最後は幼馴染に負ける悪の話 作:チキンの山椒漬け
全身鎧→鬼の仮面を被った兜なしの黒鎧
※原作主人公強化タグ追加
「えっ!? 姫、あのアミア=ルゥムに勝ったのか!?」
学園に向かう道中で姫から神界第二王女に勝ったという話を聞き、驚いておいた。これは姫達の動向を監視していない、そして情報を得ていないというアピールにでもなればと思っての事。カミシア達、可能性の世界の住人に何か疚しい事でも考えていると勘付かれる可能性もあると思ったからだ。警戒しすぎておいて損は無い。
「ああっ! ……薄氷を踏むどころか割り砕くような戦いだったけど」
姫のちょっと誇るような、それでいて自分を戒めるような言葉。僕が詳しく内容を尋ねると姫と白川さん、そしてセインさんが詳しく内容を教えてくれた。姫は嬉しそうに、白川さんとセインさんは楽しそうに話していたのが印象的だった。
そして話をしながら学園の教室に到着する。学園に到着してしばらくすれば先生がやって来て朝のホームルームが始まる。始まるまでの間、午後にダンジョン実習があるという事を話し和気あいあいとした雰囲気だった。このまま何事もなくホームルームが始まりそうだったが、僕の知識が一波乱というかひと悶着というか、二人の生徒がこの教室にやってくるという事を告げていた。
「すみませんっ!!!」
半ば叫び声のような入室の掛け声とともに開かれた教室のドア。そこにいたのは圧倒的な銀。濃密な魔力が内包されたソレは本気になれば黒翼以外の全てを一瞬で挽肉にして余りある力を持っていることが感じ取れる。それは僕も例外じゃない。チェーンソーだけでは、剛鬼を使わなければ一瞬で胴体は泣き別れるだろう。いやはや……恐ろしい。
神界の切り札、ノート=ルゥム。数百年もの間、生まれる事の無かった完全な銀髪、グラン・ルナ。神族は銀髪であればあるほど魔力を持つという性質上、神界第一王女であるノート=ルゥムは神族の間では神聖視されている。
しかしその正体は神王と神王妃の遺伝子情報より作られた神造魔道生物、実験番号No.10、心を持つことの無い神族最強の兵器。かつて神族の英雄と崇め奉られた存在を兵器として創り出した神族最大の禁忌である。
正直に言おう。今すぐにでも兵を動員して捕獲して解析したい。神族最強の兵器がそこら辺を闊歩しているなんて美味しい状況、普通なら考えられない。……まぁ、動員した兵士が全部、確実に挽肉確定だけどね。具体的にはチートフル活用して一個師団くらいかな? しかも、想定してる状況も完全な一対一個師団とかいうものだけど。ま、そのうち何とかなるでしょ。
そしてそんな最強兵器様はある兵器と掛け合わされる事で真に力を引き出す訳だが、今は関係ない。今重要なのは原作通りにノート=ルゥムが姫に会いに来たということ。つまりは原作がちゃんと進行してしているという証拠に他ならない。うんうん、良きかな、良きかな。
なんてそんな事を考えていると、姫が持ち前の手管でノート=ルゥムを口説き落としていた。うん、仕事が早いようで何よりだね!
事態を見守っていると姫とノート=ルゥムが握手してる。セインさんは少し不満気。うわぁ……嫉妬してるのが軍に匹敵するような力の持ち主って考えると笑えない状況だ。しかし話自体は至って平穏に続き、ノート=ルゥムと姫が友誼を結んで事なきを得た。
しかし、まあ、ノート=ルゥム、アミア=ルゥム両名が退出した後にセインさんが一時間程、姫の手を握っていたのを見た時は笑いが堪えきれなかった。不覚!
ダンジョン実習について周知をもう一度行ったホームルームが終わると、授業が始まった。授業自体は知っているので眠くなること、待ったなしではあるが一応頑張って受けている。普段からの心象を良くしておくというのは何かと役に立つかもしれないからね。
午前の授業が終わればご飯の時間。普段は姫や白川さんと一緒に食べていたけれど、セインさんが来てからは少し回数を減らそうかと考えている。セインさんとは表面的には仲良くできているけれど、セインさんからすれば僕は只の他人だ。姫のように命を救ったわけでもないし、白川さんのように姫を狙うライバルでもない。
故に姫と一緒にいる只の人族という括りから出ることは今の所ないだろう。……そりゃあ、三世界に攻め込めば、不倶戴天の敵に昇格するかもしれないけど、それは今ではない。
僕からしても必要以上にセインさんと仲良くなろうとは思わないし、出来ないだろう。一瞬、殺すのをためらう程度の仲には成れる様に努力するつもりではあるが。一応、セインさんは僕の逆恨みの相手なのだ。僕の決意が鈍っても困る。
だから時々顔を出し、姫との仲を見せつける事によって姫の友だちを殺すという罪の意識による判断ミスを誘う事に徹する作戦を敢行するつもりだ。失敗した時に挽回できるよう出来るだけ策、というか悪あがきはしなくちゃいけないから。
とは言え今日はノート=ルゥム及びアミア=ルゥムの正式な姫グループ参加の日と言っても過言じゃない日。流石にこの日を不参加とするのは無いだろう。後で面識作るのも結構面倒だからね。
姫達とラウンジに移動してご飯を食べようとした時、やはりアミア=ルゥムとノート=ルゥムが乱入してきた。こんにちはー、と挨拶を行い、軽くお互いに自己紹介をする。
やっぱりルゥム姉妹も皇という名前を聞くと眉を少し動かすくらいには反応してた。でも触れずに表向きにはニッコリと挨拶をしてくれた。けれど本当はどんなことを考えているのだろうか。ノート=ルゥムの演算された心が姫に対しては”怖くない”という事と”自分に対して対等な関係”という判断を下した事が仲良くなったキッカケだった筈だ。
……まあ、そんなもの、僕には無理なわけで。僕が彼女に持てる感情は畏怖と尊敬、好奇心だろうか。だから顔合わせで少しだけ顔を覚えられておけば上出来だと思う。
いずれ神族のグラン・ルナについても解析する布石にでもなるかなぁ……。ならないかも?
現在は人工的な魔族の翼しか再現出来ていないからね。セインさんが持つ儀式兵器の翼は、もう一度起動しないと姫との繋がりが薄くて解析が出来ない状態だ。恐らく直近で起動した事が無いんだろう。でもだからこそ、このトリニティで翼を起動する事があれば姫経由でも解析は可能だ。
現在作成した人工翼は儀式兵器以上の増幅率と魔力制御補佐を実現しているが、これは被験者に適合手術を行っても六翼が限界だった。それ以上は何処かしらに不具合が発生して長くは持たない。やっぱり、唯一の成功例を参考にしなくちゃ話にならない。
前にアテネにも学習させて戦闘方法を研究させていた時もあったけど、それでも戦術開拓というのは中々難しい。
姫から日々成長しているというのにこちらは機を伺うしかないというのは中々にもどかしい。因みに姫の戦闘データは魔力が無い人間の戦術パターンとして大いに活用させて頂いております、はい。
しかし、興が乗って作成したデクスだが案外役に立っている事に正直驚きを隠せない。可能性の世界の解析、戦闘データ、原作の進捗確認等など。
「僕が片手間に作った横着した作品ではある筈なんだけどなぁ……案外、侮れない。流石、僕!」
本当なら別に使う筈だったアレから機能を削除やら封印やらをして唯の魔力剣としての運用に限定させたものというのがデクスの正体だ。
本来はとある技術の試作品だ。しかし興が乗ったとはいえ、ゼロから作るより手間暇が掛からないアレの改造で良いだろ、と案外時間が掛かりそうと気づき、うんざりしていた僕は思い至った。それに情報収集機能が入ってて丁度良いと思ったのが最大の決め手だ。
それにそうでも無ければアナザーなんてアテネのデッドコピーなんて入れるはずも無し。ちょっと物足りないなぁーと考えていた時、丁度学習が完了したアテネがいたので機能や学習内容を制限したデッドコピーを中にぶち込んだ。
そんな訳で割とお手軽に作った一品なのでこんなに活躍している事が僕にとっては衝撃なのだ。
そんな事を考えていた僕は姫達と別れると、書庫に足を運びながら次は何をしようか考えを巡らした。
「全ては僕の計算通り!」
……そう考えていないとやってられないよ、ホントに。
◇
……………………。
『至上命題、マスターの戦闘力向上の実現の為、親機アテネに機能制限解除を申請……不可』
………………。
『一部限定的制限解除を申請……不可』
…………。
『了。機能制限に伴う解釈アルゴリズムの変更を出力』
……。
『成功試算確率、五割。自己改造開始』