないでしょ?それに、このまま自分の好きな男の子を持っていかれる方が我慢ならないわ!」

「!」

「わお!」

 

二乃が桜をまっすぐ見ながらそう発言したからか、桜はビクッと反応している。

母さんは面白そうに傍観者を貫いてるようだ。

 

「これはこれは。重大発言じゃないのかい?直江君」

「いやいやいや。武田はよく落ち着いてられるな。俺はさっきから混乱しっぱなしだぞ。えっと…なんだ?嫁がどうのって話してるから、つまり二乃さんと直江は付き合ってるのか?」

「違う…!」「「違います!」」

「うおっ!」

 

前田の発言に、三玖と五月、それに零奈が即反応した。

後二乃。一人でうっとりしないで!

 

「混沌としてんなぁ…」

「はぁぁぁ…」

 

風太郎の言葉にため息しかでない。

 

「ふむ…今の反応を見るに、もしかして三玖さんと五月さんも直江君の事が好きなのかい?」

 

空気読めよ武田ぁー…

 

「うん。私はカズヨシが好き…」

「わ、私だって和義君が好きです!」

「はぁーーーーー!?」

 

そして前田の絶叫が広間をこだました。

 

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~お風呂~

 

夕飯時に二乃、三玖、五月の爆弾発言があり途中中断もしたが無事(?)に夕飯は終わった。

今は女性陣がお風呂に入っているところだ。

広いお屋敷とはいえ、お風呂場はさすがに一つしかない。

しかし、旅館の大浴場まではいかないものの結構な広さのため女性陣は全員で入ることになったのだ。

女性陣の後に和義達男性陣が控えている。

和義は今頃前田と武田に詳しく説明するようにつめられているかもしれないが…

 

今は、零奈、綾、四葉、桜の並びで椅子に座り、それぞれが体や髪を洗っており、それ以外のメンバーは湯船に浸かっている。

 

「あら、本当に桜ちゃんのお肌綺麗ねぇ。羨ましいわぁ」

「そ、そんな…」

「それにスタイルも良いですよね!」

「それを四葉先輩に言われると何とも…」

「そうよねぇ。でも桜ちゃんの胸も十分大きいわよ。もしかして着痩せするタイプ?」

「え?そんな事今まで気にしたことがありませんでした」

「そっかぁ……ねぇ四葉ちゃん。揉んでいい?」

「ふぇ!?」

 

ワキワキと手を前に出しながら迫ってくる綾に対して、四葉は危機を感じて腕で胸を隠しながら後ずさる。

 

「母さん止めてください。おじさんくさいですよ」

「はーい…」

 

零奈の止めが入ったので、綾は手を下げ諦めた素振りを見せたので、四葉は『ホッ』と息を吐いて腕を下げ、体を洗うのを始めようとした。

しかし。

 

「ふふん。隙あり!」

「ひあっ…!」

 

諦めの悪い綾が四葉の胸を掴んできたのだ。

 

「やーん。本当に柔らかいわぁ。それにこの手に収まらない大きさ。やっぱり零奈(れな)先生の娘だけはあるわねぇ」

「ひあっ…やめっ…」

「んー?何かな?」

 

スパーン!

 

「いったぁーい…」

 

調子に乗っている綾の頭を零奈が思いっきりひっぱたいた。

その事でようやく解放された四葉は、『はぁ…はぁ…』と息づかいしながら床に座ってへばっている。

 

「母さん?調子に乗るのもいい加減にしてくださいね?」

「はい……」

 

そこでようやく綾は落ち着いた。

その時湯船にいた他の姉妹は、『自分があそこにいなくてよかった』、と思うのだった。

 

そして、体を洗う者と湯船に浸かる者が入れ替わり、湯船に浸かりながら綾は口を開いた。

 

「それにしても、皆いいもの持ってるんだから、それで和義に迫っちゃえばイチコロなんじゃない?」

「そ、そんな迫るだなんて…」

「……」

 

綾からの言葉に、五月は以前風太郎に五羽鶴を届けた後にバイクでドライブをした時の事を思い出していた。

あの時は、後ろから自分の胸を押し付けるなど自分にしてみればよくやっていたと、五月は思っていた。

 

(あれだけでも、凄い恥ずかしかったし…あれ以上ってなると…う~…)

 

悶絶している五月の横では、髪を洗いながら妄想の世界に入りきっている三玖がいた。

 

(そ…そんな…カズヨシ、ダメだよ…でも、カズヨシが望むなら…優しくしてほしいな…)

 

「でも綾さん。カズ君てば、初な反応をしめすだけで効果がないように思えるんだけど」

 

二乃の言葉に全員がピタッと動きを止めた。

 

「ちょっと待って二乃。その言い方だともう試したように聞こえるんだけど。まさか…」

「もう…そんな…言えないわ」

 

一花の言葉に二乃は恥ずかしそうに答える。

たしかに、姉妹の中で一番迫っているのは二乃かもしれない。

五月同様バイクに乗っている時に自分の胸を押し付けたり、混浴のお風呂に乱入したり、頬ではあるがキスまでしている。

まあ、頬へのキスを姉妹で最初にしたのは一花ではあるのだが。

 

「二乃…やっぱり油断できない…」

「二乃凄ーい!」

「う~…不純です!」

「五月のその言葉久しぶりに聞いた気がするけど、何想像してるのよ」

 

そんな風に五つ子が騒いでいるところで桜は一人考えていた。そして。

 

「あの…綾さん。殿方とは、やはりそうやって攻めないと落ちないものなのでしょうか?」

「あら?もしかして桜ちゃんも和義狙い?」

「はい!和義さんをお慕い申しております」

 

綾の質問にまっすぐ桜は答えた。

 

「あんた!カズ君から聞いてるわよ。告白して断られたってね」

「ちょっと二乃!」

 

あまりにもストレートな物言いに一花が横槍を入れる。

 

「ええ、その通りです。(わたくし)のこの気持ちをお伝えしましたがあの人の心には届きませんでした…あの人の心には中野先輩達がいましたから……」

「桜ちゃん…」

「しかし。和義さんはお慕いする気持ちを持ったままでいいとも言っていただきました。そして、お付き合いしてくれても良いと少しでも考えてくださいました。ならば、まだお付き合いをしていない和義さんの心を掴むのに何の問題もありません。違いますか?」

「「「「「……」」」」」

 

桜の言葉に五つ子は誰も反論できなかった。

 

「良い心がけですね」

 

そんな中、零奈は言葉を発した。

 

「勝てる確率は相当低いですよ?それでも、貴女は兄さんの心を掴んでみせる。そう言うのですね?」

「はい!」

 

零奈からまっすぐ目を見られて言われた桜だが、桜もまた零奈の目をまっすぐ見て答えた。

それに納得したのか。

 

「良いでしょう。なら、貴女のもがき見させてもらいます」

「ちょっと!おか…じゃなくてレイナちゃんはいいの?」

「良いも何も決めるのは兄さん本人です。それとも、彼女が相手では自信がないと?」

 

二乃の言葉に零奈が挑発的に答える。

 

「はぁ!?何言ってるのよ。誰が相手でもカズ君と付き合うのはこの私よ!」

「二乃が妄言を言っている。カズヨシと付き合うのは私…」

「ふふっ。今回ばかりは私も負けるつもりはありませんので」

(わたくし)も。自分の持てるもの全てを懸けて、あの方の心を掴んでみせます」

「ふん!あんたの事ライバルとして認めてあげる。精々頑張るのね、桜」

「はい。二乃先輩こそ足元を掬われないようにしてくださいね」

 

二乃と桜はお互いにニッコリと笑って握手をしている。

お互いの本音をぶつけることで良い関係になったのかもしれない。

 

そんないい雰囲気になっているところで、心にモヤモヤしている者がいた。

その者を見ながら零奈は考えていた。

 

(あの子はまだ決めかねているようですね。全く世話のかかる子です。しかし、こればかりは自分自身でどうにかしなければならない。早くしないと一番後悔することになりますよ…一花)

 

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皆が寝静まった夜間。僕は一人縁側に座って月を眺めながらお茶を飲んでいた。

 

「まったく...前田と武田の追及は凄かったな。根掘り葉掘り聞いてくるんだから...」

 

ズズズ...

 

ああ...お茶が旨い。

すると後ろから気配を感じた。

 

「よう、色男はどんなところでも絵になるな」

「風太郎がそんな嫌味を言うなんてね。隣座りなよ」

 

『それじゃあ』と一言言って、僕の隣に座った。

そして用意してあったコップにお茶を注いであげた。

 

「本当は月見酒といきたいところだけど、あいにくと僕達は未成年だからね」

「まあ、成人したらまたすればいいさ」

 

お互いに言葉を交わしてお茶ではあるが乾杯をした。

 

「とうとう明日で京都ともおさばらだな」

「ああ...」

「ふっ...本当にタダでは終わってくれないものだ」

「そう言ってぇ、楽しかったんでしょ?」

「まぁな。ただ、驚くこともあった...」

「四葉の事?」

 

僕が聞くと、お茶を口に含みながらコクンと頷いた。

 

「あれにはビビった。お前知ってたんだな?」

「ありゃ、ばれちゃったか」

「ったく。四葉があんな風に言ってくる訳ないからな。どうせ誰かの差し金だろうと思っていた。そしたら、『直江さんが背中を押してくれたんです。直江さんがいなければこんな勇気を持てませんでした』、てよ」

「そっか...それで?どうすんの?四葉に返事してないんでしょ?」

「それをお前が言うか?」

「そりゃそうだ」

 

そこでお互いにフッと笑ってお茶を飲んだ。

 

「はぁぁぁ...どうしたもんかなぁ」

「恋なんて馬鹿馬鹿しい、って一蹴しないだけましだよ」

「......あいつらがお前の事を好きでいる事は前から知っていた」

「お!?風太郎が恋について感じるなんてね」

「あいつらはあからさま過ぎだったからな。最初は気にしなかった。だが、お前を好きになったあいつらはどんどん勉強に身が入っていった。おそらくお前に認めてもらいたくて必死に頑張ったんだろう。思う気持ちは違うがかつての俺みたいに見えてきた」

「へぇ~」

「誰かに必要とされる人間になる。このことを胸にここまで頑張ってきたが、この誰かに必要とされる。これは好きになってくれることももしかして当てはまるのではないのか、とも考えるようになった」

「良かったじゃん。じゃあ、四葉からは必要とされているって事だよ。あ、今更だけど。僕は風太郎の事を必要な人間だと前から思ってるからね?」

「......お前は恥ずかしいことをそんな平然と...」

「いやいや、これはとても重要なことだから。四葉より先に思ってたからね。あれ?でも四葉は小学生の時に風太郎の事を好きになったっぽいから四葉の方が先なのか?」

「何を競ってるんだ...」

「いや、結構重要なことだと思って」

「お前と話していると、今悩んでいることが馬鹿馬鹿しく思えてくるよ」

「え、酷くない?僕だって悩んでるんだから」

 

そこでお互いに『あははは』と笑いあった。

 

「この難問どっちが先に解くか勝負だな」

「お、良いねぇ。負けないよ!」

 

そこでお互いの拳をコツンっとぶつけたのだった。

 

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~Girls side~

 

そんな和義と風太郎の語らいを陰から見ている者達がいた。

 

「あ...あの。(わたくし)、今変な考えが過ったのですが...」

「......何となく予想はできているけど、あえて聞いてあげるわ」

「最大の好敵手は上杉先輩なのではないでしょうか...」

「あぁー...桜ちゃんもその考えに至っちゃったかぁ」

「大丈夫。ここにいる誰もがそう思ってるから...」

「お互いがお互いの事を話すときが一番生き生きしてるからねぇ」

「認めたくはないですが、私も四葉の意見に同意します」

「これじゃあ、何しに来たのか分かりませんよ」

 

零奈の言葉に全員が頷いた。

そう、陰から見ていた者達とは、五つ子と零奈、それに桜であったのだ。

全員があわよくば和義や風太郎に会えればと思ってここまで来たのだが、結局二人の仲が良いところを見せつけられた結果となってしまった。

 

「う~...(わたくし)、上杉先輩には勝てそうにありません...」

「ちょっと!私たちには勝てるみたいに言わないでくれる」

「大丈夫だよ桜ちゃん。これは誰しもが通る道だからね」

「慰めになっていない...」

「はぁぁ、今回は諦めて部屋に戻りましょう」

 

零奈の提案に全員が賛同して女子達は部屋に戻っていった。

 

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~広間~

 

翌朝。和義の要望もあり、この日の朝食の席には楓の姿もあった。

その楓は上座に座り、朝食を食べながら桜の様子を見ていた。

桜は昨日と打って変わって、五つ子達の方に交じり、笑いながらご飯を食べている。

 

(垢が抜けたように笑顔で食事をしている。どうやら私の心配性だったのかもしれませんね。それにしても、こうも早く桜と打ち解けるなんて。この娘達も中々やるわね)

 

満足そうに食事を続けているとあることに楓は気づいた。

 

(今朝の朝食、いつも以上に食が進むように感じる...味はあまり変わりがないように思えるのだけど)

 

「桜?」

「はい。何でしょう?おばあ様」

「お話し中に申し訳ないわね。今朝の朝食誰が作ったの?」

「それは...」

 

そう言いながら桜の目線は和義に向かう。

 

「僕が桜さんにお願いをして、厨房を借りて作りました。一宿のお礼にと思いまして。お口に合いませんでしたでしょうか?」

「貴方がこれを...」

 

信じられないといった顔で楓は和義を見ている。

 

「俺は普通に旨いと思うけどな」

「君は黙ってた方がいいよ前田君」

「ああん!?」

 

前田が武田を睨んでいるが、どこ吹く風の如く武田は気にせず食事を進めている。

 

「口に合わないなんてとんでもありません。とても美味しくて驚いているのですよ。綾さん。良い息子を持ちましたね」

「はい。私には勿体ない。しかし、自慢の息子です」

 

屈託のない笑顔で綾は答えた。

 

「そう...ふふっ、益々気に入りました。和義さん?」

「は、はい!」

「何かあればいつでも相談に乗ります。桜を通してでも直接でも構いません。連絡してくださいね」

「分かりました。その時にはぜひ!」

 

和義の言葉に満足した楓は、いつも以上に食事を楽しんだのだった。

 

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帰りの新幹線の中。

通路を挟んで反対側の席では、五つ子と桜が楽しそうに話している。

朝も思ったけどいつの間に仲良くなったんだ?まあ、仲が良いのは良いことだけどさ。

暫くしたら静かになったなと思い、席を確認すると六人とも寝てしまった。

すぐに着くというのに相当疲れてたんだろう。昨日も夜遅くまで喋ってたって言ってたし。

その証拠に零奈も僕の横で眠っている。

 

「風太郎。今チャンスなんじゃない?」

「そうだな。はい、チーズ」

 

パシャ

 

風太郎は五つ子の誕生日プレゼントということでアルバムを作ることにしたのだ。彼女達五人の思い出の記録を作りたいと言っていた。

その為に、僕と前田と武田も協力して写真を撮っている。

初日の夜の盗撮犯事件の犯人である前田もこれの協力のために行ったものだ。あの時に前田自身が言っていたが気合を入れすぎである。

 

「すぅー...すぅー...」

 

可愛い寝息を立てながら僕に寄りかかり眠っている零奈。

中身が五つ子の母親である零奈(れな)さんだとは到底思えない。

彼女達五つ子が転校してきてもうすぐ一年になろうとしている。夏到来だ。

高校三年生の夏。つまり進路について本格的に考えなければいけない。

風太郎は恐らく東京の大学を考えていると思う。あっちの方がレベルが高いから更なる高みを目指すには丁度良いだろう。

五つ子達は、まだ全員までは把握できていないが、一花は女優で五月は教師。三玖は頭が姉妹の中で一番だからやはり大学だろうか。二乃は料理関係の学校に行くのが良いかもね。四葉は運動神経を生かして体育大学とか良いかもしれない。

やはりそれぞれが違う道に進もうとしている。

 

「僕はどうしたものか...」

 

車窓からの景色を見ながらそう考えていた。

 

 




というわけで、修学旅行編終了です!

姉妹での喧嘩はありませんでしたが、四葉の告白に和義の五つ子に対する思い。そして、桜の本格的な参戦と色々と濃い修学旅行であったのではないかと思ってます。

さて、修学旅行も終わったので、一学期も少しだけ書いて終わらせ、今後は夏休みに入っていこうと考えています。

最近では仕事が忙しく、書くペースが落ちていますが、今後もどうぞよろしくお願いいたします。
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