異次元の寂しがり屋   作:アマシロ

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アオハル杯エキシビジョンマッチ(幕間)

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――お兄さんっ」

「いや、あのスズカ……めっちゃ見られてるからな?」

 

 

 

「……お兄さん、チューは…?」

 

 

 

 コイツ……レースばりの集中力を発動してやがる。

 なんてところに全力出してるんだ。嫌すぎるコンセントレーション。仕方ないので強めのハグで宥めてみるのだが。

 

 

 

「…………んー……」

「どうどう」

 

 

 

 さすがにキス大公開は嫌すぎるので一旦裏手に引っ込むしかねぇ!

 「あいつらうまぴょいしたんだ!」と言われようとも実際見られるより全然いい。これまではスズカの怪我のリスクとか色々追い詰められすぎていたのだ。

 

 エキシビジョンマッチを一世一代のレースと同レベルだと思うなよスズカ…!

 

 

 

 

 

 

 

 ……結局求められれば応えたくなるわけだが。

 周囲から生暖かい目で見られながらなんとか関係者用の通路に連れ込んだスズカの、レースで火照った身体が妙に綺麗に見えたり。

 

 

 

 

 

 

「………んぅ……………はふ。……どうでしたか、お兄さん」

 

 

 

 

 

 たっぷり、なんなら短距離レースより長かった気がするキスを終えて艶っぽい息なんて吐いてみるスズカだが、それはレースの感想でいいんだよな…?

 

 

 

 

「………チューのイメージトレーニング、頑張ったんですけど……」

「レースの話しようぜ……とはいえスタートが完璧だったからあんまり話すことないけど」

 

 

 

 

 多分、まだ本気出してないだろ。

 まあマイルだしそんなに大逃げにならないというか、後ろが追従できてしまうってのはあるんだろうけど。

 

 

 

 

「――――だってお兄さんが叫んでくれないから……」

「なんで…?」

 

 

 

 

 なんで俺の叫びが競馬の鞭みたいな扱いになってるの?

 でもそれなら余計に勝てるなら叫ばなくていいよね?

 

 

 

 

「代わりに私が叫ぶとか……?」

「やめて」

 

 

 

 

 

「ちょっとトレーナー。次は中距離だよ!? 早く来てよね!」

 

 

 

 と、飛び込んできたテイオーに促されて渋々動き出すスズカだが、尻尾が思いっきり腕に絡んでくるんだけど。………もうどうにでもなーれ!

 

 

 というわけで集合場所に行くと、既にメンバーとその関係者は揃っていた。

 やっぱり一部はビデオ通話だが。

 

 

 

 

『えっと……ブルボンさん、頑張ってね!』

「――――ミッション受諾。オペレーション:勝利を獲得のため全力を尽くします」

 

 

 

『アヤベさん! すごくすごいメンバーですけど、アヤベさんなら絶対やれます! 頑張って下さいね!』

「……ええ、そうね………その、ありがとう」

 

 

 

「見ててよね、カイチョー! 無敗の三冠の前に勢いつけちゃうから!」

「ああ、期待しているよ。テイオー」

 

 

 

 

 

 というわけで、今回のメンバーはライスシャワーに引っ張ってきてもらったミホノブルボンを加えてアヤベ、テイオーの三人になる。

 一応長距離とのバランスを取った形であり、恐らく向こうがパーマーとセイウンスカイを呼んで、かつその二人ならマックイーンとの連携を考えてパーマーの方を長距離で出してくる読みである。

 

 

 

 

 一応、こっちのメンバーでは今年クラシック級のテイオーがほぼ原作の全盛期と言っていいだろう。……怪我させないように最新機器も容赦なく導入してるが。

 基本的に、馬用の治療器具なんて人間用と比べたら型落ちみたいなもんである。人間用の方の進化がおかしいんだけど。

 

 

 

 

 

「で、相手のメンバーが――――スペシャルウィーク、アグネスタキオン、セイウンスカイか」

 

 

 

 

 

 うーん………タキオンもウンスも東京2400より中山2000の方が怖いメンバーなんだよなぁ。凄まじくメタ的だが、想いを背負って走るウマ娘でこういう印象は馬鹿にならない。

 

 それでいうとダービー馬であり、ジャパンカップでモンジューに勝利したスペシャルウィークのウマソウルを受け継ぐスぺちゃんはヤバイ。

 

 

 

 

――――こっちはトリプルダービー馬だけどな!

 

 

 能力の差からラップ走で圧殺する坂路のサイボーグ、ミホノブルボン。

 奇跡の帝王、不屈のテイオーことトウカイテイオー。

 ダービーで輝いた一等星アドマイヤベガ。

 

 

 

 一応こっちではまだ未デビューが二人いるとはいえ、デビューに向けて遜色なく鍛えられているので後は実戦経験くらいのものだ。故に、もし負けても美味しい。

 

 

 

 

「三人とも、間違いなく強い――――ダービーを獲れる……どころか三冠目指せる逸材だろう」

 

 

 

 冗談めかして言ったつもりだが、三人とも急に真顔になるのやめてくれないだろうか。

 

 

 

 

「………三冠」

「にしし、トレーナーとも約束したしねー。カイチョーみたいなウマ娘になるって!」

「……トレーナーが言うと、三冠が軽いものみたいね」

 

 

 

 

 軽くはない、軽くはないのだが―――。

 サイレンススズカがクラシック三冠取れたのだ、才能さえあればあとは努力でなんとかなる。

 そして、その一番難しい才能をこの三人は持ってる。

 

 

 

 

「テイオーはルドルフに追いつくために、アヤベは妹に最高のレースを見せるために、ブルボンは……」

「父との約束です」

 

 

 

「ちなみにスズカ」

「……え? ………えっと、どうしてでしたっけ…?」

 

 

 

 基本的にウマソウルの影響で従順なのでレースも景色が見られればいいというスタンスの弊害か。コイツに夢を聞いたら「最高の景色を見ること」とか言うからな。シニア級あたりから夢が「お兄さんのお嫁さん」になりやがったわけだが。

 

 

 

「温泉旅行」

「あっ、ご褒美に温泉旅行に連れて行ってくれるってお兄さんが」

 

 

 

 楽しかったです。とか笑顔のスズカだが、お前全裸で温泉に突撃してきたこと忘れてないからな。つるぺたの癖に無駄に魅力に溢れやがって! 心拍数上がりすぎだったし(社会的に)死ぬかと思ったからな!

 

 もちろん三冠に夢抱いている面子は呆然としているが。

 

 

 

「………温、泉」

「あー、あとあれでしょ。トレーナーの寝具をスズカが貰ってくってヤツ」

「寝具は大事ね」

 

 

 

 

 いや思ったより平然としていた―――!?

 

 

 

「だってトレーナーとスズカってあんまり名誉とか興味なさそうだし」

「俺はあるが」

 

 

 

「名誉とスズカなら?」

「スズカ」

 

 

 

 これでも俺はスズカの隣にいて良い証明代わりとしてスズカにクラシック三冠取らせた割と自己中なトレーナーなのだが。その質問はちょっとズルい。

 

 

 

「名誉のために命を懸けられるヤツもいるが――――結局、自分の大事な人が喜んでくれる方が遥かに想像しやすい。だから力になる」

 

 

 

 テイオーなら、ルドルフが自分を認めてくれて並び立つこと。

 アヤベなら自分のせいで犠牲になったと思い込んでいた妹が喜んでくれること。

 ブルボンは……ブルボンの父親大好き度はよく分からんけど、やっぱり自分の芯になる部分は分かっておいた方が最後の根性に差が出る。

 

 

 

 

 

「……私は、勝ちます。父のためにも」

 

 

 

 まあテイオーもある意味父親(原作)のために頑張ってるようなものだしなー。

 やはり家族か。

 

 

 

 

「……お父さん………ふふっ」

 

 

 

 いやあの、スズカさん? なんでそこでこっちを見るんですか?

 「これからもよろしくお願いしますね?」みたいな笑顔は可愛いけど、テイオーに「うわぁ」って目で見られてるからね?

 

 

 

 

「よし、時間がないから手短にいくぞ。府中の直線はタキオンの脚には長すぎる。このエキシビジョンマッチに選手生命を賭けるほどの理由がなければ、向こうのエースはスペシャルウィークだ。だから――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

『さあ、いよいよ第4Rを迎えましたアオハル杯エキシビジョンマッチ! ここまで2勝し王手をかけるチームリギル! 1勝し後を追うチームスピカ! ここで勝敗が決してしまうのか、はたまた五分に戻すのか―――注目の第4Rは府中の芝2400で行われます!』

 

『長い直線から後方有利とされますが、近年では覆されることも多いですね』

 

 

 

 

『チームリギルから――――目指すは無敗の三冠、若駒ステークスを大勝し皐月賞に備えるトウカイテイオー!』

『同世代でも特に注目のウマ娘ですね。皐月賞の事前投票でも1番人気です』

 

 

 

『受け継がれた星の輝きは、オークスと同じこの府中で輝くのか!? アドマイヤベガ!』

『未デビューながらやはり特に注目されているウマ娘ですね。体質の弱さが不安視されていましたが、改善しつつあるとのことです』

 

 

 

『そしてやはり無敗の三冠を掲げて走る期待の新星、ミホノブルボン!』

『特に短距離の才能があるとされていますが、ここで中距離に出てくるということは、もしかするのかもしれませんね』

 

 

 

 

『チームスピカからは、超光速のプリンセス―――アグネスタキオン!』

『彼女も未デビューですが、特にスピードに関して素晴らしい才能があるようです』

 

 

 

 

『そして黄金世代のトリックスター、セイウンスカイ!』

『言わずと知れた逃げウマ娘です。“彼女”との連携にも期待が高まりますね』

 

 

 

 

『そしてチームスピカのエース! 彼女の府中での走りは疑う余地がありません! エルコンドルパサー、モンジューと強敵に勝利してきた“日本総大将”――――スペシャルウィーク!』

『中距離から長距離まで幅広く走れるウマ娘ですが、特にこの府中の走りは目覚ましいものがありますね』

 

 

 

 

 

『人気投票も締め切りとなりました、まもなくスタートです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

(はぁ、ゲート嫌いなんだよねぇ……)

 

 

 

 スぺちゃんがどうしても、って言うから参加したけどさ。

 なんでエキシビジョンで手の内を見せないといけないのか――――そう思っていたセイウンスカイだったが、少しばかり意識は変わった。

 

 

 

『ええー。いやぁ、セイちゃん的にはエキシビジョンマッチはいいかなぁって』

『そこをなんとか! ねっ? お願いっ!』

 

 

 

『そう言われてもなぁ……あんまり楽しくなさそうだし』

『――――ううん、きっと楽しくなるよ』

 

 

 

 

 根拠はないはずなのに、自信に満ちたスぺちゃんに押し切られたのは良かったのか悪かったのか。

 GⅠやドリームトロフィーリーグと比べても遜色ない盛り上がり。

 

 どうせならオグリキャップ先輩とか、ああいう面子と走ってみたかったという気持ちも無くはない。サイレンススズカ? 走りの相性が最悪なので遠慮したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一番人気はこの子です、日本総大将、スペシャルウィーク!』

『実力も実績も申し分ありませんね。ここはなんとか踏ん張りたいところです』

 

 

 

 

『二番人気はこの子です、トウカイテイオー!』

『間違いなく次世代の中心になると目されている新星の活躍に期待です』

 

 

 

 

『この評価は少し不満か。三番人気はセイウンスカイ!』

『ダービーでこそスペシャルウィークに敗れましたが黄金世代の二冠ウマ娘は伊達ではありません』

 

 

 

 

 

 

(まあ、もうちょっと舐めてくれてもいんだけど――――)

 

 

 

 

 観客が、ではない。

 決然とした表情でこちらを見てくる逃げウマ娘――――ミホノブルボン。そして、それをチームメンバーに抜擢したトレーナーも。

 

 

 

 

 

(でも、そう。逃げウマをぶつけられたくらいで止まると思われるのも面白くない―――かなっ!)

 

 

 

 

 

『――――スタートしました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


実際あんまり文字数とか投稿頻度多いと読むの面倒くさいですよね。
というわけでアンケートにご協力ください。



あくまでも目標なので残念ながら保証はできないのと、アオハル杯が終わったらもう一個のほうも書かないといけないのでこちらは完結になります。

投稿ペースは

  • できたら順次
  • 1日1回くらいが良い
  • 継続重視
  • 頭サイレンススズカ
  • ほわぁ
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