最後は幼馴染に負ける悪の話   作:チキンの山椒漬け

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第10話

 

 目の前で相対する両手剣を持つ男ーー白鷺姫と刀を持つ女ーー白川紅。

 

「はぁっ!」

 

 姫が相手の意識を刈り取ろうと両手剣を振るう。その剣筋はブレが無く何らかの流派に属していた事が読み取れる。

 

「ふっ!」

 

 相対していた紅は腰に身につけていた刀を抜刀し迎え撃つ。通常、刀とは相手を斬るという事に特化しており鍔迫り合い等の用途には向かない。ましてや刀を持つのは女性である紅。両手剣を振るう姫に押し負けるのは必然かと思われた。

 

「なっ!?」

 

 紅はどこか不快な金属音と共に刀身を滑らせ、姫の斬撃を受け流していた。少しでも目算を誤れば紅自身に刀身が直撃するような危険な技。しかしそれは紅の裏打ちされた実力と魔力による強化によって危なげなく実行されていた。姫は想像していなかった技の受け流しに驚きの声を上げ、急いで体勢を立て直す。

 

「遅いっ!」

 

 しかし速度を重視した戦法を得意とする紅にとってみれば余りにも遅かった。紅は刀を上段に構え振り下ろす。いくら紅の攻撃が軽いという弱点を持っていても、この攻撃をまともに受ければ昏倒するのは目に見えた。

 

「まだだっ!」

 

 姫は咄嗟に剣を手放し、バックステップを行う。昔から道場に通っていた故の判断の早さかもしれない。体を身軽にした事により紙一重で紅の斬撃を躱した。

 

「危なかった。強いな、紅」

 

「ふふ。姫も中々やるな」

 

 互いに賞賛しつつ体勢は崩さない。紅には刀があり、姫は剣を失った。しかし姫は戦意喪失をすること無く、腰を低くし両手を構える。そして紅も油断なく刀を構えて踏み込む、次の瞬間。

 

──パンパンパン。

 

「はい、皆さん。今日の授業はここまでです。各自復習を怠る事など無いように留意しなさい」

 

 手を叩く音と共に告げられる終了の報せ。原作主人公である白鷺姫、そしてヒロインの一人である白川紅が授業の一環として演習を行っていた。

 

「ふぅ……。それにしても姫。儀式兵器が無いと言われた時は驚いたが、技量に関してはなかなかのものだぞ」

 

「ああ、ありがとう。昔、友達から勧められてたからな」

 

 姫は誇らしげにそう返す。姫にとって剣とは儀式兵器という力の代わりに磨き上げてきた力だ。褒められれば悪い気がするはずもない。そして演習の感想やお互いの改善点を挙げていった。

 

「あ、そういえば姫。私達のようにトリニティに来た人族がもう一人いるという話だっただろう? そのもう一人はどこにいるんだ? 今日の授業には出ていないみたいだが……」

 

 紅が首をかしげながら至極真っ当な疑問を姫にぶつける。対して姫は少しだけ答えにくそうに言った。

 

「あー。あいつは……仕事らしい」

 

「どういうことだ?」

 

「ま、まあ、後で紹介するさ」

 

「そうか。なら、楽しみにしてるぞ。姫」

 

 

「なっ……。あ、貴方が!?」

 

「こんにちは。白川紅さん。僕は皇慧。慧って呼んでね。これから数年間、よろしく」

 

 目の前で驚愕しているのは成長すれば人界の中でも一、二の実力を争う事になるかもしれないポテンシャルを持つ白川紅。原作主人公である姫のヒロインだ。刀を儀式兵器として用いる速度重視の剣士だ。

 

「ど、どういうことだ! 姫!?」

 

 思わずと言った感じで白川さんは隣で紹介してくれた姫を問い詰めていた。

 

「こいつは慧。俺の昔からの友だちだ」

 

 姫は少し誇らしそうに俺を友だちと言ってくれる。それは僕にとっても嬉しいものだ。しかし驚愕といった感じの白川さんの緊張を解くために、ここでネタを一つ。

 

「あはは。驚くのも無理ないよね。だって人界では散々に叩かれてたからね」

 

「「……」」

 

「あれ?」

 

 なんか空気が死んだ気がするぞ。白川さんの顔が引きつり固まっている。なんなら姫は顔面に手を当てて俯いている。

 

「……まあ慧はこういう奴だからさ。でも悪い奴じゃない。人界で言われていたような酷い奴じゃないんだよ」

 

 人界では僕が工作した通りの酷いうわさ話が山のように溢れているから仕方ないけど。

 

「そう……か。うん、すまない。慧。これからよろしく頼む」

 

 こうして僕と姫、そして白川さんを含めた三人でトリニティでの生活をする事となった。因みに……。

 

「なあ、慧。なんでお前、一人部屋なの?」

 

「え、羨ましい?」

 

「当たり前だろ!? というかそのせいで俺が女子寮に「え、一般人に知られたら人界で即刻死刑になるような資料があるけど、それでもいいならいいよ」」

 

「うん、ごめん、なんでもない」

 

 ごめんね、姫。これも原作のためだよ。きっと、メイビー、半分くらい。

 

「そっか。とにかく頑張れ、姫!」

 

 原作通りに進めるように学びを、交友を、力を得てくれ。

 

 

 そこからトリニティの一階級としての生活は始まった。トリニティという学園における授業は実習という形での戦闘技術やダンジョンの他に様々な勉学があった。僕としてはチートも相まって話を聞くだけで大体の内容を理解することが出来た。

 

 でも座学に関しては人界でも聞くことが出来る程度。つまりは普通の授業と言った感じだ。それも仕方のないことかもしれないが。実際、トリニティに通っている生徒に関しては一般人に毛の生えたレベルの学生も少なくない。……たまに魔王の血族だったり、銀月であったり、金鱗であったりとバグレベルの存在がいないわけではないが。

 

 そんな授業を聞く傍ら、実習においては剣技に関する実習が行われている。むしろこっちがメインではあるそうなのだが、こちらもこちらで軍人レベルの技量を持つ者はほぼいない。

 

 正直言って何が目的なのかよく分からないというのが、僕が持つこの学園に対する印象だ。だって何が目的なのか、本当によく分からない。あの滅界戦争を終結させたような人材を生み出したいにしては、主に魔族、神族の差別意識が酷い。それに戦争を止めるような人材を育てるにしては行うのは戦闘に関するものばかり。同じ教育にしても現場レベルの戦闘に関するものじゃなくて、政治学でも経済学でもいいからもっと政治に関して勉学を施すべきじゃないかと思わなくもなかったりする。

 

 まあ、別にいいんだけどさ。結局最後は敵として相対する集団だ。現場レベルの人材しか育成しないのであれば好都合。……本当にそれぞれの世界を担う者、主に官僚とかはどうせ国の安全な場所で育成されているから関係ないかもしれないけど。

 

 そんな事を考えつつ、姫や白川さんと頑張って授業を消化していった。ダンジョンにおいて基本は白川さんがメイン、姫は作戦立案、トラップなどの解除、僕はアイテム作成や二人のサポートに回っていた。そして勉学では苦労は無かった。だからこそ二人に対して何かと教える役目となっていた。

 

 因みにダンジョンにも通ずるが戦闘において剛鬼は使っていない。明らかに性能的にも、技術的にもオーバースペックが過ぎるし、多種族に対して無駄に警戒心を与えるような行動は避けるべきだから。

 

 そんなこんなで楽しく毎日を過ごしていたわけだが……。

 

「おや? 戦争を引き起こした廃棄物ではないか? どの面を下げて学園に通っているんだ?」

 

僕達は人族。戦争を引き起こした原因として差別されているわけで。当然、過激派が現れるわけだ。名をラーロンという。

 

 ラーロン。それは魔王の血族に連なる者。しかし血筋としては割と端の端といって差し支えない程度。原作では当初、いや結構後の方まで敵として出てくる噛ませ役といった感じ。最後の扉において更生するまでは差別意識にまみれた救いようのないクズといって問題ない。そんな輩が男子学生寮で俺に絡んできたわけだ。あ、因みに姫は女子学生寮にいるから問題は無い。……問題が無いわけではない。

 

 そんな更生する予定の現クズは姫にとって大切な成長要素である為、無視する予定だった。けど、男子学生寮という事もあり、様々な嫌がらせが僕にぶつけられた。やっぱ糞だなと思った。故に僕は確信する。決意が間違っていないことを。

 

 だからこそ、ちゃんと滅ぼそう。人以外、全て。

 

この作品を閲覧した理由

  • Tiny Dungeonの二次創作だから
  • タイトルとあらすじから
  • 転生タグとオリ主タグから
  • アンチヘイトタグから
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