異次元の寂しがり屋   作:アマシロ

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タイキシャトルの口調良くわからない問題が…。



ちなみにここのスズカはアニメのあたりに合流するまでは初期PVの小柄スズカとします。


 


弥生賞前 / なんでもない練習日

 

 

 

 

 

 

 

―――――メイクデビューで大差勝ちしたウマ娘がいる。

 

 

 トゥインクルシリーズはトレセン学園の中だけでほぼ完結している、狭い業界である。それだけ噂が出回るのも早く、圧倒的な走りを見せたサイレンススズカの噂はすぐに広まっていた。

 

 なんといってもチームリギル。

 現在の生徒会役員が集結する最強チームの新メンバー。

 

 来年度のクラシックを全て持っていかれるのではという声さえも聞こえてくるくらいにはレベルの違う走りだった。

 

 

 

 が、肝心の本人は特に自慢するでもなく、周囲に溶け込むでもなく、ぽやっとした雰囲気で外を眺めているか、部室に直行するかというストイックと天然を反復横跳び……掛け持ちするような独特の性格を醸し出していた。

 

 それゆえに、まあ浮いていたわけだが。

 

 

 

「むむむ、スズカさん! 今日は友人の運勢を占うと吉と出ました! ので、どうかご協力を!」

「えっと……いいけれど。今日は何の占いなの?」

 

 

 

「今日は、水晶玉占いです!」

「あっ、思ったより普通なのが来たわね……」

 

 

 

 おしるこ占いとか言われるよりはまだなんとなく受け入れが容易い。

 割と何が飛び出てきても受け入れるおおらかさ? 天然ぶり?がスズカにはあるがそれはそれとして。

 

 

 

「むむむ………ふんにゃかはんにゃか―――――出ました! 凶です! 大事な勝負の前のうっかりミスに注意! ラッキーアイテムは安心できる人物です!」

 

「うっかりミス……落鉄とかかしら……?」

 

 

 

 

 別段、スズカも付き合いが悪いというわけでは(走りに行きたい時を除いて)ない。ので、スズカと同じように同世代の上澄みかつ押しの強いフクキタルは友人と言っていいポジションに落ち着いていた。

 

 

 

「スズカさんの安心できる人物というと――――」

「トレーナーさんですね」

 

 

 

「そ、即答ですね……相性占いもしておきましょうか?」

「………あいしょううらない」

 

 

 

 なんとなくフクキタルの言葉を反復したスズカは、兄妹みたいなものだからきっと良い結果になるだろうな、となんとなく考えて頷いた。

 

 

 

「そうね。じゃあお願いしようかしら」

「お任せください! ―――――むむむ!? これは! 相性100%! まさに運命の人! 日ごろの感謝の気持ちを伝えると良いでしょう!」

 

 

 

「感謝……あっ」

 

 

 

 そういえばいつもいつもべったり張り付いているのに、ちゃんと感謝を伝えていなかったことに気づかされる。

 

 

 

「……どうしましょう。何かお礼とか……」

「にゅわー! それもこの私にお任せを! ――――出ました! 手作りのお弁当を渡すと愛が深まるとのこと! ラッキーアイテムは……調味料?」

 

 

 

「……あいがふかまる」

 

 

 

 正直なところ、スズカとしては自分の思いがどうこうというのはイマイチ実感がわかない。が、もしもっとトレーナーさんが構ってくれるのなら、と想像するとものすごくやる気が出てきた。

 

 

 

「調味料ですか……味付けがポイントということでしょうか……」

「あじつけ」

 

 

 

 スズカも自分が食べるものくらいは作れるし、栄養素はアスリートとして気を使っている。――――が、素材の味100%なそれをうっかり渡しかねないことに気づかされる。特段占いに頼りたいとも思わないが、フクキタルの善意であるので有難く受け取っておくスズカであった。

 

 

 

 

「ありがとう、フクキタル。やってみるわ」

「ええ! 何かお困りごとがあればいつでもご相談下さいっ!」

 

 

 

「あっ。じゃあトイレで寂しくならない方法とか……あるかしら?」

「えっ?」

 

 

 

 トイレにトレーナーを連れ込む方法、と聞かないあたりスズカにも最低限の理性はあった。とはいえ実際のところはその手段を期待していたわけなのだが。

 

 

 

 

「トイレで寂しくならない方法とか……」

「わ、わかりました! シラオキ様……――――出ました! しばらくその願いは叶わないでしょう…。誕生日プレゼントが吉です!」

 

 

 

「ウソでしょ……(解決できないなんて)」

「嘘みたいですね(そんな突飛な願いでもシラオキ様なら!)」

 

 

 

 

 微妙に考えが食い違ったまま二人は気づかず、そのまま授業が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 数日後。

 

 新人トレーナーの仕事というのは、意外にも多い。

 ベテラントレーナーがチームの仕事、指導方法、出走ローテーションなどを考える分だけ諸々の雑用は新人に回ってくるためである。

 

 特にチームリギルともなれば――――まあ、意外と戦績の割には少人数の精鋭チームであるのだが、トレーナーが実質おハナさんのワンマンであるため、急遽チームに入った俺の仕事はけっこうハードである。

 

 

 練習場の申請とか、器具のチェックとか、スポーツドリンクなどの手配とか。

 そんな風に仕事をしていると、いつものように授業を終えてお昼休みに入ったスズカがこっそり部室に入ってくる。

 

 流石に仕事をしていても気づくのだが、なんとなく背後を無言で左旋回して仕事が終わるのを待っているスズカを仕事だからと追い返すのもアレなので、急いで区切りをつけてから振り返る。

 

 

 

 

「お疲れ、スズカ」

「――――! お疲れ様です、トレーナーさん。あの、お仕事終わりましたか…?」

 

 

 

「まあ、ある程度はね。あとは外でもできる」

「――――じゃあ、その……いいですか?」

 

 

 

 喜色満面、耳はピコピコ動いているし、尻尾も高い位置でぱたぱた動いているし、これで断ったらどうなるのだろうと少し考えて―――――以前それで背中にセミのように張り付かれて取れなくなったのを思い出して止めた。

 

 

 

「行こうか」

「はいっ!」

 

 

 

 

 走るのは大好きだけど、それはそれとして誰もいないのは嫌。

 そんなワキちゃんことスズカだが、見守っている保護者がいれば本当に楽しそうに走る。なんなら他のウマ娘でも(知り合いなら)いいのだが。

 

 ある意味、群れで生活する馬に原点回帰しているというかなんというか。

 

 

 

「スズカ! 並走で勝負しまショウ!」

「……ええ。負けないから」

 

 

 

 と、乱入してきたタイキシャトルと唐突に芝マイルでの並走が始まるが――――なんかあの二人、どう考えても新馬戦終えた直後くらいの能力じゃないのでは。

 下手をすれば夏終わりのクラシック級ウマ娘すら蹂躙しそうな二人に軽くドン引きしつつ仕事をしていると、不意に耳元に暖かい息を感じた。

 

 

 

 

「――――お兄さん…?」

「うおわぁっ!?」

 

 

 

 背後に感じる熱は、疾走した直後のウマ娘の高い体温だろう。

 というかしっとり湿った体操着の感覚すらある気がするあたり、まだこのスズカに乙女心なんてものは実装されていないらしい。

 

 

 

 

「見ていてくれました?」

「………仕事をしていました」

 

 

「むぅー」

「ごめんって」

 

 

 

 あふれた感情が前掻きで地面をゴリゴリ削っているあたり、けっこうご立腹のようである。たびたび止めろと言っているのに耳に声を吹き込んでくるし。

 

 

 

「私の走りより、まだ仕事の方が魅力的ということですね」

「いやだって、仕事終えてから何の憂いもなくスズカを見ていたいし……」

 

 

 

 

 あと多分、揺れるタイキシャトルの胸とか見てたらスズカがキレる。胸どうこうじゃなく、スズカじゃなくタイキを見ていたことで。

 しかしあんなに揺れていたら男の目は惹きつけられるのである。

 

 

 

 

「まだまだ走るだろう?」

「……走りますけど。はい」

 

 

 

 差し出されたのは、可愛らしい草花柄のお弁当。

 ウマ娘用にしては妙に小さいそれに、首をかしげているとスズカは密着していた身体を離しつつ言った。

 

 

 

「その、お礼です。いつもありがとうございます、トレーナーさん」

「いつもお昼なんて後回しにするスズカがお弁当……だって?」

 

 

 

「いつもだって、ちゃんと食べていますよ…? 食べないと力が出ないですし」

 

 

 

 ただちょっと授業で我慢させられた分、先に走りたくなるだけではあるが。

 自分用の弁当箱(大きい)も取り出したスズカは、ずいっと距離を詰めて隣に密着しつつパソコンを奪った。

 

 

 

 

「俺の愛機が!?」

「ずきゅんばきゅん奪い取り~。お弁当、たべてゆ~く~よ?」

 

 

 

 ウソでしょ……ワキちゃんに変なネタを仕込んだせいでスズカのノリが良い…。

 と、スズカは奪ったパソコンを見て、自分の走りより優先された仕事とトレーナーを見比べつつ言った。

 

 

 

「……ところで、愛機より愛バの方が良くないですか?」

「やめろワキちゃん! なんかミシミシいってるから!?」

 

 

 

 

「トレーナーさ~ん! スズカ、強すぎマース!」

 

 

 

 と、スズカの反対側から遠慮なくハグしてきたタイキシャトル。いや体操服でその胸でハグはいかんでしょう。

 

 

 

「ま、待とう。落ち着こう。な?」

「ノー! 私もスズカに勝ちたいデース! ヒント、ヒントプリーズ!」

 

 

 

「分かった。わかったから!」

「……お兄さん」

 

 

 

 

 むぎゅーっと逆から抱き着いてきたのはスズカ。

 若干ムスっとしているのは渾身のお弁当をスルーされているからだろうか。正直微笑ましいので落ち着く。

 

 

 

 

「とりあえず、スズカに関しては大逃げからの差しっていう駆け引きさせない走りなわけで。これに勝つにはスズカより速く走るしかないわけだ。けど、スズカは短距離走並の速度で中距離まで走れるから、よほど強烈な末脚でもないと勝負にならない」

 

 

 

 あのエルコンドルパサーでさえも後塵を拝するあたり誰にも止めることはできない。負けるとすれば怪我か出遅れくらいのものだろう。

 

 

 

「ムムム。つまりスズカ最強ということデスか…?」

「調子の良いスズカに1800~2000で勝てる馬……ウマ娘がいたら見てみたいな。とはいえ、タイキシャトルの走りも割と常軌を逸している」

 

 

 

「そうなんですか?」

「そうなんデスか!?」

 

 

 

 がばっ、と顔を上げて若干離れるタイキと、腕を独占して満足気なスズカ。

 スズカも離れてくれないかな、と若干頭の片隅に思いつつもスズカにパソコンを示して一旦返してもらう。

 

 

 

 

「これが良馬場でのタイキシャトルと、……えーと、こうやって。タイキシャトル以外のリギルの平均タイム。あ、ジュニア期のやつね」

 

「ふむふむ、平均よりは上回ってマスね」

 

 

 

 平均より上くらいで満足しないデス。と顔が語っているが…。

 

 

 

 

「で、こっちが不良馬場。あとダート」

「ワォっ!?」

 

「……速い、ですね」

 

 

 

 

 そう、タイキシャトルは速い。ダートだろうが不良馬場だろうが良馬場だろうが速い。なんなら海外でも勝てるくらいには環境を選ばない。

 

 

 

「出れば勝つ、そんな絶対性を秘めた『最強マイラー』と呼ばれるようになれるかもしれない大器が君だよ」

 

 

 

 満面の笑みになったタイキシャトルに、ついでにもう一個データを出しておく。

 

 

「そしてこれがテンション低い時のスズカ」

「トレーナーさんっ!?」

「oh…」

 

 

 

 急にトイレに行きたくなって席を外したら、それに気づいたスズカのテンションがガタ落ちした結果なのだが……まあタイキシャトルを励ますのにちょうどいいので使わせてもらう。

 

 

 

「――――Yes! サンキューです、トレーナーさん! 張り切って走ってきマース!」

「お昼はちゃんと食べるようになー」

 

 

 

 

 元気よく走っていくタイキシャトルを見送ると、ぷくーっと頬を膨らませたスズカは言った。

 

 

 

「……わたしの方が速いです」

「はいはい。俺にとっての最強バはお前だよ」

 

 

 

 

 なんとなく釈然としてなさそうなスズカはさておき、貰った弁当を食べる。

 不思議と好みの味付けがされたオカズは美味しくて、それを伝えるとようやくスズカも絞っていた耳を立てた。

 

 

 

 

「スズカ、お前料理上手だったんだな……凄い美味しいよ」

「そうですか…?」

 

 

 

「うんうん。定型文で言うなら良いお嫁さんになれる的な」

「およめさん」

 

 

 

 

 なんとなく男女差別がどうとかとか言われそうな気もしなくもないが、もし料理が上手な男がいたらいい旦那になれると言うので許してほしい――――そんな脈絡のないことを考えてた俺は、妙にその単語を噛みしめているスズカに気づかなかった。

 

 

 

 

 

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