異次元の寂しがり屋   作:アマシロ

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更新速度を保とうとすると誤字が…(保てるとは言っていない)


霜月の騒乱

 

 

 

 

 なんとなくグラウンドの坂からスズカの走りを眺めていると、寄ってきたのはトウカイテイオー。

 

 

 

「ねぇねぇ、トレーナー。なに黄昏てんのー?」

「黄昏てるわけじゃないが。菊花賞が終わったからな、次のジャパンカップの戦術について考えてたんだよ」

 

 

 

 もっとも、スズカの場合は戦術もクソもないのだが。

 一応超ハイペースと普通のハイペースで幻惑できるようになったとはいえ、基本的にはスズカの好きに走らせるのが一番だ。

 

 

 

「へぇー。というか他の子はいいの? タイキシャトルとか、グラスワンダーとか」

「あの二人はサブとして見てるだけだしなー。というか二人とも順当に強いから、ケガさえしなければ全く問題ない」

 

 

 

「ふーん。割と放任主義だよね、リギルなのに」

「手取り足取り教えるのは最初だけでも十分だろ。あとはまあ、本人の希望に合わせて必要なメニューと目標タイムを提示するのが仕事だ」

 

 

 

 尤も、スズカの場合は見守ってないと不貞腐れるのでアレだが。

 一応最近は勝手にいなくなっても拗ねるだけで、とりあえず誰かしらがいれば泣きださなくなった。

 

 

 

「暇ならボクのメニューも組んでくれてもいいんだよ?」

「教官の仕事だろ。それか担当の。チームが嫌ならルドルフの元トレーナーにでも頼めばいい」

 

 

 

「それはちょっと違うじゃん。カイチョーに認められたいのに、あの人に助けてもらったらカイチョーに手伝ってもらってるようなものだし」

「ふーん。まあ自分でトレーナーを見つけるのはいい心がけなんじゃないか」

 

 

 

「でしょでしょー」

「俺のお勧めはスピカだが」

 

 

 

「え゛っ、あの妙な看板の…?」

「自由なチームだからな。スズカの後輩のスペシャルウィークも入ったが、けっこう楽しそうだぞ」

 

 

 

 ゴールドシップ、ウオッカ、ダイワスカーレット、スペシャルウィーク、メジロマックイーン。最低限の人数しかいないが、一騎当千の猛者たちである。

 まあ、テイオーが曇りまくった上に無敗の三冠も、無敗のウマ娘にもなれず曇りまくって奇跡の復活……までは良いものの、その後引退に追い込まれるかもだが…。

 

 そう考えるとスズカとテイオーだけクソ重いな…。

 沖野Tのメンタルも不安である。ただでさえあの人、しばらく休んでたのに。

 

 

 

 俺もワキちゃんの脚がぽっきり逝ったら心が逝く気がする。

 なんか本人の満足する方法で円満に秋天を回避できないものか。

 

 

 

「……ねぇ。やっぱりボクのメニューも見てよ」

「えー。リギルはあくまでもおハナさんのチームだし……」

 

 

 

 別にテイオーに不満があるわけではないが。

 もし史実より悪い成績になったとしたら、と思うと夜も眠れないだけである。その点、ワキちゃん時代は気楽だったが……。

 

 

 

 

「ボクの脚が保たないって、キミが言ったんでしょ? 他のトレーナーは褒めるばっかりでそんなこと言ってくれないしさー。ボクは絶対にカイチョーを超えるウマ娘になるんだ! 怪我してたら無敗の三冠なんて無理だし」

 

「なんでケガするって言ったか、覚えてるか?」

 

 

 

 

「『足の関節が柔らかい分、必要以上にバネが効いてて骨に負担が掛かってる』だっけ?」

「そう。パワーじゃなくバネで走ってるから、筋肉を増やせば怪我の確率は減ると思う。ただ、長所である身軽さを消すことになるだろうな」

 

 

 

 ただの予想だが、そう遠くはないと思う。

 全力で走らなければ骨折しないだろうが、その柔軟性にサラブレッドの脆い脚は持たなかった、のだろう。ウマ娘でも大差はないはず。

 

 スズカの場合、幼少期から細心の注意を払って妙な負担が骨に掛からないように走法と全身の筋肉バランスを整えたので多分怪我しにくいはず。あくまでヒト型だから可能なのであって競走馬なら無理な方法である。人間は色々と臨床データも多いし、人の歩容はともかく、馬の歩様までは詳しくない。

 

 

 

 

「で。キミならどうやって勝たせてくれる?」

「……売り込みつよいなぁ」

 

 

「ふーんだ。ボクはカイチョーに追いつくくらいのウマ娘だよ? 当然だってば」

「絶対怪我しないとは言えないぞ。あと理想は柔軟性を保ったまま筋肉量を増やして、必要があれば二の脚として使えることだ」

 

 

 

「そういう方法あるなら早くいってくれない!? ボク、もう色々試しちゃってるんだけど!」

「自分で考えるのも大事なんだよ。むやみやたらに鍛えるから重くなるが、特異性の原則って知ってるよな?」

 

 

 

 普段はこんなんだが、アスリートだし天才肌だ。

 多分知ってるだろうな、と思ったがやはりあっさりと頷く。

 

 

 

「アレでしょ、ジャンプする筋肉はジャンプしたときに一番鍛えられるってやつ」

「そう、だから推進力を得るための筋肉だけ徹底的に鍛える。そもそもトウカイテイオーの走りはある種完成されてるんだから余計なものくっつけても仕方ないしな。で、サポーターで可動域を制限して走る練習をするだろ。でもサポーターで関節弱くしたら元も子もないからその辺は調整だが」

 

 

「うげぇ……絶対きつそう……」

「だろうな。普通にやれば勝てる皐月賞、ダービーで負けるかもしれない」

 

 

 

 

 そこはかなり重要なポイントである。

 トウカイテイオーは無敗の二冠ウマ娘になれるだけの才能……運命を持っている。サイレンススズカがクラシックで勝てなかったのと逆、勝てない方が問題だ。

 

 

 

「――――でも、勝たせてくれるでしょ?」

「………約束はできないぞ」

 

 

 

「ま、いいよ。じゃあおハナさんに頼んでくるから」

「……お前さ、軽く言うけどリギルがほぼ毎年一人しか獲らないの知ってるだろ?」

 

 

 

「スズカがいるじゃん」

「まあ、そうなんだが」

 

 

 

 タイキが入った後、いろいろあってスズカもスカウトされた。

 選抜レースを大差でぶっちぎって、断固としてスカウト拒否の姿勢だったのを穏便に収めるためにセットで拾ってくれたのだが。

 

 

 

「つまり、同じ方法で余裕でしょ」

「無駄に火種をまき散らさないでくれるか!?」

 

 

 

 ぶっちぎりで勝ったウマ娘が新人トレーナーを指名するのはままあるとはいえ、軋轢が凄いんだからな!?

 

 

 

「えー、ダイジョブだよ。無敗の三冠トレーナー?」

「不安しかない……おハナさんに俺からも頼むしかないか……」

 

 

 

「そうそう、それがいいよー」

「お前、最初からその気だったな……」

 

 

 

 とはいえ本気で困ったことになる前におハナさんに先に相談しておくべきだ。

 スズカが無敵すぎてやっかみを買いまくってるのは間違いないのだから。

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

「――――はぁ。まさか何処のスカウトにも応じなかったのを、貴方が連れてくるとはね」

「いやぁ、ははは……」

 

 

 

 まあ、シンボリルドルフに頼まれればこっちに来ただろうからおハナさんも何が何でも獲りたいというわけではなかったのだろうが。……正直、自由人気質なトウカイテイオーとおハナさんの指導の相性は謎だし。

 

 

 

 

「まあいいわ。ルドルフもああ見えて喜ぶだろうし」

「……あー、まあ直接的には伝えなさそうですね」

 

 

 

 実際はめっちゃ気にしてるし、ルドルフもテイオー大好きなんだろうなと思ってるが。

 

 

 

「伝えたら調子に乗りそうだしね」

「それについては全く同意です」

 

 

 

 有頂天になって何かやらかす姿が見える…。

 ともかく無事にトウカイテイオーのリギル入りが決まったところで。

 

 

 

「とりあえずタイキは海外挑戦するから私がサポートするわ。グラスはもう本格的に見てもらうから」

「了解です。とりあえず朝日杯を目標に、本人希望でダービーを目指す形ですかね」

 

 

 

 

 グラスワンダーの場合、既に夏から見ているので大きな変更はない。砂浜での特訓で力を逃がさない走法を身に着けつつあるので、多少は怪我しにくいと信じる。

 しかしスズカは…。

 

 

 

 

「すみません、おハナさん。一つだけ相談が……」

「何かしら?」

 

 

 

 

「スズカのことなんですが…。一応、ジャパンカップから疲労を見て有マ、来年はドバイを考えていて。最終的には凱旋門からBCを目指そうかなと」

「………言葉だけ聞くと呆れるような予定だけど、まあ国内は敵なしだものね」

 

 

 

「とりあえず海外のダートに慣れさせたいんですが、何かいい方法はないかなと」

「――――もしかしなくても、設備的な話かしら」

 

 

 

 そう、ウチの理事長なら話せばなんか用意してくれるんじゃないかなと。

 幸いにもトゥインクルシリーズは文句なしの国民的娯楽であるので、競馬よりも予算は潤沢。国際的なレースともなれば国と国の威信のぶつかり合いとなる。

 

 そんな中、無敗の三冠ウマ娘であるサイレンススズカの海外挑戦はあまりにも大きい。勝てるのではという期待もあると同時に、負ければ日本のトゥインクルシリーズ自体が軽く見られかねない。

 

 

 

 

「……スズカの脚は、そう長く無理はさせられません。できれば来年いっぱいでレース自体の少ないドリームトロフィーリーグに移籍させたいんです」

 

「まあ、そうね。海外制覇すれば誰も文句を言えないでしょう」

 

 

 

 

 それは間違いない。あのルドルフでさえ成し遂げられなかった海外遠征に勝利できたのなら、少なくとも国内においては並ぶもののないウマ娘といえる。

 

 

 

 

「まあ、掛け合ってみるわ。少なくともそれなりに人脈はあるし」

「ありがとうございます!」

 

 

 

 国内のダートと海外のダートでは砂と土でほぼ別物。

 海外遠征が殆どまだ一般的でないことから、これまでは用意できなかったが。無敗の三冠ウマ娘という機運がある。

 

 

 

 ただ、それにはやはり結果を残す必要があるだろう。

 ジャパンカップ――――海外ウマ娘との決戦での、勝利という結果を。

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

「あ、あのー、スズカさん。併走とかって……」

「いいわよ」

 

 

「いいんですか!?」

 

 

 

 

 

 スペシャルウィークはサイレンススズカのダービーでの走りに心打たれて少し予定より早めに上京した、編入ウマ娘である。その走りは将来を期待させるのに十分なものであり、学力はともかくとしてトレセン学園生徒としては優等生と言っていい。

 

 のだが、同室が憧れのスズカさんだったのでワクワクしていたスペシャルウィークは、そのスズカさんの実態に少しばかり驚くこともあった。

 

 

 

 まず一つ目は、スズカさんは幼馴染のお兄さんにべったりだということ。

 隙あらば一緒にいるし、授業が終われば突撃するし、寮に戻るときは送ってもらって、玄関からは電話しながらだし。部屋に戻ればお兄さんの部屋から貰ってきたという枕を抱いてご満悦だし。

 

 

 こうして思ったのは――――スズカさん、実は可愛い…。

 

 

 最初はお人形さんみたいだし、綺麗だし、話しかけにくかったのだけれどけっこううっかりしていたり、布団から出たがらなかったりと抜けているところが出てきて。

 

 

 

 仲良くなれたかな、と思いつつもやっぱりその神秘的な雰囲気もあって併走なんかは凄く頼みにくかった。のだが、すごく楽しそうに走るスズカさんはやっぱり走るのも大好きみたいで。

 

 

 

 

「ふっ――――!」

「む、ムリィ―――!?」

 

 

 

 

 コーナリングで差をつけられたり、そもそもスタートで差を付けられすぎたり、上がり3ハロンのタイムでも負けたりと色々散々だったりもしたけれど―――。

 

 

 

「いや、それでいい。スぺ、持ち味を活かせ! お前の末脚なら十分に勝負ができる! ……今回はまあ、相手が悪いが!」

 

 

 

 トレーナーさんはそう言って、根性を鍛える階段トレーニングを提案してくれたり。

 後はスズカさんのお兄さんも少しアドバイスしてくれた。

 

 

 

「まあこれはちょっと特殊な例ですけど……スズカの脚、どう思います?」

「ええっと……細くて綺麗だなって」

「トモの張りもいいし、何より無駄がない。左右の差も殆どない。芸術品だよな」

 

 

 

 なんとなくトレーナーさんの感想と比べて恥ずかしくなった私に、スズカさんのお兄さんは言った。

 

 

 

「今回はスペちゃんも沖野さんも正しい。走るため、勝つために徹底的に体調を調整してる。スズカの食事は俺が設定して、学食に依頼して作ってもらっている。晩御飯はまあ、交代でやってるけど」

 

「スぺちゃんはその……食べ過ぎかな、って」

 

 

 

「はぐっ!?」

「うっ、まあ確かに」

 

 

 

 そういえばスズカさんがニンジンをつまみ食いしているところとか見たことないかも…。スイーツも食べないし、あんまり好きじゃないのかなとは思ってたけれど。

 

 

 

 

「正直、管理主義が良いとは言いませんが体調管理だけはしっかりした方が良いですよ。スズカみたいに好みが単純じゃないと大変だとは思いますけど。結局ストレス溜めるくらいなら逆効果ですし」

 

 

 

 なるほど、確かにスズカさんはお菓子よりも…。

 

 

 

「走っていればご機嫌なんで」

「お前さんがいればご機嫌だもんな」

 

 

 

 なんとなく男二人で見つめ合い、それからスズカさんの方を向いていった。

 

 

 

「「正解は?」」

 

「えっと、どちらかなら――――お兄さんですね」

 

 

 

 ですよね。

 なんとなく納得してトレーナーさんと頷き合っていると、お兄さんは本気で驚いたのか天を仰いでました。

 

 

 

「う、ウソだろ……朝から晩まで毎日走ってるのに……」

「お兄さんは1日24時間は一緒にいたいですけど、ずっと走るのは少し無理ですから」

 

 

 

 透き通った笑みでそんなことを言うスズカさんだけれど、どうみても本気なんだろうなぁ。

 

 

 

「………」

「……愛されてるねぇ」

「冗談は髪型だけにしてくださいよ先輩」

 

 

 

「あ、でもお兄さんがいてくれるならやっぱりいくらでも走りたいですね」

 

 

 

 結局走ることは走るんですね…。

 

 

 

 

「あ、そうだ! スズカさん、ジャパンカップ応援に行きますね!」

「ええ、ありがとうスぺちゃん」

 

 

 

「ジャパンカップといえば、来るんだろ? 王室縁のウマ娘が」

「……ええ、そうですね。――――ピルサドスキーが」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 ピルサドスキーとは。

 パドックで馬っけ(勃起)をだし、オスのアレをテレビで大公開した馬である。もともと日本で種牡馬になることが決定しており、それにふさわしい戦績もあって一番人気だった。うまだっちするまでは。

 

 牝馬はエアグルーヴしかいなかったので、多分エアグルーヴに馬っけを出し、そしてレース展開としてもエアグルーヴを追いかけるような形のまま勝利。勃起した変態に追われたようなもんである。毎度不憫な目に遭ってるなエアグルーヴ。

 

 

 ちょうど牡馬に秋の天皇賞で勝利した直後で強さを証明していたエアグルーヴに勝利したことでその強さと、うまだっちを印象付けた馬である。

 五本足走法なんて言われることもある。

 

 

 

 

 

 つまり、ジャパンカップにはパドックで発情するピルサドスキーが出没するはずなのだが……どうなのだろうか。見たいような見たくないような。ちなみにウマ娘的にはファインモーションの姉にあたる(とされている)。

 

 

 されているのだが。

 

 

 

 

『ハァイ、素敵ねそこのレディ。このレースの後、食事でもどう?』

「………少なくとも、その声を掛けるのもレースの後にでもしていただきたいですが」

 

 

 

 とりあえずエアグルーヴがやっぱり琴線に引っかかったらしい、なんか独特の雰囲気のお嬢様がいた。めっちゃ嫌そうなエアグルーヴがなんか珍しく見える。

 

 うん、なんというか思ったより全然マトモだった。

 これでめっちゃ勃起してるアレな恰好のアレなウマ娘だったらどうしようかと思ったので。

 

 

 

『つれないね。けどそれでこそ“女帝”と言われるだけのことはある、好みだね。……なら、私がレースで勝ったらどうだい』

 

 

 

 と、なんかスズカがエアグルーヴの方に向かって歩いていく。

 もしかして助けに…?

 

 スズカの成長に感動していると、スズカはおもむろにエアグルーヴの隣に立って言った。

 

 

 

「私の方が速いです」

(喧嘩売りに行った―――!?)

 

 

 

 

 いや助けるためなんだろうが。口下手か…。

 喧嘩売った割には闘志の欠片もないし。

 

 

 

 

『へぇ、噂の日本の無敗の三冠ウマ娘という奴か。どんな猛者かと思ったが、あのシンボリルドルフとやらと比べると劣るな』

「そうですか」

 

 

 

 しかも挑発され返しているし。

 意にも介さぬ、とばかりに気にした様子のないスズカにちょっと毒気を抜かれたのか、困った顔をしたピルサドスキーは糠に釘というか、闘志が全く感じられないスズカをちょっとつついてみることにしたらしい。

 

 

 

『それでは日本のレベルが心配になる』

「はぁ」

 

 

 暖簾に腕押し。

 手ごたえ無し。完全にスルー態勢のド天然スズカに、一応王族としてそれなりに対人経験があるはずのピルサドスキーも困り顔である。

 

 

 

『………そこの麗しの女帝陛下、なんというか、この娘がやる気になるような何かないのかい? ちょっとこれだとせっかくレースに来たのに心配になる。それにここらで挑発に耐性を付けるのも悪くはないだろう』

「レースになれば問題ないでしょう。どうしてもというのなら、あそこのトレーナーに頼めば良いかと」

 

 

 

 

 いやちょっとエアグルーヴさんキラーパスやめて!?

 スズカにやる気出させるのはご褒美が……。

 

 

 

 

『うーん、正直あんまり弱そうな相手は好みじゃない。気を使わないといけないだろう?』

「……お兄さんは弱くないですよ」

 

 

 

 あ。

 ちょっとスズカから剣呑な気配が。

 

 エアグルーヴがジェスチャーで止めるように合図しているが、まあやる気が無さそうな(誤解だが)スズカより怒った方と戦いたいと思ったのだろう。目でこっちに謝罪しつつも、全力で踏み抜いた。

 

 

 

 

『じゃあもし私が勝ったら、君のトレーナーも大したことないということかな……』

「…………」

「いや待てスズカ、ちょっと待て」

 

 

 

 

 耳を絞ったまま、無言でゲートに向かうスズカ。

 慌ててエアグルーヴが宥めようとするが聞く耳持たず。流石にもうここまでくると声を掛けに行くのも難しい。

 

 

 

 いや、あれで冷静にレースやるの無理では…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――――サイレンススズカ! なんというハイペース! 序盤から一気に差を開いて先頭! まだ開く! 一体何バ身開いているのか――――本当にこれで持つのか!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





歩容:人含む動物の歩き方
歩様:馬の歩き方


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