最後は幼馴染に負ける悪の話 作:チキンの山椒漬け
魔族の監査官が失踪した。いや、始末したんだけどね。しっかりと記録や証拠は隠滅させてもらった。それに他種族の監査官達にもバレないように調整はしていた。
よって、公的には監査官は忽然と姿を消した事になっている。今更、調査員が来たところで何も分からない。
護衛的な意味合いで人界が責任を取らされる可能性もある。けど、それを言い出したら"血の儀式"について突っ込めばいいだけなので問題は無い。
……はずだったけど、問題が発生した。何かと言うと、監査官失踪の原因を調べる為に魔界から調査チームが派遣された。
そして驚くべき事に調査チームの指揮を執っているのは竜魔の紅刃と呼ばれ、恐れられているフォン=テルムだった。
フォン=テルム。それは人界にまで名を轟かす魔王妃トリア=セインの懐刀。そして何より原作主人公のヒロインでもある。
そしてそんなヒロイン様と会談をしたときの表情、言葉、視線から何か確信を持って調査に出向いている事が分かった。この確信の部分が問題だ。
原作知識と照らし合わせた場合、フォン=テルムの戦闘技術は厄介だ。知られた場合、消す事は非常に難しい。小隊規模の軍人を捨て駒にすれば殺れるだろうか?
まぁ、やらないけどね。そもそもの話、調査員まで失踪扱いにしたら誤魔化すのは完全に無理だ。監査官にしても魔王妃が人界と魔界のバランスを考えて、ギリギリ踏み留まっているだけの可能性が高い。なのに調査員も失踪したら戦争に発展してもおかしくは無い。
別に戦争をする事は別に構わないし望むところだが、まだ時間が必要だ。だからこそ何か確信を持っている捜査しているなら、納得した上で帰ってもらわなければならない。
と言うことで行動を開始した。何をするかと言われれば調査チームの確信が何かに迫る。これは結果としては簡単だった。
魔族や神族といった種族は盗聴や監視というのは魔法でしか行えないという常識が存在した。故に調査チームが滞在する部屋に堂々とインテリアとして機材を置いておけば情報は簡単に抜けた。
そして抜いた情報から考えるに割と誤魔化しやすいように感じた。抜いた情報の要点は二つだ。
一つ目は魔王妃の信頼が厚い臣下だった者が仮想敵国で行方不明になったから。
そして二つ目に関して。これは監査官殿を見くびりすぎたかもしれない。魔界と人界は並行世界であるが、この世界の壁を超えて緊急事態であるという魔法通信を送ったらしい。通信とは言っても、音を出すだけの大雑把な物らしいが。
ならどうやって誤魔化すかは決まった様なものだ。魔族の皆さんには人界を巣食う癌を取り除いてもらおうかな。
◇
幾つかの仕込みが終わって一息ついた。いつもはこんな仕込みなんてしないから大変だった。
偽造文書とかは特に。この文書は人界の高官と人界に不利益を齎す幾つかの宗教団体や反社会的勢力との癒着を示すものだ。ちゃんと調べたら証拠が出てくるように手配もした。
勿論、繋がりがあるとされる高官は不正をして甘い汁を吸ってたり、僕を裏切っていたりする奴らだけに限定した。こんなしょうもない事で有能な人材は削りたくないし。
しかもこの文書を調査チームにバレないように監査官の部屋に隠すのも大変だった。バレたら終わりだからね。……これからはこういう工作部隊も設立した方がいいかな。
とか物思いにふけながら、監査官が住んでいた屋敷に踏み込んだ調査チームを監視していた。
どうやら偽造文書について発見してくれたみたい。
ちゃんと動いてくれるだろうか?
僕は期待を胸に調査チームを見守った。
◇
魔界の紅刃、フォン=テルム。魔王妃に信頼される実力を用いて数多の過酷な任務を成功させる未来有望な少女。
そんなフォンが何故人界に来ているかと言われれば、一重に人界に派遣された監査官が失踪したからに他ならない。更に言えば、監査官に渡されていた世界すら超えて通信を行えるアーティファクトに緊急事態である事を伝える通信が入ったからだ。
「これは……至急、部隊に招集をかけなさい!」
監査官が住んでいた屋敷。何か手がかりが無いか調べると、壁に埋め込まれていた一つのケース。その中に入っていた文書に目を通した時、フォンの端正な顔は驚愕に染まった。
「これが本当なら……人界はかなり深い所まで……」
書かれていた内容は異種族殲滅を教義としたカルト宗教や人界における反社会的勢力が人界上層部の癒着を行っている証拠の数々。
そして、この資料を見る限り魔族の誘拐、人身売買に手を出している可能性すら存在する。
腐った人界上層部と魔族誘拐の可能性。これはかなりの大事だ。そう判断したフォルテの思考は二つの選択肢で揺れていた。
一つ目は魔界上層部、具体的に魔王妃トリア=セインに連絡し、指示を待つと言うもの。フォンには独自裁量権がある程度与えられてるとはいえ、選択を間違えればどうなるか予想がつかなかった。
しかしこれには問題がある。フォン達、調査チームが人界に来てからここ数日、メンバー全員が個別に監視されている事は既に気づいていた。いや、監視と共に護衛という側面も備えている事は理解しているがこの状況においてそれはまずい。
世界すら超えて通信を行えるアーティファクトでは大雑把な連絡しか行えない。しかし伝令役を頼めばなにか気づいた事に勘づかれる可能性が高いと考えていた。何故なら世界の転移には記録が必ずされてしまう。ここを突破する事など不可能なのだから。そして相手は人界の上層部にくい込んでいる。気づかない筈が無い。それが厄介だった。
そして二つ目は人界側に何も伝えずに調査を続行するというもの。気取られずに慎重に。護衛すら撒いて。皇家という人界におけるトップに話を通すという行動は出来ない。何故なら上層部の腐敗は要所、要所に点在する。何処かで話が漏れる可能性が高い。そう判断した。
フォン一人であれば一つ目の選択肢を取ったかもしれない。人界とのバランスは考えなければならない。自分一人で選択していいものでは無いと。
「私達で調査すべきと考えます。トリア様は今学園に居られます。伝達にはかなりの時間を費やす可能性があるかと」
しかしここにはフォン一人では無い。人の数だけ多様な考えが存在する。そしてフォンに進言したのは調査魔法の腕を買われた魔族の男。しかし人族蔑視という魔族の中では当たり前の意識を持っていた。
所詮は人族。何をしたって揉み消せるだろうと。だからこその考えだった。
「そう……ですね。分かりました。私達で動きましょう」
故にフォンは決断した。罠が張り巡らされていると知る事は出来ずに。
何かキャラの言動や言葉遣いに違和感を覚えたら言って欲しいです(修正が出来るかは分かりませんが)
この作品を閲覧した理由
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Tiny Dungeonの二次創作だから
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タイトルとあらすじから
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転生タグとオリ主タグから
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アンチヘイトタグから
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他理由から