最後は幼馴染に負ける悪の話   作:チキンの山椒漬け

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第11話

 

 僕に嫌がらせを繰り返してたラーロン君。謹慎処分だってよ。

 

「あのラーロンが謹慎!? ……なにをやったんだ? 慧」

 

 教室において同じ人族として嫌がらせを受けていた恐る恐るといった感じで姫が僕に尋ねてくる。

 

「んー。やっぱどれだけ個人が粋がっても集団の力って偉大だよね。主に国の力って」

 

 僕はあえて具体的に言わずにぼかしてみる。

 

「あ、あはは。嘘……だろう、慧?」

 

 白川さんも少し苦笑いしながらも僕に尋ねてくるが、僕の答えは満面の笑みとさせてもらおうかな。

 

「「……うわぁ」」

 

 実際、ラーロン君は人界最高権力者という肩書をなめ過ぎだ。普段なら証拠を揃えてトリニティに訴えたとしても、なあなあで済まされてしまうかもしれない。けど正式に国際ルートでわざわざ証拠を揃えて訴えれば多少は効く。なんならこの謹慎はラーロンを守るための処罰ともいえる。実際、人界では僕に対する敵対的行動は、何故か厳しく処罰されるからね。仕方ないね。

 

 謹慎された後のラーロンと言えば僕に対して嫌がらせをすることは割に合わないと理解したのか、嫌がらせが半減した。うん、ちゃんと理解できてえらい!

 

 そんなラーロンに関して他に言えることとしては、髪の毛などの遺伝子情報の塊を用いて魔王の血族について研究している事ぐらいだろうか?

 

 その得られる情報にしても魔王の血族の端くれ過ぎて酷いもんだ。多少得られる知識が増えなかったわけではないが、ノイズが酷くて情報解析にも手間しかかからない。

 

「犬で例えるなら、血統書付きじゃなくて只の雑種だろ、これ」

 

 うへぇ、と思わず唸る。さすが、ラーロン。こちらの労力をいとも容易くぶっ潰す恐ろしい奴だ。

 

「でも雑種でも通常の魔族よりも魔力、身体性能が底上げされてる。……純粋な魔王の血族の情報、欲しいな」

 

 微かに遺伝子に組み込んでいるだけでもこの性能。いやはや魔王の血統とは恐ろしい。僕が作る予定のクローン兵士に組み込めたとしたら途轍もない性能の底上げが期待できる。しかしその情報を取るにしても今は無理だろう。現在、トリニティにいる純粋な魔王の血族はトリア=セインのみ。

 

 二階級になればヒロインであるヴェル¬=セインが追加もとい参戦するが、それでも二人のみ。ラーロンに関しては機会があったからやったけど、流石に女性相手はきついだろう。確実に警戒される、色んな意味で。

 

 だからやるにしても一つ目、二つ目、三つ目、どの扉かは分からないけど最終決戦ら辺で情報を取りたいかな。決戦ならどさくさに紛れて生体情報を入手することだって可能なはずだ。黒翼しかり、銀月しかり、金鱗しかり。

 

 あー、早く解析したいなぁ。前に作った戦闘用クローンの試作実験体から比べれば進歩している事は確かだけど、未だに生産を行うには至っていない。生産をしたところで粗悪品であれば意味は無いと思うから。人界では僕の指示通りに他世界に悟られない様に軍備を拡大、増強を行いつつ、各分野の研究を進めてもらっている。

 

 僕自身もトリニティに保管されている書物を読み進めながら研究を行い、人界に研究成果を送り続けている。人界に送る際には検閲もあるから気づかれない様に暗号、専用の読み取り機に通さなければ自壊するように細工を施してある。

 

 軍備方面としてはクローン兵士による戦力の増強、兵士が扱う装備の一新、各種族に対する戦闘面における有効な戦術あたりが当面の課題として挙げられるかな。とても忙しい。しかし一方でとても楽しくもある。世界に挑むという言葉自体がロマンであり、やはり心が躍る。それにそうそう。家族の仇はやはり取らなくてはいけないからね。

 

 今や僕は復讐心のみで動いているわけではないと自分でも感じている。世界に挑むこと自体がゲームのように感じている節がある。必要な駒を揃え、装備を揃え、必要な戦術を用意して敵を倒す。最初は復讐心だけだったがそれだけでは到底持続することが出来ない。どんなに怒りを抱いていたとしてもそれは風化する。だからこそ楽しむことにした。だからこそ続いている。世界に挑むという到底正気とは思えないことに対しても。

 

 しかし僕は人界で敵、全てを撃ち滅ぼし今や人界最高権力者となっている。なら世界が後、三つ増えたところで関係ないんじゃないか。そう思えてくるようになっている。

 

「どうしたんだ? 慧。 そんなところで立ち止まって」

 

 トリニティへと通じる通路でぼうっと考え事をしていた僕に姫が問いかけてくる。白川さんもちょっと疑問気に首をかしげている。

 

「んー? なんでもないよ。ただとても楽しいなって!」

 

 ああ、とても楽しみだ。願わくば、最後の敵は姫、キミではないことを祈るよ。いや、敵となって立ちふさがるのもまた一興かもしれないけど。とにかく今は順調そのもの。僕はまた一歩、成長している。

 

 

 それから一年近く。僕ら三人は学園へと通い続けた。時に辛いこともあったけど、振り返ればとても楽しい事だったと思う。姫が戦闘では最底辺と評されてはいたけど、剣術を小さいころから学んでいたこともあり、何とか二階級へと全員で進むことが出来ていた。

 

 しかも途中で姫は金鱗と呼ばれる竜族の最高権力者、ウルル=カジュタと出会いを果たし、”にいさま”と呼ばれる関係性に至っていた。流石、主人公。抜け目のない所業に僕も驚きを隠しえない。ついでにオペラ=ハウスという滅界戦争経験者の一人がメイドとしてやって来ていた。

 

 姫を通じて普通に話をしているが、別にそこまで仲良くなったという感じはない。向こうは気の良い人達で姫や白川さんと話す過程で顔見知り以上には関係を重ねたとは思うけど。

 

 そして蔵書を読み漁る過程で見つけた人物が一人、アミア=ルゥムだ。深海の第二王女であるアミア=ルゥムはヒロインであるとともにメインヒロインである姉のノート=ルゥムと深い関係性を築いている。こちらから話しかけた事もないし、無効も興味を持っていない様子。関わる必要性が今は無い。

 

 しかしおのずと原作が近づいている事を感じる。原作との相違点は僕という点をのぞいたら少ないと思う。強いて言うなら姫の実力が原作よりも少し向上しているといったところだろうか? 

 

 原作と比べ、小さいころから道場にて本格的な剣術に励んでいたころもあり、多分少しだけ原作より単体戦闘力は高いだろう。しかし姫の本質は味方の指揮が本質だといわれれば、そこまでの変化とはとらえられないだろうが。

 

 そして姫の実力として一つだけ決定的な違いがあるとすれば姫が持つ武装だろうか。僕が軍に普及させる装備の一つとして開発した魔力が必要ない魔力で構成された両手剣”デクス”。これは周囲の魔力を取り込み、増幅する儀式兵器の技術を応用した産物。

 

 頑丈な剣を探していた姫には丁度いいと思い、送りつけた。興が乗って少しだけ改造を施していないわけではないが。

 

「アナザー。今回の戦闘の修正点を教えてくれ」

 

 白川さんとの模擬戦闘を終えた姫がデクスに向けて話しかけている。傍から見れば狂った人間にしか見えないけど、実際は違う。

 

『はい、マスター。剣を振り下ろす時の入射角に僅かに誤差があります。そして敵のフェイントに対して過剰反応による動作の遅れが見受けられます。対処法としては…』

 

 デクスから聞こえてくる電子音声の通り、僕はアテネのデッドコピーをデクスに入れてみた。何故かと言われれば、理論的な説明は難しい。けど、そうだなぁ。きっと、興が乗った。これに尽きる。敵として相対するかもしれない相手が弱くては話にならないし、面白くもない。それに僕個人としては両手剣を探す際に頼られていたから、本来なら鍛冶屋を紹介すればいいんだけど僕が創った作品を渡した。

 

 しかしこれ以上に姫に対してボーナスを渡すつもりはない。ちゃんと原作通りに過ごしてくれることを祈るばかりである。それにデクスに関して仕込みが無いわけではないし。

 

 そんな事がありつつも過ごしている二階級。そして来週にはダンジョンによる試験とともに編入性の話が噂されている。

 

「ようやくだ。これで始まる。ちゃんとやれるといいな」

 

 魔族を殺し、神族を殺し、竜族を殺し、世界を全て焼き尽くす。その夢が達せられる日は案外近いのかも知れない、とそう思った。

 

この作品を閲覧した理由

  • Tiny Dungeonの二次創作だから
  • タイトルとあらすじから
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