異次元の寂しがり屋   作:アマシロ

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Q.思ったよりバレンタインのワキちゃんが大人しいですね

そんな感じの感想頂いたので特に意味も無い日常回です

A.日頃からイチャイチャしてるので







バレンタイン後の日常

 

 

 

 

 

 

―――――不意に、何かが欠けているような感覚で目が覚める。

 

 

 例えるのなら枕なしで寝ている時のような、あるいは布団がどこかに行ってしまったかのような。……別に枕も布団も無くなっていないのだが。

 ただそう、いつも張り付いてきているスズカがいないという。

 

 

 

「いや毒されすぎだな……」

 

 

 

 なんとなく布団から顔だけ出して満面の笑みを浮かべるスズカの幻影が見える気すらする。

 

 結婚を機に自重が吹き飛んだのか、以前は気を抜けば走る、隙あらば抱き着く、たまに回るくらいの比率だったのだが。今は常に抱き着く、隙あらば走る、たまに頬擦りしてくるくらいになった。……犬かな? 馬だな。ウマソウルに負けてないか心配になるが、普通の馬はあんなに人懐っこくないか……。

 

 と、噂をすればパタパタとなるべく音を立てない範囲の全力で部屋に戻ってくるスズカの足音が。

 

 

 

「あ、お兄さん! おはようございますっ」

 

 

 

 ちらり、と扉の隙間から覗いて起きていると見るや、パアッと笑顔を浮かべてベッドに飛び乗り、抱き着いて頬擦りしてくる。

 

 

 

「どうどう」

「お兄さん、朝ごはんできていますよ。ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……ランニングですか?」

 

 

 

 

 ランニングで、と言ったが最後もう誰にもスズカを止められないのでとりあえずご飯だろうか。そう思いつつ身体は闘争を……もとい、スズカのぬくもりを求める。

 抱きしめると嬉しそうに抱き返してくれるので、もうなんかこのまま二度寝したくなる。

 

 

 

「じゃあスズカで」

「うそでしょ……あの、お兄さん。ご飯できてますよ…?」

 

 

 

 確かにそう言っていた。実質一択じゃねーか。

 

 

 

 

「……だから、その。今はこれで」

 

 

 

 頬に柔らかいものが触れて、照れたようにはにかむスズカ。結婚しよ。してた。

 もうこれはうまぴょいOKなのでは、と思うがスズカに嫌われたらどうにもならないくらいには俺も依存してしまっているので紳士であらねばならぬ。

 

 

 

 

「……うし、着替えるか」

「はい」

 

 

 

 着替えてる時に背中にくっつかれているとまあまあ邪魔だが、かれこれ10年くらいやってるので今更である。ちょいちょいボタンやらなにやらを手伝ってくれたりしつつ、背中に張り付かれたまま歩くと危ないので腕に抱き着いてくるスズカとリビングへ。

 

 

 

 

「―――昨晩はお楽しみだったわね」

 

 

 

 

 と、脚を組みモーニングコーヒーを嗜みつつ母さんが一言。

 

 う、うざい…。

 基本的に優しいし、スズカにも気を配ってくれるのになんでこう母さんはうざいのか。こういう言動さえなければ普通に良い母親なのに…。

 

 

 

「……べ、別にいつも通りだったような…?」

「反応しなくていいぞワキちゃん」

 

「――――昨晩“も”お楽しみだったようね。良いことだわ」

 

 

 

 

「楽しいというか……あ、でも甘えてくるお兄さんはちょっと可愛いかも」

「スズカ、一回離れようか。ちょっと顔洗ってくる」

 

 

 

 にやにやしている母さんが流石にアレなので、一回やんわり腕を振りほどいて顔を洗いに行く。

 

 

 

「……お、お兄さーん!?」

「きゃー!? ちょっとワキちゃん落ち着いて! ちょっ、あっ、ごめんてばー!」

 

 

 

 

 愁嘆場か何かかな。

 おろおろしてから高速左旋回に移行したワキちゃんによってなんか凄い音がするが、多分犠牲になるとしても母さんのモーニングコーヒーくらいなのでまあよしとしよう。

 

 

 

 

 そんなわけで顔と歯を磨いて戻ってくると、ピタリと左旋回を止めたスズカが滑るように背後に来て無言で抱き着く。で。ウマ娘の怪力で締め上げられる。長男じゃない(一人っ子だからある意味では長男だが)けど兄代わりじゃなければ耐えられなかった。

 

 

 

「うっ…。いやスズカ、恥ずかしいから離れたかっただけだからな」

「……それは、まあ。なんとなく分かりますけど。でもお兄さんだって私が怒ったかと思ったら焦りますよね?」

 

 

 

 

 それはもちろん即座に土下座を敢行するかもしれないくらいには焦るだろうけど。

 スズカが怒るってどんな時さ…。

 

 

 

 

「俺が巨乳グラビア写真集を見てた時とか?」

「お兄さん、おっぱい好きですよね」

 

 

 

 なんか生暖かい目で見られた。

 

 

 

「テイオーと楽しく話してる時とか」

「怒らないですけど、寂しいのでくっつきますね」

 

 

 

 にこやかである。

 別に嫉妬とかはないらしい。正直俺はスズカがイケメンと話してたら気が気じゃないかもしれないのだが。……あれ? 俺の方が依存強い?

 

 

 

「スズカが寝てる間に一人でトイレに」

「起きた時にお兄さんがいないと凄く寂しいので起こしてくださいね?」

 

 

 

 スン、と目が冷めたし耳を伏せたのでこれが一番ストレスらしい。

 地雷が……地雷が分からん…。嫁なのに……というか幼馴染で妹的な立ち位置なのに…。

 

 

 

「もし起こさなかったら?」

「……じゃあ、うまぴょい禁止で」

 

 

 

 

 お、おもーい! 罰が重い! 普通のヒトはスズカみたいに頭サイレンススズカな代わりに三大欲求があるのであって。スズカに胃を掴まれ、いないと眠りにくいので既に三大欲求を支配されているという事実に思い当ってしまった。

 

 夜中のトイレくらい一人で行きたいんだが!?

 夜だと寂しさ爆発するので連れション要求してくる系幼馴染である。異性の連れションってそれはもうなんというか……アウトでは。

 こいつの羞恥心は馬並みなのかもしれない。

 

 

 

 

「お兄さん、トイレくらいで恥ずかしがらなくていいんですよ?」

「いやまあ(ワキちゃんの)介護だと思えばそうかもだが」

 

 

 

「あ、私だってお兄さん以外だったら嫌ですからね」

「母さんは?」

 

 

 

「…………お兄さんがいいんですけど」

 

 

 

 じとーっとした目を向けてくる。もうダメかもしれない。

 

 こいつの情緒がちゃんと発達する前に甘やかしすぎたのかもしれない…。

 でも付き添わないと漏らしてたしな……。

 

 いっそ致してるところをガン見して恥ずかしさを自覚させれば――――それでもし変な趣味に目覚められたら致命的すぎるな。やめておこう。

 

 

 

 

「お義母さん、お兄さんになんとか分かってもらえないでしょうか」

「えー。一日離れて生活してみるとか?」

 

 

「「無理です(しょ)」」

「仲いいじゃない」

 

 

 

 

 ……これが人バ一体ということだろうか。

 どっちかというと割れ鍋に綴じ蓋、どんな鍋にもぴったり合う蓋がある、梅に鶯(ウグイス)……ちなみに梅によくいるのはメジロらしいが。

 

 

 

「いやスズカ、一緒にいたい気持ちは分かるがお風呂とトイレは別……いやお風呂は一緒に入るか」

「!? い、いいんですか?」

 

 

 

「夫婦ならお風呂くらいはセーフかもしれない」

「じゃあトイレもセーフですよね、服着てますし」

 

 

 

 

 要介護……。

 スぺちゃんの立派な先輩?だったスズカさんは何処に。

 ちょっと何かいい方策を考えるとして、そろそろ出勤の準備をしなくては。

 

 

 

 

「はい、お兄さん。荷物です」

「お、おう。ありがとう」

 

 

 

 準備のいいことに、鞄を笑顔で渡してくれるスズカにちょっとドキッとしつつ見送られて玄関へ。

 

 

 

「じゃあ、いってきます」

「んー」

 

 

 

 目をつぶって唇を突き出し、何かを強請るスズカ。

 りんごでも欲しいのかな。

 

 

 

「すまんスズカ、今ちょっと餌を持ってなくて」

「うそでしょ……」

 

 

 

 がーん、と効果音が聞こえそうなくらいテンション下がったスズカである。やる気が二段階くらい下がったかもしれない。耳も萎れた。

 

 

 

「ごめん嘘」

 

 

 

 

 だってめっちゃドアの隙間からニヤニヤしてる母さんが見えてるし……。

 身軽に、というか実際軽いのだが首に抱き着いてくるスズカの求めるままキスをして、そのままギリギリまで粘りたい誘惑を振りきって外へ。

 

 

 

 

「いってらっしゃい……あ、あなた」

「い、いってきます。どうした急に」

 

 

 

「だってもし子どもができた時に、『お兄さん』だとおかしいですよね?」

 

 

 

 

 ………いや、まあ。

 でもお前まだドリームトロフィーリーグで走るよね? アオハル杯にも招待されてるんだから頼むよ? 馬でも子どもは引退後だからね?

 

 

 

 

「私の見たい景色……」

 

 

 

 いや俺も見たいけど。

 というかスズカの子どもとか絶対死ぬほど可愛いけど。

 

 

 

 

 

「まあレースの景色は今しか見られないからな」

 

 

 

 花の命短し、選手生命はもっと短いかもしれない。馬なんて大体2年くらいの印象強いし。

 

 

 

「じゃあ、全部逃げ切って見せますから。……お兄さん、覚悟しておいてくださいね?」

「……はい」

 

 

 

 悪戯っぽく微笑むスズカは可愛いだけじゃなく大人びて見えて。

 あと「お兄さんだけは逃がしません」というそこはかとなく重い何かを感じつつもトレセン学園に向かうのだった――――。

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お兄さん。忘れ物です」

「いやあの、荷物用意してくれたのスズカじゃん」

 

 

 

 

 

 お昼休み。

 なんかまだ温かいお弁当を持ってきた(どうみても出来立て)最速の宅配者、もといサイレンススズカに明らかに仕組まれた何かを感じつつ受け取る。

 

 配達料代わりに褒めろ撫でろとアピールが激しいのでハグで対応するが。

 

 

 

「一応お前も特別講師なんだから来ればよかっただろ」

「だってお兄さん仕事で忙しくて構ってくれないですし……」

 

 

「あー……」

 

 

 

 

 まあ構ってあげられないんだが。

 でも母さんから『ワキちゃんが暴れてる(左旋回的な意味で)からなんとかして』とSNSでSOSが届いているのだ。

 

 だからそう、決して俺が寂しくて仕方ないというだけじゃないのだが。

 

 

 

 

「えっとだな。……スズカがいないと寂しいから、傍にいて欲しいなー……なんて」

「!? ………っ、お兄さん!」

 

 

「ぐはっ、むぐっ、がはっ、ぐぇっ」

 

 

 

 

 

 

 

 スズカのすてみタックル! てんしのキッス! じゃれつく! しめつける!

 トレーナーは めのまえがまっくらになった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なおスズカの手料理を無駄にしないためにすぐに蘇生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






とりあえずリハビリがてらキャラ別に書いてみようかと思うのですが、選択肢が多すぎるので良ければアンケートにご協力ください

次の中で気になるキャラは

  • トウカイテイオー
  • グラスワンダー
  • ヤマニンゼファー
  • マンハッタンカフェ
  • アドマイヤベガ
  • アストンマーチャン
  • カレンチャン
  • メジロマックイーン
  • セイウンスカイ
  • ファインモーション
  • ライスシャワー
  • ナリタタイシン
  • キタサンブラック
  • サトノダイヤモンド
  • 上記以外
  • サイレンススズカ(本物)
  • サイレンススズカ(ワキちゃん)
  • 桐生院トレーナー
  • 樫本トレーナー
  • ライトハロー
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