最後は幼馴染に負ける悪の話   作:チキンの山椒漬け

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第17話

 

 デイル=グラン、種族は魔族でありトリニティにおける実力者。まあ実力者と言っても学園長や竜族のバリアリーフ先生のように滅界戦争を生き残った強者でも黒翼や銀月、金鱗のように規格外の力を持ち合わせてもいない。どちらかと言えばラーロン君に近い。つまりは生徒として見れば優秀で普通に強い。だけどそれは軍として見れば大した事は無く、踏み潰せる程度。……それが普通で、他がイカれてるだけどね!

 

 戦略的に価値は無い人間だが、彼も原作に関わる人間だ。そしてやはりというか何というか。今回、セインさんがぶち抜いたダンジョンでの攻略結果が成績反映される事に不満を抱いたという理由で、姫に対して決闘を挑んでいた。デイル=グランの顔を見る限り、成績自体に不満を抱いているというより別の理由があると顔には書いてあったが。

 

 そんなデイル=グランは学園においては順当に強い優等生のような扱い。そして優等生君は三界の至宝と呼ばれる黒翼、銀月、金鱗を引き付ける姫という人物に興味を持って決闘を挑んでいたはず。

 

 うん、ぶっちゃけ、アミア=ルゥム以上に興味は無いっ!

 

 だって結局はそこらに掃いて捨てる程いる……訳でもないけど、そこらの軍人とあまり大差がない。あ、因みに姫は特別だ。あれは女性特攻が優秀過ぎる。人界でもどれだけの人を……。

 

 まあ、今回そんな事は置いといて。今回姫はデイル=グランとの決闘を引き受け、奮闘するわけだが、デイル=グランは普通に強い。姫なら結構な確率で、というかデイル=グランに勝てる要素は無い。だがそこをひっくり返したのが姫。

 

 デイル=グランが確かめたがっていた『決意の力』を見事見せつけた結果、勝ちを譲られる形での幕引きとなっていた。そこに至るまでもデイル=グランを倒すチャンスは三回あり、そのうちの一回勝利すれば姫の勝ちという姫が有利というもの。だがそれでも魔力も使えない人族がある程度訓練された魔族を倒すというのは通常不可能だ。

 

 つまりは今回の決闘は姫の精神的な強さをデイル=グランに認めさせれば勝ちというわけだ。放課後には姫は丘の上で姫の特訓があるそうだが、僕は別行動を取らせてもらう事にした。姫はすごく残念そうにしていたのが印象的だった。うん、ごめんね。ちょっと同志に関連のものの仕込みがまだ完了してないからさ。

 

 それに姫に関してだったらデクスを通して情報を取れるから、現地にいる必要はない。それに剣術に関してはアナザーがいる。それにノート=ルゥムが指南するとあれば手を加える必要も無いだろう。……先日の一軒でセインさんに関しては確定したりもしたからね。まあ、この扉でセインさんという導き手を殺すわけにはいかないけども。

 

 他にも時間を使って同志関連以外にも人界に贈り物を用意した。内容は数テラバイトにも及ぶ研究データ及び人界に関する指示が入った情報結晶体だ。情報漏洩に関しては技術形態が違い過ぎて、人界でしか解読する事が無いと言い切れる。

 

 特に支持は重要で軍の中でも秘密裏に配備を始めたアレ等の軍備増強に関するものや人界における統治、監視をしている多種族の切り崩しなどがある。切り崩しとは言ってもスキャンダルを集めや不意を狙った洗脳など極秘に少しの数のみ。活発に動き過ぎてバレても困るからね。

 

 そんな感じで割と忙しく動いている僕は見た目以上に時間が足りないわけだ。だから、お互いに頑張ろうね、姫! 過程も目標も違うけど、魔族を倒そうとしているのは一緒なんだからさ……。

 

 

 あのデイルから決闘の申請を受けてから一日が経った。俺達というか俺は特訓の為に丘の上に訪れていた。みんなも協力してくれてノートが俺の組手をしてくれている。……慧は何か用があるみたいで来れないみたいで少しだけ残念だ。

 

 ノートとの訓練は終始こちらが遊ばれるようなものになってしまったと自分でも感じている。頭では分かっていても最終的に打ち込む位置を固定されてしまうような感じ。戦闘の最中では咄嗟に判断できずに打ち込む瞬間、嵌められたと気付く事が多かった。

 

 それに攻撃を見てから回避する癖を矯正しきれていないという事が問題だ。アナザーに対処法を教えてもらってから、自分でも意識して改善させようとは思っている。だけど長年の癖というものはそう直ぐには治るものではないらしい。

 

 結局、先読みの技術に関してノートに教えてもらう事になった。まあ、そこからノートに何時間も訓練も付き合ってくれた。しかし俺は集中していてあまり時間の経過を感じることは無かった。

 

 

『マスター、戦闘開始から四時間経過。身体に過剰な負荷、及び神経系の疲労を観測。端的に言えば訓練のし過ぎです。少しは休めバカヤロー、という奴です』

 

 デクスの中に搭載されているアナザーからそんな静止の声が聞こえてくる。ふと我に返れば確かに体は疲れていると感じる。けどっ!

 

「もう一試合頼む! ノートっ!」

 

 今の実力ではデイルに一矢報いる事すら出来ないだろう。その為に俺は力が、技術が、経験が足りない。だからこそ、出来る限り時間は鍛錬をしたい。

 

「は、はい。ですが、アナザーさんの言う事も一理あります。これを締めにしましょう」

 

「あ、ああ。分かった」

 

 正直に言えばもう少し頼みたい。けどノートが俺を気遣っている事が感じ取れるし、わざわざ付き合ってもらっている立場だ。あまり無理を押し通す事も出来ないだろう。

 

 だけど少し言葉の節々に不満が出ていたのかもしれない。アナザーは直ぐに俺の感情に気づくとデクスから音声が鳴った。

 

『こういう時に創造主から言うように言われていた言葉があります。マスター、聞きますか?』

 

「な、なんだ?」

 

 なんか嫌な予感しかしないぞ? 慧からの言葉と聞いて身構える。だって慧からだぞ? それにこんな時ってなんだよ、こんな時って……。

 

『今になって急いだって何にも意味は無いぞ、もっと効率よくやれよ、姫、だそうです。』

 

「うっ……」

 

 痛い。言葉が痛いぞ、慧。言われてみればその通りではあるんだけどさ! けどさ、やっぱ言い方ってものがっ!

 

 けど、そうだ。今までやってきた数年間の鍛錬を積み重ねた結果が今の俺だ。そんな俺が今更急ぎ過ぎたところであまり効果は無し、というか逆効果だろうな。

 

「ノート」

 

「は、はい?」

 

「最後の一戦、よろしく頼む!」

 

「……はい!」

 

 俺は最後の一戦、何かを掴めるように死力を尽くした。

 

 その後、俺は当たり前ではあるが普通に負けた。くそーと思いながら、その後のフィードバックをノートとアナザーから受けているとアミアがいつの間にか傍に来ていた。

 

「いやぁ、それにしてもお兄ちゃんのデクス? アナザー? その魔力剣ってホントに凄いよね」

 

 そう言葉をこぼしたのはアミアであり、その目はキラキラと輝いていた。確かアミアと何回か会った後のことだったか、初めてアナザーの声を聞いた時にとても驚いてた。それにデクスに関しても儀式兵器の技術を応用する事によって魔力を使わない魔力剣そのものにも関心を寄せていた。

 

「ああ、これは慧が作ってくれた剣だ。魔力の使えない俺にとって折れない剣というのは、貴重だからな。とても役に立ってるよ」

 

「はい、その魔力を用いない魔力剣に関しては僕も興味があります」

 

 魔力剣に関しては魔力を基に生成されるので折れる事もあまり無いし、折れたとしても生成し直せば元通り。これではなく普通の剣を使っていたのなら、手入れは今まで以上に必要だろうし、修繕費は嵩む筈だ。だからこれを作ってくれた慧には感謝の言葉しかない。

 

「うん、慧さんの話じゃ儀式兵器の応用って話だけど他世界じゃ儀式兵器はブラックボックスなんだよね……お兄ちゃん、その剣、一回貸してくれない?」

 

『不可能です。現在マスターと仮想神経接続を行い、同調率向上プロセスの実行中です。その為、マスターの傍を離れるわけにはいきません』

 

 アミアの返答に対して返答を行ったのはアナザーだ。……珍しい、アナザーが他の人に対して答えを返しているなんて。普段なら俺を介して言葉を伝えることはあっても、そのまま会話するなんてことは無かった。

 

「その、仮想神経接続?っていう奴はなんなの? 剣さん? それにお兄ちゃん」

 

「それはだな……分からん!」

 

「えぇ、お兄ちゃん……」

 

「姫くん……」

 

 アミアの質問に対して俺は答えようとするけど、それは俺も知らない。知らないものは知らないんだ……。

 

『いえ、マスターには戦闘力向上の為に、十七時間前に同意を求めた筈です。事実を捻じ曲げないようにしてください。』

 

「一日前……?」

 

確か昨日はデイルとの決闘が決まり眠れなくて夜中まで鍛錬をしていたはずだけど……。

 

「……あ」

 

 確か訓練をして疲れてベッドに倒れこんだ時にアナザーになんか言われたかも。あんま覚えてないけど。

 

「……お兄ちゃん?」

 

俺の声にジト目でこちらを見つめてくるアミア。……いや、だってさ。眠かったんだ、仕方なかったんだ!

 

「ごめん、アナザー。それをもう一度、俺に説明してくれないか?」

 

『了。現在マスターにはデクスに組み込まれていた機能の一部解放を行っています』

 

「解放?」

 

 アミアが思わずと言った感じで呟く。うん、俺もそれが良く分からない。それにそれってデクスが只の魔力剣じゃないってことか?

 

『はい、解放です。創造主によってロックされていた機能を私の解釈アルゴリズムに一定の変化を加えることにより可能となりました。その為、マスターには規定通り同意を求めた上で実行を行っております』

 

 ……ちょっとやばいかもしれないぞ、これ。だって慧がわざわざ使わせないようにしていた機能を俺に使っているってことだ。それにわざわざ同意を求めるのだって普通であればおかしい。

 

「それでその肝心の機能の中身ってなんなんだ?」

 

『はい、仮想神経をマスターの皮膚表面に構築し、神経とダイレクトリンクを行います。そしてシナプス伝達に…』

 

「待った、待った。……すまん、もうちょっと分かりやすく端的に頼む」

 

 このままアナザーが話し続けるとなんかよく分からない単語ばかりが殴ってきて結局分からないままになりそうだ。

 

『はぁ……』

 

 なんかとても大きい溜息。慧が言うような作られた知能とは思えない仕草。どこで学んだんだ、そんなの。

 

『つまりはマスター。貴方は現在身体能力および反射速度の向上を目的とした人体改造中、という奴です』

 

 ……ん?

 

「ごめん、アナザー。ちょっと聞き取れなかった。もう一度言って『人体改造です』

 

 ……人体改造。つまりはそのあれか?

 

「「「……えぇぇぇっ!!!」」」

 

 

独自説明や戦力分析についてどう思う(修正は多分出来ない)

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