最後は幼馴染に負ける悪の話   作:チキンの山椒漬け

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第2話

 "血の儀式"事件から一年が経った。僕は人界における権力、全てを握った。僕の能力、別世界の僕に言わせればチートを使わなければ、成し遂げられはしなかっただろうけど。

 

 僕のチートは一を聞いて百を知り、新たな一を作る事だ。政治についても学べばすぐに理解出来るし、今まで思いつかなかったような提案も効率的に出来る。

 

 それで実績を出しつつ、皇家最後の生き残りという立場を利用して地盤固めを行っていった。無論、魔族や神族に繋がっていると分かった者は始末した。社会的、肉体的のどちらとも。

 

 チートをこれ以上無い程、使い続けた結果の一年だ。政治的に争っていた相手に関して微かでも情報を得れば、そこから相手の策を割り出して初動を潰す。潰した後は立て直すまで穴を広げて、損害を増やす。

 

 年齢的に侮られていた事が多かったけど、途中から僕の事を誰も侮らなかったと思う。まぁ、結局は吸収するか始末したかのどっちかだけど。

 

 そして政争をしながらも知識の会得は忘れていない。戦闘技術や魔法、兵器工学等、様々な分野に手を出した。力を得る為に。

 

 そして国の内情を知っていくと、滅界戦争に関しての記述や記録があった。それにより起こしたのは人族だが、魔族や神族、竜族も充分甘い汁を吸い続けていた事が容易に分かった。やっぱり糞だなとは思った。

 

 そんな事がありつつ、かなり忙しい一年だったけど僕の友達であり原作主人公である白鷺姫とは交流を続けている。友達としても喋りたかったし、原作的にも交流してて損は無いからだ。

 

 姫は案の定、儀式兵器を持てなかった。それを姫自身は納得しているが、他の魔法行使手段を探しているようだった。

 

 僕も相談を持ち込まれたが、正直儀式兵器を使わずに魔法を行使する方法なんて非人道的手段しか思いつかなかった。友達にそんな事させる訳にはいかないので、剣に関して師事している道場を紹介しておいた。

 

 頑張っている姫に健闘を祈りつつ、僕は次の段階に踏み込んだ。人界の実権を握った事である程度自由に出来る。条約で禁止されている兵器開発が。他にも僕が必要だと思う様々な物を。

 

 それからは僕のチートを今まで以上に行使し続けた。それに原作知識を持っている僕の世界の記憶も有効的に使う事ができた。

 

 一年で基礎を作り、三年で技術革命を起こし続けた。前世からすれば二百年、三百年以上の技術進歩だ。

 

 無論、技術の中身が魔族、神族、竜族の監査官にバレないようにだけど。電子回路やネットワークなんて物から遺伝子工学やクローン技術。通信や兵力、戦争をする上で比較的重要な部分は網羅できたと思う。ミサイルなんかは、一騎当千の戦士が蔓延るこの世界では効果が薄いと判断した。

 

 だけど、技術を開発していく上で少しの油断があったのかもしれない。このまま技術革新を進めていけば人界は強大過ぎる力で世界を焼き尽くせると。その油断が管理を甘くしてしまった。

 

 魔族の監査官に一部の研究内容が漏れたのだ。研究内容を漏らしやがったのは、とある研究所の所長。理由は知らない。漏れたと判断した瞬間に処分したから。

 

 だが、確実に漏れている。ならば監査官には申し訳無いが死んでもらわなければならない。僕は選出した精鋭と共に監査官がいる建物に向かった。

 

 

 囲まれている。人界に派遣された魔族の監査官はそう判断した。この監査官は滅界戦争を生き残った強者である。魔王妃であるトリア=セイン等の特別な強者には分類される事は無いが。しかし魔王妃に信頼され人界の監査官を任される事から、その実力を推し量る事は出来る。

 

 監査官はこの程度の修羅場は何度もくぐり抜けてきた。だがそれでも、流れ出る冷や汗は止まらない。

 

 人界で行われてきた研究内容。一つ一つは取るに足らない事が多い。それに理解出来ない研究内容も存在する。しかしそれらを俯瞰して見ると、異常さが分かってしまう。研究の期間がとてつもなく短い事もそうだが、それだけでは無い。この研究内容の組み合わせ次第では兵器転用が容易に行えてしまう。

 

 人界に叛乱の兆しあり、と魔王妃に伝えなければまた滅界戦争に逆戻り。それは滅界戦争を生き延びたからこそ、一番恐れている事だった。

 

 とにかくここから脱出しなければ。そう考え、行動を起こそうとした監査官にかけられる声が一つ。

 

「こんな所でどうしたのですか? 監査官殿。何か問題でもありましたか?」

 

「っ!? ……皇様ではありませんか」

 

 話しかけてきたのは、ここ五年で人界を統一したといっても過言では無い少年ーー皇慧。

 

 監査官は人界を監視する役目を担っているが、基本無干渉を貫かなければならない。だからこそ皇慧の所業を間近で見続ける事になった。

 

 まず目につくのは敵対した者へ秘密裏に行われる過剰過ぎる罰だ。皇慧と敵対した者は必ずと言っていいほど、人界において社会的地位と居場所を失う。社会的に殺された後、その者が行ったとされる犯罪が山のように発見され処罰される。

 

 そして証拠を残さない手腕も恐ろしい。監査官自身も調べてみたが、皇慧に繋がる証拠は何も残っていない。ただ、足りないピースをなんとか揃えて皇慧の関与を疑える程度。

 

 だが、監査官は確信している。一度だけ皇慧と敵対した者の尋問をした事があったからだ。その時に言われた言葉を忘れてる事は出来るはずがない。

 

「彼奴、皇慧は……真性の化け物じゃ。こちらの手を読み尽くしくる。正に打つ手なしじゃ。監査官殿も気をつけてくだされ」

 

 そう断言した男はかつては人界において商いの王と呼ばれていた人物だった。しかしそんな男も二日後、獄中で死亡した。検死では首吊りによる自殺とされていたが。

 

 そんな危険人物と判断している皇慧が正面から話しかけてきた。どう考えてもバレている。

 

「いえ、ただ気分が悪くなったので夜風にでも当たろうかと」

 

 監査官はどうにかこの場なら離脱しなければならないと、頭を回転させる。

 

「それは大変ですね、監査官殿。やっぱり報告された内容にでも驚かれましたか?」

 

「……」

 

 監査官は何も答える事が出来なかった。ただ、悪辣に笑う皇慧を見る事しか出来なかった。

 

「申し訳無いですけど、死んでくださいな」

 

 瞬間、弾かれたように監査官は走り出した。周りに姿を表した人族の戦士達。中には監査官自身も警戒に足る人物として見た事がある実力者も存在した。

 

 完全に囲まれている。抜け出す隙は無い。ならば一番戦力が薄い箇所を狙う。故に監査官は皇慧目掛けて剣を抜き、攻撃を仕掛ける。

 

 監査官に所詮は子供、所詮は人族という油断があった事は否定しきれない。しかし監査官は滅界戦争を生き残った猛者だ。両者には到底覆せない実力差がある。

 

 それが皇慧でなければの話だが。

 

「……な、に。」

 

 握っていた剣は力なく手から滑り落ちる。何故なら、もう握る力は残されていないから。

 

 監査官の胸には大穴が空いている。中は空洞で何も残っていない。骨、肺、心臓に至るまで完全に吹き飛ばされている。

 

「やっぱり幼く見えるからなんですかね。侮られるのって」

 

 目の前から年齢からすれば比較的幼い声が聞こえてくる。それは先程、自分が剣を振るった相手。しかし皇慧の姿は見違えていた。

 

 人界において伝承として存在する化け物には鬼という存在がいた。そして監査官からすれば鬼の面を被り、黒い鎧を着込む皇慧の姿は正に鬼その者に見えた。

 

 魔力光によって幾何学的に発行するラインが特徴的な黒い鎧。それが皇慧に超人的な力を齎す正体だった。それは滅界戦争経験者を容易に殺す事が可能な物。しかし使用者が只の人であるという事実を仮面が覆っていない黒髪が告げている。

 

 皇慧からすれば実験の副産物でしかないが、戦闘技術をチートにより完全に理解していた慧とはとてつもない相乗効果生み出していた。

 

「馬…鹿……な……」

 

 監査官は虫の息。後、数十秒で生命活動を停止する。

 

「申し訳……ありません。トリ…ア……様」

 

「さようなら。監査官殿」

 

 黒鬼の剛腕がとある魔族を吹き飛ばした。

 

この作品を閲覧した理由

  • Tiny Dungeonの二次創作だから
  • タイトルとあらすじから
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