今の目標は色がつくことです!
「さて、話は概ね理解している。この件の当事者は君達だね?」
「おうギルマス。この
「ふむ、しかしなぁ。原則、登録の済んでいない市民に危害を加えるのは禁止行為。さらには冒険者同士でも既定の場所以外での戦闘は禁止、、、その言い分は道理が通らないなぁ」
「うぐっ、、、。でもなぁ、コイツは水晶をイカサマで割ったんだぜ? ギルド側もこれを認めちまったらよぉ、良くないんじゃねぇの?」
ギルドマスターは片眼鏡を直しながら私のことを鑑定の魔法で見てくるけど、対策はしてある。A級隠蔽魔法、
「ふむ、お嬢さんの実力は分かった」
「なぁ、だろう? ギルマス。俺は正しいことをしようとしただけだぜ」
「そうさなぁ、冒険者は常にチャレンジャーだからなぁ。受付の君、闘技場のセッティングをしといてくれ」
「え、はっ、はい!」
ギルドマスターがそう言って受付のお姉さんはパタパタと走っていく。それより、何で闘技場?
「ダリオ、お前三ヶ月前からのツケ払ってないだろう」
「はぁ? 良い仕事が入ったら払うさ。俺はCランク冒険者だぜ?」
「この嬢ちゃんと戦って勝ったらツケ無しにしてやるよ。ついでにこの件もお前に否はなかったことにしてやる」
「へっへっ、流石、ギルマスは話がわかるぜ。俺に制裁役をやらせてくれるなんてな。俺は先に行ってるぜ。逃げんなよ、ガキ」
先にギルドから出ていったけど、結構失礼だな、あの人。
「んで嬢ちゃん、お前さんが勝ったら筆記と実技の免除、ついでに最初からCランクにしてやるよ」
ザワッ
その場の冒険者達はギルドマスターの一言で騒ぎ出す。そりゃそうでしょ。Cって割と高いのに、そんなのをぽんと出すなんて不公平だ。
「、、、いえ、免除だけで構いません。向こうも二つしか貰えないのに、私が三つ貰えるのは不公平ですから」
「、、、嬢ちゃん、そんな些細なこと気にする歳か?」
「常に天秤は釣り合うべき、、、それが師匠の教えなので」
「変わった師匠だな。俺なら利益だけ求めろっていうが、、、まぁいい。それじゃあ、早速移動するとしよう」
ギルドマスターは踵を返してギルドから出ていく。
外から漏れる光は彼の神々さを際立たせて、歩く道を開ける冒険者達は割れる水面のようにも見える。
「おい、テミス。さすがのお前でも相手が悪いって。あの人一応Cだぜ?」
「ロックの二つ上でしょ? 奥の手もあるし大丈夫大丈夫」
私はロックが不安そうに見るのを気にせずに私は件の闘技場へ向かおうとした。そう、しただけで足を止めた。
「、、、」
「ど、どうしたテミス?」
「いや、道教えてくれないかな。知らないんだけど」
「お前なぁ、、、いやいいや。なんか、なんとかなりそうな気がするし」
呆れ顔のロックは、私を案内するために前を歩き出す。Cランク。ロック達の戦いから逆算するに、多分問題ないとは思うけど、なんの魔法使えばいいんだろう。
私は頭の中で使う魔法の術式を組み立てながら闘技場の前へと歩き、ものの数分で到着した。
闘技場と言う割にはそんなに大きさは無く、恐らく別の場所にもっと大きな場所があるんだろう。
円形のスタジアムに入り、ロック達は二階吹き抜けの観客席へと入る。
さっきので興味を集めてしまったのか、数名の冒険者やパーティが私とおじさんの戦いを見るつもりのようだ。
「おう、よく逃げなかったなクソガキ。偉大な先輩の恐ろしさ、見せてやるよ」
「威嚇も程々にしろダリオ、冒険者なら実力で示せ」
「へーへー、ギルドマスターさんよ」
「おい、武器はいいのか? お前は魔法使いだろう」
「問題ないです。持ってますから」
「なら構わん。それでは、決闘ルールを私自ら宣言させてもらおう。一つ、戦闘不能の相手に故意に止めを刺す行為は禁ず。一つ、決闘はリングの中でのみ行うものとする。一つ、以上二つのルールを破るな。互いに宣誓!!」
「誓います」
「誓うぜ」
(要するに殺さなきゃ何でもいいのね)
ギルド長は自らの持つマントをたなびかせて声を張り上げ、私とおじさんはそれに誓いを立てる。やっぱり何かしらのスキルの効果でギルド長は声を出してる、
「三歩後ろへ、音響弾が始まりの合図だ」
ザッザッザッ
「よーい、、、始めぇ!!!!」
バギィンッ!!!
金具が弾けるような耳障りな音、マスターの声も大きいし、よく耳に響くのも相まって耳が二重に痛くて両手で塞いでしまった
「うるさ、、、」
ダンッ
「はっ! その首貰ったぁ!!」
おじさんはショートソードを使って私との距離を詰めてきた。ロックと同じだけど筋力の差かな、ちょっと速い。でも、この程度じゃどんぐりだ。
トンッ、ブゥオンッ!
「んなろっ、避けんなごらぁ!!」
「別に避けなくても良いけど、そうする?」
ブチィッ
「火の神よ──」
下級炎魔法ファイアの詠唱、唱えるほどではないと思うけんだけどな。まぁ、同じ魔法を使うのは意趣返しということで。
「ファイア」
ピッ、ボゥッ!
「手っ! あっつ!?」
ガランッ!
「大事な武器だよ、落としちゃ駄目なんじゃない?」
ガンッ!
私は武器を壁際に蹴り飛ばした。武器が手から離れたら、少しは焦るはず。
「ぐっうぅ!」
(なんだコイツ! クソクソクソ!! 俺はCランク! 中堅の冒険者だぞ!!)
ザッザッザッ
「、、、別に私は自分の力を不必要に見せつけることはしないよ。でも今、決闘という絶対的平等な空間においては、私は貴方に不平等を見せつけることができるの」
決闘は、ルールを守る限り誰でもどんな相手においても平等。奴隷だろうと騎士だろうと、目の前をルールに則って倒すだけ。だから私も、眼の前の相手をルールに従って叩きのめす。
テミスは右手の人差し指を真っ直ぐ伸ばして下へ向けた。
「うるせぇ!! ぶっ殺──」
ヒュオン、、、
特階重力魔法
「
ズゥンッ!!
「ぁがっ、、、!! 、、、、、、、、、ッッ!!!」
ビキキッビキッ、、、
「、、、、、、、、、!!! 、、、!!」
ザワッ
ギャラリーは騒ぎ立てているけれど、何てことない魔法だ。ただ私達が常日頃から感じている重力を、一気に五十倍にしただけの魔法。
私は魔法使いだけど、ギルドの職業分けで言うなら魔導士、この程度は無詠唱で充分。
「ギルド長、これで良い?」
(曲がりなりにもC級、、、それをこうも容易く伸すとは)
「、、、ハッハッハ! やっぱりか。もう終わりでいいぞ。つまらんだろ」
フッ、、、
「おぁっ! あぁ、、、はぁっ、、、」
「さてダリオ、後でツケ払いに来いよ。お嬢ちゃんは帰りな」
ギルドマスターは足元にいるおじさんを足でつついてそう言った。
「随分あっさり、、、話が早くて助かるけど」
「おぉっと、戻ったら俺の部屋に来いよ。さすがに確認することがある」
「クソぉ、、、畜生、、、クソがぁ!!!!!」
バッ!
おじさんは奇声を発した後、ナイフを腰から抜いて襲いかかってきた。まぁでも、仕方ないよね、これは決闘外での事故だもん。
「
バゴンッ!!
そう思って、少し強めの魔法を構築しようとしたら、空から銀の鎧に身を包んだギャラリーの一人が、しなやかな身のこなしで彼の上に降ってきた。
土煙が晴れてその姿が見えてくる。
背中に携えてる背丈を優に超える白い大剣はとても重そうで、斬るより叩き斬るというほうが似合っていそうなものだ。いや、ていうかそんなことより、なんで降ってきたの。あと
「まさか、、、あそこから跳んだの?」
小さい闘技場とはいえ、離れた観客席からここまで二十メートルはある、魔法無しで飛ぶとしたら、スキルしかないのに、スキルを使った気配がない。
(、、、もしかして
一千万に一人の、その人だけの才能。魔力放出も極端に少なく、同じ効果は二つとしてないから見逃した可能性は十分にある。
「やぁ少女!! とてもしなやか、かつ洗練された動きだ! 魔法士というのも間違いではないだろうがきっと剣の腕も相当なものと見受けた! と、いうわけで一戦、お相手願おう!」
兜で見えない彼女の声は、とてもハキハキとしていて聞きやすかった。その上で私は聞き返した。
「え、なんで、、、」
「ちなみに、答えはYESしか用意していない!!」
ゾク、ッブォンッ!!!
背筋に冷や汗が流れたと同時に、私は足を狙った一閃を低いバク宙で躱した。眼の前を大剣が過ぎていく。いつ抜いたのか認識が遅れるほどに速い、正直、足を持ってかれたと思った。
「凄い! 今のを避けるのか!!」
トンッ
「水土複合、、、
ズブンッ
一般に、火水土風木の五つは基礎魔法に分類され、専門職でなくとも単属なら扱える範囲で魔法使いなら得意な程度。特階魔法はさらに重力、空間、闇、毒の四つと、派生形として神聖魔法の光があり、ここまでが魔法士の範疇となる。
ズブブッ
足元の土を柔くし、底なしの沼と化す複合魔法。速い足なら封じてしまえば解決なんだけど。
「ハァッ!!」
ドヒュンッ!! ビヂャヂャッ!!
力任せに沼を斬り飛ばして脱出。滅茶苦茶な方法だけど、もしできるのなら最適解だ。
「良いね、流石は魔法士だ! でも私は君と剣術での一騎打ちがしたいんだよ! ほら! 剣を、、、持ってないね、よく見たら!」
ヘラヘラ兜越しで笑ってるけど、この人私より強いかも。少なくともこの場で身体的には一番強い。
「、、、手加減は出来ないからね、、、後悔しないでよ」
私は彼女の期待に答えようとした。
「止めィ!!!!!!」
ビリビリッ、、、!!
ギルドマスターの声が凄く響いた。街の方まで響いたんじゃないかな。耳がとんでもなく痛いし、何故か身体が動かない。
それは彼女も同じ様で、鎧越しに耳を押さえているのが見える。
「ッッくぅ~! 効くなぁ、マスターの言──ィィ!?」
ガインッ!
「止めんかこの問題児が!! ユーリとカトレアはどこだ!?」
マスターが彼女に向かって拳骨を下した。鎧越しでも痛そうな音が響いてる。マスターが二人の人名を呼ぶと、ギャラリー席からその人達が降りてくる。
「ごめんなさいマスター! 今行きますー!!」
「こんのバカ! 早く戻りなさい!! ディアナ!」
茶髪とツリ目が特徴の猫人族の方が呼ぶに、この人の名前はディアナというらしい。先にもう一人の金髪のエルフさんが私に駆け寄ってきて頭を下げてきた。
「ウチのリーダーが本当にごめんなさい。怪我はない? よく言って聞かせるから、本当にごめんね」
「怪我は無いけど、、、」
(あぁ、、、これがロックの言ってた共同意識、、、? なんか違う気もする、、、)
「? 怪我がないなら良かった。私はユーリ。ユーリ=シルケンダ。エルフよ、よろしくね」
「えっと、よろしくお願いします」
胸を撫でた後にユーリさんは私に手を差し出してきたから、私もそれを握り返す。
その直後に二人の怒鳴り声が響いてきた。
「このバカ! マジでバカ!! 本当にバカ!!! なんでそんな向こう見ずなの! 本当に元騎士なの!?」
「いきなり新人に剣を振るうなど笑い話にもならん! 貴様はもう少し自分の立場を知れ!!」
ガゴンッ!!
「痛い! 痛いよ! これは正当な暴力なの!?」
「俺がやるんだから正当だ!」
「いいぞギルマス! もっとこのバカに思い知らせろ!!」
二人の言葉と猛攻でディアナさんは縮こまっている。いきなり斬りかかってきたとはいえ、流石に見てて可哀想になってきた。
「テミス! 大丈夫か!?」
ロック達も上から降りて駆け寄ってきたけど、特に問題もないから同じように接する。
ザッザッ
向こうから銀の騎士が兜の留め具を外しながら歩き、私の前に立つ。
そして目の前で兜を外してすぐに頭を下げてきた。
「いきなり斬りかかって、真に申し訳ございませんでした、、、」
「別にあんまり気にしてませんし、充分お仕置きされたと思うので顔を上げてください」
顔を上げたディアナさんは短い銀髪と碧眼が特徴的で、見惚れてしまうほどキレイな顔をしていた。
「いやぁ、、、すまない。私の悪い癖でね、つい。私はディアナ=ガブリエラ。一応パーティー、
「私はテミスです、、、よろしくお願いします」
手を差し出してきた彼女に、私も同じ様に手を出して握手する。女性らしい手付きの中にしっかりとした芯があって、立ち姿も本で見た流麗な騎士そのもので、目で追ってしまう。
「ウチのリーダーが本当に申し訳ない!!」
「もう終わった話だしそこまで気にしなくても、、、」
「いや、一歩間違えば大怪我だったんだ。謝罪は受け取ってほしい」
彼女は深々と頭を下げて私に謝罪する。もうお腹いっぱいにもらったから、なんとか穏便にことを済ませたい。
「、、、マスター、あれは規約違反になるんですか?」
「もちろんだ、厳しい処罰と罰金が課せられる」
「処罰はいいので罰金だけお願いできますか?」
「それは駄目だ、個人の意志で規約を曲げることは許されん。集団として機能するギルドが一人を贔屓することは、いずれ秩序の崩壊を招くことになるからな。お前の言う平等にならんぞ」
(それはそうだけど困ったな、、、あ、そうだ)
「じゃあ、その処罰は私が決めてもいい?」
「、、、本人間の問題だ。そこまで言うならお前達で決めるといい。ちゃんと罰は選べよ」
ギルドマスターの了承は得た。別に私にとってあの程度は怒る対象にはならないし、適当なことでも言っておこう。
「んーと、、、じゃあ、ランクが一つか二つ上がるまで、冒険者の基礎を教えてくれないかな。なりたてだし」
ザワッ!
私が処罰の内容を決めた途端、見物に来てた冒険者が一同にどよめいた。そんなに重い罰じゃないと思ったけど、人生の数日くれって言ってるんだからそれなりなのかもしれない。
「別にずっと行動を強制するつもりはないよ、ランクを上げたいだけだから」
週に一回のノルマは面倒だからFかEにはなっておきたい、理想はこの街にいる間にCになること。
「ふ、、、あっはっは!! 承知した。パーティ、天冥リーダー、ディエナ=ガブリエラ。君の専任冒険者を無償で承ろう」
「、、、専任冒険者?」
聞き慣れない、というか聞いたことない単語だ。あ、待って、なんか分かったかもしれない。
「なるほど、専任制度か。それならば俺にも異論はないな」
「テミス、お前ほんとぶっ飛んだことするな」
「あぁ、、、やっぱりそういう感じなんだ」
しまったな、、、ギルドの制度をちゃんと確認するべきだった。これは一人だけなのかパーティそのものを雇うのか、、、取り敢えず一旦ギルドに戻ろう。
「はぁ、、、詳しいことはギルドでご飯でも食べながら話そうよ。なんか色々疲れちゃったし」
──ー
私はギルドの食堂で天冥の皆と卓についている。ロック達はご飯を食べて先に宿に帰っていった。なんか呆れてたけど、私だって全部考えてやったわけじゃない。
ユーリさんには今良さげな依頼を見繕ってもらってて、残りの二人と座って話している。だというのに、カトレアさんの話しを聞いて、ただ水を飲んでるだけなのに、周りの冒険者達の視線が刺さるように痛い、こっち見ないでよ、、、。
「専任制度は簡単に言うと、依頼主のお抱えになるってことだね。その冒険者を独占する分、普通の報酬よりも断然おいしい。でも期間中は他の依頼を受けてはいけないってルールがあるけどね」
「へぇ、、、期間は依頼主が決めるの?」
「基本はね。今回は少し漠然としてるけど、パーティーのリーダーが迷惑をかけた詫びだ。アタシら全員こき使ってくれ」
「あはは、たまには初心に還るのも悪くないんじゃない?」
ゴンッ
無邪気に笑うディアナさんに再び鉄拳が落ちた。
「、、、ごめんなさい」
「えっと、一つ聞いてもいい?」
「ん? どした?」
「三人のランクは? 少なくともDやCじゃないよね?」
「んー? あー私達はね」
「新人テミス!! ギルド長室に至急集合!」
呼ばれたらすぐに行かなきゃならないんだった。
空気読んでよおじいちゃん。
「ちょっと行って来るね」
「「行ってらっしゃーい」」
彼女は慌ただしくギルドの階段を登り二階へと向かった。
「にしても、久し振りに会ったね。私等を知らない子」
「所詮その程度の知名度と捉えるか、よほどの世間知らずか、、、いずれにせよ、冒険者にさほどの興味がないのは違いないだろうね」
カトレアはいつものように、エールを水のように飲みながらそう言った。でも、私には彼女は外界から拒絶された箱入り娘に視える。
キインッ
A級鑑定スキル、
同等の隠密系スキルで守られなければ相手のスキルと会得している能力や称号、魔法を全て看破する魔法。互いの魔法の位が近くなるほど看破できる種類は減っていく。同等であれば魔法とスキルのみが閲覧できる。
使っている間は目が紅くなるため、隠し見るのにはあまり向かない。
(習得した魔法の種類とスキルの数が数え切れない。だけならいいのに、まさか私の鑑定と同じA級の隠蔽スキルを持ってるとはね、、、)
「、、、私達が師事する必要あるのかな?」
「? あんたが蒔いた種でしょうが。あ、ユーリ! こっちー!」
彼女と剣を交える日が来るのと同じくらい、肩を並べて戦える日が、私は楽しみでしょうがない。
現在公開可能情報
魔法の位について。
主に単属性、基礎魔法に分類される
低~高位魔法
特階魔法ー神聖魔法。
主に五元素から外れた次元魔法や光魔法等。ここまでできると、基礎魔法を複合して扱えたり、詠唱を省くこともできる。
恵廷魔導
これらの魔法全てを自在に組み合わせて扱える。
これは魔道士の範疇。
これら以上の魔法を扱う人間は一握り。