瞳を閉じぬ裁定者   作:レガシィ

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第三話 オドレア王国、冒険者ギルド

 私は宿の自室に篭ってポーションを解析した。

 

 解析して分かったことと店長の言葉から察するに、私の技術は少し異常なレベルらしい。

 

 師匠しか比べる対象がいなかったから分からなかったけれど、何も知らないまま王都に行っていたらきっと面倒なことになっていただろう。

 

「もしかしたら、ここでそれを知るのも師匠は織り込み済み、、、? ありえる、むしろその可能性が一番高いまである、、、」

 

 師匠のことだ、きっとこの近隣の情報は掌握してるだろうし、私にそれを教えなかったのは一種の訓練なのかもしれない。

 

「まぁ、結果オーライだし、いいか。さて次は、、、魔法地図(マジックマップ)

 

 ヴンッ

 

 私は森から北西に向かってここに来た。大陸の最東端に龍森があって、私が向かうのはここからさらに向こうの国のオドレア。

 

 向こうに行ったらまずはギルドに登録、次にスライムの核の売却。あとは宿探しとレオニスさん探し。

 

「、、、、、、そろそろ夕飯刻かな」

 

 コッコッコ

 

 階段を降りると、下では昼間の人達がテーブル席で食べていた。当たり前だが、宿はここしかないから

 

 一緒だったのだ。解析に夢中で忘れていた私は思い出して結論を出したが、さして気にも止めずにカウンターに座った。

 

「あ、テミス!」

 

「こんばんは、ロック君」

 

「ロックでいいよ。昼間のお礼がしたいんだ、こっちに来てくれ!」

 

 座った所を見られて声を掛けられ、挨拶を返すと半ば無理やりにテーブル席に連行され、椅子に座らせられた。こちらの都合を無視するのは感心しないけど、それを気に留める様子もやはり無く、時計回りに仲間を紹介していく。

 

「テミス、皆を紹介するよ。左から偵察(シーク)のトア、盾役(タンク)のレノン、神官のメルーナ。んで、剣士でこのパーティーのリーダーの俺、ロックだ!」

 

 ロックが名前を呼ぶたび、私に向かって一礼するので、私も同じように返す。

 

「本当に感謝してる、受けた恩は必ず返すよ」

 

「アタシからもありがと、マジで死ぬかと思った。職業柄覚悟はしてたつもりだけど、やっぱり怖いもんだね」

 

 黒くて前髪が長いトア君と、反対に橙色で短髪のレノンさんは深々と頭を下げてくる。

 

 私にも考えがあってやったことだから気にしなくてもいいのだけれど。

 

 そもそも中級のポーションなんて日銭で買える程度の金額でしかないし、偶然それを作れる人と材料があっただけだから、本当に気にしなくていいことだ。

 

「気にしなくてもいいよ。人が死ぬことに比べれば薬草程度は安いものだし」

 

「それでもです! 私からもお礼を言わせてください、本当に助けていただいてありがとうございました」

 

 金髪の神官さんも私に深く頭を下げる。というか、この人が一番深く頭を下げてきた。私には疑問でしかない。

 

「、、、なんで、自分のことじゃないのに、そんなに頭を下げるの?」

 

「え?」

 

「もしもの話だけど、今回私がいなかったら二人は死んでた。でも、貴方は生き残れたはずでしょ? 自分が助けられたわけでもないのに、、、どうしてそこまで感謝するの?」

 

「どうしてってそりゃあ、仲間だからだろ?」

 

「仲間だから、、、?」

 

 ますます分からない。パーティのメンバーでも他人の延長でしかないと思うけど、、、。

 

「テミスだって、大切な人が今回みたいに助けられたら嬉しいだろ?」

 

 私の大切な人、、、。

 

「、、、師匠が困っているのを見たことがないし想像もできない、、、。それに、私は師匠以外の人と昨日まで会ったことがないから、ちょっとよく分からない、、、かな」

 

「あ、、、なんか、悪い、、、」

 

「いや、別に謝らなくていいよ」

 

 バツの悪そうな顔をして落ち込むロックをなだめるが、場の雰囲気は暗いまま。

 

 ドンッ!! 

 

 突如としてテーブルに五つ、大きな音を立ててエールが置かれる。

 

「若い衆が辛気臭い顔してんじゃないよ! くよくよしてる暇があるんなら、今生きてることに精一杯感謝しな!」

 

 女将さんの一喝で場は一瞬静まるが、その瞬間にレノンさんが反応してエールを持ち上げる。

 

「じゃあ得意芸! 一気飲みしまーす!!」

 

 ゴッゴッゴッ! 

 

 大分豪快な音を立てて木製のジョッキの中をあっという間に空にする。

 

「ぷっはぁ! おかわり!」

 

「あいよ!」

 

 女将さんにおかわりをねだると、それに呼応するように場の空気が変わるのが目に見えて分かった。

 

「女将さんの言うとおりだ! 細けぇこたぁいいんだよ! 俺らは冒険者だ!」

 

「おー!」

 

「そうですね!」

 

 残りの三人もエールを煽っておかわりをする。私は空気についていけずに取り残されてしまった。

 

「テミス、細かいことは良いんだよ。お前の師匠が笑顔なら嬉しいし、落ち込んでたら悲しいだろ。共同意識ってやつ?」

 

 師匠が笑顔なら嬉しい? 、、、確かに、時々スカイが来ると喜んでるかも。その時私は、、、笑っていたかも? 

 

「少しだけ、理解できた気がする、、、かな?」

 

「お、いいね! じゃあテミスも一杯飲めよ!」

 

「いや、未成年だからお酒は無理」

 

「「「「未成年なの!?」」」」

 

 四人とも同じ反応をして驚いている。どうやら歳上だと思っていたらしく、信じられないという表情で私の顔を見てくる。失礼な。

 

「まだ私は十五だから」

 

「うわ、、、ごめん、未成年とは思えない知識と態度だったから」

 

「まぁ正直気にしてないからいいけど。それより、冒険者ギルドに関して教えてよ」

 

「冒険者になりたいの? 君なら薬師ギルドの方が向いてると思うけど」

 

「別にお金儲けが目的でもないし、お店を開くつもりもないからね」

 

「ホントは窓口で聞いたほうがいいんだけど、説明しようか」

 

 そこからのギルドの話は少し長かった。だから、なるべく簡潔に纏めるとこんな感じ。

 

 まず、ギルドにはランクがある。AランクからGランクの7段階。一応上にSランクがあるらしいけど、それは国からの褒誉に近いものだから、ほとんどギルドの管轄ではないらしい。最初に職業と年齢、いるならパーティーの名前を書いて登録し、適性検査を受けるというのが一般的な流れで、稀にスカウトもされるとか。

 

「まぁ、基本はこんなところかな?」

 

「他には一応、冒険者同士は申請なしの決闘の禁止とか、ギルマスの招集は絶対とか。そのくらいか」

 

「まぁ、身分証明くらいにしか使わないなら問題ないかもね」

 

「明日は俺達のクエストで護衛しながら国に戻る。そん時にギルドに案内してやるよ」

 

「ありがとう、、、ちょっと、眠くなってきたから部屋に戻るね」

 

「え、早くないか?」

 

 ロックの疑問を無視して私は部屋に戻る。森にいるときからあまり夜ふかしはしないように師匠に言われていたから、それが習慣化してしまった。

 

 眠くてしょうがない。

 

 コッコッコッ、、、

 

「なーんか、不思議なんだよなぁ」

 

「分かる。なんか違うのよね、雰囲気?」

 

「それだったらまぁ分かるんだけど、そんな曖昧なもんじゃなくてさ、こう、、、何か決定的に俺らと違う感じがするんだよな」

 

「そうですね。魔力の質というか、、、」

 

「「「「うーん?」」」」

 

 四人は疑問符を浮かべて考え込むが、結局答えが出ることはなく、向こう見ずの冒険者らしく反省と宴会にふけったのだった。

 

 翌朝

 

 テミスは出発の時刻を聞くのを忘れていたため、普段より早起きしてロック達を一階の食堂で待っていた。

 

「初めて飲むお茶です」

 

「そうかい? そんな珍しいものでもないけどねぇ。そんなことより、王国までの道中気を付けなよ?」

 

「この辺は龍森の影響でそんなに強いモンスターは出ないし、昨日みたいなイレギュラーはそうはおきませんよ」

 

「だといいんだけどねぇ」

 

 女将さんと適当に雑談をして暇を潰していると、上からガタガタと足音が聞こえてくる。

 

「おはよーテミス。早いな」

 

「時間聞くの忘れたから」

 

「あぁ、そういえば一応私達の護衛対象になるのか」

 

「安心してくれよ、昨日みたいなヘマはしない」

 

「無事に行けたら私はなんでもいいいけどね」

 

 短い会話のあとに、私は女将さんとリオちゃんに挨拶して宿を去った。

 

 森を出てから初めての別れ。でもやはり、今生の別れでもないし、悲しすぎるということはなかった。

 

 これから、出会いと別れを私は何度繰り返すんだろう、、、楽しみと共に不安もある。

 

 そんなことを思っていると馬車は目の前で、御者の人はロック達に挨拶する。

 

「あ、パーティーの皆さん、ご無事で何より。今日もお願いしますね」

 

「帰りは荷物が増えてもっと危険だからな。こっちも精一杯やらせてもらうよ」

 

 ロックと御者の人が握手をしたのを見届けたあと、私も頼みに行く。

 

「私も乗せてくれませんか?」

 

「あなたは昨日のお嬢さん! そんなことでよければぜひ!」

 

 馬車の中には野菜や小麦などの穀物、五人が入るには少々手狭な空間。

 

「あちゃあ、、、誰か御者の横行くしかないな」

 

「私が上にいくよ」

 

「へ、上って──」

 

 トンッ

 

 私は馬車の上に飛びのって荷物を置く。

 

「普通そこは俺達誰かの場所じゃないか?」

 

「大丈夫、こっちの方が気持ちいいし。もしあれだったら魔法で探知もしてあげるから気にしないで」

 

 龍の上よりかはかなり安定しているし、商人の馬車というだけあってそれなりのスペースもある、別に不満は無い。

 

「ば、、、万能すぎる、、、!」

 

「トアの役割消えたな、、、あ、いや! いつも頑張ってるし、昨日怪我したんだから今日くらいは休めよ、な?」

 

 ロックは余計な一言を流すように、若干落ち込むトアの肩を叩いてなだめる。昨日まで毒に侵されていたのは本当の話なので、渋々言うことに従い、四人は馬車に乗り込んだ。

 

「それでは出発しますよー」

 

 ゴトゴトゴトッ、、、

 

 穏やかな音を立てて馬車は出発する。昨日と同じようなどこまででも吸い込まれそうな深い青空。前に見た時と違って、今度は自分が動いてるから雲の形も別な角度から見ることができる。

 

「これだけポカポカしてると眠くなるなぁ、、、」

 

 探知魔法を自動化して周囲に敵対モンスターが出ると魔力が流れる設定にして、私は少しだけ眠った。

 

 ──ー

 

 一時間程度だろうか。寝ていたからよく分からないが、微弱に魔力が頭に流れ、私は目を覚ました。

 

 モンスター、ベオウルフの群れが前方に姿を現した。微かながら血の匂いもするため、おそらく昨日皆を襲った群れだろう。一応、御者の人にそのことを伝えよう。

 

「もしもーし、御者さーん」

 

「うわっと、上からは危ないですよ。どうしましたか?」

 

「このまま少し進んだところにベオウルフの群れがいるけど、どうする?」

 

「なんと、何体ほどでしょうか」

 

「3体、うち一体はリーダーかな。他より若干強い」

 

「うぅむ、、、後ろの方々では荷が重いでしょうか?」

 

「そんなことないんじゃない? まぁでも、安全を重視なら迂回するのをオススメするけどね」

 

「うちは速達がウリなんですよ。ここを迂回するとなるとそれなりの時間がかかる、、、。冒険者の方々に仕事の時間とお伝えください」

 

 それを伝えるために、今度は後ろの方に上から身体を出して皆に伝える。

 

「皆、前方にベオウルフの群れがいるからお仕事だって」

 

「お、おう。分かったけど、危ないからそれやめろよ、ちょっとびっくりしたわ」

 

 短弓の整備をしていたトア君はそう言うと、武器の確認を済ませてロックに知らせる。すると彼は皆に号令をかける。

 

「うっし! お前ら仕事の時間だ、行くぞ!」

 

 三人は了承の合図を出して馬車から降りていく。

 

 思えばこれも初めての経験、師匠以外の他人の戦う姿。

 

 話を聞く限り、彼らはEランクのプチ駆け出し冒険者らしいから、相場は知らないけどベオウルフくらいなら余裕だろう。

 

「トア!」

 

 ヒュンッドスッ

 

『ギャインッ!』

 

 矢が目にヒットし、一体の行動を抑制する。

 

 その間に残りの二体が襲うが、レノンの盾とロックの剣で遮られる。

 

 ガキインッ! ドガッボゴッ! ヒュヒュンッ

 

 盾役と剣士が前に出てヘイトを稼ぎ、後方で魔法使いが威力の高い魔法の準備、偵察とはいってるけど、あれは多分狩人的な動きをして盲点を埋めてる。リーダー以外を討伐し終えて得物を向けたけど、油断は禁物。

 

『グルル、、、!!』

 

「、、、、、、あぁ、多分駄目だな」

 

 モンスターは例え牙をもがれ爪を折られ、目玉を抉られようとも、自身の矜持を守るために戦う。

 

 龍や悪魔、その他の上位モンスターなら話は別だろけど、あの程度ならそれがさらに顕著に出る。

 

 あのベオウルフは、一人だけでも殺すという瞳をしている。

 

「、、、中位風魔法、風弾狙撃(ウィンドスナイパー)

 

 風の球を圧縮して放つ魔法。圧縮するほど気配が感じにくくなり、貫通力が増す技。

 

 パチュンッ

 

『オ"ォ"ッ!』

 

「! トア!!」

 

 ヒュンッドスッ

 

 スキル

 

「二連撃ぃ!!」

 

 ザザンッ! ドサッ

 

 狙った通りにリーダーの後ろ足にヒットし、怯んで咆哮を上げた隙に短弓によって目を潰されて止めを刺された。

 

 もしかしたら、手を出す必要なんて無かったかもしれない。少なくとも、師匠なら手は出さないと思う。

 

「おーい! 御者さん、剥ぎ取るからもう少し待ってくれ!」

 

 ロックの言葉を受け取り、御者さんはゆっくりと進んで皆の近くにいく。

 

「ベオウルフって爪だっけ?」

 

「そうそう、メルも剥ぎ取り慣れときなよ」

 

「も、もう少しだけ待ってくださいぃ、、、」

 

 素材の剥ぎ取りを終えて再び出発する。そこからも何度かモンスターとエンカウントしたけど、どれも問題なく討伐を終える。

 

 そして、とうとう件の場所へと到着する。

 

モンスターを街に入れないように建造された、三十メートルはあろうかという壁が、遠目からでもその大きさを私に認識させた。

 国王、ヘリオス=テオドールが治め、十三賢者の一人、レオニス。通称、獅子の賢者が住まう国。

 

 オドレア王国

 

「入国には銀貨一枚か身分証をお願いします」

 

 数人の列の後、私達の番が来る。全身鉄の鎧で長槍を構えた、いわゆる門番が槍を交差にして進路を塞ぐ。ロック達はギルドカードを門番に差し出しているが、私は持っていないので大人しく銀貨を一枚差し出すしかない。

 

「あー! 俺等が払うのに!」

 

「いや、自分のことだし」

 

「はい、確かに受け取りました。中に入ったら、身分証明になるものを手に入れるのがよろしいでしょう。それではお通りください」

 

 私はいよいよ、国の門を潜った。

 

 入ってすぐ見えるのは商店街のような人通り、門に近いからか、賑わいが農村の数十倍もある。

 

 多種多様な匂いと、頭がクラクラするほどの人の多さ、森の中では絶対にあり得ない風景に私は困惑してしまった。

 

(話には聞いてたけど、ここまでとは、、、)

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、メルーナさん。うん、ごめん大丈夫大丈夫」

 

「メルで構いませんよ。皆さんそう呼びますから」

 

「今更だけど、アタシ達も呼び捨てで構わないよ」

 

「じゃあ、次からはそう呼ばせてもらうね」

 

 そうこうしていると、御者さんからクエスト達成の魔法印をもらったロックが戻ってきた。

 

「クエストクリアー! とっととギルドに戻って報告しようぜ! テミスの登録も済ませなきゃだしな」

 

 私より歳上なのに、そうはしゃがれてはヤドリギ亭のリオちゃんを思い出してしまう。

 

 頭の片隅で二人の姿を重ねながら、私は小走りで彼等について行く。

 

「さっ! ついたわよ!」

 

「へぇ、、、これが」

 

 冒険者ギルド

 

 三本の矢が交差するマークが一番目立つ大きな建物。

 

 人混みを掻き分けてその建物の前へと私は立った。

 

 それは他の建物とは一線を画す構造でかなり大きいように見え、木製のスイングドアで中は見やすくなっていて、頑張ればスカイも入れそう。しかも、魔法と魔道具で強度がかなり強化されてる、、、いや、なんで? 

 

「入るぞー」

 

 私の疑問を解消させないままにロックは中へと入っていく。中に入った途端に感じる、値踏みの視線。

 

 森でよく見たことがある、強者や、自身を強者と勘違いするものが向ける視線だ。テーブルでエールを煽る飲んだくれに武器の手入れをしている者など、私を見てくる視線は様々だけど、気付かないふりをして私は上の木札に二番と書かれているカウンターの前に立った。

 

「こんにちはお嬢さん! 本日は依頼ですか?」

 

「いえ、登録をしに来ました」

 

「なるほど、ではこちらのシートに記入してください。問題なければ後で筆記と実技の試験をします」

 

 予め聞いていたので、特に問題もなく数分で記入して提出する。

 

「はい、では確認します。歳は十五で今年成人、職業は魔法使いを希望ですね。では、こちらの水晶に触れてください」

 

「えっと、、、」

 

「これは魔光結晶という天然の鉱石で、感知した魔力量に応じて光る性質を持つものです。貴方の魔力量を量るためのものですから、お気になさらず」

 

 それは本で知ってることなんだけど、魔力量、、、自分で言うのも何だけど、絶対ろくなことにならないのが分かるんだよね。師匠は正直、、、うん、魔力に底なんてあるのかな、、、。魔力抑えて触ればいけるかな。

 

「いかがなさいましたか?」

 

「えっとー、、、」

 

「ビビってんだろ、こんなガキが大した魔力なんて持つわけねぇ」

 

 水晶に触らずにこの場を脱する方法を模索していると、後ろからドスの効いた男の人の声が聞こえてきた。

 

「モンスター退治なんてこんなガキに出来るわけねぇ、なぁ? どうせ俺らのための草集めとか街の奴らのお掃除とかの小金稼ぎだよなぁ?」

 

 ヒュッバシッ

 

 頭を叩こうとしてくるおじさんの腕を、私は不愉快だったので弾いた。周りの冒険者は怪訝そうに私を見てくるけど、そんなの知ったもんか。

 

「あ? 何だてめぇ、一丁前に反抗か?」

 

「師匠以外に触らせる予定のない頭なの。不快だから触らないで」

 

 ビキキッ

 

「ちょっっとばかし顔が良いからって調子のんなよ? お前」

 

「おい、ダリオさん! やめてくれ、そいつ世間知らずなんだ!」

 

 かなり失礼なこと言ってる自覚あるのかな、事実だけど後で文句でも言おう。

 

「おいロック、そこ退けよ。新人(ルーキー)にゃ躾をするのが先輩の役目だろうが」

 

 ロックとおじさんは言い合ってる。この上なく面倒だ。

 

 、、、私は別に、自分の強さをひけらかすつもりはないし、それを周りに遠慮して隠すつもりもない。だから私は、魔力を抑えるのをやめて水晶に触れた。

 

 ピキパキ、、、ヴァリンッ!! 

 

 水晶が割れる音と共に、一瞬にしてギルドは静寂に包まれた。真夜中の森のように、自然の音しか響かない静かな空間。

 

「、、、は、、、? お前、はぁぁ??」

 

「あぁ、ごめん。ちょっと水晶が脆かったみたい」

 

「え、テミス、、、?」

 

「お姉さん、これで良いですか」

 

「あ、あの、ま、待ってください。マ、マスター!!」

 

 タッタッタッタ! 

 

 受付のお姉さんは二階の方へ走っていった。まぁ、あの水晶は結構魔力を吸うはずだから、割れるのは中々珍しいことだろうし当然っちゃ当然か。

 

「おいおい! お前らビビってんのか!? こんなんどうせイカサマに決まってやがる! こんなガキが賢者クラスの魔力を持ってるわけねぇだろが!!」

 

 賢者クラス? 何を言ってるんだろう、このおじさん。師匠の魔力は私の何億倍もあるのに。

 

 他の冒険者はというと、彼に同調するように騒ぐ人と、興味がなさそうに武器の手入れを続ける人もいる。

 

 そんな中、ロック達は私に耳打ちしてきた。

 

「お、おい、テミス。悪いことは言わないからイカサマの内容をバラせよ。流石にこの人数を敵に回すのはキツイって」

 

「バラすも何も、私は触れただけ。見たまんまだけど?」

 

「そうは言っても、、、」

 

 ロック達はどうやら信じてないみたい。私は嘘をついてないのに、、、どうしようかな。

 

「おうおう! クソガキィ! 澄ました顔しやがって、鉄拳制裁されても文句ねぇよなぁ!?」

 

 バァンッ!!!!! 

 

 おじさんが拳を構えた瞬間、二階から大きな柏手が打たれて静寂が強制的に作られた。そして、そのまま階段を降りてくる音がする。

 

「静粛にしたまえ、冒険者諸君」

 

 しわがれている、でもハスキーな人の声。その場にいる者全員の脳に通る不思議な声。片眼鏡を掛け、ギルドマークである三本の矢が描かれたマントを羽織る人間が降りてきた。

 

「ギ、ギルマス、、、!」

 

 ロックの呟きがなくとも分かっていた。この場の誰よりも強い、その厳格な雰囲気と佇まい。この人がギルドマスターなんだと。

 

 




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キャラNO3 
光と土の神を信仰する金髪の僧侶
メルーナ
ロックとは幼馴染で、神聖魔法と低位土魔法をニ種類扱える。
白い厚手の法衣に身を包んでいて、戦闘は基本サポーター。メイスで殴ることも一応できる。
スキル
E級魔力操作、F級棒術
魔法
低位土魔法 土拘束(アースバインド)、土壁(アースウォール)
神聖魔法 結界(プロテクト)、小灯(ライト)回復(ヒール)
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