お待たせして申し訳ありません。最新話投稿です!
ワールドベースボールクラシックが始まりました!
野球を観るのが好きなので楽しみたいです。
『よう、久しぶりだな。どうした?夏休みの間は電話してこないんじゃなかったのか?』
海水浴で遊んだ次の日の夜。仕事が一段落したところで風太郎に電話をしていた。
「いやー、そのつもりだったんだけどねぇ。五つ子達も来ちゃったしもういいかなって」
『あいつらも大したものだ。まさか本当に見つけてしまうとわな』
「本当にね。良い友人を持ったものだよ」
『友人ね…』
含みがあるように風太郎が呟いた。
「何だよ?」
『いや。そうだ、友人で思い出したが、今日前田達から海水浴に誘われてな。クラスの連中と行ってきた』
「へぇ~。あの風太郎がクラスの人と海水浴ねぇ」
『うるさいぞ』
「あはは、ごめんって。それで?楽しめた?」
『ああ。クラスの奴が言うには、楽しめていたそうだ』
「は?何それ?」
『実際楽しめたと思うが、どこか物足りなさも感じてな…お前がいなかったのももちろんだが、あいつらもいたらもっと楽しかったんだろうな、と思ってしまった』
まさか風太郎からそんな言葉が聞けるとはね。
「風太郎…その言葉、四葉に言ってあげたら?」
『ぐっ…本人達を目の前に言えるか』
「はいはい……実は、昨日こっちでも海水浴をしたんだけど、風太郎もいれば良かったね、て一花と話してたんだよ」
『そうか…』
「こんな風に何日も話さなかったのって、風太郎に勉強教えるようになってから無かったんじゃない?」
『そういえばそうだな。いつも一緒にいたように思う』
「だよね…………そうだ、話が変わるけどREVIVAL一時閉店するんだって?」
『ああ。店長がバイクで事故って入院しちまったからな』
そうなのだ。実はREVIVALの店長さんがバイク事故を起こしてしまい、しばらく入院。その影響もあり、REVIVALはしばらく閉店することになったのだ。
「ふーむ…風太郎って今勉強以外何もないんだよね?」
『あ?そりゃあまあそうだが…』
「……朝昼晩ご飯付きにお風呂は温泉。夜は静かに勉強ができる住み込みのバイトしてみない?」
『おい。それって…』
「ああ。実は既にお祖父さんに相談済みで、ビシバシ働いてもらうってさ。それで?どう?」
『静かに勉強が出来る、という部分には些か不安があるが、金が貰えるなら願ってもない事だ』
「了解。お祖父さんにも伝えとくよ。明後日、そっちに戻るからその時に合流しようよ」
『ん?何だ戻ってくるのか?』
「ああ。店長さんのお見舞いも行きたいし、それにもうすぐ八月十四日だからね」
『…っ!そうだったな。毎年零奈の誕生日だけだったが、今年から追加しなければな』
「へぇ~。意外に覚えてたんだ」
『まぁな…』
「てなわけで、その前日には帰るからよろしく!何だったら、らいはちゃんも呼んで良いよ」
『分かった』
そこで通話が切れた。
携帯をポケットに入れながら、目の前の海を眺めていた。
「八月十四日。零奈の誕生日。それから…」
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「え?帰るの?」
次の日の朝食の時に、明日一度帰ることを皆に伝えたところ、二乃から疑問を投げかけられた。
「ああ。店長さんのお見舞いに行きたいし。それに、明後日にも行きたい所があるんだよ」
「それって…」
僕の言葉に三玖が言葉を漏らした。
「うん。
「ああ…」
上座で朝食を食べているお祖父さんに話しかけると肯定の返事が返ってきた。
そして、お祖父さんの近くで何故か朝食を一緒に食べている楓さんなのだが、少し元気がないように思える。
「しかし……」
そこで五月が零奈を見ながら、何か言いたげな表情をしている。
まあ、目の前に母親がいるのにお墓参りは気が引けるか。
五月は、零奈に
「あのー…
何も知らない桜が当然のように質問をしてきた。
「おっと、ごめんね。
「私たちのお母さんの名前です」
「え?」
僕が説明しようと思ったが、四葉が代わりに説明してくれた。
「も、申し訳ありません。知らなかったとはいえ、大変失礼いたしました」
「別にいいよ。桜ちゃんが謝ることないって……それで?みんなも行くよね?」
一花の問いかけに姉妹全員が頷くのだった。
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「それじゃあ、行ってきますね」
「ああ。気をつけてな」
次の日の朝。予定通り一度家に帰ることになった。
五つ子と零奈、それに桜も同行する。
「本当にお祖父さんも来なくて良かったんですか?」
「すまんな。遠出が出来る程体がよくなくてな。儂の代わりに和義。頼んだぞ」
「そういう事でしたら、分かりました。楓さん、お祖父さんの事よろしくお願いします」
「ええ。任されました」
「ふん。お前に何かしてもらわなくても問題ないわ」
「あはは…」
仲が良いのか悪いのか、本当に分からない二人である。
「桜」
「はい。お婆様」
「大切な友人のお母様のお参りなのですから、しっかりとするのですよ」
「はい!」
「本当は私が行きたいところなのですが」
「?お婆様、何か?」
「何でもありません。いってらっしゃい」
「は、はい!行って参ります」
「和義さん。桜の事頼みましたね?」
「ええ」
そして、お祖父さんと楓さんに見送られながら出発した。
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「わざわざお見舞いに来てもらってすまないね」
駅で風太郎と合流し、零奈を中野家で預かってもらう事になった後、店長さんが入院している病院に僕と風太郎、二乃の三人で来ていた。
「思ったよりは元気そうですね」
「まあね。とはいえ、これでは身動きもままならないのは確かだけどね」
「怪我の具合はどうなんです?」
「あとは術後の経過を診るだけさ」
「うわー痛そ……あっ、これつまらないものですが」
風太郎から怪我の具合を聞いた店長が答えるが、手術の言葉で二乃は痛そうと感じたようだ。
そんな二乃は、ここに来る途中で買ったお菓子の詰め合わせを店長さんに渡した。
「ありがとう」
「俺からも花を持ってきました」
「ほう?上杉君にしては気が利くね」
「一言余計です」
「まあまあ。店長、花瓶無いみたいなんで借りてきますね」
「すまないね」
そんな感じで店長のお見舞いは終始和やかに行われた。
そして、お見舞いの帰り道。明日の集合時間を風太郎と確認すると別れ、中野家に零奈を迎えに行く。
「あのー…二乃さん?くっつきすぎじゃないかな?」
「あら、いいじゃない。せっかく二人っきりなんだし」
ご機嫌なご様子の二乃はさらに自分の体を寄せてきた。
僕は諦めて、溜め息をつきながら変装用にかけていた眼鏡の鼻当て部分くいっと上げた。
「……ねぇ…カズ君は、このままおじいちゃんの旅館で働くの?」
「……そうかもね」
「じゃあ、もし私も働きたいって言ったらどうする?」
「……自分の店を持つ、て夢は諦めるの?」
「っ…!こ、子供の頃の戯言だから本気にしないで、て言ったはずよ」
「そうだっけ?僕は本気だと思ってたけど」
「……」
無言は肯定を意味することになるよ。
「はぁ…だから君達に内緒で今回旅館で働くことにしたんだ。明確な夢を持っている一花や五月ならまだしも、二乃や三玖が僕と同じ道を進むと言い出すんじゃないか、てね。自意識過剰かも、と思ってたけど見事に予感は的中したね」
「だって…」
そこでギュッと、二乃は僕の腕と組んでいる自分の腕に力が籠った。
「そこまで想ってくれてることは嬉しいと思ってる。本当だよ?だけど、僕のせいで自分の本当にしたいことを諦めないでほしい、とも思ってる」
「自分の本当にしたいこと…」
「ああ…二乃ならきっと見失わないさ」
「うん…」
か細い声ではあったが、自分に言い聞かせるようにしっかりと答えていたように思えた。
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「そうですか。二乃が…」
中野家のマンションで零奈を預かった帰り道。
先ほどの二乃とのやり取りを、僕の手を握りながら隣を歩く零奈に伝えた。
「ありがとうございます、兄さん。恐らく、兄さんの言葉だからこそ考えることを選んだのだと思いますよ」
「だと良いんだけど…あれ?」
「どうしたのですか?」
「いや、家の電気がついてる」
もう辺りも暗くなってくる時間帯でもある。
家には食べるものが何も無いから、近くのスーパーで買い物をして帰っていたらこんな時間になってしまったのだ。
そして、自分の家が見えてきたところで、明かりがついているのが見えたのだ。
車庫も開いていたので、覗き込むとバイクをいじっている父さんの姿があった。
「ただいま。何してんの?」
「ん?おー、何だ帰ったのか?おかえり。っ!零奈ちゃーん!」
僕の問いに振り返った父さんは、僕と手を繋いでいる零奈の姿が確認出来るや否や、立ち上がり歓喜の声を上げた。
「おかえり、零奈ちゃん。寂しかっただろ?お父さんが帰ってきたからもう大丈夫だからね?」
更に、そのまま抱きつこうかという勢いである。
「ただいま帰りました。後、そのまま抱きついたら、しばらく口を利きませんので悪しからず」
零奈の言葉にピタッと動きを止める父さん。
本当に不憫でならない。
ガチャ
「あら、帰ったのね二人とも。おかえりなさい」
「「ただいま」」
「?景さんは何で固まって、しかも今にも泣きそうなの?…て、ああ…零奈ちゃんに嫌われたのか」
「嫌われてなどいない!ただ、ちょっと反抗期に入っているだけだ」
「そうですね。嫌ってはいません。ただ抱きつかれたくないだけです」
そう言いながら、零奈は僕に抱きついている。
そして。
「兄さん、抱っこ…」
そう言いながらも僕に向かって両手を上げる零奈。
「あらぁ~」
「えっと…」
「兄さん…」
そんな潤んだ目を向けないでぇ。そんな目を向けられたら抗えないでしょ。
まったく、大人な所と子どもじみた所を本当にうまく使い分けるよね。
てな事で零奈を抱っこしてあげる。
「ふふっ…だから兄さんは大好きなんです」
そう言いながら頬擦りをしてくる零奈。
ほらぁ、そんなことしたら父さん泣いちゃうでしょ。
もう泣いてるけど…
「零奈。昔父さんと何かあった?」
「?別に何もないですよ。ただ、兄さん以外の男の人には興味が無いだけです」
哀れ父さん。
「そ、それにしてもバイク整備してくれてありがとね父さん。こんなことも出来るなんてさすがだよ。ね、零奈?」
「そうですね。カッコいいです」
零奈の言葉にパァーッと喜びの顔になった父さんは、張り切ってバイク整備の続きを始めた。
零奈の言葉に変動され過ぎでしょ。
「それで?明日のために帰国したの?」
整備を再開した父さんを尻目に、飽きれ気味の母さんに質問をした。
「うん、そうだよ。まさか和義達が帰ってくるとは思わなかったから、連絡しなかったんだよね。それにしても…」
「?何です?」
母さんがじっと零奈を見たので、零奈が反応した。
「結局、和義の所に行っちゃったのね。今回は連絡無かったから、そっとするのかと思っちゃった」
「最初は本当にそう思ってましたよ。しかし、あの娘達の会いたい気持ちに当てられたのか、私の我慢が限界になりました」
「あらあら。しかも、甘え上手になっちゃって」
ふふふ、と今の零奈を見ながら母さんは口にする。
「羨ましいですか?」
零奈が首筋に抱きつきながら、母さんに向かって言う。
すると今度は母さんを落ち着かせるのが大変で、とこの日の直江家は最後まで騒がしくあったのだった。
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~
八月十四日、朝。
この日、お墓参りを一番にやって来た者がいる。
中野マルオである。
マルオは一人、お墓を綺麗にすると持ってきていた花束を供え、お墓の前で屈み手を合わせていた。
目を開け、立ち上がった後お墓をじっと見ていると、足音が聞こえてきたのでそちらに振り返った。
「おはよう、マルオ君。朝から精が出るわね」
「おはようございます。直江先生。綾先生」
「おはようさん。お前も子供達と一緒じゃないんだな」
「ええ。今日も仕事が立て込んでますので」
「そこも俺達と一緒か」
マルオと景が話している脇で綾がお墓に花を供えて、線香に火を付けていた。
それを確認した景は、綾の横に並び共に手を合わせた。
「毎年来ていただきありがとうございます。今年に関しては海外から来ていただけるとは思っていませんでした」
「ま、同期で特に仲が良かったからね」
「このくらい問題ないさ」
そんな風に三人で話していると、更に来客が来たようだ。
「何だ、今日は命日だけあって人が多いね」
「がはは、確かに」
下田と勇也である。
「おー、上杉と下田じゃないか。久しぶりだな」
「直江先生。お久しぶりっす」
勇也がそう挨拶しながら頭を下げたので、下田もそれに続いた。
「しっかし、花だらけだねぇ。
「きっと喜んでくれるわよ」
「だな!プチ同窓会、て感じで
「うるさいぞ上杉。お参りくらい静かにしたらどうだ?」
「性分なんだよ。そういやー、この後うちの子供達が来るが、マルオのとこも来るのか?後、先生のところも」
「そうだね。その為に帰ってきていると聞いている」
「うちもよ。一緒に来るんじゃないかしら。後、諏訪さんのところのお孫さんの桜ちゃんもね」
「諏訪先生の?和義はそんな人とも繋がりを持っていたのか?」
景が驚きの声を上げている。
「それだけじゃないわよ。桜ちゃんから想われてるし、諏訪さんからなんて名前呼びを許されてるんだから」
「何だと!?」
「それは…とんでもない事ですね」
諏訪楓の事を知っている景とマルオは衝撃を受けている。
「何だ?そんなに凄い人なのか?下田は知ってるか?」
「あたしも知らないね」
「とても厳格なお方だよ」
マルオの説明でもあまりピンと来ていない、勇也と下田。
「そうねぇ…華道の家元、諏訪楓と言ったら分かるかしら?」
「え!?あの、よくテレビに出てるあの人ですか?」
「そういやー、俺も職場の雑誌で見たことあるな。チラッとだけどよ」
「一学生がそうそう話せる人じゃないんだがな。それに、諏訪先生は親族以外の人に名前呼びを一切許さない事で有名だ」
「それなのに、先生らの坊っちゃんは許されてると…本当に規格外ですね和義のやつ……なるほど、諏訪があれだけ礼儀正しかったのは、家元の孫娘だったからか」
「そうねぇ。しかも、その孫娘の桜ちゃんに慕われて、今では猛アタックを受けているはずよ」
「がはは、相変わらずすげぇな和義のやつ。うちの風太郎も見習ってほしいもんだ」
「ふっ…おっと、もうこんな時間だ。すみません先生。私はそろそろ」
「おっと、長居させちまったな。というか、俺達もそろそろ行かないとだな」
「では、お送りしますよ。それくらいなら余裕あるので」
「いつも悪いわねぇ。そうだわ!集合写真撮りましょうよ!」
「いいっすね!さすが綾先生」
綾の何気ない提案に下田は賛同する。
「とはいえ、さすがにここではまずいだろ。とりあえず移動しよう」
景の言葉でその場を後にする五人。
その後、大人達の集合写真が撮られることになる。マルオは渋々従った。
この集合写真は、綾の手により和義の元に送られることになるのだった。
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「凄い!花だらけだね」
仕事のため両親が先に出てしまったが、僕達は中野姉妹に桜、風太郎とらいはちゃんと合流した後、お墓まで来ていた。
そこにはたくさんの花で飾られたお墓があったのだ。
その光景に一花は驚きの声をあげていた。
「そういやー、うちの親父も行くって言ってたな」
「後、下田さんも来てたみたいだね。さっき母さんから写真が届いてたから」
そう言って、先ほど送られてきた五人の大人達による集合写真を皆に見えるように差し出した。
てか、自撮り風に撮るとか、中身も若いな母さんは。
「…っ!パパ」
「本当だ!お父さんもいるね」
「フータローのお父さんが肩を組んでるって事は、仲良いのかな…?」
二乃が写真の中に中野さんがいるのに真っ先に気付き、四葉と三玖が言葉を漏らした。
「下田さんとも仲が良いのでしょうか?」
「うーん…クラスメイトだったとか?」
「かもしれませんね。しかし、この年齢になっても仲が良いなんて羨ましい限りです」
「大丈夫だよ桜。僕達だってこんな風になってるさ。ね?風太郎?」
「……かもな」
「もー、そこは『そうだな』、て言うところでしょ?お兄ちゃん」
「風太郎さんらしいと言えばらしいですが」
零奈の言葉に風太郎以外が笑ってしまった。
当の風太郎は恥ずかしいのか、前髪を弄りながらそっぽを向いている。
「さて!じゃあ、お参り済ませちゃおうか」
そう言いながら、一花は線香に火を付けている。
それに続いて他の五つ子達が並んで、お墓の前にしゃがみこんだ。
そして、全員で手を合わせている。
僕達残りのメンバーは、そんな五つ子達の後ろで立ったまま手を合わせた。
「うん!こんなにも大勢の人にお参りに来てくれたから、きっとお母さんも喜んでくれてるでしょ」
「そうですね」
「泣いて喜んでんじゃない?」
「かもしれない…」
「ししし、だといいね!」
そんな風に笑い合いながら話している五つ子。
「ふっ…二乃と三玖は冴えてるね」
「う、うるさいですよ…」
僕の隣で目から一筋の涙を流した零奈の頭をポンポンと撫でながら、そう伝えるとふてくされたように返された。
でも、その言葉にはやはり嬉しさが混じっているように感じられた。
「そうだ!僕達も母さん達の真似して写真撮っとく?」
お墓から離れたところで僕からそう提案してみた。
「いいわね」
「うん!私もみんなと写真撮りたいな」
「はいはーい!大賛成です!」
二乃とらいはちゃん、四葉が真っ先に賛同してくれた。
「しかし、ある問題が…」
「だねぇ。自撮りに関しては、ちょっと人数的にキツイかなぁ…後は……」
「配置…」
五月がある問題点に気付いたが、一花と三玖はすぐに察したようだ。
あ、考えてなかった。
「兄さん。その顔は考えていませんでしたね?」
「うっ…!」
零奈は鋭いなぁ。
とりあえず、写真を撮る人については近くのお寺の和尚さんに頼んだ。配置は……
「カズヨシ君を中心にみんなで周りを囲む、てのが一番かな?」
そんな一花の提案もあり、僕の両サイドに二乃と三玖。僕の両肩辺りに五月と桜。僕の前に零奈が収まり、風太郎がその前にしゃがみこみ、その両サイドを一花と四葉が。そして、四葉はらいはちゃんに抱きついている。五月と桜の事もあり、僕は少しだけ屈んでいる。
「では、撮りますね……」
パシャ
「ありがとうございます」
「いえいえ。仲が宜しいようで。その縁、大事になさってください」
「はい」
そんな会話を和尚さんとしている横では、さっきの写真を女性陣で見ている。
「いい感じじゃない?」
「だねぇ~。これ、グループで回しとくね」
「お願いします、一花」
「また撮りたいな…」
「だね!そうだ、毎年ここで撮っていこうよ!」
「いいね四葉さん!」
「毎年…
「ふふっ、何を当たり前の事を言っているのですか。もちろんですよ」
零奈の言葉に五つ子とらいはちゃんが頷き、それを桜はとても喜んでいる。
「毎年かよ…」
「和尚さんも言ってたじゃん。この縁、大事にしていこうよ」
「……だな」
風太郎と二人。楽しそうに話している女性陣を見ながらそう話していた。
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その後そのまま旅館に戻ってきた僕達は、今度は零奈の誕生日パーティーに取りかかった。
事前にお祖父さんに相談していたところ、料理は用意してくれるとのことだったので、夕飯時に開催することが出来た。
零奈もこの時だけは、笑顔が絶えず喜んでいた。
そして、今は僕の部屋で零奈はあるものを読んでいた。時折、涙を流しながら。
零奈が読んでいるもの。それは五つ子達一人一人からの手紙である。
五つ子達は誕生日プレゼントとして手紙を用意していたようだ。
五枚目の手紙を読み終えたところで涙を拭っている。
「どうだった?」
「っ……私は幸せ者ですね。死して尚娘達と話し、そしてこのような手紙までくれるのですから」
「そっか...」
「それに...」
零奈は首から下げているネックレスを握っている。
それは僕が作ったべっこうのネックレスだ。今回の誕生日のために用意した物。
「ふふっ。これはこの世に一つしかない物。とても嬉しく思います」
「ははは...ちょっと不格好だけどね」
「そんな事ありません。私の宝物です。ありがとうございます」
本当に大事そうに握っているので何だか照れてしまう。
「さて、もう寝ようか?明日も早いからね」
「そうでしたね。兄さんは早いのでした。では...」
そこで零奈が何故か僕の布団に入って寝る準備をしている。
「?えっと...部屋に戻らないの?」
「今日はここで寝ます。良いですよね?」
「はぁぁ...何言っても無駄なんでしょ?それじゃ、電気消すよ」
「はい」
電気を消して布団に入る。
そんな僕にすり寄ってくる零奈。そんな零奈の頭を撫でながら、
「改めて誕生日おめでとう。また一年よろしくね」
「はい...ありがとうございます。おやすみなさい」
「おやすみ」
今日は移動が多かったからか、零奈は僕の腕にしがみついたまますぐに眠りについてしまった。
「すー...すー...」
窓から漏れる月明りで寝顔が見える。
零奈もとうとう八歳か...
大人びた言動があるから忘れがちだが、まだ八歳なんだよね。母さんが言うには当時の
父さんも母さんも仕事場ではしっかりとしているそうなんだが、家での言動しか見れていないからあんま信じられないんだよね。
『さすがは景さんと綾さんの息子ですね。あの人達はかなり有名ですよ。貴方が思っている以上にね』
楓さんのあの言葉。
楓さんにあそこまで言わせているのだから、やはり仕事場ではしっかりとしているのだろう。
「ん...兄さん...」
僕の夢でも見ているのかな。
僕がどんな答えを出そうとも共にいてほしい。勝手ではあるがそう願いながら零奈の頭を撫でるのだった。
そんな日を迎えた話を書かせていただきました。
主に大人達の話になってしまいましたが…
さて、夏休みも後半に突入しておりますが、旅館には風太郎も参戦です。
この事で何か変化が起こるのでしょうか。
そろそろ和義だけではなく、一花の気持ちも固まってきたのか。
ではまた次回も読んでいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。