五等分の奇跡   作:吉月和玖

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97.日の出祭二日目

「え!?それ本当ですか?」

『ああ、さっき風太郎に聞いてな。お前と先生たちにも共有しておこうと思って連絡したんだ』

「ありがとうございます。父さんと母さんにも伝えておきますね。おやすみなさい」

 

勇也さんからの電話が終わり受話器を置く。

 

「何だ、上杉からか?」

「そう。さっき風太郎から聞いた話を共有してくれたみたい」

「風太郎君から?」

 

リビングのソファーで夕飯を食べた後ゆっくりしている父さんと母さんから電話の内容を聞かれる。

ちなみに零奈は今お風呂に入っている。

 

「そう。何でも風太郎が日の出祭の会場で無堂先生を見たんだって」

「何!?」

 

自分のお茶を用意しながら電話の内容を伝えると、父さんが反応した。

 

「本当に無堂だったのか?」

「うーん...はっきりとは分からないけど、風太郎が道の案内をした男性が無堂先生の特徴に似てたんだって」

「特徴ってどんな?」

「ひげがもさっとしてて、上下反対にしても顔になりそうなおっさん、だってさ」

「それはそれは...やっぱり来てたんだ、無堂先生」

「うーむ…それで?誰かと接触したのか?」

「そこまでは分からないって。そもそもあの娘達は無堂先生の存在自体知らないからね。ただ……」

「ただ?」

 

用意したお茶を持ってソファーに腰かける。そして母さんの疑問に答えた。

 

「風太郎が案内した場所がね、気になってるんだよね」

「場所?どこを案内したんだ?」

「食堂だよ」

「食堂って、何でそんなところに…」

「父さん達に会わない為か、疲れて休みたかったか分からないけどね。そこでは今日一日、五月が勉強してたんだよね」

 

母さんの疑問に答えながらも五月が食堂で勉強していたことを伝えた。

 

「そんな...じゃあ五月ちゃんと...」

「接触してる可能性がかなり高いね。ちなみに桜への接触はなかったみたい。桜は基本自分の教室で仕事をしてたみたいだし、それ以外はクラスの女子と一緒に行動してたから声かけずらかったんじゃないかな」

「何にしろ、今後は五月ちゃん以外の子にも声をかけるかもしれん。和義、大変かもしれんが明日以降も気にしてやってくれ」

「それは問題ないけど...」

 

流石に一人で、桜を合わせた六人の様子を見るのは不可能に近いな。

風太郎も勇也さんから気を付けるように言われているから様子を見てくれると思うけど、あっちはあっちで仕事が大変だろうし。

 

「私たちも行きたいんだけど、明日は外せない用事があってね...最終日なら行けるから」

「分かった。どこまで出来るか分かんないけどやってみるよ」

「ありがとう、和義」

 

とりあえず明日の六人のスケジュールの確認からだな。

一花は一日ドラマの収録があるって言ってたから、多分日の出祭自体には来れない。

二乃は僕と真逆のシフトだからなぁ。被るのは最後くらいだろう。今日の屋台の対応ができなかったのが痛い。

でも、確か二乃と五月がほぼ同じシフトだから二人で行動するように言うか、一人にならないように言うかだな。

幸いにして、三玖が一緒のシフトだから三玖には僕が付いておけば大丈夫か。

四葉は恐らくたくさんのところに加勢に行ったりで、一つのところに留まらないし色んな人といるからで声をかけずらいと思う。

念には念をで風太郎に四葉の様子を見てもらうか。

桜については、警戒心がすでにあるから、安易に接触をしようとしないだろ。とりあず、この間の男が日の出祭に来てるっぽい事を共有しておくか。それにあの人にも。

携帯で二人に共有すると両方から、『分かりました。共有ありがとうございます』と連絡が返ってきた。

後は明日だな。零奈がお風呂に入ってる時で良かったよ。

そんな風に考えながらお茶を口にするのだった。

 


そして迎えた日の出祭二日目。

開始のアナウンスが流れる前に二乃と少し話すことにした。

 

「五月の様子はどう?」

「うーん…いつも通りに見えなくもないけど…」

「そっか……僕から聞いても大丈夫の一辺倒だからさ。二乃が見てて気になったら教えてほしいんだ」

「それは構わないけど…」

「後、休憩時間の間に中野さんが来てないか見て回るつもりでもあるから、見かけたら連絡するよ」

「カズ君……ありがとう」

 

そんな二乃の頭を撫でてあげて、祭の散策に向かうことにした。

 

さて、三玖はクラスの宣伝のために急遽呼ばれてたからそこに迎えに行くかな。

そんな時ふとあるものに目が行った。放送部の人がお客さんに突撃インタビューをしているところだ。

あれってたしか、同じクラスの椿さんだっけ?

そこで一つ案が思いついたのでお願いすることにした。

 

「椿さん、ちょっとお願いがあるんだけど」

「おー、直江君じゃん!何々?」

「実は……」

 

よしっ、何とかお願いを取りつけることができた。まあ、インタビューを受けるのが条件に出されたのは仕方なかったが...

じゃ三玖の迎えに行きますか。

そんな時だ。

 

「あ、いたいた。和義大きくなったね。しかもイケメンだぁ」

「お前...何でここに」

 


~三玖side~

 

「ク、クラスで焼きそばとパンケーキの屋台やってます。とてもおいしいので、ぜひ来てください」

「はーい、ありがとうございまーす.........ありがとー協力してくれて。三玖ちゃん屋台のお仕事頑張ってね」

 

クラスメイトの放送部の子にテレビ出演をお願いされた三玖は、先程その撮影が終わった。

 

(わーっ、テレビに映っちゃった...!さてと、カズヨシと合流しなきゃだけど...まだ来てないのかな?)

 

宣伝の撮影の前に和義から休憩時間は一緒に回らないかと言われたので、三玖はすぐにOKをした。

和義曰く、一人で回ってもつまらないし、女子に声をかけられる可能性もあるから一緒にいてほしいとのことだ。

三玖にとっては、どんな理由であれ好きな人と一緒に学園祭を回れるだけで嬉しかった。

しかし、その和義が見当たらない。

 

(迎えに行くって言ってたのに...何かあったのかな?)

 

そんな時大きな荷物を運んでいる四葉が近くを通った。

 

「あ、四葉。ちょっといい?」

「んー?ああ、三玖か。どうしたの?」

「あのね、カズヨシ見なかった?」

「直江さん?うーん、私は見てないなぁ。仕事で結構あっちこっち行ってたけどね」

「そっか...」

「どうかしたの?」

「えっと...カズヨシが一緒にお祭り回ろうって言ってくれたから...」

 

少し照れながら四葉に伝える三玖。

 

「えーっ!?で、でも直江さんは一花と...」

「そうだけど、一緒に回るくらい問題ないと思う」

「まあ、そうだよね......あ、直江さんの声が聞こえたような気がする」

「!」

「行ってみようか」

「うん...!」

 

四葉は丁度荷物を運ぶ先だったのでその場に荷物を置き、二人で和義の声が聞こえた方に向かった。

 

パン......コツン

 

「おー!さすが和義。相変わらず何でもそつなくこなすよね」

「はいはい、それはどうも。まあ、竹林に褒められても嬉しくないけどね」

 

パン......コツン

 

「むー...君ってば私に対しての扱い相変わらず雑だよね?せっかく来てあげたのに」

「すみませんね、これが素なもんで。てか、来てくれって頼んでないし」

 

パン......コツン

 

「いいじゃない。久しぶりに会いたかったのよ」

「さいですか」

 

パン......コツン

 

「な、直江......頼む、もうその辺で勘弁してくれ......」

「あ、悪い。ついむきになってしまって。ほら、希望の商品はあらかた取ってあげたよ」

「ふふっ、ありがと」

「百発百中って......怪物かよ......」

(失礼な!)

 

射的屋の店員をしている生徒の言葉に和義は心の中でツッコミを入れた。

そんな様子を、三玖と四葉が陰から見ていることを知らず。

 

「へぇ...私に一緒に回ろうって言っときながら、別の子とデートですか...」

「あはは...直江さんも隅に置けないね...」

「......これって、浮気現場なのかな...」

「えー!?直江さんに限ってそんな事はないよ!」

「でも...カズヨシと女子が仲良く話してるところなんて見たことないし...」

「そうだけど...」

 

二人の心配をよそに和義と竹林は傍から見ると仲良く見えるように話している。

 

「ねえ、和義。次はあっち行こうよ」

 

そう言って、竹林は和義の手を握って目的地に引っ張っていった。

 

「「!!」」

 

その光景は三玖と四葉には衝撃的で声も出なかった。

 


竹林に再会したのは良いのだが、なぜかあちこち引っ張り回されてしまっている。

そろそろ解放してほしいんだが...三玖待ってるだろうな...

そんなこんなで、次に竹林が向かってる屋台が見えてきた。

げっ!?あそこはまずい!

 

「パンケーキに焼きそば、いかがで...」

 

看板を持って客引きをしている五月と二乃、後運が悪いのか丁度一緒にいた桜に手を握られているところを目撃されてしまった。

やばい......

 

「和義、パンケーキだって。食べようよ」

「いや......僕のクラスの屋台なんだよね」

「あ、そうなんだ」

「カ...カズ君...?」「か...和義君...?」「か...和義さん...?」

「いつもうちの和義がお世話になってます」

 

竹林があろうことか、そんな言葉を放ち僕の頭を無理やり下げるようにしてきた。

 

「うちの...」

「え...え...?」

どちら様ですかー?

 

二乃。声に怒気が混ざってるから...

てか、いつお前のものになった!

 

「初めまして。竹林と申します。和義と、後は風太郎も知ってますかね?その二人とは小学生から同級生です」

「あらそう。私たちも同級生だけど教師と生徒。いわば同級生以上の関係といっても過言じゃないわ」

「そうなんだ、奇遇ですね!私も和義によく勉強を教えてもらってたんです」

「!」

 

そう言いながら竹林が二乃の手を握っている。

 

「いや、ほとんど教えてないでしょ。そもそも竹林は頭が良いんだから」

「でも、分からないところを教えてもらったのは嘘ではないわ」

「まあそうなんだけど...」

「そんな訳で、私たちはお互いに切磋琢磨しながら成績を競い合った言わばライバル。教師と生徒に対してライバル。どちらがより親密かはっきりしてるよね」

 

こいつ何言ってんだ?

 

「なるほど、和義君と過ごした時間はあなたに負けてしまいそうです。しかし、その深さでは負けるつもりはありません」

「その通りです。(わたくし)達と和義さんとの関係の深さはどんな方にも負けるつもりはありません」

「君達...ここ往来の場所って分かってるよね?恥ずかしくなってくるから、そろそろ止めてほしいんだけど...」

「「!」」

「それに竹林。どんな意味でこんな事をしているのか知らないけど、この娘達は僕にとって大切な人なんだ。あんまりからかってやらないでくれ」

「そっか...あの女子を嫌っていた和義が...成長したね。みんなごめんね。パンケーキ一つ......後、焼きそばも一つお願いします」

「は、はいっ」

 

竹林の言葉に五月は答えて準備に取り掛かった。

 

「てか、竹林そんなに食べるのかよ?」

「うーん...もう少し和義と二人でいたかったんだけどねぇ。時間切れっぽい」

 

ちょっと先の方向を見ながらそう言ってきた竹林の視線の先には。

 

「真田......」

「久しぶりだね。直江君」

 

竹林の幼馴染でもある真田の姿があった。

 

・・・・・

 

「勉強の調子はどうなの、直江君?」

「ぼちぼちってところかな。そっちは有名進学校に通ってるから大変でしょ?」

「そんな事ないよ。いい刺激になってる。それでも全国模試一位になれなかったのは悔しかったけどね」

 

あのまま屋台の前で話すのも迷惑になるという事で、昨日風太郎が作ってくれたらしい、休憩スペースに来ている。

竹林と真田だけで良かったのだが、なぜか一花以外の姉妹勢揃いに加えて桜まで来ている。

なお、竹林と射的をやっているところから、三玖と四葉は見ていたらしい。

声かけてくれれば良かったのに...

 

「全国模試一位ね…」

「僕は二位だった。一位は君でしょ、直江君?」

「まぁね」

 

真田はさっき竹林が買った焼きそばを食べながら話しているから椅子に座っているが、僕は飲み物を飲んでるだけなので立ったまま話している。

 

「ねえ。あんたらって仲良くないの?」

「いや、そんなことないけど…」

 

二乃の質問に自信なく答えてしまった。

 

「ホントにぃ~?」

「うーん…皆には信じられないかもだけど、和義って昔は周りのことにとことん無関心だったんだ。勉強も出来て運動も出来る。普通だったら小学生だと人気者じゃない?」

「たしかに…今でもモテモテ…」

 

睨みながら言わないでほしいんだけど三玖。

 

「あー…今みたいにモテだしたのって、それこそ風太郎に勉強を教えるようになった頃かな」

「そ、そうなんですか!?」

「うん。そうだよね和義?」

「あー…そうだっけ?」

「もう惚けちゃって。それまでは、誰にも関心を持たずクラスメイトとも挨拶程度しか話さなかったんだよ。そんな子がモテるはずないよね?」

「信じられません。和義君が…」

 

五月だけではなく、竹林と真田以外全員信じられない、といった顔でこっちを見ている。

 

「そんな和義が風太郎に勉強を教えるようになってから、急に社交性が出て来たんだよね。逆に風太郎が勉強一直線で、友達と話さなくなってで逆になっちゃったんだよね。そこからだよ、和義が女の子にモテるようになったのは。良く話しかけられるのが嫌気がするって愚痴言ってたっけ」

「そういえば、そんな事もあったね」

 

笑いながら竹林に言われたのでそう答える。

 

「ちなみに、和義は転校してきたから私達との付き合いも二年くらいだよ」

「そうだったのですね」

「さっきは親密さを試すように言ってごめんね」

 

申し訳なさそうな顔で謝る竹林。

 

「だから、君達に向かって大切な人だって言った時はビックリしたな。その反面嬉しくもあったよ」

「そうなんだ...」

「……私と真田君は勉強できててね。だからかな、私達とは割と話してたんだ。お互いの分からないところを聞いたりしてね」

「それであんなに仲良かったのですね」

 

五月の言葉に竹林はコクンと頷いた。

 

「とは言え、学校外で話したり、ましては遊んだりしてなかったんだけどね」

「零奈がいたから学校が終わったらすぐに帰ってたんだよ」

「納得...」

「まあ、風太郎は気にせず、『だったらお前の家で教えてくれ』、て言いながら家に押しかけて来てたけどね」

「あはは...上杉さんらしいですね」

 

僕の言葉に三玖と四葉が納得する。

 

「そんな訳で、仲が良いのか悪いのかと言われると微妙かな。真田君って勉強以外の事を話さないから。私はこんな性格だしね」

「ちなみに、全国模試の3位はこの竹林だよ」

「ありゃ、知ってたか」

「ちょっ、ちょっと待ってよ。じゃあなに?全国ベスト3が今ここにいるわけ?」

 

二乃が驚いたように声をあげた。

 

「そうなるね。ここに風太郎もいれば、ベスト4まで揃うのにね」

「!上杉君が全国4位?」

「そうだよ。あいつも頑張ってるでしょ?」

「ふ~ん。風太郎やるじゃん」

「.........」

「ちなみに僕と一緒にここにいる娘達の家庭教師をしてるよ。あいつの成長は見てて楽しかったね」

「……それが、進学校への道を選ばなかった理由だったね」

 

そこで真田が口にした。

 

「ああ。勉強はどの学校に行っても出来るからね。なら、自分が行きたいと思った道を選ばないと勿体ないじゃん?」

自分が行きたいと思った道か…

 

何か二乃が言ったような気がしたけどよく聞こえなかったなぁ。

 

「それに、この道を選んだお陰でこの娘達と会うことも出来た」

 

笑顔でそう答えると、二乃に三玖、四葉に五月、それに桜から笑顔を返された。

 

「じゃあ、進学先も上杉君に合わせたりするのかい?」

「あー……僕は進学しないよ?」

「「え?」」

「僕は進学しない。就職するよ」

「な!?」

「嘘でしょ!?」

 

僕の発言にさすがの竹林も驚いたようだ。

 

「そこまで驚く事?まあ、やりたい事が見つかったんだから仕方ないさ」

「それは進学をしないという選択をした程のものなのかい?」

「ああ」

「そうか...」

 

真田の言葉にまっすぐと向いて答えたからか、小学生と時に進学の事を追及された時と違い納得した顔で頷いた。

そこで真田は立ち上がり僕の横を抜け行こうとしている。

 

「君に会えて良かった。心残りがあるとすれば、結局最後まで勉強で勝てなかったことかな」

 

少し進んだところで僕にそう言葉を残して歩みを進める。

 

「ちょっと待ってよー。あ、和義。連絡先交換しとこうよ......よし!また連絡するね」

 

そう言って竹林も真田を追いかけて行ってしまった。

まったく嵐のようだったな。

二人の背中を見ながら、そう思うのだった。

 

 




今回のお話では、竹林と真田の登場です。
本当はもう少し関わりを持とうと思ったのですが、ちょっと少なめにさせてただきました。
当初は竹林も五つ子のライバルキャラとして登場させるつもりでいたのですが、フルネームが分からないし、後は竹林にはやっぱり真田かなと思ったので断念しました。
次回以降別の小説を書くことがあれば、その時に挑戦するかもしれません。

日の出祭二日目はもう少しだけ続いて、次回から最終日に入っていこうと考えております。
原作ではメインと言っても過言ではない日の出祭最終日。
とはいえ、三玖の仲違いのクラスメイトの説得シーンや四葉が倒れるシーン、そして何より五つ子を選ぶシーンもないので、本作ではイベントとしては少ないかもですね。

では、次回以降も読んでいただければと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

外伝的に他のヒロインのお話も書いた方が良いでしょうか?

  • 外伝はいらない
  • 二乃
  • 三玖
  • 四葉
  • 五月
  • 零奈
  • ハーレム
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