異次元の寂しがり屋   作:アマシロ

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メンバー集め!! / ファン感謝祭

 

 

 

 

 

「――――お兄さま、ライスちゃんをエキシビジョンマッチに誘いたいんだけど」

「…………一応聞いておきたいんだけど、理由は?」

 

 

 

 

 というわけでお兄さまに相談に来た。

 背はやや低めであるが、優し気な顔立ちと意外な芯の強さを持った好青年。普通に生徒人気が上位にくるだろう草食系イケメンがお兄さまである。

 

 ちなみに俺がお兄さま呼びするのは最初クソほど嫌がられたがもう諦めの境地である。人が良すぎる。

 

 

 

「ライスシャワーの可愛さを全面に押し出して知名度を上げ、ファンを増やして勝った時にとやかく言われないようにする」

「………うーん、でもライスが嫌がりそうなんだよなぁ」

 

 

 

 お前そんなこと言ってると菊花賞でブーイング喰らってライスが泣くぞ。と言ってやりたいが介入しないとなんとなく原作寄りになってしまう修正力的なものはあるのでその影響だろうか。

 

 

 

「例えばだけど、何も知らない他人に何か悪い事をされたと思ったら、嫌な気持ちになるだろ?」

「……いや事情を調べるけど」

 

 

 

 

 チィ、このスパダリ系お兄さまめ。

 

 

 

 

「普通の人はなるだろ?」

「まあ確かに」

 

 

 

「でも、例えば俺の場合基本的にスズカに何されても笑って許せる。お前もライスちゃんに何されてもまあ怒らないだろ?」

 

「……まあ、ライスが悪意をもって何かしないだろうし」

 

 

 

 

「それを広く知ってもらうことがライスちゃんの不幸を防ぐ、というか誤解を防げると思わないか?」

「………思う」

 

 

 

「じゃあエキシビジョンマッチ誘っていいな?」

「……まあ、誘うのは良いけど」

 

 

 

 

 よし、落ちたな。

 で、問題はあのライスシャワーをどうやって誘うかなんだけど。

 

 ちょうどいいタイミングでにっこにこのライスシャワーが戻ってきた。パタパタとちょっと大げさに手を振るのが可愛い。

 

 

 

 

「……ただいま、お兄さま! あれ、貴方は……えっと、スズカさんのトレーナーさん…?」

「そうそう。ちょっとエキシビジョンマッチに誘いに来たんだけどさ。お兄さまに誘う許可は貰ったから長距離レースに出て?」

 

「いや決めるのはライスだからね?」

 

 

 

 

 いやまあそんなに気にしなくても意外と頑固だからライスはそうそう流されないと思うぞ。今だってめちゃ動揺してそうに見えてちゃんと考えてそうだし。

 

 

 

 

「えっと、エキシビジョンマッチって誰が走るんですか…?」

「とりあえずうちのチームはまだカフェしか決まってない。相手は多分メジロマックイーンはほぼ確定で、あとはメジロパーマーとゴールドシップとセイウンスカイのうちの二人かな」

 

 

「何その面子」

 

 

 

 

 思わず顔を引きつらせるお兄さま。

 ライスは「ふぇぇ」とか言ってるけど委縮してるだけでライスシャワーならいい勝負にはなるだろうに。

 

 

 

 

 

 

「ええっと、その、ライスにはちょっと……」

「ちなみに勝ったチームには一カ月スイーツ優待券がもらえる」

 

 

 

「……スイーツ優待券…!?」

 

 

 

 途端に耳がぴこぴこと動くライス。いや大食いだもんね君も…。

 

 

 

 

「あとまあ、なんだろうな。トレーナーとしてはこう、凄い強敵に打ち勝つウマ娘を見るとこう……キュンと来るというか」

「……え?」

 

 

 

 ピクリ、と耳が動く。

 僅かでも聞き逃すまいとこちらに向いた耳がライスの引き込まれ具合を物語っていた。

 というわけでウマ娘の聴力なら聞こえるだろう小声でつぶやく。

 

 

 

「担当ウマ娘が歴史的な勝利をした時とか、思わず抱きしめちゃったりとか……俺なんて勢い余ってキスしちゃったし……」

「そ、そんな………じゃあ、お兄さまも……?」

 

 

 

 

 

「お兄さまは……ライスがマックイーンさんに勝てたら、嬉しい…?」

「え? 当たり前だろ、僕がライスの一番のファンなんだから―――」

 

 

 

 

 

 

 流れを向けてやればお兄さまはほら、クソボケだから…。

 完全に殺ル気スイッチの入ったライスは、決然とした表情と共に言った。

 

 

 

 

 

「――――ライス、出ます。エキシビジョンマッチに。……勝ちます、マックイーンさんに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

(――――困ったわね)

 

 

 

 

 

 アドマイヤベガは布団乾燥機を動かしながら悩んでいた。

 ゴウンゴウンと音を立てるそれは、ふわふわを生み出す魔法の機械だがさすがに悩みそのものを取り払ってはくれない。だいぶ現実逃避はさせてくれるが。

 

 

 

 

(オペラオー……はちょっと。結局リギルになってしまうし、トップロードさんなら……いえ、でも私が誘っても……)

 

 

『ねぇねぇ、おねーちゃん。私もふわふわしたいなー?』

 

 

 

 

 声を掛けてきたのは背後霊―――もとい、妹の亡霊。

 カフェさんと、「お友だち」さんのお陰もあり「お友だち」同様の背後霊になった妹は、時折相性バッチリなアヤベの身体を借りて好き放題していた(許可がないと動かせないが、一度借りればちょっぴり強引に何かするくらいはできる)。で、基本妹には甘々のアヤベもなんやかんや許している現状があり。

 

 

 

 

「えっ。……いいわよ、じゃあ少し代わるわね」

 

 

 

 

 で。ふわふわを感じたいなら仕方ないわね、とちょっとポンコツなお姉ちゃんに心配になりつつも妹ちゃんは即座に振り返ってルームメイトのカレンチャンに話しかけた。

 

 

 

 

「ねぇねぇカレンおねーちゃん! アオハル杯のエキシビジョンマッチに出てほしいの!」

「――――うん、お姉ちゃんに任せてっ♡」

 

 

 

 ボス気質―――逆説的に、目下から素直に頼られると引き受けたくて仕方ないカレンチャンは即座に頷いた。

 甘えてくるアヤベさん(見た目)の妹ちゃん(中身)はけっこう反則だった。

 

 

 

 

 

(ちょっと私の口で何を―――!?)

 

 

 

 

 

 即座にSNSで宣伝し始めたカレンチャンはもう止められない。

 諦めの境地に入った姉を放置して、スマホを操作した妹はそのまま姉の友人(たぶん姉はなんやかんや自分を卑下して素直には認めないが)に電話を掛けた。

 

 

 

「もしもーし!」

「え、アヤベさん? どうかしたんですか?」

 

 

 

「アオハル杯のエキシビジョンマッチのメンバーを集めているのだけれど……参加してもらえないかしら(せいいっぱいの姉っぽい声)」

 

「――――任せてくださいっ! ……ところで、それって何をすれば…?」

 

 

 

「長距離レースで走ってもらいたいの」

「………なるほど! 走ればいいんですね! 任せてくださいっ」

 

 

 

 

「おねーちゃん、いいって!」

「え?」

 

 

 

 

(ちょっと!? 代わって!)

(えー、もうー?)

 

 

 

 

「……えっと、とりあえずその……レース、お願い……」

「――――はいっ」

 

 

 

 

 元気よく答えてくれたトップロードにとりあえずホッと一息。

 アヤベは言いにくかったことを言ってくれた妹に感謝しつつも破天荒ぶりと自分の身体でやらかしてくれたことへの羞恥にちょっぴり頭を抱えたくなった。

 

 

 

 

(……もうっ、この子ったら……)

(おねーちゃん素直じゃないんだから)

 

 

 

 

((仕方ないなぁ……))

 

 

 

 

 そして奇しくも二人とも似たようなことを考えているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「――――皆、今回はアオハル杯エキシビジョンマッチのために集まってくれてありがとう。エキシビジョンマッチだから盛り上げることが目的で、必ずしも勝つ必要はない。けど、間違いなく勝ちに行ける最高のメンバーが集まってると思う」

 

 

 

 エキシビジョンマッチ。

 トゥインクルシリーズ、ドリームトロフィーリーグ関わらずレースのファンの心をわしづかみにするためのお祭り。

 

 ファン感謝祭の締めに行われることも決まっており、レース場の都合でそれぞれ別の場所で戦うことになってはしまうが――――幸い、それぞれのトレーナーも来てくれている。

 

 勝てるのか、という不安がないでもない。

 しかしお祭りである以上は楽しむこと――――そして、この子たちなら間違いなく勝てると信じてあげることだろう。

 

 そんなわけで2チームほど画面越しにはなってしまうが、顔を合わせ、声を合わせて心を合わせる。

 

 

 

 

 

「絶対勝つぞ!」

「『「『「オオォーーーッ!」』」』」

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

『――――さあ、いよいよ始まります春のファン感謝祭を締めくくるアオハル杯エキシビジョンマッチ! 今回はサイレンススズカを筆頭とするチーム“リギルβ”と、スペシャルウィークを筆頭とするチーム“スピカ”を中心に自由なメンバーで行われます!』

 

『レース順はくじ引きにて決定され―――今回は東京ダート1600レースから!』

 

 

 

 

 

『――――あのサイレンススズカのトレーナーが認めた“砂のサイレンススズカ”! 圧倒的な逃げを武器にこのエキシビジョンマッチでも逃げ切ってしまうのか!? スマートファルコン!』

 

「さ、最強ウマドル―――! スマートファルコンですっ!」

 

 

 

 

 会場内に流れた「あっ、ダートかぁ」というちょっと弛緩した空気にぶち込まれる爆弾。さすがのファル子もちょっと固まるレベルの異様な空気と歓声が上がる中、続けて登場する緑と星の勝負服に更に歓声が高まる。

 

 

 

 

「イェーイ! 最強マイラーのタイキシャトル、デース!」

『続けて登場したのはドリームトロフィーリーグ移籍後初の登場となりますタイキシャトル! 芝でも海外でも、不良バ場でも、あらゆる条件で勝利してきた最強マイラーです!』

 

 

 

 

 

『そしてチームリギルの最終メンバーは――――本家チームリギルαより参戦! 海外挑戦を表明している怪鳥! エルコンドルパサー!』

「世界最強! エルコンドルパサー、デース!」

 

 

 

 

 

 

「―――もしかするとこのアオハル杯、不人気のダートに活気を取り戻す狙いがあるのかもしれない」

「どうした急に」

 

 

「もちろん急に人気になるのは難しい。だが、こうしてスターウマ娘たちが走るのを見れば」

「否が応でも注目してしまうってわけだな」

 

 

 

「うぅ……マックイーンさん……」

「テイオーさんまだかなぁ」

 

 

「ズルいよキタちゃん……」

「だってこっちの方が近かったんだしいいでしょダイヤちゃん」

 

 

 

 

 なんだかレース場が分かれてるせいで涙を呑んでいる将来のスターウマ娘がいる気がするがあんまり気にしないでおこう。一応モニターでライブ中継はするし。

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――そしてチームスピカの特別メンバーを紹介しましょう』

 

 

 

 

「―――ハァーィ! ダートでも関係なんてナシナシ! かっ飛ばすわよ!」

『なんと“スーパーカー”マルゼンスキー“が参戦! まさかのチームリギル同士の対面になりましたがこういった光景もアオハル杯ならではと言っていいでしょう!』

 

 

『そしてサイレンススズカが時折ゲスト参戦するウマドルユニット“逃げ切りシスターズ”同士の対面でもあります。リーダーのスマートファルコンは果たして逃げ切れるのでしょうか』

 

 

 

 

 

 なんかファル子いじられてない? 緊張してそうだからか。

 割と固くなって「しゃい☆」してるのもちょっと気になるところだが、ファン一号が駆け寄ってるので多分なんとかしてくれるだろう。

 

 

 

 

 

「そして二人目、高知での活躍も音に聞こえたハルウララが参戦です!」

「わ~い、すっごーい! みんなー、がんばるねー!」

 

 

 

 

 

 

 

――――なんでウララ!?

 

 

 

 いやお前ちょっとそれは流石に……と思ったが、単純にメンバーが集まらなかったのだろう。沖野先輩めっちゃ目逸らしてるし。

 幸いというか、普通に人気があるのでアイドル枠としては失敗しなさそう。呼ぶだけで盛り上げる目的は達したと言えるかもしれない。

 

 

 

 

 

『――――そして、今回は満を持してあのウマ娘も登場です! 32戦22勝、GⅠを4勝――――鮮烈な記憶を残す奇跡の引退レース。笠松レース場から飛び立ち、中央を沸かせた“葦毛の怪物”! オグリキャップ!』

 

「……みんな、よろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、お前っ………クリスマスオグリはルールで反則だろぉぉぉ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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