『いよいよ始まります、旭高校「日の出祭」。まずは、我が校が誇る女子生徒ユニットによるオープニングアクトです』
二乃を中心の五人組ユニットによって、ステージ上でアイドルのように歌とダンスが始まった。
その光景を僕と四葉はステージ脇で見ている。
「二乃かっこいい!」
「二乃……これ、よく引き受けたね…」
二乃の性格からこういうのには参加しないと思ってたけど…
けど、実際歌も上手いし笑顔で出来ているから生徒皆が盛り上がってる。
うん、日の出祭出だし好調だね。
『第29回「日の出祭」、開幕です!』
ステージ上でのセレモニーが終わると同時にアナウンスによってそう宣言され、生徒達のボルテージも一気に上がる。
この高揚感、やっぱりいいなぁ。さぁて、屋台頑張りますか!
開幕セレモニーが終われば屋台での仕事が待っている。
うちのクラスは焼きそばにパンケーキと2つもあるもんだから管理が大変だ。まあ、店は並んである分助かるんだけど。
てなわけで、学級長として全体を見るという仕事は風太郎に任せている。
『こういうのは適材適所でいくもんだ。お前は現場を見てた方がいいだろ。こっちは任せとけ』
あの風太郎が自ら仕事に買って出るとはねぇ。
まあ、助かるんだけどね。
「パンケーキの方いつでもいけるよ」
「焼きそばもドンと来いだぜ!」
それぞれのリーダーである、三玖と前田から準備完了と合図が出される。
「よし!そんじゃまあ、皆張り切っていこうか!」
『おーーーー!』
さて、呼び込みや裏方は担当の人に任せてこっちも頑張りますか!
「それじゃあ、作っていこうか。前田、僕の横でしっかり見て調理してね」
「任せとけ!」
焼きそばの調理開始だ。
焼きそばについては、初日は僕が中心に作っていき、横に担当が交代で付き僕の作るのを見ながら調理してもらう。
「三玖ちゃん、うまっ」
「誰かに教わったの?」
「えっと…親戚…?」
「なんで疑問系?」
「ほーい、取り敢えず十人前出来たから分けて置いとくねー」
焼きそばを作っていると、横のパンケーキブースから話し声が聞こえてきた。
まあ、母親は死んでるのにそこでお母さんと言うのもおかしいし、友人の妹もなんかおかしいもんね。
「早ぇよ直江!もうちょいゆっくり作ってくれないと、参考にならないだろ」
「そう?……そういえば、二乃は?」
前田に頼まれたのでゆっくり作りながら、パンケーキブースの三玖に聞いてみた。
「分からない。さっきのステージが好評だったから誰かに捕まってるのかも…」
「なるほどね」
そうなってくるとこっちに来れないか?
「安全点検に参りましたー。皆さん調子はどうですかー?」
「四葉、お疲れさん。こっちは問題ないよ。お客さんも結構来てるしね。風太郎は別行動なんだ」
「ええ、何かと忙しいので」
「そいつは悪いことしたかな。後でお礼言っとくか……ほい、これ僕からお裾分け。もし風太郎に会ったら、風太郎にも渡したいからここ寄るように言っといてよ」
そう伝えながら焼きそばの入った袋を渡す。
「おー、ありがとうございます!上杉さんの件は了解です!……食材の鮮度は問題なし。火の回りも問題ないみたいですね。さすが直江さんです!では、また15時に」
「ああ」
実は風太郎から僕と五つ子と桜それぞれに、学園祭の間に全員で集まらないか、と連絡が来ていたのだ。
それが初日の15時。
こっちも何とかなりそうだ。
そして時間が過ぎ……
「ここまでは順調だね」
「うん、二乃が来ないときはどうなるかと思ったけどなんとかなったね…」
お客さんが大分捌けたので三玖と僕は裏で少し休ませてもらっている。
そんな時だ。
ピトッ
「っ…!冷たっ!」
頬に冷たい何かが当てられた。
「いい反応だねぇ~。お二人さんお疲れ様」
「「一花!?」」
振り返るとにんまりと笑って、ペットボトルを差し出している一花の姿があった。
「一花、仕事は?」
「急に無くなったからね。やっぱり学園祭には参加したいじゃん?」
「よくここまで来れたね?誰かに見つからなかったの?」
「そこは抜かりないよ」
三玖の質問に鞄からウィッグを出して被ってみせる。
「なんで私…?」
「いやー、最初は二乃に変装してたんだけど、なぜか追い回されちゃって…二乃何かしたの?なんか、レッドがどうの言ってたけど」
「「あぁぁ…」」
確定だね。二乃、追い回されてるのか…
「……カズヨシ。ここはいいから一花と回ってきなよ」
「え、でも……」
「大丈夫。本当にヤバい時は呼ぶから…」
「三玖…」
三玖の言葉に申し訳なさそうな顔で一花は答えている。
「分かった、ありがとね三玖。一花行こうか」
「う、うん。三玖、私からもありがとう」
「うん。いってらっしゃい。後でね…」
そんなわけで、急遽一花との学園祭デートが決まった。
とはいえ、一花は学内でも有名人。
念には念を、三玖のウィッグを被ったうえで帽子を被りメガネをかけてもらった。
実際、僕も伊達メガネを念のためかけている。あんまり効果は望めないけどね。
「ふふふ、これだと本当にみんなには姉妹の誰か、というより誰かも分かんないね」
「ああ。まあ、他の姉妹には分かるかもしれないけど、姉妹にバレても問題ないでしょ」
「そうだねっ」
一緒に回れることになったのが嬉しいのか、一花はご機嫌である。
本来の一花の姿ではないとは言え、こうやってデートっぽく一花と歩き回るのは、何気に旅館がある島以来かもしれない。
そんなウキウキな気分で屋台を回っていると見知った顔に出会った。
「あれ?和義さんだ」
「おー、和義は休憩か?」
らいはちゃんと勇也さんの父娘である。
「こんにちは。勇也さんにらいはちゃん。初日からいらっしゃってたんですね」
「まあな……て、誰だその横の女の子は?」
「うーん…顔は五月さん達だから、五人のうちの誰かだと思うんだけど…和義さんと回ってるってことは、もしかして一…」
「しーー…!」
らいはちゃんが誰かを言おうとしたところで、口の前で人差し指を立て黙ってもらうようにアクションを起こした。
「そっか…」
察しの良いらいはちゃんは両手で口を覆った。
「なるほどな…」
「あははは……」
勇也さんも察したらしく、そんな二人に乾いた笑顔で一花は答えた。
「そうだ。和義、ちょっと…」
そこで勇也さんに手招きされ近づくと肩に腕を回され内緒話の態勢に入った。
「悪いらいは、ちょっと二人で話しててくれないか?」
「いいけど……」
そこで一花とらいはちゃんが話しだした。
「どうしたんですか?めっちゃ、らいはちゃん怪しんでますよ?」
「無堂の野郎を見なかったか?」
「え!?………あの人ここに来てるんですか?」
驚いてちょっと大きめの声を出してしまったので一花達の方を見るも、こちらを気にせず二人で楽しそうに話している。
「いや、確定要素はないがもしかしたらと思ってな。見回りも兼ねて来てるってわけだ」
「なるほど。であれば、僕はまだ見てないですね。後、あの人は桜にも接近してます」
「桜ってぇと、前に綾先生が言ってた有名人の孫か?」
「そうです。桜は塾の自習室で話しかけられたと言ってました。恐らく、桜のお祖母さんの諏訪楓さんに接近するために。あわよくば、諏訪家に気に入られたかったんだと思いますよ」
まあ、
「あいつの考えそうなことだな」
「桜のクラスの出し物には今から顔を出そうと思ってたので、何かあったら連絡しますよ」
「助かるぜ。こっちも進展あれば連絡する」
そこでお互いに頷き話は終わった。
「
「はいはい。じゃあまたね和義さん」
「ああ」
手を振ってくるらいはちゃんに、僕と一花は振り返した。
「それで?なんの話をしてたの?」
やっぱり追及してくるよね。
「う~ん、今は言えないかな…」
「そっか…ならよしっ!」
「え?良いの?」
「うん。今はってことは、後で教えてくれるんでしょ?なら大丈夫。それに、カズヨシ君が話さないってことは、私たちのためでもあるんじゃない?」
この娘は良く分かってらっしゃる。
「僕の事良くわかってるね、一花って。ここが人前じゃなかったら抱きついてたよ。残念……」
「ふふっ、それは私も残念だったな」
少し前に出て振り返りながら、ウィンクしてニッコリと笑う一花。
恋愛を馬鹿にしていた自分ですら変わってしまうんだな。ヤバい、もっと一花の事好きになってきた…
そして一花の耳元に顔を近づけて。
「もっと一花の事好きになってきた」
思ったことを直接呟いた。
「ふぇぇぇーーー!」
「ふふっ、耳まで真っ赤だよ」
笑いながら一花を置いて先に進む。
多分僕の顔も赤くなっていると思うから。
「あっ、和義さん!」
その後、桜のクラスの出し物をしている教室まで移動した。
確か、桜のクラスは和風喫茶だっけ?
そんな風に考えながら到着すると、着こなしやすい着物姿にアレンジした服装、ミニスカ浴衣の桜に出迎えられた。
うーむ、眼鏡だけじゃバレちゃうか。
「へぇ~、可愛い制服だね。似合ってるよ」
「~~~っ…ありがとうございます!……中野さんですよね?誰でしょう……」
「あははは、誰だろうね。それよりも席の案内お願いできるかな?」
「あーっと、失礼いたしました!こちらにどうぞ」
慌てて桜は姿勢を正し席まで案内してくれた。
「それでは、注文が決まりましたらお呼びください」
姿勢正しくお辞儀をした桜が離れていく。
周りが少し騒がしくなったが、恐らく桜が僕の名前を呼んだことで女子達が騒ぎだしたのだろう。
「相変わらず人気者だねぇ、君は。嫉妬しそうだよ」
「ははは…僕はまだ誰とも付き合っていない事になっているからね。多分、今相席してるのは誰だろう、とか。中野さんの誰かだよね、とか話してるんじゃない?」
「へぇ~~…」
若干ふてくされてる顔をしてる一花。
こればっかりは、僕にもどうしようも出来ないからなぁ。
そして、注文内容が決まったので桜を呼ぶことにした。
「注文承りました………あのぉ…和義さんに一つお願いがあるのですが…」
「ん?どした?」
桜にしては歯切れが悪い。
「そのぉ…クラスの女の子達が和義さんと握手をしたいと…」
「は?握手?」
「はい…
チラッと桜の後ろの方を見てみると、期待の眼差しでこっちを見ている女子生徒達がいた。
「あの!全然断っていただいて良いので。和義さんがこういうのがお嫌いだと十分理解してますので」
断っても良いと必死に言ってくる桜。
仕方ない。
「クラスの女の子だけだよ?それ以外は駄目だからね?」
「い、良いのですか!?」
「ああ、桜の友人だしね」
「……っ!ありがとうございます!すぐに呼んできますね!あ、注文の品も用意します!」
「いや、僕から裏手に行くよ。ここだと混乱しそうだし」
「そうですね。では、こちらにどうぞ…」
「すぐに戻るよ」
「うん……」
一花に一言伝えて裏手に回る。
五人くらいの女の子がいたので、その全員と握手をする。
「ありがとうございます!」
「桜ちゃんありがとー」
僕へのお礼はもちろんだが、皆桜にもちゃんとお礼を言っている。中には泣き出した娘もいたので驚いたが…
うん。桜の友人関係も良好みたいだ。良かった良かった。
なお、桜も握手に参加してきたのは言うまでもない。積極的な娘になってきたよねホント。
ただ、席に戻った時には若干ムスッとした一花がいたのも想像通りではあった。
「ん……ちゅっ……んっ……」
二人っきりの時間を作った方が良いと考えた僕は、学園祭中は立入禁止である屋上まで一花を連れてきた。
屋上の出入り口からも死角になる場所に座るや否や、一花からキスをされた。
「はぁぁ……やっと二人っきりになれたね」
キスに満足した一花が僕の肩に頭を置くように寄りかかってきた。
「ご満足されましたか、お姫様?」
「うむ...余は満足じゃ」
「それお姫様じゃなくない?」
「いいじゃん。ノリだよ、ノリ」
「はいはい...」
その後はどちらから話す訳でもなく遠い景色を眺めていた。こういう何も話さずゆったりするのも、一花といると良いものだ。
「ごめんね。気を遣わせちゃったよね?」
「さあ?何の事かな」
「ふふっ、本当に優しいんだ......ダメだなぁ私。ただの握手でも嫉妬しちゃったよ」
「それを言ったら、この間のドラマの相手役の女の子に嫉妬したんだけど、僕」
一花から出演するドラマの情報をもらったのだが、まさか女の子同士とはいえキスをするとは思わなかった。
まあ、女優だからいずれそういう事もあるだろうとは思っていたんだけど...
「あー...大丈夫だよ。男の人とのキスはNGのつもりだから。男の人とのキスはカズヨシ君だけ」
「そっか...」
「ふふん、安心したね?」
「まあね」
「おや、素直だね......んっ」
そこで、僕から一花の唇に軽くキスをする。
「当たり前だよ、一花の事だもん。さて、そろそろ風太郎との約束の時間だし行こうか?」
「......うん」
手を差し出し、少しの時間でもと思い手を繋ぎ屋上を後にした。
一花と並んで風太郎との集合場所の教室に向かう途中、ある教室で何かを一生懸命に見ている二乃の姿を目撃した。
「あれって二乃じゃない?」
「ん?ホントだ。何を真剣に見てるんだろ?」
その教室の入り口には、『とある教室からの脱出』、と掲示されていた。
なるほどこれをしながら追いかけを撒いていたのか。
二人で二乃の後ろに近づくが真剣なようで一向に気づかない。
何々?
『100円玉 20 0月0日 に進め』、か。
「この問題を解けばいいの?」
「!カ...カズ君...なんでここに...」
全くの予想外の出来事だったからか、すごいビックリしてる。
「ふふっ、もうすぐ約束の15時だからね。声をかけたんだ」
「え!?い、一花よね?なんて恰好をしてんのよ」
「あはは...私も二乃みたいに有名人なので...」
「なるほどね。これは、私たち姉妹以外は見分けられないわね」
「それで?二乃はこれ解けたの?」
「さっぱりよ」
「ふーん。じゃあ、ここはわれらがカズヨシ先生にお任せしましょう」
「人任せですか...」
うーん...20と0月0日の間が空いてるから、これは別々に考えればいいのかな?
0月0日。書き換えると0/0。なるほど、これで20%ってことか。
じゃあ、100円の20%だから...
「では、数学が得意な一花君」
「ふぇ!?いきなりだな...」
「100円の20%は何円でしょうか?」
「え?なんでいきなり...」
「20%......そうか!」
「二乃は分かったみたいだね。で、一花答えは?」
「えっと、100%で100円だから10%で10円?その2倍をすればいいんだから......20円?」
「すごい解き方だね...一花の特別問題集を増やしておこう」
「何で!?」
「なるほどね。20円。つまり二重円か」
「そゆこと。じゃあ、二重円が書かれてるところに行こうか」
その後は何事もなく解けていき、無事に教室を脱出した。
そして、二乃も含めて三人で集合場所に向かうことにする。
「てか二乃。追い回されたくないなら、そんな目立つ格好してないで着替えたらいいのに」
「だって...見てほしかったんだもの」
頬を赤くして上目遣いでこちらを見てくる二乃。
その顔は反則である。
「あー...まあ...その...似合ってるよ。オープニングセレモニーでの歌とダンスもカッコよくて、可愛かった」
「本当!?」
「ああ。こんなことで嘘付かないよ」
ポンポンと軽く頭を撫でてあげると、パァーッとした笑顔を向けてきた。
「っ…!」
「?どうしたのカズ君?」
「い、いや…気にしないでくれ…」
一花さんや。見えないところで摘まむの止めてくれないかな?
チラッと一花を見るが、目が合うとツーンとそっぽを向かれた。
「ところで、すごい盛況だったみたいだね。私、最初は二乃に変装してたんだけど、追いかけられちゃった」
なははは、と頭をかきながら一花が言う。
「うっ…!それは悪いことしたわね」
「本当は四葉がやる予定だったんだけどね。二乃が買って出たんだよ」
「へぇ~」
「あの子はいい顔して仕事引き受け過ぎなのよ。演劇部も助っ人行くんでしょ?練習とかどうするつもりだったのよ」
「確かに…」
「あの子の性格上仕方ないかもしれないけど、自分のことも考えなさいよね、まったく。これじゃあ陸上部の二の舞よ」
「あはは…」
二乃の言葉に僕と一花は反論出来ない。
「まあそれでも引き受けるんだから、さすが姉妹想いの二乃だね」
「っ…!カズ君に誉めてもらえるのは嬉しいけど、それだけの理由じゃないの。この仕事を引き受けたのは…」
「ん?他の理由があったの?」
二乃の言葉に一花が質問する。
「……舞台の上からなら客席が見渡せると思ったのよ」
「「!」」
客席をってまさか…
「もしかしてお父さんを探してたの?」
「まあね…」
「そうか…」
「影も形もなかったわ。ま、ダメ元で元々気にしてなかったけどね」
どう見ても気にしてないって顔じゃないでしょ。
「皆との集合の後は一花を送るから、その後に少し探してみようか。朝からじゃなくて後から来てるかもだしさ」
「そうさせてもらいな、二乃」
「うん......ありがと、カズ君」
そんな話をしながら、集合場所に向かうのだった。
いよいよ日の出祭開催です!
初日を一話で終わらせようと思っておりましたが、キリも良いのでここで止めさせていただきました。
こちらの作品では、原作のように屋台同士が仲悪くないので、三玖の原作エピソードはほとんど書けません。なので、三玖の出番がちょっと少ないかもですね。
と言いつつ、今回のお話では五月が一度も出ていませんが...
大丈夫です。次のお話ではちゃんと出てきますので!
では、次回も日の出祭の初日を書かせていただきます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
外伝的に他のヒロインのお話も書いた方が良いでしょうか?
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外伝はいらない
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二乃
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三玖
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四葉
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五月
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零奈
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桜
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ハーレム