最後は幼馴染に負ける悪の話   作:チキンの山椒漬け

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多分いないと思いますが、原作やった事ない人は原作やりましょう。


胎動
第1話


 滅界戦争。それは人界、魔界、神界、竜界という四つの並行世界を巻き込み、大きな犠牲を出した。後に勇者と呼ばれる人族が滅界戦争を終わらせた。しかし滅界戦争を主導したのも人族だった。故に人族は差別され、区別される。

 

 この話を聞いても僕はふーん、という感想しか湧かなかった。人族って大変なんだなぁと。僕も人族だったけど。

 

 そんな僕だけど、割といい生活をしていると子供ながらに自覚していた。何故なら僕は他人には無い力があったからだ。

 

 一を聞いて十を知る。こんな言葉があるが、この言葉は僕の特徴をそのまま表している。一を聞いたら百を知り、百を基礎にして新たな一を作る。そんな事が可能だった。

 

 勿論、そんな力を持っていた僕は精神が早熟し神童と呼ばれた。親としては気味悪がられても仕方が無かったかもしれないが、両親は僕を受け入れてくれた。この事は感謝してもしきれない。

 

 血筋に影響されたのかもねーと笑顔で言っていた。血筋、それは他種族と比べて魔力や気鱗等の特殊な力を持たない人族では意味が無いかもしれない。

 

 けど僕の家系は唯一特別と言っていいかもしれない。僕の中を流れる血は皇の家系。人界を支配し続けてきた者の末裔。と言っても、ギリギリ皇の家認定される程度ではあるけれど。

 

 そんな皇の血が流れている僕ら家族には護衛がいた。専ら僕専属みたいな感じにはなっていたが。そして護衛であると共に僕の師匠とでも言うべき存在だった。楽しさがなかった訳では無いが戦闘に関して子供だというのに叩き込まれ、地獄を見るかと思った。

 

 そんな訳で僕は英才教育を受けつつ楽しく暮らしていた。友達は大事という両親の教えの元、家が近くだった同世代の奴らとも仲良くなれた。特に勇者に憧れていた少年ーー白鷺姫には感謝している。僕を含めてみんなを引っ張ってくれたから。

 

 だからと言って良いのだろうか?

 それとも、ボタンを掛け間違えたとでも言うべきだろうか?

 

 勇者志望である姫が儀式兵器と呼ばれる武器を手に入れる時、僕は両親に我儘を言った。僕は両親と一緒に皇家が主催する会合に参加しなければいけなかったけど、無理を言って参加しなかった。姫と一緒に魔法儀式に参加したかったからだ。

 

 両親はちょっと困った顔をしながらも少し嬉しそうだった。出掛ける際には楽しんで来てねと言われた。そして師匠がお目付け役として何も喋らず後ろを着いてきた。

 

 魔法儀式で貰える武器を考えて興奮していた姫と喋りつつ、チラリと後ろを見ると微笑ましそうにニコニコしていた事が印象的だった。いつも無愛想な師匠が笑っててギョッとしたけど。

 

 だからこそ僕は忘れられない。笑って僕を見送ってくれた両親、微笑みながら着いてきてくれた師匠。そんな大切な人達を奪った事を。

 

 戦争を引き起こした罪深き種族。そんな認識が世界には広がっていたらしい。魔法儀式によって武装を得る未来ある人族の戦士と皇の家系を狙った同時多発テロが行われた。

 

 まず魔法儀式を行う際に閉じられていた扉が魔力の込めた一撃によって吹き飛ばされた。喧騒によって姫とは逸れてしまった。けれど、すぐに配備されていた護衛が対応する。武器を構え、僕を含めた子供を逃がそうとした。勿論、師匠も。

 

 だけど、無意味だった。

 

「邪魔だわ」

 

 閃光と共に放たれる強大過ぎる魔力の奔流。それは師匠達を容易く飲み込み、粉塵が舞う。まるで生物としての格を見せつけられるような一撃だった。

 

 晴れた視界に入ってきたのは意識無く倒れ込む師匠達。

 

 言葉が出なかった。戦闘に関して僕に全てを教えてくれた師匠が倒された。それは僕の常識が崩れる瞬間だった。

 

 そして扉の向こうから歩み寄ってくるのは死、そのもの。魔族の象徴である翼を八枚も携えた少女。すぐに戦える相手ではない事が分かる。分かってしまう。

 

 更に少女と共に数十人の魔族がなだれ込んで来る。僕は逃げなければ死ぬと思った。しかし絶望的なまでに遅かった。

 

 魔族が逃げる僕らを逃がさないように魔法攻撃を行ったのだ。背中を向けていた僕は為す術なく吹き飛ばされた。

 

 激痛によって意識が薄れていく中、最後に見たのは動けなくなった師匠の首、目掛けて剣を振るう魔族の姿だった。

 

 そして目覚めたのはとある病院の中。そこには僕が見た事無い人が沢山いた。口々に何かを喋っている。否、僕の力によって理解は出来る。ただそれを認めたくないだけだ。

 

 皇家、最後の生き残り。僕はそう呼ばれた。叫び出さなかったのが奇跡だった。何も理解したくないのに、力によって理解出来きてしまう。

 

 そして状況を把握させられ続けていると、不意に分かった。これは"血の儀式"であると。

 

 その瞬間、頭が割れるような痛みに襲われた。周りの状況なんて気にしていられなかった。

 

 僕と僕が知らない事を知っている僕が混ざり始めた。白鷺姫を主人公とした物語を知っている、魔法が発達していない別世界の住人である僕の記憶。所謂前世の記憶という奴か。僕と僕じゃない僕が溶け合い、混ざり、固まっていく。

 

 頭痛が無くなれば、もう僕は僕じゃない。二人の僕が混ざった新しい僕。

 

 周りは僕を心配していた。だが、僕は周りの話を聞き続け、現状把握をした。それが一番大事だと理解出来たから。

 

 そして皇、最後の生き残り。それは僕にとって有効に働いた。結果としてある程度の権力を持つ事が出来た。

 

 だからその権力を使って魔界に向けて正式な要求を出す。同時多発テロの実行犯を引き渡せと。

 

 だけど原作知識は要求が通る事はないと告げていた。嘘だとは思いたかったが。

 

 結果として犯人を引き渡すことは出来ない、こちらで犯人は処刑すると書かれた通知が来るのみだった。

 

 だろうな、というのが感想だった。期待なんてしていない。今回の襲撃犯の中には魔族の現トップ、トリア=セインの一人娘であるヴェル=セインがいる。

 

 原作知識が伝えてくる。ヴェル=セインは騙されていただけだと。悪い奴では無いのは分かる。分かってしまう。しかし納得はできない。

 

 結果として師匠はヴェル=セインに殺されたも同然だ。それに父さんも母さんも魔族に殺された。今すぐにでも魔族を殺し尽くしたいぐらいだ。

 

 でも今の僕には力が無い。それに魔界や神界、竜界に比べても人界は力が無い。これでは無理だ。

 

「なら頑張ってみるか。どんな手段を使っても」

 

 仇を取れるぐらいに強くなろう。僕も人界も。僕は心の中でそう決めた。

この作品を閲覧した理由

  • Tiny Dungeonの二次創作だから
  • タイトルとあらすじから
  • 転生タグとオリ主タグから
  • アンチヘイトタグから
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