五等分の奇跡   作:吉月和玖

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94.忍び寄る影

「あの、ここはどう解くのですか?」

「ん?そこは昨日の塾で教えてもらった公式を使うんだよ。さっきノート見せてもらった時に書いてたよ」

「なるほど、ここで使うのですね」

 

翌日、五月が早速うちに寄って勉強をしている。それは良いんだが……

 

「あ、和義さん。ここの英文の訳なのですが…」

「はいはい、ちょっと待ってね」

 

五月の横で勉強している桜からも質問が来たので教えてあげている。

今日の帰りに五月がたまたま桜と会ったので一緒に来ることになったそうだ。

ただ、桜からは気になる話を聞いた。

 


~桜side~

 

はぁぁ…やはり和義さんがいないと寂しいですね。

彼女がいらっしゃる方にこのように想うのはどうかと思ってはいるのですが、やはり教えを乞うのに一番合っているのはあの方なのですよね…

和義さんが忙しく、塾に来れない時は下田先生に教えていただいている。

下田先生とは夏休み以来よくお話しをするようになった。きっかけはやはり和義さん。

 

一花さんが羨ましいですね

 

つい本音が言葉に出てしまい、慌てて帰る支度をします。

そこに後ろから声をかけられました。

 

「失礼。君が諏訪桜君かな?」

 

振り返ると見たことのない男性が立っていらっしゃいました。

 

「あの...」

「ああ、これは失礼した。私は無堂仁之介。今度行われる特別教室の講師だ」

 

そういえばそのような連絡があったような。高校三年生対象でしたので(わたくし)には関係ないものと思っておりましたし、最近は和義さんがいないからか塾の他の行事などは頭に入ってきません。

成績には影響が出ていないので今のところ問題はありませんが、いつかはどうにかしないといけませんね。

 

「それは申し訳ありませんでした。ご認識の通り、(わたくし)が諏訪桜です」

 

いつものようにお辞儀をしながら挨拶をします。

 

「それで、その無堂先生が(わたくし)に何の御用でしょう?」

「いやー、すまないねいきなり声をかけてしまって。聞いているよ、君はとても優秀な成績を残しているそうだね。そこで、どうだろうか。僕の講義を聞いてみて、君の率直な意見を聞かせてほしいのだよ」

「と言われましても、(わたくし)はまだ一年生です。そのような者が参加したところで、とてもお役に立てるとは思えません」

「そんなことはないだろう。君は何と言ってもあの()()()の人間なのだからね」

 

その言葉で嫌悪感が湧いてきました。

 

今までも諏訪の人間だからと、(わたくし)個人の事を見てくれない事が多々ありました。

そのような事もあり、黒薔薇女子への入学ではなく今の旭高校に入学することを決意したのです。

諏訪家というしがらみを多少なりとも振りほどきたかったから。

 

しかし、最近ではその諏訪の人間と分かってもいつも通りに接してくれる人達がいます。

下田先生もその一人です。

そういえば下田先生は(わたくし)の事知らなかったようですね。

 

『そういやぁ、お前さんのお祖母さん有名人なんだな?いやぁ、道理で礼儀正しいと思ったぜぇ。ま、あたしにゃ関係ないことなんだがな』

 

そして、クラスメイトの皆さんに、たまに遊びに行かせていただいている三年一組の皆さん。前田さんに武田さん、風太郎さんに零奈ちゃん。

 

『ん?桜ちゃんの家のこと?』

『そんなのいちいち気にしてらんないわよ』

『そう…桜はあくまでもカズヨシを好きな私たちのライバル…』

『あはは…私はちょっと違いますが、桜ちゃんは大切なお友達だよ!』

『どのような家庭環境だとしても、私たちの関係は変わりませんよ』

 

五つ子の皆さん。そしてーーー

 

『桜』

 

優しい声と笑顔で(わたくし)の事を呼んでくれる和義さんが頭を過ります。

 

「大変申し訳ないのですが、(わたくし)がここで教えを乞いたいと思う相手は決まっております。ですので、今回のお申し出はご遠慮させていただきます」

 

(わたくし)の答えが気に食わなかったのか、無堂先生の雰囲気が変わりました。

これが和義さんや下田先生と同じ教師?信じられません。

無堂先生が何かを言おうとした時。

 

「あー…無堂先生?ここで何を?」

 

自習室の入口から下田先生が声をかけていただきました。

 

「いや、自習をしている生徒に挨拶をしていただけさ。失礼するよ」

 

そして無堂先生は下田先生の脇を通って行ってしまいました。

張り詰めていた空気が一気に無くなると、急に体の力が抜けてしまいました。

 

「……と。大丈夫かよ?」

「は、はい。ありがとうございます」

 

そんな(わたくし)を下田先生が支えてくださいました。

 

「ったく。あんの野郎ぉ、一度文句を言ってやりゃあならんのかねぇ」

「そんな。大丈夫ですよ」

「そうは見えんがね…………お前さんしばらく塾を休みな」

「え?」

「またいつあいつが声をかけてくるか分からんからな」

「しかし…」

「なぁ~に。来ても良くなったらまた連絡するさ。そうだなぁ…お前も五月と同じく和義のところに行ってろ」

「え?五月さんが?」

「ああ。五月はあいつの特別教室には参加しないで和義の家で勉強するってよ。塾側の人間としては大っぴらに言えねぇが、お前もそうしろ。な?」

「和義さんの……」

 

あの方の近くで勉強が出来る。それだけで先程の嫌な出来事を忘れてしまう程でした。

 

「ふっ、その顔を見りゃあ決まったもんだな」

 

ニカッと笑って下田先生が言ってきました。それほど顔に出ていたのでしょうか。恥ずかしいです。

 


桜に無堂先生が接触してきた事を聞いた時はビックリしたものだ。

桜曰く、楓さんに接触しようと前から良くあっていたそうだ。

今回の無堂先生の態度も今までのそういった大人と一緒だと。

てことは、桜に会うためにこの町に来たのか?

うーん、まだそう結論付けるのは早いか……

 

「和義君?」

「え?」

 

考えに浸っていると、訝しげに五月が声をかけてきた。

 

「どうかしたのですか?和義君が勉強を教えてくれる時に考えごとなんて…」

 

桜も心配そうな顔でこっちを見ている。

 

「ごめんごめん。ちょっと日の出祭の事でね。気分改めるって訳じゃないけど夕飯でも作ろうかな。二人は食べてく?」

「いいんですか!?」

「ふふっ、(わたくし)もご相伴にお預かりしたいです……あの、和義さんさえ良ければ今日泊まっても良いでしょうか?」

「は?」

「さ、桜!?」

 

桜の発言に僕はビックリしたが、五月も驚いたようだ。

ちなみに夏休み明けから五月は桜を呼び捨てにしているそうだ。

 

「それはどうなんだろうね……ほら、親御さんが心配するだろうしさ」

「では、両親が承諾すれば良いのでしょうか?」

「うぇ!?いやー、まあ男子の家に泊まっても良いって親御さんが言えばだけど……」

「承知いたしました。少々お待ちを」

 

そう言うと携帯を取り出し、少し離れた場所で電話をしだした。

え?本気だったの?

 

ちょ、ちょと和義君!いいの?多分、桜本気だよ?

み、みたいだね…だ、大丈夫でしょ。いくらなんでも男子の家に泊まっても良いと言う親はいないって

だといいんだけど...何せおばあちゃんの息子夫婦だからなぁ

 

五月のその発言に『そうだった』と思うも時すでに遅し...

 

「両親から承諾が得られました。お婆様の認めた人であれば何も問題がないと」

 

ニッコリと微笑みながら桜は答えるのだった。

 

・・・・・

 

『直江君。どういう事なのか説明してもらおうか?』

 

桜の両親からの了承がもらえた事で、今度は五月が中野さんに承諾をもらうために連絡をした。

中野さんの反応は分かりきっていたので僕は止めたのだが、頑なにやめようとしなかったので今僕は中野さんと電話で話をしている。

 

「いやぁ...どういう事なのか、と言われましても...」

 

僕が聞きたいよ、本当は!

 

『先日、君は一花君と付き合う事になったと報告は受けている。それは間違いないね?』

「はい...」

 

一花と付き合う事になった時はすぐに中野さんに報告はしている。

その時の圧も凄かったなぁ...今はそれくらいの圧を電話越しに感じている。

背中には冷や汗がダラダラと流れている程だ。

そんなに娘達が大事ならもっと交流しろ、と心の中で毎回ツッコミをいれている。

 

『では、なぜ五月君が君のところに泊まると言い出したのかな?』

 

だからそれも僕が知りたいことですよ、と心の中で叫んでいる。

五月は心配そうにこっちを見ている。

 

「卑しいことは何もありませんよ。勉強を見てほしいという五月さんと桜さんの願望に答えたら時間が経ちすぎた、というだけです」

『桜君?諏訪さんのお孫さんの桜君も一緒に泊まるのかね?』

「ええ。泊まりたいと言い出したのは桜さんです」

『そうか...ちなみに、もちろんだがレイナ君もいるのだろうね?』

「え?それはもちろんいますけど。小学生ですから...」

『っ...!そうだったね。僕としたことがおかしなことを言ってしまったようだ。五月君と君の二人きりでないのであれば間違いは起きない。そうだろう?』

「も、もちろんですよ!」

『なら良いだろう。しっかりと勉強を教えてやってくれたまえ』

「分かりました!では、失礼します!」

 

そこで電話を切る。

マジで緊張するからなぁ、中野さんとの電話って...

 

「あ、あの和義君。お父さんは何と...」

「あ、ああ...了承はもらえたよ。しっかり勉強をするように、だってさ」

「わぁー、やりました!」

「やりましたね、五月さん!」

 

手を取りながらめちゃくちゃ喜んでいる五月と桜。

はぁぁ...一花に謝罪のメッセージ送っとくか。

そして、いそいそとメッセージを送るのだった。

 


~中野家・リビング~

 

「ただいまぁ~~...」

 

一花が挨拶をしながら帰ってきてそのままリビングのソファーにダイブしてしまった。

 

「おかえり...て一花、ちゃんと着替えてきなさいよ」

 

キッチンで洗い物をしていた二乃が、だらけきっている一花にそう注意をする。

 

「分かってるてぇ~~...」

「一花、今日はいつも以上に疲れてるね?」

「まぁ~ねぇ~~」

 

ソファーの一番近くの椅子に座っていた三玖が心配そうに声をかけるも、一花には起き上がる気力もないようだ。

結局、二乃のご飯の用意が完了するまでそのままの状態で一花はいるのだった。

 

「四葉と五月ちゃんはもう寝ちゃったの?」

 

二乃の用意してくれたご飯を食べながら一花は一緒にいる二乃と三玖にそう切り出した。

 

「四葉は寝ちゃってるわね。あの子また無理してなきゃいいけど」

「五月は家にいない...」

「え?こんな時間まで塾に行ってるの?さすがに遅くない?」

「?一花何言ってるの?」

 

一花の回答に不思議に思った三玖は聞き返す。

 

「え?もしかして、友達の家にお泊り?」

「......一花、あんたメッセージ見てないわね?」

「まぁ、友達の家にお泊りは半分正解だけどね」

「へ?」

 

あまりに的を得ない一花の回答に、二乃と三玖は呆れ気味に答えた。

 

「メッセージ?おっと、何件か来てたね。あまりの忙しさで見れてなかったよぉ」

「はぁぁ...やっぱね。グループで送ってたのに既読が一人だけつかないから誰だろうと思ってたけど一花だったか...」

「じゃあ、ここで一花の驚きが見れるね」

「どういうこと?」

 

そう言いながら携帯を操作してメッセージを開く。そこには、

 

『明日から土日ですので、私と桜で和義君の家に泊まって勉強してきます。』

 

その文章を見た瞬間一花の箸が止まった。

 

「あー...思考が停止してるわね」

「私たちも通った道、仕方ない」

「てか、あの二人が行動を取るとはね。驚きだったわ」

「うん。そこは同意...」

 

二乃と三玖の二人が話している横で、一花は和義からのメッセージにも目を通した。

 

『グループでのメッセージを見たと思うけど、ごめん。二人を止められなかった。二人の親御さんが止めてくれると思ったけど、中野さん含めて親御さんが止めてくれなかったよ...』

 

そこまで読んで、ぷーっと頬を膨らませる一花。この姿を見た和義は、悪いながらも可愛いと思ったかもしれない。

しかし、和義の続きのメッセージを読んだ一花は怒りが収まった。

 

『僕が女性として好きなのは一花だけだから、無理かもしれないが安心してほしい。愛してるよ』

 

「えへへ...」

 

一花は笑みを押さえることが出来なかった。

 

「あらら、これはカズ君から何か届いてたわね」

「むー...私たちだけもやもやが残るのが釈然としない...!」

「そうねぇ......そうだわ、いいこと思いついちゃった♪」

「?」

「三玖、あんたも協力しなさいよ」

 

不適な笑みを浮かべながら二乃は言う。そんな様子を、一花は和義からのメッセージをじっと見ていたため、気付くことはなかった。

 


「は?合宿?」

 

次の日は久しぶりのREVIVALでのバイトだったのだが、バイト終わりに零奈を交えて話したいと二乃から言われたので、五月と桜に零奈をREVIVALに連れてきてもらった。

そこに三玖も合流したので結構な大所帯である。

そこで二乃が合宿をしようと提案してきたのだ。

 

「そうよ。日の出祭までそんなに時間がないから、少しでも料理の腕をあげときたいのよ」

「うん。和義にお母さん。焼きそばとパンケーキそれぞれの先生がいる」

「やるからには負けたくないじゃない?最優秀店舗狙うわよ」

「はぁー...?それで合宿?」

「そうよ」

「どこで?」

「もちろん、カズヨシの家...」

 

なんで決まっている、みたいな顔で言うんだろう三玖は。

 

「いいですね、合宿!勉強も見てくれれば一石二鳥です」

 

二皿目のケーキを食べながら笑顔で五月は言う。ペース早いな五月...

 

「これで三票。中野家は合宿参加に賛成で決定」

「一花と四葉は?」

「聞いてないわよ?」

「「......」」

 

僕と零奈は言葉が出なかった。姉妹五人だから三票の時点で過半数だもんね。もう出来レースじゃん。

 

「えっと...僕と零奈の意見は反映されないのかな?」

「なに?反対なの?」

「う~~ん、零奈はどう思う?」

 

席の関係上、今日は僕の膝の上にいる零奈に聞いてみた。

 

「そうですね。特に反対する理由はありませんが...一応言っておきます。兄さんの彼女は一花ですからね?」

「分かってるわよ、そんな事」

「当然...」

「はぁぁ、昨日から本日までの五月と桜さんには特に目立った行動はなかったですが、一花が悲しむような事はしないように。いいですね?」

「「「はーーい」」」

 

何か自然の流れで合宿が決定したんだけど...まあいいか。

しかし、一花の悲しむような行動をしないようにか...

多分今の言葉は僕にも言っているのではないか。そう感じてしまった。

 

「あの、その合宿(わたくし)も参加しても宜しいでしょうか?」

「いいんじゃない?ねえ?」

「問題ない…」

「楽しくなりそうですね!」

「「……」」

 

この娘達は何で泊まる場所の家の人をそっちのけで話を進めることが出来るのだろうか。

まあ、桜はこれから塾を休むことになって、ほぼ毎日うちに通うことになるだろうから、親御さんの承諾がもらえれば問題ないか。

 

「そういえば二乃。僕が用意した招待状はもう中野さんに渡した?」

「うっ...」

 

この反応。まだ渡せてないな。

 

「何ですか。招待状くらい渡してもいいではないですか」

「だって、今さらって感じだし。来てくれるか分かんないし...」

「きっと来てくれますよ。あの人も変わろうとしています。現に夏休みの前半はご飯だけでも顔を出していたではないですか」

 

へぇぇ、中野さんなりに頑張ってはいるんだ。

 

「それはそうだけど...あれだって、お母さんかもと思って様子を見に来たようなもんでしょ?」

「まぁ、その考えは否めないですが」

「どうせまた陰でコソコソしてるんだわ」

「二乃、お父さんには手厳しい...」

 

確かに。

この父娘は、お互いを大事に思っているのに歩み寄れないという、ホント見てて歯がゆい父娘だよ。

 

「二乃。本当に中野さんは何もしてくれなかったの?きっと、二乃達の事を見てアクションをしているはずだよ。陰でコソコソも悪くないと思う。きっとそれも何か理由があるんだよ」

「カズ君...」

「兄さんの言う通りです。あの人もあの人なりにあなた達を見ていますよ」

「お母さん...」

 

僕と零奈の言葉に二乃はしばらく考え込んだ。そして、

 

「三玖、五月。招待状の文面は一緒に考えてくれない?」

「分かった...」

「ええ」

 

二乃のそんな言葉に微笑みながら三玖と五月は答えた。

ちなみに、この後また中野さんから電話で色々責められたのは言うまでもない。

 


~院長室~

 

週も空けたある日。院長室では、娘から届いた招待状を笑みを浮かべながら見ているマルオの姿があった。

 

「おーおー、良い部屋だな院長先生。こんな部屋が用意されてんじゃ、家に帰りたくなくなる気持ちもわかるぜ」

 

そこにノックもせずに勇也が院長室に入ってきた。

 

「......お前の入室を許可した覚えはない。すぐさま出ていけ上杉」

「おいおい、随分水臭ぇじゃねーか。いい情報知らせに来てやったのによぉ」

「?」

「来てるぜ、十数年ぶりだ。同窓会しようぜ」

「意味がわからない、つまみ出してくれ」

「あ!てめっ!」

 

院長室からマルオは勇也をつまみ出そうとするも、勇也は従おうとしない。

 

「はぁぁ...主語を言え、主語を」

「んあ?」

「誰が来てるんだ?」

「ああ、忘れてたぜ。これだ」

 

そう言って勇也はある広告をマルオに見せる。

 

「!」

「どうするよ?」

「この事を知っているのは?」

「この事を教えてくれた下田、それに直江先生と綾先生。後は和義だな」

「!」

 

(なるほど。それで、五月君の勉強を急に見るようになったのか。いや、前から見てはくれているが、塾に行かせないために勉強を見る時間を増やしているのか。五月君に彼を会わせないために...)

 

そこで笑みを浮かべるマルオ。

 

「マルオ?」

「ふっ...僕達がどうこうしなくても、綾先生あたりが動くさ。だが、それでも僕達で出来ることをしておくのも悪くない」

「へっ、そうこなくっちゃな!」

 

大人達も大人達で何やら動いているようではあったが、その事は和義の知るところではなかった。

 


~上杉家~

 

今日も風太郎はバイトに励んでいた。

そして家に帰る途中、父である勇也と合流をした。

 

「風太郎。お前も今帰りか?」

親父(おやじ)。今日は仕事休みだったんだろう。どこ、ほっつき歩いてたんだよ」

「ま、昔のダチとな。らいはが待ってるだろうし、早く帰ろうぜ」

「はいはい」

 

そして家に到着した風太郎は予期せぬ人物が自分の家にいたことに驚いていた。

 

「……なぜお前がうちにいる、五月」

「あっ」

 

そう中野家五女の五月である。

 

「お兄ちゃん、お父さんお帰りー」

「五月ちゃん、来てたのか」

「お父様、お邪魔しております」

「お邪魔すんな、帰れ」

もー、失礼なこと言わないの!

 

失礼な物言いの風太郎の頭を持っていたお玉でゴンと叩きながら、らいはは風太郎にツッコミを入れた。

 

「こちらです」

 

五月はそんな上杉家のやり取りを驚きつつも、カバンから招待状を出して風太郎に差し出した。

 

「和義君が上杉君に渡した覚えがないと。そして、上杉君の家を知っているのは私だけですので...」

「なるほどな。ん?和義本人は何してるんだ?」

「和義君は今、二乃と三玖に焼きそば作りを教えていますので」

「ああ...なるほどな」

 

(そういえば、合宿して料理と勉強を教えるって言ってたな。あいつの面倒見の良さは筋金入りだな)

 

「五月ちゃんそれはなんだい?」

 

二人の会話が一段落したと考えた勇也は五月に問いかけた。

 

「学園祭の招待状です。中に、出し物の無料券や割引券が入ってて便利ですよ」

「へぇ~、こりゃ助かるぜ。サンキューな」

「お兄ちゃん、なんでこんな大切なもの忘れてたの。五月さんにお礼を言って」

「あ...あり...」

 

らいはに言われながらも中々素直にお礼を言えない風太郎。

 

「学祭、俺達も楽しみにしてるからよ......ところで五月ちゃん。今日まで何もなかったか?」

「?和義君の家での合宿が始まった以外には特になにも...」

 

(そういやぁ、和義も事情を知ってるんだったな。ふっ、零奈(れな)先生の事を詳しく知ってるなんて、よほどこの娘たちや下田に信頼されてるんだな。お蔭で、先手先手で動いてくれて助かってるぜ)

 

「なんのことだ親父(おやじ)

「外はもう(くれ)ぇから、女の子一人じゃ心配ってだけだよ。おい、風太郎。帰りはちゃんと送ってけよ」

「はーい、カレーできましたよー」

「い、いただきます!」

 

・・・・・

 

夕飯のカレーをご馳走になった五月は風太郎と一緒に直江家に向かっていた。

 

「そういやぁ、聞いたぞ。お前B判定だったんだってな。やるじゃねえか」

「ええ。お二人の教えのおかげです」

「何言ってんだ。お前の実力でもあるだろ」

「ふふふ、ありがとうございます。とは言え、まだまだ油断はできませんからね。和義君には言いましたが、学園祭の初日だけでも勉強をしようかと」

「お、おお...そこまで考えているとはな。ま、何にせよこれで落ちたら、俺達のやってきたことが無意味になっちまう」

 

そんな風太郎の言葉に五月は目を丸くしている。

 

「それは違いますよ」

「!」

「女優を目指した一花。調理師を目指した三玖との時間は無意味だったのでしょうか」

「!そうは...思いたくないな」

 

風太郎の回答に満足気な顔をする五月。

 

「私たちの関係は、既に家庭教師と生徒という枠だけでは語ることができません。まあ、和義君と一花はもう付き合ってるのですけどね」

「......」

 

苦笑いをしながら話す五月にどう答えて良いのか迷う風太郎。

 

「......私のようにきっとみんな思ってるはず。上杉君、たとえこの先失敗が待ち受けていたとしても、この学校に来なかったら、あなた達と出会わなければ、なんて後悔することはないでしょう」

 

少し頬を赤くしながらもまっすぐ風太郎を見て自分の気持ちを伝える五月。

 

(この関係は無意味じゃなかった、か...)

 

夜空に輝く月を眺めながら、風太郎はそう心に留めるのだった。

 

 




原作より早いですが、無堂登場です。
無堂なら諏訪家との関係を持ちたいと考えるのではないかと思い、桜との接触を書かせていただきました。

さて、次回から日の出祭を開始したいと思います。
原作とは違い、「最後の祭りが~の場合」が使えないので大変ですが頑張りたいと思っております。

どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

外伝的に他のヒロインのお話も書いた方が良いでしょうか?

  • 外伝はいらない
  • 二乃
  • 三玖
  • 四葉
  • 五月
  • 零奈
  • ハーレム
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