瞳を閉じぬ裁定者   作:レガシィ

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はい!久しぶりの投稿ですね!
そろそろ上京の準備を始めるため、さらに投稿頻度がばらつくと思いますが、失踪はするつもりはありませんので、これからも楽しんでいただければ幸いです!
あ、あと諸事情から書き方を変更しました。もう一つの作品を知ってる方はわかると思うんですが、こっちの書き方の方が自分には合ってるかなーっていう感じで、試行錯誤中なのでそこはご了承ください。


第十六話 ジルバート=ストルグルム

「おいグラニ。どうすんだよ、見られたぞ」

 

「落ち着いてくださいお嬢さん。決して怪しい者では、、、あれ、貴方は先程の、、、?」

 

 二人の青年は眼の前で行われた蛮行を弁解するためにフードをとってもテミスに近づく。

 

「いや、まぁ、、、考えてみればそっか。ごめん、忘れて」

 

「えっ? ちょっ、まっ──」

 

 タタタッ

 

 必要以上に接触する意味はないと判断したテミスはその場から足早に去っていく。

 

「おいグラニ、追え!」

 

「え、何故です? 向こうも納得している様子ですが、、、」

 

「俺の鑑定スキルが弾かれた!最低でもC、いや!B以上の魔法使いだ! いいから追え!」

 

「!御意!」

 

 ダッ!! 

 

 グラニは走ってテミスを追いかける。既に人混みに紛れてしまった小柄な少女を追うため、見失わぬように目を凝らす。

 

「いた、、、!」

 

 ピクッ

 

 同時にその青い眼光による視線にテミスも気付く。

 

(なんで追いかけてくるの?)

 

 タッタッタ

 

「おっ!冒険者さん!アンタの仕留めた角猛牛(ホーンブル)食べてかねぇか!」

 

「魔法使いのお姉ちゃん! さっきのキラキラ見せてー!」

 

「ごめん!また後で!」

 

 タンタンタンッ! 

 

 テミスは誘いを振り切り、壁に向かって走り出す。

 

 スキル 蜥蜴足(リザードレッグ) 風切羽(かざきりばね)

 

 ダヒュンッ! 

 

 そして、人混みを避けて加速するため、壁をほぼ垂直に走っていった。

 

(壁を走るだと? 魔力は感じなかった、スキル、もしくは獣人か? まぁその程度、、、)

 

「私には無意味ですがね、、、!」

 

 ダンッッ!! 

 

(しつこ、、、)

 

 グラニは地面を音を出して踏み切り、屋根の上を駆けだす。魔力による身体強化をしていたとしても、その運動能力は平人のそれではない。

 

 タンッバインッグンッ! クルルッスタッタッタッタ

 

 テミスは反対側の家屋群の屋根へと器用に街灯や屋台ののぼりを利用して飛び移る。

 

(逃しませんよ、、、!)

 

 低位風魔法 弾く風(エアバウンド)

 

 ポゥンッ

 

 テミスの走る屋根の後方へと魔法で飛び移り、屋根を伝ってさらに追尾する。

 

「お嬢さん! せめて話だけでも!」 

 

(話なんて冗談じゃない。面倒って分かりきってることに無差別に首を突っ込むほど私は暇人じゃない)

 

 中位火水複合魔法 隠す霧(ハイドフォッグ)

 

 ボフォンッ! 

 

 屋根の上はテミスの使った魔法により濃霧に襲われる。周りに害は全く無い、逃げたり撹乱するための魔法である。

 

「ゲッホゴホッ!」

 

(今のうちっと)

 

 トンッ、スタッ。ガシッ! 

 

「?」

 

「捕まえた!!」

 

 テミスが屋根から降りた先には、先程見かけたもう一人の青年。油断していたテミスの右腕を掴み、彼は子供が虫を捕まえたかのように笑顔を咲かせる。

 

「、、、いきなり女の人に乱暴するのは、流石に良くないよ」

 

 テミスの彼を見据える目が汚物を見る目に変化し、複雑な術式を、恐怖を与えるためにゆっくりと組み始める。

 

 パリパリパリ、、、

 

 恵廷雷魔導 雷──

 

「待ってくれ、本当にすまん! ちゃんと説明するからその魔法は撃たないでくれ! 周りに被害が出るぞ!?」

 

「その程度の出力調整は問題ないよ。祈る時間くらいはあげるから、早く祈れ」

 

 面倒な気配とイライラする事象があいまり、祭りを心から堪能して良い気分だったのが台無しになったテミスは口調が荒くなっていく。

 

「お嬢さん、少しだけ話を聞いてください。争いたいわけではないのですよ」

 

 屋上から煙を払って降りてきた長身の男は言う。

 

「ストーカーが最初に言う言葉がそれなんだ」

 

「それは貴方が逃げるから、、、」

 

「人の顔面を潰すところを間近にみた乙女が逃げるのに、そんなに複雑な理由っているの?」

 

 口論戦において今のテミスは圧倒的に主導権を握っている状態。二人の立場は発言の度に悪くなっていく。

 

「だぁー! クソッ! これでいいか!?」

 

 バサッ! 

 

 テミスを掴んでいた腕を自らのフードにかけ、勢いよくバサリとフードを脱ぐ。現れたのは、朱色の眼光とそれと同様の朱色の髪。

 

「どうだ!」

 

「どうだって、いや、、、なにが?」

 

 ザワザワッ

 

 周囲の反応はテミスのおよそ真逆。呆気に取られる者や物珍しい奇異の眼で彼を見てる人間が殆どだ。

 

 そして、不意に誰かが声を上げる。

 

「お、王太子殿下!!」

 

「え、、、?」

 

「ジルバート=ストルグルム王太子殿下!!」

 

「え、貴方達王子だったの?」

 

「はぁ、、、えぇ。正確にはこちらの方のみですがね」

 

 直後、テミスの思考は高速で回転する。

 

 今までの無礼な行い、これからの自分の立場。自由が効く冒険者といえども、一国の王子に対して魔法を向けるというのは重罪に他ならない。

 

 血の気が引き、みるみるうちに顔は青ざめていく。

 

 サァー、、、

 

「ど、土下座ですか、、、?」

 

「「ドゲザ?」」

 

「偉い人って知らなくて、その、まだ死ぬのは避けたい、、、」

 

 テミスがいくら大人びていても、中身は褒められれば素直に喜び、祭りに心を踊らせる少女に過ぎない。様々な思いが頭の中で交錯し、今にも泣き出しそうな顔になっていく。

 

「あー、おうじが女の子を泣かせたー」

 

 不意に子供が一言放ったのを皮切りに、街の住人達が冷ややかな視線でジルバートを見る。

 

「街中追いかけ回したんですって」

 

「あらあら、アプローチの仕方は考えものねぇ」

 

 たった一日で街の問題の大半を解決してしまった少女に対する信頼は、王子という馴染みの薄い存在よりも厚かったようで立場がどんどん悪くなっていく。

 

「さっきまでの気丈な態度はどこいったんだよ!?」

 

「だって、、、本だと王子に関われば大体死刑だって、、、」

 

「随分と偏った知識だなオイ。んなことしねぇから

 

 。な? ほら、なんか好きなもん買ってやるからさ、少し話そうぜ?」

 

 ボソッ

 

「ロリコン」

 

 涙目で俯くテミスに手をかけるようにして場を治めようとするジルバートに誰かが呟いた。

 

「今言った奴は晒し首にしてやるからな」

 

 ゴチンッ

 

「やめなさい。貴方が言うと冗談ではすまされません」

 

「すいません」

 

 ひとまずの騒ぎを収め、隠れていたのが無駄になった二人は、フードを脱いでベンチに腰掛けて喉を潤す。テミスは一定の距離を置き、二人を監視するように街の人間はその様子をチラチラと見ている。

 

「こんな刺すような視線初めてですね」 

 

「えっと、、、何が目的でしょうか、、、」

 

「いやほんと、怯えないで? 俺が悪者になっちゃうから。敬語も無しでいいし、無礼講で行こうぜ?」

 

 あからさまに萎縮するテミスに少し申し訳ないような声色でジルバートは話す。

 

「改めて、俺はジルバート=ストルグルム。この国の第二王子で、こっちはグラニ。元冒険者だが今は俺の専属執事。お前は?」

 

「私はテミス。今は訳あって旅をしてて、従者じゃないけどもう一人、スペルビアっていう女の子がいるよ」

 

 三者は改めての自己紹介を挟み、テミスもジルバートの言葉に安心したのかいつもの調子に戻る。

 

「単刀直入に聞くけど、街のあれやこれやを解決したのってお前?」

 

「依頼だったから。何か不都合でもあるなら戻すけど」

 

「いや、冒険者ランクはBか?それともA?」

 

「期待外れでゴメンだけど、Bランク」

 

 テミスの謙遜の言葉に、ジルバートはニヤリと笑う。

 

「いや、期待以上だ。Bはその実力に見合わないランクだと思ってるからな」

 

「、、、護衛が欲しいならそこの人で充分じゃないの?」

 

「確かにグラニは優秀だが、そうじゃない。あー、グラニ、頼む」

 

「御意」

 

 中位風魔法 消音(サイレント)

 

 ピゥーン、、、

 

「聞かれたくない会話とかしたくないんだけど」

 

「そう言うなって。んで、時間もないから本題に入るが、、、実は、近々魔族との戦争が起こりそうなんだ」

 

「魔王は倒されたはずじゃないの?」

 

「あぁ、魔王はな。何が原因だか、再び魔族達の士気が上がり始めてる。うちは特別武力国家ってわけじゃないが規模としてはかなり大きい。その上、賢者が二人も住んでる」

 

「二人も!」

 

「食いつく所違くね? 、、、まぁ、さらに間の悪いことに俺の母上、エリザベータ=ストルグルム女王が病で床に伏してる」

 

「待って待って、そんな重大なこと私に言わないでよ。聞かなかったことにするからもうやめて」

 

「いや、俺は確信したんだ。お前の実力はAじゃ収まらない。Sランクの力だってな。だから俺はお前を雇うことにした。お前がいくら自分を謙遜しても、俺はお前を評価する。好きなものを願え、なんだって用意する」

 

「ぅ、、、」

 

 ジルバートの顔は真剣そのもの。今にも一国の王子が頭を下げる勢いでテミスを強く見つめる。

 

 テミスは"平等、公平"の賢者の弟子。誰かに肩入れするのは、その称号の名折れ。ましてや、戦争などという、善悪の区別すらないものに巻き込まれるのは心の底から関わりたくない気持ちが強い。

 

「、、、私を雇いたい理由を、ちゃんと聞かせて」

 

 テミスは試すことにした。弟子とはいえ、彼女もまた賢者を冠する称号を持つ数少ない人間の一人。そして、人間とは理にそぐわない行動を起こす者の総称である。

 

「国を護るため、平和を護るためだ」

 

 即答。難しくなく、とてもシンプルな理由であり、彼女(天秤の賢者の弟子)が手を貸すに足る理由であった。

 

「、、、分かった。私なんかで良ければ力を貸すよ」

 

「! 本当か!? やったぞグラニ! ほらな! 間違いじゃなかった!」

 

「、、、戦争などという、血生臭いことに、貴方のような少女を巻き込むことについては深くお詫びします。報酬はいかようにでも」

 

 笑顔を弾けさせる

 

「終わったら俺の権限で宝物庫を開けてやるから、なんでも持ってけ!」

 

「別にお金はいらない、困ってないし。それよりも、賢者に会わせて。私の旅の目的なの」

 

「え、、、あいつらに、、、えぇ~」

 

「なにか不都合があるの?」

 

「いえ、片方は普通なのですよ。困っているのは、スコーピオン様でして、、、」

 

「あいつは今、イリャナルセに帰ってる。魔王復活の話を聞いた途端にな。元々悪巧みが好きないけ好かない奴だ。今回も正直信用できねぇ」

 

「、、、それでもいい。私の目的だし、話すだけだから大丈夫」

 

「お前がそれでいいならいいけどよ、、、」

 

「まぁ。取り敢えず話は終わりにしましょう。人の目が気になりますし。それでは、明日にこの広場で待っていますよ」

 

「おい勝手に、、、いや、いいか。後は追って話す。じゃあな、祭り楽しめよ」

 

 二人はテミスの前からふらりと去っていく。魔法かスキルの効果か、あっさりと静かに。

 

(、、、折角のお祭りなのに台無しだ。もう帰ろう)

 

 テミスも、声を掛けようとよってくる人の目を避けるように、まだ昼が過ぎたばかりの町の広場から屋敷へと戻っていった。

 

 ガチャッ

 

「あら? 随分とお早いお帰りですね」

 

「ちょっと色々あって。そうだ、クレイさんって今話せる?」

 

「執務室にいらっしゃると思いますよ」

 

「ありがと。あと、替えの服買うの忘れちゃったし汚れちゃったから、この服買わせてくれない?」

 

「あー、、、買えますか?」

 

「?」

 

 こしょこしょ

 

 耳打ちで教えてくれた値段は目玉が飛び出るくらい高価なもので、思わずテミスはその場で聞き返す。

 

「え"、、、そんなにするの、、、?」

 

「テミス様が気に入らずとも、王都では最新のモデルですので、、、」

 

(ラクリマの報酬を足しても足りない、、、)

 

「なんだ。その程度なら俺が払ってやるよ」

 

「それは流石に、、、え"、なんでいるの?」

 

 テミスの後ろから聞こえたのは、先刻明日の約束をして別れたばかりのジルバート。

 

「なんでって、俺は王子だぞ? 領主に挨拶に来て何が悪い」

 

「悪いとまでは言ってない。それより、こんなに高価なものを払ってもらうのは流石に、、、」

 

「なんだそんなことか。報酬の一部だと思えって。その分働いてもらうから気にすんなよ」

 

「じゃあ、、、お言葉に甘えます」

 

「おう、甘えとけ」

 

 歯を出して笑うジルバート、テミスは申し訳ないと思いつつ、代金と釣り合った働きをしようと決意する。そこに、二人の少女の声が響く。

 

「「テミス様!」」

 

「あ、二人共、、、」

 

「でっ、殿下!?」

 

 二人を認識した直後、エリナはジルバートの姿に一瞬驚くが、すぐに向き直り、スカートの端を持ち上げて貴族らしい挨拶を始める。

 

「、、、お初にお目にかかります。私、グライハム領主、クレイ=グライハム公の娘、エリナ=グライハムと申します」

 

「娘殿か。クレイ公は病に伏して寝たきりと聞くが、容態はいかがか聞いても?」

 

「テミス様のお陰でもうすっかり良くなりました。溜まっていた仕事を片付けている最中です」

 

「、、、、、、おい、テミス。お前癒術師か聖職者なのか?」

 

「まさか、元々本業は薬師だよ」

 

「ふ~ん、、、」

 

 テミスの言葉にジルバートは少し驚いたように目を見開き、ニヤニヤと笑う。

 

「? 、、、もう行っていい? クレイさんに話があるんだけど」

 

「おう、引き止めて悪いな」

 

 スタスタスタ

 

 テミスは少し足早に執務室へと向かう。

 

 コンコンガチャッ

 

「入るね」

 

「構わないけど、だんだん遠慮無くなってきたね。それで? ジルバート殿下のことかい?」

 

 ノックとほぼ同時に部屋に入るのを報告するテミスに、クレイは書類に目を通すのを止めずにテミスに話題を振る。

 

「なんだ、一度来てたんだ」

 

「いや? なんとなくそんな気がしただけだよ。君のことだから、どうせ余計なことに首を突っ込んだんだろうと思ってね」

 

 テミスの脳内に図星の文字が浮かぶ。

 

「私からすれば王子の考えを否定する権利なんて無い。が、相手が魔族とはいえ君に戦争という場は速いと思っているのも事実。、、、君の師匠ならなんて言うと思う?」

 

「あの人は過保護だけど、同時に凄く冒険をさせたがる人だから、"これもいい経験だ"なんて言うんじゃないかな」

 

「、、、君の師匠も大概だな」

 

「でも、私はそんな場所にも安心して飛び込める。だって、師匠がいつだって護ってくれるから」

 

 オドレアの森の一件。賢者が来なかったのは、ディアナ達が助けてくれるから必要ないと思われていた。と、テミスは勘違いをしたままだ。

 

「そうか。なら、これ以上、言葉はいらないね」

 

「うん。色々とありがとう」

 

「礼を言うのはこちらの方さ。魔法結晶も問題なく作動したし、報酬は明日の朝に用意させておこう」

 

「え、勝手に使ったの?」

 

「君が失敗するとは思えなかったしね。試験的にちょろっと」

 

「今度からはちゃんと私(制作者)を通してよ、普通に危ない、、、」

 

「あっはは。次からはそうするよ」

 

 その後は驚くほどスムーズに事は運ぶ。ジルバートとグラニは翌日の日程を考えるために部屋に篭り、食卓ではエリナとスペルビアが並ぶがスペルビアは食事をしないため、暇そうにテミスに話しかける程度。

 

 翌朝

 

 シャッ

 

 テミスはカーテンを開けて朝日を確認する。

 

「、、、いい朝。ほらスペルビア、起きて。出発するよ」

 

「、、、眠たいですわー」

 

「悪魔って結構ルーズだね」

 

「特定の時間に起きるなんて習慣ありませんもの」

 

 眠いと言葉にするが、スペルビアの寝起きは悪くない。むしろ良い方で、すぐに目を開けて覚醒する。

 

「蝙蝠姿でもいいからおいで」

 

「はーい」

 

 ポフンッ

 

 テミスは昨日ジルバートによって払われたドレスを着て、エントランスへと向かう。

 

 エントランスにはすでにグライハム夫妻とイオン、エリナ、そしてジルバートとグラニが待っている。

 

「あれ、待たせました?」

 

「いや、こっちが勝手に急いだ。気にしないでくれ。お友達はどうした?」

 

「魔法で蝙蝠に変化してるだけ。魔力効率がいいんだって」

 

「そうか。よろしく、小さな魔法師」

 

(闇だけとはいえ、彼女は世界最高峰の魔導師だけどね)

 

 その言葉を飲み込んだテミスをよそに、ジルバートは凛とした態度で蝙蝠となったスペルビアに話しかけ、彼女はそれに頷く。

 

「グライハム夫妻、突然の訪問にも関わらず、手厚いもてなしを感謝する」 

 

「滅相もございませんよ。こんな田舎の辺境伯でよければ、いつでも力をお貸しいたしますとも」

 

「それでは、貴方本人のお力を借りるのは、療養が終わってからということですかな」

 

「ハハハ」

 

「テミス様にスペル様、もう行ってしまわれますの?」

 

「ちょっと依頼が入ってね。本当はもう少しいたかったんだけど、依頼料も前払いしてもらっちゃったし」

 

「そうですか、、、では、また会えるのを心待ちにしてますね!」

 

「うん、じゃあね」

 

「私も、また会えるのを楽しみにしていますわね」

 

「それでは、君の活躍を聞くのを楽しみにしているよ。若すぎる冒険者さん」

 

「もう成人するよ、、、」

 

「いつでも来ていいわよ〜。貴方なら家族皆大歓迎よ」

 

 ギュウウッ

 

 リナは力強くテミスに抱擁して笑顔で笑う。

 

「ありがとう、その時は甘えさせてもらうよ」

 

「テミス殿。出会いは最悪だったと思うが、今は素直に貴方を尊敬する。くれぐれも身体に気を配り、達者で」

 

「あはは、相変わらずというか、固いね。じゃあ、イオンさんも身体に気を付けて」

 

 一家と別れを済ませ、人生で二度目のしばしの"別れ"を実感しながら、既に外で待機しているジルバートの馬車へ乗り込む。

 

「ごめん、少し時間かかっちゃった」

 

「その分急げばいいだけだ。何度も言うが気にすんな。揃ったな、出してくれ」

 

 ゴトトッ、、、

 

 お忍びで来たこともあり馬車の外見は普通だが、中身の素材は一級品であり、やはり王族だとテミスは改めて理解する。

 

「さて、、、改めて依頼内容を説明するか」

 

 腕を前で組んだままジルバートは説明を始める。

 

「依頼形式は指名だ。報酬は随所で払うがメインは賢者二人との会合。で、いいんだよな?」

 

「うん。でも、そっちこそ本当にいいの?」

 

「何がだ?」

 

「いや、Bランクの冒険者とはいえ、冒険者に成り立てのひよっこ、しかも昨日出会ったばっかりだよ?」

 

「お前が役立たずなら、それを連れてきた俺の人を見る目が腐ってたっていうだけだ。お前は自分のやれることを最大限やればいい」

 

「、、、、、、」

 

 テミスはグラニをちらりと見るが、彼はジルバートに最も近い側近、一抹の不安こそ無かれ全幅の信頼を置いている様子だった。

 

 ゴトゴトッ、、、

 

「それと、報酬は別に払うんだが、出来ればお母様、、、女王陛下の容態を診てくれないか?」

 

「あぁ、病気してるんだっけ。でもお城にはそういう専門の人がいると思うんだけど」

 

「いる上で、だ。正直誰も彼も役に立たん。日に日に症状は悪化するばかり。お前は薬師なんだろ? 何でもいい、何か少しでも分かればいいんだ」

 

「、、、大切なんだね。お母さんが」

 

「! 、、、そうだな。王子ってよりは、俺個人の依頼だ。引き受けてくれるか?」

 

「もちろん受けるよ。最善を尽くすつもり」

 

「そうか、、、感謝する」

 

「速いよ。何も分かってないのに」

 

「そうか、そうだな。この感謝は後まで取っておく」

 

 ジルバートはそう言って小窓から外を眺めみる。

 

(にしても馬車か、、、なんか不安、、、)

 

 テミスは自らの経験を照らし合わせ、不安がるが、

 

 道中、普通の道を進むだけでテミスが心配することは何もなく、静かに王都へと到着し、テミスは小窓から王都を眺める。

 

「大きい、、、」

 

 一国のオドレアなどより遥かに巨大な壁に長蛇の商人と思しき馬車の列、それを統括する衛兵の数、その全てが、間違いなくテミスにとって外に出てから見たもののなかで一番の衝撃だった。

 

「改めて、ストルグルム王国へようこそってな」

 

 




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